闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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2部 1章

方針

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 私達は領主の館を追い出された後、冒険者ギルドにある、ギルドマスターの私室へと戻ってきていた。

 ギルドに戻ると、すでにクオン達も戻ってきており、私はクオン達に合流する。


「それで、領主の方はどうだったのかしら?」
「それが……」


 ギルドマスターの私室に入るなり、ディータが聞いてくる。
 私は、領主の館でのやり取りをディータ達に伝えた。


「なんですのそれ……街を預かる者が真っ先に逃げ出そうとするなんて……」
「マズいね、そんなことが街の人に知れたらパニックが起きる」


 クオンの言う通りである、自分たちを守ってくれるはずの領主が真っ先に逃げ出したのだ。
 街の人は混乱するだろう……。


「父が逃げたことは正直に話そうと思います、そして私が領主を継いだことも……」
「え、黙っておいた方がいいんじゃない?」


 逃げ出したことを知らせなければ街の人はパニックにならないかもしれない、少なくても邪鬼が襲撃する前には言わない方がいいと思うんだけど……。


「いえ、隠してもしバレれば、最悪の結果になります、そうなるくらいなら先に全てを話した方がいいと思うのです」


 なるほど……アンリエッタの言う通りかもしれない、もし、街の誰かが領主の逃げるところを見ていて、隠していることがバレれば、アンリエッタをも信用しなくなるかもしれないのだ。
 そうなれば、収集がつかなくなる……そうなるくらいなら分かっている混乱の方が幾分かマシなのかもしれない。



「へぇ、意外と胆の据わっている子じゃない」


 ディータがアンリエッタをほめる。
 確かに、あの領主よりアンリエッタの方が領主として向いているのかも……でも。


「でも、問題は山積みだね」


 クオンの言う通りである。
 まず、どう説明しようが街の人が混乱するのは避けられない。
 そして、魔物の襲撃をどう抑えるか、さらに邪鬼をどう見つけて退治するかである。


「そういえば、邪鬼の事は調べられた?」
「詳しいことはあまり分からなかったけど、邪鬼は魔物を操るということ、そして、邪鬼にも天啓スキルがあるらしいんだ」


 ……え?天啓スキルって邪鬼も持っているの?


「ってことは、邪鬼も女神が作った生き物ってこと?」
「いや、それは違うぞ」


 私が疑問を口にすると、それをギルドマスターが即座に否定する。
 でも、この大陸の天啓スキルって女神が与えているんだよね?だとしたら邪鬼の天啓スキルも女神が与えているんじゃ?


「邪鬼に天啓スキルを与えているのは邪神と呼ばれる存在です」


 邪神?……そんなものがこっちの大陸にはいるのか……ってことは邪鬼は邪鬼で別の創造主がいるっていうことなのか……。


「とりあえず、女神とは別に邪神というものがいるのはわかったよ、それで弱点みたいなものはないの?」
「残念だけど、とくにはないみたいだ……」


 そっか、残念、弱点みたいなものがあれば楽になると思ったんだけど……。


「それで、具体的に対策はどうしますの?」
「まずは私が街の人達に状況を話します……兵士を使って街の人を広場に集めようと思います」
「俺はその間に冒険者を集めて、対策を練ろう……確認するが、邪鬼は任せていいんだな?」
「うん、任せて、それと、邪鬼が見つかるまでは私達も魔物を倒すのに協力するよ」
「それは有り難いが一匹や二匹減ったところであまり変わらんぞ?そうするくらいなら邪鬼を探したほうがいいのではないか?」
「ううん、範囲の広い魔法で一気に吹っ飛ばすから大丈夫だよ、それにそうした方が邪鬼も私達を放っておけないだろうし」
「ほう……わかった、頼む」


 一気に大量の魔物を吹き飛ばされたら邪鬼だって黙ってられないだろうしね……もしそれでも姿を現せないなら、そのまま一気に魔物を殲滅しちゃえばいいんだし……むしろそっちの方が助かる。
 まあ、そうはならないだろうけど……。


「っと、そうだ、魔物が来る前に森に行って邪鬼を倒しちゃった方がいいんじゃない?そうすれば街に被害も出ないし……」
「いや、それはやめた方がいい」
「どして?」
「森の中にいる邪鬼を見つけることができる保証がない、君たちが街を離れたと同時に攻められれば確実に街が落ちる……そうなれば最悪だ」


 あ、そうか……森と言っても広い、その中で邪鬼を見つけるとなると時間がかかっちゃうだろう……もし入れ違いになってしまったら大変だ、それなら街で待っていた方が確実である。


「わかった」
「では、さっそく取り掛かるとしよう、すまないがカモメ達はアンリエッタについて行ってやってくれないか?」
「了解」


 私達は魔物が襲撃してくるまで特にやることはない、それなら、父親が逃げ、これから街の人達に説明をしなければならないアンリエッタについて行ってあげる方がいいだろう、何かが出来るわけではないけど、そばにいるだけでも違うものがある。
 

「では、参りましょう」
「了解」


 私達はそういうと、アンリエッタに続いて、ギルドを後にするのだった。
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