298 / 412
2部 2章
暗殺者
しおりを挟む
「冒険者?冒険者なら自分に益のないことはしない生き物だろう?自分の身を一番に考え、自分の身の丈に合わぬことはしないそして、自分より弱いものに力を振るいそれで金を得る生き物だ」
「違う!私の知っている冒険者は人を助けるために、そして人を護るために力を振るう人の事だよ!」
「絵空事を……」
「絵空事なんかじゃない、私のお父さんはそういう冒険者だった。そして私はその背中に憧れて冒険者になったんだよ……だから私は泣いている女の子を見捨てないし、アンタみたいに危ない人間を放っておくことも出来ない!」
「くだらないな……貴様の死ぬ理由はそれでいいのか?」
「残念、私は死なないよーだ!」
私が舌を出し、男を挑発すると、男はこちらへと向かってくる。
………速い!
男の繰り出したショートソードを私は新しく手に入れたバトーネで受け止める。
「……ほう」
「わっと、危ない危ない」
私が攻撃を受け止めたことが意外だったのか、男の動きが一瞬止まる……もちろん、私はそれを見逃したりしない。
新しいバトーネの威力、見せてあげるよ!
私は、風の魔法をバトーネに纏わせ、バトーネの周りに風の刃を展開させる。
そして、私の放った一撃は男のショートソードをいとも簡単に真っ二つにしたのだ。
「……うわ、すごっ」
想像以上の威力である。
魔導具屋のおじさん、最初の時はそんなにすごい魔導具は作れないと言っていたのに、こんなにもすごい魔導具を作ってくれるなんて……これなら、前のバトーネに引けを取らないよ。
「続けていくよ!」
私は纏わせた風を、撃ちだすように相手に放つ、その威力は大したもので、その弾丸を避けた男の後ろの壁を抉っていた。
「ちっ……」
「逃がさないよ!」
男の意識がこちらから外れ、自分の逃げ道を探す。
それに気づいた私は、すぐさま相手との距離を縮めた。
「出直す……だが、その娘は必ず殺す……必ずだ」
男は持っていた魔導具を自分の足元に投げつけると、その魔導具から黒い霧のようなものがあふれ出す。…くっ、それで姿を隠して逃げるつもりか……そのまま突っ込む?いや、駄目だ。もし、相手が私と入れ違いにこっちに出てくればあの子が危ない。
そう思った私は、その場で反転し、少女の近くへと駆け寄った。
そして、黒い霧が晴れると、そこには男の姿はなくなっていた。
「逃げ足だけは一流だね……」
「あ、あの……」
バトーネをしまいながら嘆息する私に、少女が話しかけてくる。
「ん?」
「その、ありがとうございます……」
「どういたしまして、それより、なんであんな奴に襲われてたのか聞いてもいい?」
「う……うう……うわあああああああ!」
命の危機が去ってか、私が普通に話しかけたからか、緊張の糸が切れてしまい少女はわんわんと泣き出した。
「……もう大丈夫だよ。」
私は少しでも少女が安心できるように優しく、その子を抱きしめてあげた。
しばらく私の腕の中で泣き続けていた少女が、だんだんと落ち着いてきた。
「大丈夫?」
「は、はい……みっともないところお見せしてしまい、申し訳ありません」
「ううん、怖い目にあったんだもん、みっともなくなんてないよ」
「ありがとうございます……そ、その、貴方?」
「私はカモメ……最近この街で冒険者になった者だよ」
「カモメ様……」
さ、様って……私は様付けされるような人間じゃないんだけどなぁ。
「あ、あの、カモメ様はもしかして……闇の魔女……では?」
「うぐっ……」
こんな子までその名前広まってるのかぁ……あんまり広まって欲しくないんだけどなぁ。
「えっと、うん……そうだよ?」
「やっぱり!カモメ様、私を……この国を助けてください!!!」
「……へ?」
私を助けてというのは分かるんだけど……現に変な奴に襲われてたし……でも、この国をって……どういうこと?
うーん、なんか雲行き怪しくなってきたかな……。すごく嫌な予感。
でも、彼女の必死な表情を見てしまうと、詳しい話を聞かずにさよならなんて出来ないよね……。
「とりあえず、場所を移動しよっか……まずは詳しい話を聞かせて」
「は、はい!」
そう言うと、私は灯りの魔法を頭上に放ち、クオンへ合図を送った。
これを送ればクオンはここにすぐ来てくれるだろう。
クオンが来たら、とりあえず、私たちの止まっている宿にこの子を連れて行こうかな。
私がそう考えていると、クオンはすぐにここに来てくれた。
「カモメ、見つかったのかい?」
「うん、さっきの奴と一戦交えたよ」
「え、どういうこと?……それに、その子は?」
「詳しいことはこれから、とりあえず、宿に戻ろう」
「……わかった」
クオンは私の言葉に同意してくれる。
何が何だか分からないだろうに、私の言葉を信じてくれるのだ。
クオンのこういうところはホント大好きだよ。
自分の事を本当に信頼してくれているのがわかるのだ……もちろん、反対の立場なら私もすぐにクオンの言うことに従うだろう。だって、クオンが意味のないことをするはずないもんね。
クオンの優しさに少しあったかい気持ちになりながら私は少女を連れて宿屋へと戻るのだった。
「違う!私の知っている冒険者は人を助けるために、そして人を護るために力を振るう人の事だよ!」
「絵空事を……」
「絵空事なんかじゃない、私のお父さんはそういう冒険者だった。そして私はその背中に憧れて冒険者になったんだよ……だから私は泣いている女の子を見捨てないし、アンタみたいに危ない人間を放っておくことも出来ない!」
「くだらないな……貴様の死ぬ理由はそれでいいのか?」
「残念、私は死なないよーだ!」
私が舌を出し、男を挑発すると、男はこちらへと向かってくる。
………速い!
男の繰り出したショートソードを私は新しく手に入れたバトーネで受け止める。
「……ほう」
「わっと、危ない危ない」
私が攻撃を受け止めたことが意外だったのか、男の動きが一瞬止まる……もちろん、私はそれを見逃したりしない。
新しいバトーネの威力、見せてあげるよ!
私は、風の魔法をバトーネに纏わせ、バトーネの周りに風の刃を展開させる。
そして、私の放った一撃は男のショートソードをいとも簡単に真っ二つにしたのだ。
「……うわ、すごっ」
想像以上の威力である。
魔導具屋のおじさん、最初の時はそんなにすごい魔導具は作れないと言っていたのに、こんなにもすごい魔導具を作ってくれるなんて……これなら、前のバトーネに引けを取らないよ。
「続けていくよ!」
私は纏わせた風を、撃ちだすように相手に放つ、その威力は大したもので、その弾丸を避けた男の後ろの壁を抉っていた。
「ちっ……」
「逃がさないよ!」
男の意識がこちらから外れ、自分の逃げ道を探す。
それに気づいた私は、すぐさま相手との距離を縮めた。
「出直す……だが、その娘は必ず殺す……必ずだ」
男は持っていた魔導具を自分の足元に投げつけると、その魔導具から黒い霧のようなものがあふれ出す。…くっ、それで姿を隠して逃げるつもりか……そのまま突っ込む?いや、駄目だ。もし、相手が私と入れ違いにこっちに出てくればあの子が危ない。
そう思った私は、その場で反転し、少女の近くへと駆け寄った。
そして、黒い霧が晴れると、そこには男の姿はなくなっていた。
「逃げ足だけは一流だね……」
「あ、あの……」
バトーネをしまいながら嘆息する私に、少女が話しかけてくる。
「ん?」
「その、ありがとうございます……」
「どういたしまして、それより、なんであんな奴に襲われてたのか聞いてもいい?」
「う……うう……うわあああああああ!」
命の危機が去ってか、私が普通に話しかけたからか、緊張の糸が切れてしまい少女はわんわんと泣き出した。
「……もう大丈夫だよ。」
私は少しでも少女が安心できるように優しく、その子を抱きしめてあげた。
しばらく私の腕の中で泣き続けていた少女が、だんだんと落ち着いてきた。
「大丈夫?」
「は、はい……みっともないところお見せしてしまい、申し訳ありません」
「ううん、怖い目にあったんだもん、みっともなくなんてないよ」
「ありがとうございます……そ、その、貴方?」
「私はカモメ……最近この街で冒険者になった者だよ」
「カモメ様……」
さ、様って……私は様付けされるような人間じゃないんだけどなぁ。
「あ、あの、カモメ様はもしかして……闇の魔女……では?」
「うぐっ……」
こんな子までその名前広まってるのかぁ……あんまり広まって欲しくないんだけどなぁ。
「えっと、うん……そうだよ?」
「やっぱり!カモメ様、私を……この国を助けてください!!!」
「……へ?」
私を助けてというのは分かるんだけど……現に変な奴に襲われてたし……でも、この国をって……どういうこと?
うーん、なんか雲行き怪しくなってきたかな……。すごく嫌な予感。
でも、彼女の必死な表情を見てしまうと、詳しい話を聞かずにさよならなんて出来ないよね……。
「とりあえず、場所を移動しよっか……まずは詳しい話を聞かせて」
「は、はい!」
そう言うと、私は灯りの魔法を頭上に放ち、クオンへ合図を送った。
これを送ればクオンはここにすぐ来てくれるだろう。
クオンが来たら、とりあえず、私たちの止まっている宿にこの子を連れて行こうかな。
私がそう考えていると、クオンはすぐにここに来てくれた。
「カモメ、見つかったのかい?」
「うん、さっきの奴と一戦交えたよ」
「え、どういうこと?……それに、その子は?」
「詳しいことはこれから、とりあえず、宿に戻ろう」
「……わかった」
クオンは私の言葉に同意してくれる。
何が何だか分からないだろうに、私の言葉を信じてくれるのだ。
クオンのこういうところはホント大好きだよ。
自分の事を本当に信頼してくれているのがわかるのだ……もちろん、反対の立場なら私もすぐにクオンの言うことに従うだろう。だって、クオンが意味のないことをするはずないもんね。
クオンの優しさに少しあったかい気持ちになりながら私は少女を連れて宿屋へと戻るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる