闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

文字の大きさ
311 / 412
2部 2章

訓練そして訓練

しおりを挟む
 私達はそれぞれの訓練を終えて、宿へと帰ってきていた。
 メリッサはよほど疲れていたのか、帰るなりベッドに突っ伏し寝てしまった。
 エリンシアはなんとなーく疲れたような顔をしている……まあ、私も遠目で見ていたけど、あれは色々ひどい……でもまあ、使えないわけでもないのでエリンシアも頭を抱えているのだろう。

 まあでも、私的には自爆さえしなければそこまで気にしないんだけどね……うん。


「それで、メリッサさんはどんな感じですの?」
「うーん、魔力量が少ないからまずは魔力量を増やさないとだね……でも、センスはありそうだよ?魔力の解放もすぐできたし」
「戦えそうですの?」
「それは本人次第かな……とりあえず、ランクDくらいの魔物ならすぐにでも倒せるようになると思うけどそれ以上となると本人がどこまで頑張れるか……って感じかな」
「そうですの……まあ、メリッサさんの気持ちは本物でしょうし、意外と強くなるかもしれませんわね」
「だね」


 メリッサのセンスは本当に良い。
 魔力の解放をするのでも普通は三日はかかるのだ。
 それを一日で操ることが出来るのだからメリッサは優秀だと言えるだろう。
 後は魔力量さえ上げてしまえば色々な魔法が使えるようになるはずだ。


「それで、二人は明日はどうするの?」
「ワタクシは明日はカモメさんたちに付き合うつもりですわ」
「俺は魔導具屋に行ってみようと思う」
「ん?何か欲しいものがあるの?」


 レンが魔導具屋に行くと言うのは意外だった。
 

「否定だ。俺は魔導具の作り方を学びたいと思っている」
「魔導具の作り方?」
「なんか嫌な予感がしますわね……どうして魔導具の作り方を知りたいんですの?」
「うむ、銃の弾丸のレパートリーを増やそうと思ってな」


 それを聞いた瞬間、エリンシアが頭を抱える。
 どうしたんだろう?つまりトリモチ以外の物を作るっていうことだよね。
 エリンシアの意見を聞いて作ろうと思ったってことじゃないのかな?


「うんうん、弾の種類が増えるのはいいんじゃないかな?」
「ま、まともなものを作ってくださいませ……ですわ……」
「肯定だ。俺はいつでもまともだ」


 その言葉を聞いた瞬間、私にも不安が襲い掛かる。
 それって、人前で自爆をしたり、武器を魔改造したりすることもまともだと言っているような気がするんだけど……なんだろう……すごく変な物を作ってきそうで怖い。


「ちょっとちょっと~、私には聞いてくれないの?」


 自分だけ仲間外れにされている気がしたのかローラが口を尖らせて言ってくる。


「ローラは私の近くにいるんでしょ?」
「むぅ……そうだけど~、な~んか仲間外れにされている気がして寂しいわよ~」


 いや、仲間と言う訳じゃないんだけどね……。
 まあ、いいや。


「はいはい、それじゃローラはどうするの?」
「もちろん、魔女ちゃんの近くにいるわ~♪ちゃんと護ってね♪」
「はいはい……」


 疲れるなぁ、この人。


「それじゃ、明日の予定も決まったし、そろそろ寝ようか」
「ですわね」


 私達は椅子から立ち上がると、自分たちの部屋へと帰っていった。

 そして、次の日からもメリッサの特訓は続く。
 次の日は前日と変わらず魔力量を上げることに集中する。
 一日中やっていた為か、少し魔力量が上がってきているようだ。
 まあ、その結果、その日も宿に帰るとメリッサはベッドに吸い込まれるように倒れたのだが……。


 だが、効果は出てきている。
 その次の日は簡単な魔法を教えてあげた。
 手の中で光をつくる光の魔法だ。

 多少集中力はいるが、なりたての魔導士が初めて覚える魔法である。
 それをメリッサはものの3回でマスターした。
 これには私も驚いた。センスがあるとは思っていたが魔法をこんなにも簡単に習得するなんて天才と言ってもいいんじゃないだろうか?

 私が褒めると「魔女様は何回くらいで出来たんですか?」と聞いてきた。
 ………ごめん、私は一回で出来てたよ……でも、普通は何十回も挑戦してやっと出来るんだよ!
 私が正直に言うと、メリッサは「凄いです!さすが魔女様です!」と目をキラキラさせてくれた。
 
 なんて素直な子なんだろう……でも、素直なことは良いことである。
 素直なだけあってメリッサは吸収力がある。一度聞いたことをしっかりと覚えるのだ。
 この日、メリッサは『灯りの魔法』と『爆発炎弾』の魔法を覚えた。

 まだ魔力量が低いため、爆発炎弾フレイムエクリスはそれ程の威力はないがそれでも使えることが嬉しいようで飛び跳ねながら喜んでいた。

 そして、次の日はまたも魔力量を上げる訓練である。
 この日はメリッサだけにやらせているのが申し訳なくなったので私も一緒に魔力解放をしていた。

 それが良かったのか、メリッサは私の魔力解放のやり方を隣で見ながら学んでいた。
 この日一日で、メリッサの魔力の流れは乱れが無くなり綺麗になっていた。
 そして、魔力量もかなり増えた気がする。


「すごいな……」


 私は素直に感嘆した。
 これなら明日はもう少し上の魔法を教えてもいいかもしれない。
 そう考えながら宿屋の部屋に帰ろうとする私がレンの部屋の前を通ると、不気味に笑うレンの声が聞こえてきた………何を作ってるんだろう……いや、聞かなかったことにしよう。

 私はそう思うと自分の部屋へと戻っていった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...