闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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2部 3章

一級魔導具

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炸裂炎弾バーストフレイム!」


 ディータの放った炎の魔法が、数百の兵士を焼き払う。


「とにかく、数を減らさないと……」


 ディータ一人でこの数の敵を足止めすることは不可能だろう。
 いや、もし彼らがディータを倒すためだけに来ているのであれば、それほど問題は無い……時間を掛ければ一万人の兵士すらディータは倒して見せるだろう。

 だが、彼らの狙いは近衛隊であり、村人なのだ……となれば、ディータを強敵と認識した時点で敵は最低限の数を残して、村人たちを追いかけるだろう。
 そうなる前に、出来るだけ数を減らさないと!



「消えなさい!電爆撃ライトニングブラスト!」


 雷が兵士たちに襲い掛かる……そして、兵士たちを黒焦げに……したかと思いきや、ディータの雷の魔法は障壁によって防がれてしまった。


「魔力障壁!?」


 敵にも魔法が使える者がいるのか……そう思ったディータだったが、どうやらそれは違うらしい。
 何名かの兵士が盾の形をした魔導具をディータの方へと向けていた。


「あの盾が私の魔法を防いだのかしら……ならっ!風弾ウィンディローア!」


 ディータの放った風の魔法が、再び、魔力障壁に阻まれる。

 ……やっぱり、あの盾が魔導具のようね。

 ディータが魔法を放ったと同時に兵士の持つ盾が光った。
 魔力を流すことで魔力障壁を発生させる魔導具の様である。


「面倒ね……それなら、これも防げるかしら?闇の刃オプスラミナ!」



 闇の刃が、盾を持った兵士達へと襲い掛かる。
 それを、再び、盾に魔力を流し防ごうとするが……闇の刃は魔力障壁ごと、兵士を斬り裂いたのだった。


「そんな、安っぽい魔力障壁で私の闇の魔法を防ごうなんて片腹痛いわよ……っと、風よ!!」


 ディータが勝ち誇っていると、背後から矢が向かってきた。
 それを慌てて風の魔法で弾き返す。



「ちっ……外したか」
「ドルボルア将軍!」
「この女は俺が相手をする……お前たちは村人と近衛隊を皆殺しにして来い!!」
「はっ!!」
「敵にまだ、剣を使う男がいるはずだ……いざとなったら『アレ』を使え……いいな?」
「あ、アレをですか……解りました……」


 アレと言うのが何かは分からないがこのままだと、まだかなりの数を残している兵士たちがクオン達を追いかけてしまう……ディータは焦る。
 いくら根暗坊主であってもあの数の兵士から村人をすべて護るのは無理だろう……敵の数はまだ9千はいるのだ。


「少しでも、減らさないと……オプスマ……きゃあ!?」
「おいおい、俺が相手をするって言ってんだ別の奴に浮気なんて許さんぞ?」
「五月蠅い!アンタみたいなヒゲ親父は趣味じゃないのよ!引っ込んでなさい!闇の刃オプスラミナ!」


 ドルボルアに向かって闇の刃を放つディータ。
 この一撃で、勝負は終わると思っていたディータがであったが……結果はそうはならなかった。


「なっ!?」


 敵の魔導具ですら易々と斬り裂いた闇の刃をドルボルアは弾き返した。


「どういうこと……?」
「ふん……年上には敬意を払うもんだぜ、お嬢ちゃん」


 それほどまで強いと思っていなかった相手が自分の闇の魔法を弾き返したのだ……。
 

「マズいわね……」


 こうしている間にも他のアンダールシア兵は移動を開始している。


「出し惜しみはしていられないわね!闇魔滅砲イビルスレイヤー!!」



 闇の魔法が、移動を開始した兵士達へと襲い掛かる。
 だが、それを……ドルボルアは兵士との間に割り込み防いでしまう。


「嘘でしょ!?」



 驚くディータに、ドルボルアは不敵に笑って返した。
 ディータは焦り始める……もしこのまま敵の兵士を逃がしてしまったら……だが、このままではどうやっても数を減らすことは出来ない……少しでもいい、何か敵の数を減らす方法を……。


「戦いの最中に考え事とはお嬢ちゃん余裕だな」
「なっ……風よ!!」


 宙を駆けて、ドルボルアがディータの目の前へと移動した。
 そして、持っている大剣を振りかぶり、ディータ目掛けて叩きつける。
 ディータはそれを風の魔法で防ぐが……ディータの風の魔法にドルボルアの大剣が振れた瞬間……大爆発が起きた。

 その衝撃でディータは弾き飛ばされ地上へと落ちるのであった。


「今の……なるほど……そう言うことね」


 その一撃を受けて、ディータが気づく。
 なぜ、あの程度の相手が自分の魔法を防ぎ、クオンのように空まで駆け、自分にダメージを与えてくるのか……簡単だ、あのドルボルア自体の力じゃない。


「その身に着けている武具……すべてが魔導具なのね」
「ほう、気づいたか……その通りよ……それもそんじょそこらの魔導具ではないぞ?どれも二つとない一級品よ!」


 自分の力じゃないものをよくもまあ、そこまでいばれるものだと感心しるディータ。
 だが、その魔導具のせいでディータが苦戦するほどにドルボルアは強かった……。


「……今のままじゃ数を減らすのは無理ね……なら」


 ディータの身体が再び、空へと飛びあがる。
 そして……。


「先ずは貴方を倒してからにするわ!闇の牢爆オプスマイン!!」
「ふっ、無駄だ!この鎧の魔法障壁を貴様のような小娘が砕けるものか!」


 ディータの魔法が再び防がれる。
 だが、ディータは諦めない……一度で駄目なら、何発でも!


闇魔滅砲イビルスレイヤー……闇魔滅砲イビルスレイヤー!……闇魔滅砲イビルスレイヤーっ!!!……闇の牢爆オプスマイン!!!」
「ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」


 連続で放たれる闇の魔法。
 魔力障壁によって防がれている闇の魔法に、次の闇の魔法が追いつく……そして、そのエネルギーが重なり、闇の魔法の威力が増していく。
 一つ、二つ……どんどん威力が増してく闇の魔法に、ドルボルアの魔導具である鎧にヒビが入り始めた。


「な、なにっ!?」
「ぶっ壊れなさい!!闇魔滅砲イビルスレイヤー!!」
「ぐっ……ぐおぉおおおおおお!?」


 ヒビが広がり、そして……ディータの魔法がドルボルアの魔導具の力を上回る。
 そして、魔力障壁と同時に、ドルボルアの鎧が砕け、闇の魔法がドルボルアに襲い掛かった。
 凄まじい轟音と、漆黒の光がドルボルアを包む。
 そして、まだ移動しきれていなかった森にいた兵士たちを飲み込みながらも闇の魔法が弾けるのだった。


「はぁ……はぁ……ざまぁっ……みなさい!」


 かなりの魔力を消費したため、肩で息をするディータ。


「近くにいた兵士が今のに巻き込まれたみたいね……それでも、ほとんどの兵士を逃がしてしまったわ……急いで追いかけないと……」


 クオン達に追いつく前に出来るだけ数を減らさなければならない……このまま、後ろから追撃をかければ上手くいけば犠牲を出さずに済むかもしれない……そう考えたディータは兵士たちを追いかけようとするが……ディータは背後から殺気を感じて、咄嗟に風の魔法を展開して身を護る。

 風の魔法に何かがぶつかる音がして、それと同時に爆発が起きる。


「嘘でしょ……なんで生きているのよ」
「糞が……あぶねぇ……とんでもない女だ……身代わりの魔導具がなけりゃ死んでいた」


 身代わりの魔導具……そんなものがあるのか……だが、身代わりと言っても完全にすべてのダメージを代わりに受けているわけではないようだ。ドルボルア自身もボロボロであった。


「そんな状態でまだやろうっての?」
「それはお嬢ちゃんもだろう……かなり息があがってるんじゃねぇか」


 ディータは舌打ちをする。
 ドルボルアの言う通り、先ほどの魔法連発で、魔力と精神力をかなり消費してしまっていた。
 もう、それ程魔法は使えないだろう。

 ディータは奥歯を噛むと、残りの兵士を追いかけることを諦めるしかなかった。


「根暗坊主……悪いわね、なんとかしてちょうだい」


 後の事はクオンに任せ、目の前の将軍を倒すことに集中するのであった。
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