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第一章
8話 善行ミッション完了
しおりを挟むこちら見るメイドに聖女が頭を撫でてやりなさいという。
そんな軽々しく頭を撫でていいものかと躊躇したが、今のところ聖女の言う通りにして悪い事にはなっていないので従ってみる。
「ふぇ!?……えっと、あの……」
「すまなかった、俺のせいであんな目に合わせてしまって」
「え、そ、そんな!?そんなことありません!」
聖女の言う通りに言ってみるとメイドは慌てたようにこちらを見返してくる。
「それにさっきも、お前の気持ちも考えず馬鹿なことを言ってすまなかった」
さっきというのは首をプレゼントの事だろう。馬鹿とは何だ馬鹿とは……俺は本気で言ったのに。
『本気だから馬鹿なのよ』
ええい、人の心を読むな!
「い、いえ、その驚きましたし、首はいらないですけど……私を怖がらせようとしたわけじゃないのはわかりました」
「そ、そんなわけないだろう!?」
『あ、こら勝手にしゃべるな!』
つい、自分の言葉でしゃべってしまい聖女には怒られたが、目の前のメイドは笑っていた。
む……今のは笑顔ではないのか!?
『アンタが変なことして笑われただけでああいうのは笑顔とは言わないのよ』
「むぅ……難しいな」
「なにがですか?」
しまった、口に出して言ってしまった。だが、聖女は冷静に次のセリフを用意してくれる。
「いや、心を入れ替えてね。皆に怖がれないようにしたいと思ったんだが難しいなと」
「あ……。」
さっき怖がって逃げたことを思い出したのだろう、罪悪感を滲ませる表情をメイドは見せた。
おいおい、逆効果じゃないのか?
「アリアも俺には無理だと思うか?」
「え!?そ、そんなことはありません!カイン様なら出来ると思います!」
「本当かな?」
「はい!私もカイン様は怖いと思っていました……でも、話をしてみてその……普通の方なのかなって。さっきもひどいことを言った先輩たちに優しい言葉をかけていましたし」
あれは、優しい言葉なのか?口説いていただけに思えたんだが。
『口説く時に有効なのは優しい言葉よ。ま、アンタみたいな乱暴者にはわからないでしょうけどね♪』
ぐむ……まあ、確かに俺は口より先に手が動くが……恋人もいないで幽霊になった聖女に言われたくない。
『ぶっ殺すわよ』
だから、心を読むな!なんでわかるのだ!
「あ、あの、私もこの国の誇りになれるでしょうか?」
「当たり前だ、お前は誰よりも先に俺を止めようとした。人々を護るために俺の前に立ちはだかって」
「……え?」
しまった、今のは未来の話だ。つい、思い出して……そうだ、このメイドは魔王化してこの国に戻った俺の前に立ち塞がり、泣きながら俺を止めようとしていた。
あの時、こいつは何と叫んでいたんだろう。魔王化した俺にはその声は届いていなかったが。きっと、最低な俺を罵っていたんだろうな。
『………また自分の世界に入ってるわよ』
いけない、何とかごまかさないとな。
『こう言いなさい』
「アリア、お前はすでに俺の誇りだし、頼れる専属メイドだよ」
「え?いえ……私は何をやっても上手くできなくて」
「そんなことは無いよ、他の者がやらない俺の世話をしていただろう?」
「えっと……特に何もしてません」
「していたよ、さっき大きな音を立ててしまったとき心配して部屋に来てくれたじゃないか」
そういえば、子供の体に戻って感覚が掴めず転んだ時、このメイドはすぐに駆け付けた。あれは俺を心配してきたのか?
「そ、そんな!それくらいは当然のことで……」
「人を心配してあげれる……それは当然の事じゃないよ」
「うう、カイン様喋り方が……なんか王子様みたいです」
いや、まごうことなく王子なのだが……今までの俺は王子っぽくなかったと?というか王子はこういう気障な喋り方をするというのか……。
「少しでも人に怖がれない為に努力しようと思ってね」
喋り方ひとつでこうも違うのか……というか、このメイド自分が褒められるのが恥ずかしくて話題逸らしてないか?
「それで、優しいアリアにお願いがあるんだ」
「ふぇ!?」
あ、強引に戻した……やるな、聖女。
「俺はこれからも怖がられないように努力をしていくつもりだ。だが、至らない点も多いとおもう。だから、アリアには専属メイドとして俺を支えて欲しい」
「わ、私に出来るでしょうか!?」
「ああ、アリアだからお願いしたいんだ。俺も出来ないことばかりだけど、一緒に出来ることを増やしていこう」
「は、はい!」
聖女の言葉にメイド……アリアは満面の笑みで答えてくれた。
その笑顔に俺は戸惑いながらも少しだけ希望を見た気がしたのだった。
――――――――――――そして、アリアの笑顔に見惚れていた俺は
善行ミッション
『アリアの笑顔』完了
と書かれた表示に気づいていなかった。
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