破滅の魔王は逆行した世界で幽霊聖女に憑りつかれる!

遙かなた

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第一章

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 「顔を上げてくれ」

「殿下…お許しを…………え?」


 俺の顔を見たメイドは驚きの表情を作り、涙が止まる。


「俺を悪魔と呼んだことを咎めているんじゃないよ。でも、自分の仲間を生贄だとか役立たずなんて言ってはいけない」


 俺を悪魔と言ったことも咎めて欲しいのだが……いや、まあいい。
 しかし、何が言いたいんだこの幽霊聖女は。


「君たちはこの国の誇り高きメイドじゃないか」

「え?」

「君たちがいるからこの城は綺麗に保たれている。君たちがいるから俺ら王族は責務を全う出来るんだ」


 なるほど、確かにこの城はいつも綺麗だ。俺が破壊するまではずっと綺麗に保たれていた。
 メイドたちが掃除を懸命にやってくれていたからだ。
 それはそうなんだが、だから何を言いたいんだこの素っ頓狂幽霊は!……いや、口に出しているのは俺だが!


「だからプライドを持ってくれ、この国を、この城を支えるメイドなのだと。そして俺の誇りだと思える行動をとって欲しい。仲間を蔑む行動をとって欲しくないんだ」

「……?……?」


 ほら見ろ、言われているメイドも何が何だかわからないと言う顔をしているじゃないか。
 いや、だが、俺を怯えた目で見ないようにはなったような?代わりに変な人を見ている様な目になったが。


「わ、私たちが殿下の誇り……なのですか?」

「当然。君たちも……この国のすべてが俺の誇りさ」


 自分で言ってて鳥肌がたってきたんだが……なんだこの……寒い台詞は。


「だから、君たちも誇りに思ってくれこの国のメイドであることを、それに俺の誇りであることを」

「~~~っ!」


 先ほどまでないて地に付していたメイドが頬を赤らめる。


『アンタ、顔はいいからね~、美少年が優しく笑いかければ女の子ならきゅんとするわよね』

「わ、私が貴方様の誇りになれるでしょうか」

「もちろん、期待しているよ」

「は、はい!!」

「君たちもお願いね!」

「は、はいいいい!!」


 後ろの二人のメイドに聖女がウインクしろというのでしてみた。た、確かに怖がれはしなかったがこれではナンパ男ではないだろうか……。いや、だが悪魔と怖がれるよりはいいのか……しかし、この聖女。なんでこんなセリフがポンポン出てくるのか……もしかして普段は猫被っていたのだろうか?

 先ほどまで自分と話していた聖女とはイメージが違い過ぎるしな……ありえる。


『なに人の顔をじろじろ見てんのよ、それよりまだ本命が残ってるわよ!後ろを向きなさい!』


 そう言われて思い出す。そうだ善行ミッションの対象は後ろにいるメイドだ。先ほどの三人のメイドは笑顔……笑顔かなアレ?いや、まあ笑顔っぽく出来たが。後ろのメイドを笑顔にしなければ意味がない。

 そう思って後ろを振り返るとぽかんと口を開けて地面に座り込みこちらを見上げているメイドがいた。


『手を差し伸べて大丈夫?って聞きなさい』


 言われたとおりにすると、メイドは恐る恐る手を出して握り立ち上がった。
 俺の手を握った人間など婚約者以外では初めてではないだろうか?


「あ、あの……ありがとうございました」


 顔を伏せながら言うメイド、今度は逃げようとはしないらしい。……なぜだ?


『助けられたこと、さっきのメイド三人を殺さなかったこと、なぜ自分を助けたのかという疑問。これらのおかげね』


 また、人の心を読んだかのように答えが返ってくる。なるほど、自分を助けたことへの驚きと悪魔と呼んだ相手を殺さなかったことでの安心と助けたことに対する好奇心というわけだな。
 こんな簡単なことで恐怖というのは無くなるのだろうか?


『無くなるわけないでしょう?とういか、貴方相手に限らず人間誰が相手でも多少の恐怖は持っているものよ』


 む、そういうものなのか。恐怖よりも他の感情が上回ることで恐怖を乗り越えたというのか……すごいな。俺は未だに自分が魔王にまたなってしまうんじゃないかという恐怖が心を蠢いているというのに。


『アンタだって前に進んでるじゃない。この子と一緒よ』


 一緒……一緒なのか?


『そうよ、あんただって普通の人間なんだから』


 俺が……普通?


『とーぜん!』


 そ、そうか……普通と言われて喜ぶのはおかしいのかもしれないが、この聖女に言われるとなんだか本当に自分が普通になったような気分になる。少し、心が温かくなった……この感じ、あの幼い婚約者の笑顔を見たときと同じような感じだな。


『ほーら、物思いにふけってないでアリアちゃんが困った顔になってるじゃない!』


 そうであった、今はこちらに集中しないと。俺は再びメイドに目をやると、メイドは俺の言葉を待っているかのようにこちらをじっと見ていたのだった。



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