破滅の魔王は逆行した世界で幽霊聖女に憑りつかれる!

遙かなた

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第一章

6話 猫かぶり

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 部屋を出た俺は廊下を走り、メイドを探す。

 廊下を少し進んだところにメイドはいた。


『あら、案外近くにいたわね。馬鹿魔王のせいでもっと遠くに逃げちゃったかと思ったけど』

「やかましい!……ん?」


 近づいてみるとそこに居るのはメイド一人ではないようだ。他にもメイドが三人、俺の専属メイドを取り囲むように立っている。


「アリア、アンタまた逃げて来たの!?」

「アンタの価値なんてあの悪魔を見張ることくらいしかないんだからちゃんとしてよね!」

『うわちゃぁ……』


 聖女が額に手を当てて天を仰ぐ。
 このころから周りに悪魔と呼ばれていたのは知っていたのでそこまでショックを受けたりはしないのだが……いや、嘘だ。結構ヘコむ。


「す、すみません……」

「逃げ出したりして、役立たずのアンタなんて生贄くらいしかやることないんだからちゃんとしなさいよ!」

「そうよそうよ!これであの悪魔が暴れたりしたらどうするのよ!」


 どうやら、俺の部屋から逃げ出したことであのメイドは立場を悪くしているらしい。


『それだけじゃないでしょ、あれは普段から嫌がらせをされてるんじゃない?』

「貴様、俺の心が読めるのか?」


 今回は口に出していない筈なのにまるでこちらの心を見透かしたように答えてくる聖女に俺は問いかけた。


『そんな訳ないでしょ、アンタ解りやすいのよ』

「むぐ」

 そんなにわかりやすいのか俺は……。


『で、どうするの?』

「………」

『止めたいのね、意外とお人好しじゃない』

「な、何も言ってないだろ!?」


 本当にわかりやすいらしい……ぐむむ。


『止めるなら早く行きなさいよ』

「だが、どう止めたらいい?」

『しょーがないわね、先ずはアリアって子の前に立ちなさい』


 あの専属メイドの前にというと、庇うような形で立てという事か。

 俺は聖女の言う通りに行動をする。


「ひっ!」


 突然、俺が目の前に立つことで攻め立てていたメイドたちは一斉に小さな悲鳴を上げる。
 いや、後ろの専属メイドも悲鳴を上げたような……まあ、いいか。


「で、殿下。このようなところにどうされたのですか?」


 恐らくこの三人の中でリーダー格なのだろうメイドが問うてくる。


「ここは城です。私がいるのがおかしいのですか?」

『馬鹿!一人称くらい変えなさいよ!!!』


 聖女が言う事をそのまま真似たのだが怒られた。
 何を言えばいいかわからない上に、人とまともに喋るのも久しぶりだぞ!テンパってそんなことまで気が回るか!!


『まったく、私の方が変えるわよ!こう続けなさい』

「いや、俺がいるのがおかしいかな?」

「い、いえ、それは……ですが、殿下はあまり部屋をお出にならなかったので」


 メイドは恐怖から俺と目を合わせようとしない。


「それで、先ほどは面白いことを言っていたね」

「……っ」


 メイドが息を飲む。俺のことを悪魔と言ってしまったことを思い出したのだろう。


「で、殿下……それは、その……っひぐ」


 泣き出してしまった。本当にこれでいいのか聖女!?
 いや、善行ミッションは俺の後ろにいるメイドを笑顔にさせることだ、虐めていたこいつらを殺せば喜んでくれるのでは?


『そんなことはしないわよ、余計なことをしないでさっきやった笑顔を作りなさい。ここからが大事なんだから!』


 すり抜ける手で俺の頭を叩きながら聖女は言う。笑顔を作るために婚約者の子供の頃の顔を思い出した。
 そのおかげか、今までよりさらに自然な笑顔でメイドに言葉をつづけた。


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