破滅の魔王は逆行した世界で幽霊聖女に憑りつかれる!

遙かなた

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第一章

4話 笑顔って難しい

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 女神と聖女に課せられた善行ミッションを遂行するために俺は専属メイドであるアリアを呼び出す。

 近くにあるベルを鳴らすと控えめのノックが俺の部屋に響いた。

「入れ」

『さぁ、最初のミッションかるーくクリアしちゃいましょ♪』


 お気楽なものである。
 人を笑顔にする、それがどれだけ大変なことか……このアホ聖女には解らないのだろう。


「カ、カイン様、お呼びでしょうか?」


 メイドのアリアが恐る恐る部屋の中へ入ってくる。


「ああ、貴様はよく働いているからな。褒美をやろうと思った」

『アンタ、もう少し愛想よくしなさいよ』


 うるさい聖女め、チャチャを入れるな。


「え、えっと、その……」

「だから殺したい人間を言え、貴様にその首を届けよう」

「ひぃ!」

『……は?』

「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」


 メイドは見る見るうちに青ざめ、目に涙を浮かべながら逃げ去った。
 ―――――――――――やっぱり駄目ではないか。


『アンタねぇ……』


 横見ると聖女がまるでとんでもない馬鹿を見る様な顔をしている。


「見て見ろ、俺が人を笑顔にするなど無理なのだ。プレゼントをすると言ったのに怯えて逃げられたではないか」

『まさかアンタ、今ので喜んでもらえると思ったの?』

「当たり前だ」

『アンタ本当に脳みそヨーグルトで出来てるんじゃない?』


 ふざけた言葉を向ける聖女に言い返そうと思ったが、聖女はまるで可哀そうな生物を見るかのような憐れんだ顔で俺のことを見ていた。


「どういう意味だ?」

『プレゼントに人の首ってそんなもの誰が欲しがるのよ?』

「何を言っている、俺に頼みごとをしてくる友人は大体、誰かを殺してくれと頼んできたぞ」

『はあ……』


 盛大な溜息を吐いた後、再びこちらを見た聖女はさっきまでと違い真面目な顔をしていた。


『そんなことを頼んでくるのは友人じゃないわよ』

「な、何!だが、俺の数少ない友人だぞ!」

『…………』


 なにかを考えた後、聖女はこちらを見据えて口を開く。その優しい表情に俺は見惚れてしまった。


『貴方、もし誰かが貴方に首をプレゼントしてきたら嬉しいの?』

「は?誰がそんなものを欲しがるか!」

『なら、どんな時に人の首が欲しい?』


 だから、首など欲しがるわけがない。それに、俺に殺せない相手など……。
 そこまで考えて俺は気づく。


「殺したいけど殺せない相手」

『そうね、そしてそんな相手がいる人間の前に誰でも簡単に殺せてしまう力を持った人がいたら?』


 利用する……。利用して殺してもらう。


「ハハ……そうか、アイツらは最初から友人ではなかったのか」


 俺のことを友と呼んだ人間、そいつらも俺を裏切った。俺を悪魔と呼び俺を世界の敵と呼んだ。
 だが、きっと俺が何かをしてしまったのだと……俺があいつらの期待に応えられなかったのだと思っていた。
 ――――――――――違ったのだな。


「では、どうしたらいい?俺は人の喜ばせ方など知らん。あの方法が唯一だ。」

『アンタ、自分から人を笑わせたことは無いって言ったけどひとつくらいはあるはずよ』

「そんなこと……」


 あるはずがない、そう言おうとした時、記憶に笑顔の少女の顔が映る。


「そうだ……」

『お、なんかあるのね!』

「ああ、子供の頃……といっても6歳の今だと数か月前のことだが一人の女の子を笑顔にさせた覚えがある」

『……っ!』


 そうだ、あれは……


「俺の婚約者になる女性だ」

『……』


 6歳の今には婚約者はいないが13歳になった頃一人の女が俺の婚約者となった。
 この国の唯一の王子である俺はいずれこの国の王となる。
 それには優秀な王妃が必要という事で用意されたのがその女だった。

「婚約者の女とは6歳の頃一度会っていたのだ」

『ふーん、それでその子をどうやって笑顔にしたのよ』


 婚約者という言葉を聞いた瞬間、無表情になった聖女はあまり興味なさそうに聴いてきた。
 そういえば、聖女に伴侶がいたとは聞いたことがないな。婚約者のいる俺に嫉妬でもしたのか器の小さい奴め。
 まあ、とはいえ。
 婚約者にも世界の敵と罵られたのだ。威張れたものでもないのだがな。
 それに……

「……忘れた」

『はあ?』

「どうやって笑顔にしたか忘れた」

『それじゃ意味ないでしょうが!!!』


 ぐむ……悔しいが聖女の言うとおりである。しかし、思い出せん。6歳の時の記憶だから仕方ないのかもしれんがあの時の少女の笑顔は今でも脳裏に焼き付いている。だというのに、思い出せんとは……。


『はあ……それなら私の言う通りにしなさい!』

「なに?」

『本来ならアンタ自信が考えてやらないと意味が無いのだけれど……これじゃ永遠にクリア出来ないわ!それでは困るの!』


 ……なぜ貴様が困るのだと、言い返そうとしたがよく考えれば魔王化を止めねば聖女どころか世界中の人間が困るのだから当たり前かと思い直し口を噤んだ。


『アンタには聖女式の人との接し方を教えてあげるわ!』


 俺に指をさし無い胸を前に押し出した聖女は、得意げな顔で言い放ったのだった。
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