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なんでもない
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春の木漏れ日が心地よい昼下がり、少女は何の当てもなくアスファルトの道路を散歩していた。ボーッとしてると歩いていても、眠気に襲われてしまう。少女は意識をしっかり繋ぎながら一歩一歩地面に足の裏を引きつける。だが、やはり眠たい為か視線は自然と下を向く。
しばらく視線を落としながら歩いていると少女は花を見つけた、小さな小さなタンポポの花だ。まだ黄色い、若々しい色をしたその花が道の端にポツンと咲いていたのだ。
「可愛いなぁ」
少女は流れるようにその小さな花に手をやり、ソレを摘もうとする。まるで、虫の命を摘み取る純新無垢で残虐性を知らない少女のように。だが、その行為の一歩手前で少女は花から手を引く事ができた。
猫がいたのだ。それは年老いたミケ猫。足音もさせずにその猫は少女のそばに近寄っていた。猫はじっと彼女を見据えていた。
「その花を摘んでしまうのかい?」
彼女には猫がそう言っているように思えた。
「ううん。こんなに可愛い花だもの。摘んでしまうのはもったいないわ。」
彼女は猫に言った。猫の頭を撫でる。心地良さそうに、そしてもっと頭を撫でてくれと言わんばかりに頭を少女の手に押し付けていた。
しばらくすると、彼女は
「ミケ猫のオスって確かとっても価値が高くて、高値で取引されるんだよねぇ。」
いつの間にかそんな事を呟いていた。金に眩んだ人間の狭間を感じとったのか猫は少女の手から離れてしまった。
「あ!待って!」
猫はもう遠くに行ってしまっている。だが1度、1度だけ猫はこちらを見た。あの年老いた猫にとってはただの気まぐれだったにすぎなかったのだろうが、少女は猫が別れの挨拶をするために振り向いたのだと考えて他ならなかった。
「また会えたら良いな。」
少女は猫の歩いていった道と反対側方向に再び、歩を進めてていった。
いまだ黄色い花の姿はそこに、しっかりとあったのだった。
しばらく視線を落としながら歩いていると少女は花を見つけた、小さな小さなタンポポの花だ。まだ黄色い、若々しい色をしたその花が道の端にポツンと咲いていたのだ。
「可愛いなぁ」
少女は流れるようにその小さな花に手をやり、ソレを摘もうとする。まるで、虫の命を摘み取る純新無垢で残虐性を知らない少女のように。だが、その行為の一歩手前で少女は花から手を引く事ができた。
猫がいたのだ。それは年老いたミケ猫。足音もさせずにその猫は少女のそばに近寄っていた。猫はじっと彼女を見据えていた。
「その花を摘んでしまうのかい?」
彼女には猫がそう言っているように思えた。
「ううん。こんなに可愛い花だもの。摘んでしまうのはもったいないわ。」
彼女は猫に言った。猫の頭を撫でる。心地良さそうに、そしてもっと頭を撫でてくれと言わんばかりに頭を少女の手に押し付けていた。
しばらくすると、彼女は
「ミケ猫のオスって確かとっても価値が高くて、高値で取引されるんだよねぇ。」
いつの間にかそんな事を呟いていた。金に眩んだ人間の狭間を感じとったのか猫は少女の手から離れてしまった。
「あ!待って!」
猫はもう遠くに行ってしまっている。だが1度、1度だけ猫はこちらを見た。あの年老いた猫にとってはただの気まぐれだったにすぎなかったのだろうが、少女は猫が別れの挨拶をするために振り向いたのだと考えて他ならなかった。
「また会えたら良いな。」
少女は猫の歩いていった道と反対側方向に再び、歩を進めてていった。
いまだ黄色い花の姿はそこに、しっかりとあったのだった。
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