なんでもない

ぷくぷくうさぎ

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 しばらくまた歩いていると、駄菓子屋が見えた。最近はスーパーなどがどこの町にもあるようになったため、駄菓子屋はめっきり見なくなっていた。少女の町も例外ではない。少女が4、5才の時には駄菓子屋も4店ほどあった気がする。だか、もうこの少女の住む町にはこの駄菓子屋しか残っていなかった。
「懐かしいなぁ。昔はよく行ってたっけ。」
少女は何となく駄菓子屋の前で止まった。入口の横には、大きな文字でサイダーと書かれ、その文字のバックには白い帽子をかぶった女性が描かれている色の褪せたポスターが貼ってあった。周りを見渡してもどこか懐かしいような、ここだけ時間が昭和に戻った、いや時間がここだけ止まったようなそんな気持ちに少女をしてしまう。もちろん少女は少女であるのだから、昭和の日本を知らない。この駄菓子屋は少女に歴史の一端をみせていたのだ。
 少女はいつの間にか店の中に入っていた。沢山の駄菓子が棚の中には並べられてた。もちろん駄菓子だけではない。水鉄砲だとか風船だとか言うおもちゃもあるし、少ないが文房具もあったりする。少女がまず手に取ったのはアタリ、ハズレが描いてある紙の入っている赤い包みのガムであった。確かイチゴ味だった気がする。
「あたりが出た時は皆で喜んでたよなぁ。」
この駄菓子屋にいると色んな記憶がフラッシュバックしてくる。友達と駄菓子をいかにして沢山買うかの会議だとか、ラムネを買ってビター玉を総力をあげて取り出していたこととか。 少女は懐かしさに浸りながらも狭い店内を歩いていた。その時お婆さんが奥の部屋から出てきた。駄菓子屋を昔から切り盛りしてきたお婆さんだ、確かに記憶にある。
「こんにちわ、お婆さん。」
きっとこのお婆さんの記憶には少女の事は残っていないだろう。当たり前だ。少女がこの駄菓子屋に来ていたのは幾数年も前の話だし、その間に何人もの子供がここに足を運んでいるだろうから。
「こんにちわ…あらお嬢ちゃん、ひょっとして昔よくここに来ては必ずコーラのラムネを買っていってお兄ちゃんと仲良く分け合って子かい?」
驚いた。駄菓子屋のお婆さんは、少女の事を確かにおぼえていたのだ。
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