なんでもない

ぷくぷくうさぎ

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なんでもない3

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 「久しぶりねぇ。元気にしてた?」
駄菓子屋のお婆さんはゆったりした口調で少女に問う。少女は動揺した。それもそうである、少女が駄菓子屋に最後に来たのは今から何年も前の話で少女はお婆さんが自分の事を覚えてると思ってなかったし、少女が兄とよく駄菓子屋にきてた事なんてさらに覚えてないものだと思っていたのだ。
 「わ、私の事覚えているのですか?」
少女は動揺を隠しきれず目を大きく見開いてお婆さんに尋ねた。お婆さんは微笑みながら優しく言った。
 「当たり前じゃない。お店に来てくれた子達の顔は絶対に忘れるもんですか。」
お婆さんはお店の棚を片付けるためか少女のほうに下りてきた。少女よりも一回り小さい腰の曲がったお婆さんが少女の前に立つ。目を大きく見開いて少女を見た。
 「お嬢ちゃん何かあったの?悩んでいるように見えるわ。」
少女は困惑した。
 (私が悩む?私が?何を?)
お婆さんの考えが理解できなかった。少女が困惑してるとそれを、悟ったのかお婆さんは優しく微笑む。
 「ふふ、だってお嬢ちゃん懐かしそうに駄菓子を眺めては眉間に皺をよせてるんだもの。これはきっと何かあるに違いないって。ふふふ。」
驚いた。少女自身、眉間に皺を寄せていたなどと気づきもしなかった。もしかしたら、猫に会った時もいつの間にか皺寄せてしまってたのかもしれない。少女は自分の悩み事について真剣に考えてみた。だが、思いあたる節は少女にはなかった。悩んでいる事といえば明日学校でやる小テストの事だったりとかそんな他愛のないものばかりであった。眉間に皺を寄せるほどの悩みでない。
 「なんででしょうかね、私にも思い当たる節はないんですけど。」
少女はそう言うと自分の眉間に指を当てグリグリと押して見せた。
 「じゃあもしかしたら、お嬢ちゃんの気づかない内に大きな壁にあたってるのかもしれないわね。でも大丈夫。お嬢ちゃんならきっと上手くやれるわ。」
お婆さんは優しく微笑みながら少女に言った。
 「ありがとう、お婆さん。」
少女は微笑み返し、コーラのラムネを買って駄菓子屋をあとにした。
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