大統領は風俗嬢（全37話）

第2章

第24話 利子ちゃんがスカウト？

　そんな状況で、私たちが働く店でも変化が起きないわけがなく、主に入ったばかりの子らが社会保障とか雇用保険とか言い出した。
 
　正直、1日で来なくなっちゃう子や、面接して結局来ない子がいっぱいいるのに、そんなの意味あんの？　と学のない私は思っちゃったけど、そこは法律の専門家の利子ちゃんがいるからね。私の出番とばかりに張り切りだしたよ。

　ま、どちらかの肩を持つわけじゃなく、ちゃんと法律に基づいて話を進めるから、お互いに冷静に話し合うことができるのでよかったのかな。

 　女の子のほうは、まず雇用保険が6月働かないと出ないことや、保険料が給料から差し引かれることも知らなかったらしい。正直、私も知らなかった。
　それに、雇用関係とかも関係してくるとか、労働時間とかも関係してくるとか。ひゃー、面倒くさい。

　こんな仕事のわりに人のいい店長は、条件がいいほうがいい子が入店する、という利子ちゃんの口車に乗せられ、労働条件改善の提案をすべて受け入れてしまった。

　まあ、法律関係のことは利子ちゃんに丸投げでいいから、お店はお金を払うだけってことで、お金に困ってない店長はべつにどっちでもいいって感じで承知したんだけど。

　条件が揃うと、利子ちゃんの言うとおりいい子が入ってきて、お店は前よりも潤うようになり、利子ちゃんは現役（？）を引退し、お店の事務の仕事専門になった。弁護士にも顧問になってもらい、面倒くさい事務処理、トラブル処理のほうはおまかせで店に集中できて、店長は嬉しいらしい。私？　私はまあ、変わらず、フフ。

　そんな感じでお店も新しい体制に慣れてきた頃、予期しない訪問客がやってきた。


　なんと、例の議員と美人秘書、それに党首まで一緒だ。3人とも美人なので目立つ。中にはキャストと間違えて、指名しようとする客もいたくらい。

　訪問の目的は、この店を夜の街の営業店のモデルケースとしてアピールしたいというのと、利子ちゃんに次の選挙に出馬してほしいというものだった。すごい話だけど、確かに利子ちゃんの経歴は十分話題になるし、顔もスタイルもいいから民衆受けはするだろうね。やっぱ、目の付け所がいいんだね。