27 / 44
合格通知(実技)
「「「エヴァ、おめでとう!」」」
「お義父様、お義母様、フィン兄さん、ありがとう!!」
家族の夕食の席で、私は盛大にお祝いしてもらった──もちろん、私の実技試験合格のお祝いだ。
私は実技試験で、今までの特訓の成果をぶつけるように思いっきり魔術を放った。
試験ではなぜか動く的に魔術を当てることになった。普段は動かない的に当てるものらしいけれど、私はフレデリカ様の弟子だから特別だって──そんな特別はいらないんですけどね!
でも特訓の甲斐あってか、ほとんどの的に魔術を当てることができた。
私が放った魔術は全て基礎魔術だったのだけれど、魔力を練る速度や魔術を放つ瞬発力、そして放った魔術の威力や連発した時の安定性など、さまざまなことを評価してもらえた。
ブレイザー魔術師団長からは「さすがフレデリカ様のお弟子さんですね。非常に実践的に仕上がってますね」と、アルブレヒト副団長からは「四大魔術の切り替えも、スムーズで素晴らしい」とお褒めいただき、その場で実技試験の合格を申し渡された。
……やっぱりというか、「確認」という名の「王宮魔術師団への勧誘」をしつこく……いや、かな~りしっかり受けたけれど、そこは「私は特殊魔術研究所を希望します」とキッパリ笑顔でお断りをしておいた。
「今日のエヴァは凄かったよ! 動く的にバンバン魔術を当てていってね、本当に格好良かったんだ!」
フィン兄さんが興奮気味に私のことを褒めてくれた。
フィン兄さんは試験中はずっと、二階の廊下の最前列で私のことを見守っていてくれたのだ。
「フィン兄さんったら、そんなことないわよ……」
私は嬉しかったけれど、なんだか照れ臭くて謙遜した。
「僕の同僚や先輩も褒めていたよ! あんな凄い子が新人として入ってきたら、自分たちの立場が危ないよなって!」
フィン兄さんがさらに捲し立てあげる。
「ふふっ。でも、そんなに評価してもらえたなら嬉しいわ」
私はフィン兄さんの勢いに根負けして、相槌を打った。
「フレデリカにはもう報告はしたの?」
「はい! 試験後すぐに連絡しました!」
お義母様から訊かれて、私は大きく頷いた。
フレデリカ様には、試験後すぐにクロに頼んで合格した旨の手紙を運んでもらっている。
また後ほど直接お会いして、改めて報告とお礼もするつもりだ。
あとは、非常にお世話になったマダム・アンタレスにも連絡している。
マダムからは早速、簡単なお祝いの手紙もいただいた。
「そういえば、エヴァは今年で十六歳になるのだったかな? デビュタントも考えないとだな」
不意に、お義父様が口ずさんだ。
そうだった!
ここ数ヶ月は婚約解消に始まり、ダルトン家からの追放、それからハートネット家の養子になり、魔術の勉強を再開したり、特殊魔術研究所の入塔試験を受験したりと、あまりにも目まぐるしく変化が起こりすぎて、すっかり忘れてたわ!
ドラゴニア王国では、十六歳からが成人だ。
十六歳になった貴族の未婚の子女が、正式に社交界にデビューするのがデビュタントだ。デビューする女性自身を指したりもする。
「まぁ! 大変だわ! 今からドレスを注文して間に合うかしら?」
お義母様が頬に手を添えて、不安そうに話された。
普通の貴族家であれば、たいていはデビュタントの数年前からもう準備を進めているものだ。
でも、私は急遽ハートネット家の養子になったのだ──間に合わなくても仕方がないと思う。
ダルトン子爵家?
もちろん、そんな余裕は無かったわ。自転車操業でどうにか回してた家なのよ?
デビュタントなんて、はじめから間に合わせでどうにか誤魔化すつもりだったわ。
そもそも、あんな状況でまともに社交界デビューできるとも思っていなかったし。
「えっと、それなら無理せず来年以降にしていただければ……」
私は申し訳なくて、そう口にした。
私がハートネット家に転がり込んで来たから、この家にとって余計な負担になってしまっていることがとても心苦しかった。
「いえ、今年にしましょう。ハリー・ダルトンに見せつけてやるのよ。ロッドフォード家にもね」
お義母様がキリッとした表情で宣言された。
確かに、義妹のミアも私と同じ歳だから、彼らが次のデビュタントに出て来る可能性は高い。ミアの婚約者はアラン様だから、エスコート役としておそらく彼も出席するとは思う。
でも、何もそんな争うように参加しなくても……
「そ、それに招待状は……」
私はそもそものことを確認した。
いくら私が参加したいと言っても、王宮から招待状が届かなければ参加することは不可能だ。
「オホホッ。ハートネット家を何だと思っているの? 歴代国王陛下や妃殿下方の教育係を務めてきたのよ。もちろん、今の王子殿下や王女殿下もね。……王宮からの招待状の一枚や二枚を融通していただくことなんて、造作もないわ」
お義母様が得意げに高笑いをされた。
職権濫用というか、正しくコネを活用されている……
「エヴァ、私たちに甘えてくれていいんだよ。今まではあの家で一人で何でもやってきて、大変だっただろう? でも今は君には私たちがついているんだよ。私たちに、せっかくできた義娘のために何かさせてもらえないかな?」
「お義父様……」
お義父様の温かい言葉に、私はハッとなった。
私はダルトン家で、一人で戦ってきた。
父は頼りにならないどころか、家が傾く元凶だった。義母のシエンナや義妹のミアもそう。
元婚約者のアラン様も、ダルトン家の経済状況を知られてしまえば、婚約破棄の原因になるだろうし、そこからさらに新たに婿にきてくれる人を探すのは難しいと考えていたから、一切頼らなかった。
使用人もどんどん辞めさせられて、入れ替わるように義母シエンナの息がかかった人材しかあの家には集まらなくなった。
──とにかく「ダルトン子爵家を存続させること」だけが当時の私の心の拠りどころだった。
大好きだった祖父に残してもらった「ダルトン子爵家」を、私がきちんと引き継いで、次代に繋げること。それまでに家の状態を立て直すこと──私はそんなことばかりを考えていた。
結局、途中で私の方が放り出されてしまったけれど……
放り出されて、私は母の実家のハートネット家に拾われた。
あの家の人たちとは違って、ハートネット家のみんなは私をあたたかく迎え入れてくれた。
──確かに、私はもう一人で戦わなくていいのかもしれない。
「……それなら、お言葉に甘えてお願いします。でも、どうしてもドレスの手配が難しそうなら、無理せず来年にしましょう?」
私は胸のあたりがほこほこと温かくなるのを感じながら、自分の気持ちを伝えた。
お義父様もお義母様もにっこり微笑んで頷いてくださった。
「お義父様、お義母様、フィン兄さん、ありがとう!!」
家族の夕食の席で、私は盛大にお祝いしてもらった──もちろん、私の実技試験合格のお祝いだ。
私は実技試験で、今までの特訓の成果をぶつけるように思いっきり魔術を放った。
試験ではなぜか動く的に魔術を当てることになった。普段は動かない的に当てるものらしいけれど、私はフレデリカ様の弟子だから特別だって──そんな特別はいらないんですけどね!
でも特訓の甲斐あってか、ほとんどの的に魔術を当てることができた。
私が放った魔術は全て基礎魔術だったのだけれど、魔力を練る速度や魔術を放つ瞬発力、そして放った魔術の威力や連発した時の安定性など、さまざまなことを評価してもらえた。
ブレイザー魔術師団長からは「さすがフレデリカ様のお弟子さんですね。非常に実践的に仕上がってますね」と、アルブレヒト副団長からは「四大魔術の切り替えも、スムーズで素晴らしい」とお褒めいただき、その場で実技試験の合格を申し渡された。
……やっぱりというか、「確認」という名の「王宮魔術師団への勧誘」をしつこく……いや、かな~りしっかり受けたけれど、そこは「私は特殊魔術研究所を希望します」とキッパリ笑顔でお断りをしておいた。
「今日のエヴァは凄かったよ! 動く的にバンバン魔術を当てていってね、本当に格好良かったんだ!」
フィン兄さんが興奮気味に私のことを褒めてくれた。
フィン兄さんは試験中はずっと、二階の廊下の最前列で私のことを見守っていてくれたのだ。
「フィン兄さんったら、そんなことないわよ……」
私は嬉しかったけれど、なんだか照れ臭くて謙遜した。
「僕の同僚や先輩も褒めていたよ! あんな凄い子が新人として入ってきたら、自分たちの立場が危ないよなって!」
フィン兄さんがさらに捲し立てあげる。
「ふふっ。でも、そんなに評価してもらえたなら嬉しいわ」
私はフィン兄さんの勢いに根負けして、相槌を打った。
「フレデリカにはもう報告はしたの?」
「はい! 試験後すぐに連絡しました!」
お義母様から訊かれて、私は大きく頷いた。
フレデリカ様には、試験後すぐにクロに頼んで合格した旨の手紙を運んでもらっている。
また後ほど直接お会いして、改めて報告とお礼もするつもりだ。
あとは、非常にお世話になったマダム・アンタレスにも連絡している。
マダムからは早速、簡単なお祝いの手紙もいただいた。
「そういえば、エヴァは今年で十六歳になるのだったかな? デビュタントも考えないとだな」
不意に、お義父様が口ずさんだ。
そうだった!
ここ数ヶ月は婚約解消に始まり、ダルトン家からの追放、それからハートネット家の養子になり、魔術の勉強を再開したり、特殊魔術研究所の入塔試験を受験したりと、あまりにも目まぐるしく変化が起こりすぎて、すっかり忘れてたわ!
ドラゴニア王国では、十六歳からが成人だ。
十六歳になった貴族の未婚の子女が、正式に社交界にデビューするのがデビュタントだ。デビューする女性自身を指したりもする。
「まぁ! 大変だわ! 今からドレスを注文して間に合うかしら?」
お義母様が頬に手を添えて、不安そうに話された。
普通の貴族家であれば、たいていはデビュタントの数年前からもう準備を進めているものだ。
でも、私は急遽ハートネット家の養子になったのだ──間に合わなくても仕方がないと思う。
ダルトン子爵家?
もちろん、そんな余裕は無かったわ。自転車操業でどうにか回してた家なのよ?
デビュタントなんて、はじめから間に合わせでどうにか誤魔化すつもりだったわ。
そもそも、あんな状況でまともに社交界デビューできるとも思っていなかったし。
「えっと、それなら無理せず来年以降にしていただければ……」
私は申し訳なくて、そう口にした。
私がハートネット家に転がり込んで来たから、この家にとって余計な負担になってしまっていることがとても心苦しかった。
「いえ、今年にしましょう。ハリー・ダルトンに見せつけてやるのよ。ロッドフォード家にもね」
お義母様がキリッとした表情で宣言された。
確かに、義妹のミアも私と同じ歳だから、彼らが次のデビュタントに出て来る可能性は高い。ミアの婚約者はアラン様だから、エスコート役としておそらく彼も出席するとは思う。
でも、何もそんな争うように参加しなくても……
「そ、それに招待状は……」
私はそもそものことを確認した。
いくら私が参加したいと言っても、王宮から招待状が届かなければ参加することは不可能だ。
「オホホッ。ハートネット家を何だと思っているの? 歴代国王陛下や妃殿下方の教育係を務めてきたのよ。もちろん、今の王子殿下や王女殿下もね。……王宮からの招待状の一枚や二枚を融通していただくことなんて、造作もないわ」
お義母様が得意げに高笑いをされた。
職権濫用というか、正しくコネを活用されている……
「エヴァ、私たちに甘えてくれていいんだよ。今まではあの家で一人で何でもやってきて、大変だっただろう? でも今は君には私たちがついているんだよ。私たちに、せっかくできた義娘のために何かさせてもらえないかな?」
「お義父様……」
お義父様の温かい言葉に、私はハッとなった。
私はダルトン家で、一人で戦ってきた。
父は頼りにならないどころか、家が傾く元凶だった。義母のシエンナや義妹のミアもそう。
元婚約者のアラン様も、ダルトン家の経済状況を知られてしまえば、婚約破棄の原因になるだろうし、そこからさらに新たに婿にきてくれる人を探すのは難しいと考えていたから、一切頼らなかった。
使用人もどんどん辞めさせられて、入れ替わるように義母シエンナの息がかかった人材しかあの家には集まらなくなった。
──とにかく「ダルトン子爵家を存続させること」だけが当時の私の心の拠りどころだった。
大好きだった祖父に残してもらった「ダルトン子爵家」を、私がきちんと引き継いで、次代に繋げること。それまでに家の状態を立て直すこと──私はそんなことばかりを考えていた。
結局、途中で私の方が放り出されてしまったけれど……
放り出されて、私は母の実家のハートネット家に拾われた。
あの家の人たちとは違って、ハートネット家のみんなは私をあたたかく迎え入れてくれた。
──確かに、私はもう一人で戦わなくていいのかもしれない。
「……それなら、お言葉に甘えてお願いします。でも、どうしてもドレスの手配が難しそうなら、無理せず来年にしましょう?」
私は胸のあたりがほこほこと温かくなるのを感じながら、自分の気持ちを伝えた。
お義父様もお義母様もにっこり微笑んで頷いてくださった。
あなたにおすすめの小説
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
死にかけ令嬢の逆転
ぽんぽこ狸
恋愛
難しい顔をしたお医者様に今年も余命一年と宣告され、私はその言葉にも慣れてしまい何も思わずに、彼を見送る。
部屋に戻ってきた侍女には、昨年も、一昨年も余命一年と判断されて死にかけているのにどうしてまだ生きているのかと問われて返す言葉も見つからない。
しかしそれでも、私は必死に生きていて将来を誓っている婚約者のアレクシスもいるし、仕事もしている。
だからこそ生きられるだけ生きなければと気持ちを切り替えた。
けれどもそんな矢先、アレクシスから呼び出され、私の体を理由に婚約破棄を言い渡される。すでに新しい相手は決まっているらしく、それは美しく健康な王女リオノーラだった。
彼女に勝てる要素が一つもない私はそのまま追い出され、実家からも見捨てられ、どうしようもない状況に心が折れかけていると、見覚えのある男性が現れ「私を手助けしたい」と言ったのだった。
こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました
ねむ太朗
恋愛
伯爵令嬢のリリアーナは、小さい頃から、妹のエルーシアにネックレスや髪飾りなどのお気に入りの物を奪われてきた。
とうとう、婚約者のルシアンまでも妹に奪われてしまい……
【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~
遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。
「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」
彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。
瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット!
彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる!
その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。
一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。
知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!
はじまりは初恋の終わりから~
秋吉美寿
ファンタジー
主人公イリューリアは、十二歳の誕生日に大好きだった初恋の人に「わたしに近づくな!おまえなんか、大嫌いだ!」と心無い事を言われ、すっかり自分に自信を無くしてしまう。
心に深い傷を負ったイリューリアはそれ以来、王子の顔もまともに見れなくなってしまった。
生まれながらに王家と公爵家のあいだ、内々に交わされていた婚約もその後のイリューリアの王子に怯える様子に心を痛めた王や公爵は、正式な婚約発表がなされる前に婚約をなかった事とした。
三年後、イリューリアは、見違えるほどに美しく成長し、本人の目立ちたくないという意思とは裏腹に、たちまち社交界の花として名を馳せてしまう。
そして、自分を振ったはずの王子や王弟の将軍がイリューリアを取りあい、イリューリアは戸惑いを隠せない。
「王子殿下は私の事が嫌いな筈なのに…」
「王弟殿下も、私のような冴えない娘にどうして?」
三年もの間、あらゆる努力で自分を磨いてきたにも関わらず自信を持てないイリューリアは自分の想いにすら自信をもてなくて…。
叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー