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第2章 人狼さん、冒険者になる
18話 人狼さん、屋台で食事をする
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ミナちゃんと別れ、おススメだという屋台へと足を向ける。
歩いている間にも、彼女とのやり取りを思い出して、胸の内が温かくなる。気に留めてくれる人がいるというのは、こんなにも心強いものなんだね。
そういえば、ノアも随分気にかけてくれたっけ。
私も困っている人がいたら助けられるように、ノアやミナちゃんを見習おう。
こんな風に考えられるようになるなんて、前向きなパワーってすごいよね。
そんなことを考えながら歩いていると、目的の屋台で料理に取り掛かっている男性が目に入ってきた。
俯き作業している横顔に、それが誰だか理解する。
(バスの運転手さん……)
そっか、クラスメイトだけじゃないんだ。
あのバス全員という事は、その可能性もあったんだ。
予想外過ぎてちょっと驚いた。ついでに何だか胃のあたりが重くなった気がする。
「……こんばんは」
「いらっしゃい」
顔を上げ、気さくな笑顔で迎えてくれる。
どうやら、私の凶悪フェイスを見ても気にしないようだ。出来る大人は違うね。
最初の屋台の主人を思い出して、しみじみとそう思う。
笑顔に促されるように、誰も座っていないベンチシートの端に腰かける。
おお、こうして見ると、日本のリヤカーの屋台そっくりだ。カウンター越しに運転手さんが料理している手元が見える。
「おや。その耳、お兄さんは犬系の獣人さんかな」
「いや、人狼だ」
「それは失礼。どうも私は獣人の見分けが苦手でねぇ」
ははは、と白の混じった眉を下げながら笑われる。
う~ん、本当は獣人でもないんだけどな。
獣人は獣化出来ないんだよね。そこが一番の違いなんだけど。
まぁ、人狼は金目以外は犬系の獣人と大差ないから、しょうがないと言えばしょうがないか。
見慣れていない日本人が区別できるわけ無いよね。
「別に気にするほどでもないだろう。皆同じ人族だしな」
「そう言ってくれると助かるなぁ。結構、種族を気にするお客さんもいるから気を使うんだよ。それより、何にしようか?」
そう言いながら、手書きのメニューを見せてくれる。
うそん、全部日本食じゃん。マジ?
「これは私の故郷の料理でね。似た食文化が東にあるお陰で、食材には困らないんだよ」
そう言いながら、嬉しそうにメニューの料理を一つ一つ説明をしてくれる。
お好み焼きに始まり、うどんに焼きそば、牛丼にチャーハン。更には豚汁まであるよ! しかも日替わりとか書いてる。
何という事でしょう。まさか異世界で故郷の味を楽しむことが出来るとは!
「牛丼だな。それと豚汁」
「あぁ、やっぱり肉系なんだね」
野菜も食べると良いよと勧められ、野菜炒めも追加する。
そうして並んだ料理に目を輝かせる。
うおおお、本物の牛丼だ! 醤油の香りが懐かし過ぎるよ!
日本ではありきたりな存在だったのに、ここでは後光がさしているかのように輝いている牛丼。
内心感動しながら、どんぶりを左手に持ち、手にした箸を握りしめる。
勿論、口に運ぶのはスプーンやフォークじゃない。箸を指定したら驚きつつも嬉しそうに用意してくれた。
期待と共に、牛肉とご飯を掻っ込む。
んんっ、久しぶりの日本食! やっぱり醤油は外せない。勿論お米も!
「美味い」
自然と口からこぼれた言葉に、自分で驚く。
でも、それぐらい美味しい。期待以上だ。
「いやぁ、そう言ってくれると嬉しいね。いくら食材や調味料が揃っていても、納得できる味に仕上がったのは最近なんだよ」
「お代わりいるかい?」と聞かれて「大盛で」と、どんぶりを渡す。相変わらず人狼の食欲はおかしいが、気にしないことにする。
このくらいかな? とご飯を盛られ、二度ほど追加した牛丼を受け取る。このぐらい山盛りなら、お腹も一息つきそう。
「凄い食欲だねぇ」
「ああ、腹が減っていたからな。あと、今まで食べた中でも、かなり美味い」
多分、日本でもこんなに美味しいのには滅多に当たらないと思う。
咀嚼し飲み込み、その合間に相槌を打つ。
「ふふ、そうかい? やっぱり恩恵っていうのは凄いんだねぇ。みんな美味しいって言ってくれるんだよ」
「もしかして、《料理》の恩恵持ちなのか?」
「そうそう。私は別の世界という所から来たらしいんだが、前にいた所ではこんなに料理は上手じゃなかったんだ。まぁ、趣味で休みには作っていたけどね。なのに、この世界で作ってみたら段違いでね。これは貰った恩恵のお陰かなって感謝しているよ」
「そんな簡単に身元を話していいのか? 異世界から来たとか話して大丈夫なのか」
あまりに明け透けなので、こちらが心配してしまう。
「私もよくは分からないんだが、教会の《神託》で私達の来訪は告げられているんだそうだよ。それにこの黒い髪と目なんだが、こちらの世界には無い配色らしいね。誰が見てもわかるから、隠しても意味が無いんだよ」
むしろ、珍しがられてお客さんが来てくれるぐらいだと、快活に笑われる。
「暮らしに問題は?」
「そんなに問題はないかなぁ。イヴァリース神の許可で転移してきたいうことで、結構受け入れられているからね。恩恵のお陰で仕事もあるし。ただ、常識が若干違うから馴染むのに苦労しているかな。それでも差別されることも無いし、暮らしやすい方だと思うね」
「そうか……」
良かった。それを聞いて安心した。
「やっぱり恩恵持ちなのが心強いね。私の他にもこの世界に来ている面々が居るんだが、冒険者や専門の職人になって生活しているんだ。みんなこの街に溶け込もうと頑張っているし、私もそれを見て頑張ろうと思っているよ」
イヴァリース様々だよ、とにこやかに締めくくられる。
運転手さん、もしかして神様にいじられた精神がまだ正常に戻ってないのかな?
なんでそんなにあの神様に好意的なの。解せぬ。
それでも話を聞いた限り、どうやらみんな、酷いことにはなって無さそうだ。
本当に良かったよ。
あの神様が持ち上げられているのは若干面白くないけど、フォローはちゃんとしてくれているみたいだ。
なら、私もきちんと依頼を実行して、お返ししないとね。
私的にはヒナ捜索が第一なのは変わらないけど、この世界での黒狼のイメージ改善も同時に頑張ろうと思う。
直接私の生活にも関わることがこの街に来て判明したことだし、せめてこの街の中だけでも怖がられない存在になりたい。
そこから徐々に広めていけば、黒狼だけではなく、人狼のイメージも大分良くなるんじゃないかな。
よし、今から頑張ろうじゃないか。
だがしかし、腹が減っては戦は出来ぬ。
戦をするわけじゃないけど、気構えは大事だよね。
とりあえず、腹ごしらえはしておこうか。
「豚汁お代わり。山盛りで」
「え?! まだ食べるの?!」
うん。だって美味しいんだん。
歩いている間にも、彼女とのやり取りを思い出して、胸の内が温かくなる。気に留めてくれる人がいるというのは、こんなにも心強いものなんだね。
そういえば、ノアも随分気にかけてくれたっけ。
私も困っている人がいたら助けられるように、ノアやミナちゃんを見習おう。
こんな風に考えられるようになるなんて、前向きなパワーってすごいよね。
そんなことを考えながら歩いていると、目的の屋台で料理に取り掛かっている男性が目に入ってきた。
俯き作業している横顔に、それが誰だか理解する。
(バスの運転手さん……)
そっか、クラスメイトだけじゃないんだ。
あのバス全員という事は、その可能性もあったんだ。
予想外過ぎてちょっと驚いた。ついでに何だか胃のあたりが重くなった気がする。
「……こんばんは」
「いらっしゃい」
顔を上げ、気さくな笑顔で迎えてくれる。
どうやら、私の凶悪フェイスを見ても気にしないようだ。出来る大人は違うね。
最初の屋台の主人を思い出して、しみじみとそう思う。
笑顔に促されるように、誰も座っていないベンチシートの端に腰かける。
おお、こうして見ると、日本のリヤカーの屋台そっくりだ。カウンター越しに運転手さんが料理している手元が見える。
「おや。その耳、お兄さんは犬系の獣人さんかな」
「いや、人狼だ」
「それは失礼。どうも私は獣人の見分けが苦手でねぇ」
ははは、と白の混じった眉を下げながら笑われる。
う~ん、本当は獣人でもないんだけどな。
獣人は獣化出来ないんだよね。そこが一番の違いなんだけど。
まぁ、人狼は金目以外は犬系の獣人と大差ないから、しょうがないと言えばしょうがないか。
見慣れていない日本人が区別できるわけ無いよね。
「別に気にするほどでもないだろう。皆同じ人族だしな」
「そう言ってくれると助かるなぁ。結構、種族を気にするお客さんもいるから気を使うんだよ。それより、何にしようか?」
そう言いながら、手書きのメニューを見せてくれる。
うそん、全部日本食じゃん。マジ?
「これは私の故郷の料理でね。似た食文化が東にあるお陰で、食材には困らないんだよ」
そう言いながら、嬉しそうにメニューの料理を一つ一つ説明をしてくれる。
お好み焼きに始まり、うどんに焼きそば、牛丼にチャーハン。更には豚汁まであるよ! しかも日替わりとか書いてる。
何という事でしょう。まさか異世界で故郷の味を楽しむことが出来るとは!
「牛丼だな。それと豚汁」
「あぁ、やっぱり肉系なんだね」
野菜も食べると良いよと勧められ、野菜炒めも追加する。
そうして並んだ料理に目を輝かせる。
うおおお、本物の牛丼だ! 醤油の香りが懐かし過ぎるよ!
日本ではありきたりな存在だったのに、ここでは後光がさしているかのように輝いている牛丼。
内心感動しながら、どんぶりを左手に持ち、手にした箸を握りしめる。
勿論、口に運ぶのはスプーンやフォークじゃない。箸を指定したら驚きつつも嬉しそうに用意してくれた。
期待と共に、牛肉とご飯を掻っ込む。
んんっ、久しぶりの日本食! やっぱり醤油は外せない。勿論お米も!
「美味い」
自然と口からこぼれた言葉に、自分で驚く。
でも、それぐらい美味しい。期待以上だ。
「いやぁ、そう言ってくれると嬉しいね。いくら食材や調味料が揃っていても、納得できる味に仕上がったのは最近なんだよ」
「お代わりいるかい?」と聞かれて「大盛で」と、どんぶりを渡す。相変わらず人狼の食欲はおかしいが、気にしないことにする。
このくらいかな? とご飯を盛られ、二度ほど追加した牛丼を受け取る。このぐらい山盛りなら、お腹も一息つきそう。
「凄い食欲だねぇ」
「ああ、腹が減っていたからな。あと、今まで食べた中でも、かなり美味い」
多分、日本でもこんなに美味しいのには滅多に当たらないと思う。
咀嚼し飲み込み、その合間に相槌を打つ。
「ふふ、そうかい? やっぱり恩恵っていうのは凄いんだねぇ。みんな美味しいって言ってくれるんだよ」
「もしかして、《料理》の恩恵持ちなのか?」
「そうそう。私は別の世界という所から来たらしいんだが、前にいた所ではこんなに料理は上手じゃなかったんだ。まぁ、趣味で休みには作っていたけどね。なのに、この世界で作ってみたら段違いでね。これは貰った恩恵のお陰かなって感謝しているよ」
「そんな簡単に身元を話していいのか? 異世界から来たとか話して大丈夫なのか」
あまりに明け透けなので、こちらが心配してしまう。
「私もよくは分からないんだが、教会の《神託》で私達の来訪は告げられているんだそうだよ。それにこの黒い髪と目なんだが、こちらの世界には無い配色らしいね。誰が見てもわかるから、隠しても意味が無いんだよ」
むしろ、珍しがられてお客さんが来てくれるぐらいだと、快活に笑われる。
「暮らしに問題は?」
「そんなに問題はないかなぁ。イヴァリース神の許可で転移してきたいうことで、結構受け入れられているからね。恩恵のお陰で仕事もあるし。ただ、常識が若干違うから馴染むのに苦労しているかな。それでも差別されることも無いし、暮らしやすい方だと思うね」
「そうか……」
良かった。それを聞いて安心した。
「やっぱり恩恵持ちなのが心強いね。私の他にもこの世界に来ている面々が居るんだが、冒険者や専門の職人になって生活しているんだ。みんなこの街に溶け込もうと頑張っているし、私もそれを見て頑張ろうと思っているよ」
イヴァリース様々だよ、とにこやかに締めくくられる。
運転手さん、もしかして神様にいじられた精神がまだ正常に戻ってないのかな?
なんでそんなにあの神様に好意的なの。解せぬ。
それでも話を聞いた限り、どうやらみんな、酷いことにはなって無さそうだ。
本当に良かったよ。
あの神様が持ち上げられているのは若干面白くないけど、フォローはちゃんとしてくれているみたいだ。
なら、私もきちんと依頼を実行して、お返ししないとね。
私的にはヒナ捜索が第一なのは変わらないけど、この世界での黒狼のイメージ改善も同時に頑張ろうと思う。
直接私の生活にも関わることがこの街に来て判明したことだし、せめてこの街の中だけでも怖がられない存在になりたい。
そこから徐々に広めていけば、黒狼だけではなく、人狼のイメージも大分良くなるんじゃないかな。
よし、今から頑張ろうじゃないか。
だがしかし、腹が減っては戦は出来ぬ。
戦をするわけじゃないけど、気構えは大事だよね。
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