元女子高生ですが、異世界で人狼(男)やってます! ~人狼さんと錬金術師の卵~

涼波

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第2章 人狼さん、冒険者になる

21話 人狼さん、奢る

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「よし、二人とも一緒に来い」

 そう言いながら立ち上がる。
 え? とまごついている少女と素直についてくる幼女を連れ、運転手さんのいる屋台へと向かう。
 私を怖がらずに相手をしてくれる屋台は、今の所そこだけだからしょうがないのだ。

 周辺の人々は巻き込まれたくないからなのか、こちらに声をかけてくる気配は無い。
 ちらちらと盗み見るような視線はあるけど、それだけだ。
 まぁ、あの土下座のシーンを見てしまえば誰でもそうなるか。私もドン引きだもん。
 これで更に人狼への溝は深まったね。うん。

「そういえば、名前を聞いていなかったな。俺はクロウ。君達の名前は?」

「あ、えっと、私はルカで、こっちの子は妹のリリーです」

「そうか。いい名前だな」

 そう返すと、心なしか嬉しそうな顔になる。
 その隣で、幼女……ではなく、リリーが興味津々な顔で私を仰ぎ見てきた。

「お兄ちゃんは、まちの外からきたの?」

「ん? そうだ。森にある人狼の里からやって来た。よろしくな」

 そう返すと、嬉しそうに頷きながら笑い返してくる。
 どうやら、私に対して警戒心は微塵もないらしい。
 対して姉のルカはというと、自分達がどうなるか心配なのだろう。若干不安そうな表情だ。歩きながら、妹の手をしっかり握りしめている。
 それでも大人しくついてきてくれるので、そのまま運転手さんの屋台へと連れて行く。

 屋台の傍まで行くと、心配そうにカウンターから身を乗り出していた運転手さんと目が合った。
 ここで漸く気づいたことが一つ。
 運転手さんだって、他の人達と同じくドン引きしてるんじゃない? 
 いくら人狼に偏見が無くても、土下座は別案件だよね。
 今更だけど、これで態度変えられちゃったら泣く。絶対泣く。

 内心ドキドキしながら、「子供が食べられそうな料理を頼む」と伝えてみる。
 その言葉にホッとしたような顔で運転手さんが頷き、屋台の中へと引っ込んだ。
 良かった。怖がられてないっぽい。本当に良かったよ……。

「台無しになった夕食の代わりだ。俺が奢るから気にせずに食べるといい」

 そう言いながら、誰も居ないベンチシートに二人を座らせる。
 あれ? これはもしかして、私のせいでお客さんが来ていないのでは……。
 若干不安になりつつも、都合が良いのでそのままスルーして私も一緒に座る。

「いいの?!」

 隣に座らせたリリーが目を輝かせて聞いてくるので、「勿論だ」と頷くと、満面の笑みを浮かべる。
 ううん、守りたいこの笑顔。
 私も妹が欲しかったなぁ。一人っ子だったから憧れるよ。

「お姉ちゃん、食べていいんだって!」

「でも、お金……」

「大丈夫だ。金の事は気にしないで食べていいぞ」

 喜ぶ妹とは反対に、姉のルカは未だに戸惑った顔のままなので、念を押してやる。
 子供なんだから、大人に遠慮しなくてもいいのに。
 まあ、そういう私も中身は未成年なんだけども。

「ここは人狼のお兄さんの顔を立ててあげなさい。はい、お好み焼き二つね」

 コメに馴染みが無いかもしれないから小麦粉のメニューにしたよと、ニコニコしながら皿を並べてくれる。
 おおっ、いい匂い! でも、量が少なくないかな?

「これで足りるのか?」

 あまりの少なさに驚いていると、「これが普通なんだけどね……」と運転手さんに苦笑される。
 そうなのか。
 どうやら人狼基準で見てたようだ。危ない危ない。
 
「……お兄さん、ありがとう」

 出された料理を見つめた後、ルナが顔を上げて礼を言ってくれるけど、その目がちょっと潤んでいるのは見なかったことにする。

「ああ。冷めないうちに食べるといい。ここのは美味いぞ」

 そう言いながら食べるように促すと、漸くフォークを持ち、口に運ぶ。
 一口食べると目を輝かせ、ルナが次々と頬張っていく。
 それを見たリリーも大きく口を開けて齧り付く。
 
「っ美味しい!」

 真ん丸な目で、驚いたように私にそう伝えてくれる。

「だろ? 俺も食べて同じことを言ったからな」

「本当に美味しいです。こんなの食べたこと無いです」

 賛同するように食べかけのお好み焼きを見ながら、ルカが呟く。
 良かった。
 運転手さんの料理は、こっちの人達にも問題無く受け入れられてるんだね。

 そう思いながら運転手さんを見ると、満足そうにルカ達を眺めている。
 そりゃあ、これだけ美味しいって言われたら、料理人冥利に尽きるよね。うんうん。
 私も《料理》の恩恵があることだし、余裕が出来たら料理に挑戦してみようかなぁ。
 喜んでもらえるのって、嬉しいもんね。
 
 そんな美味しそうに食べる子供達を、さり気なく観察してみる。
 ……二人とも、全体的に痩せぎみかな。明らかに服に余裕あり過ぎる気がする。
 これってやっぱり、食事の量が足りてないんだろうね。

 他にも、髪には櫛がきちんと入っていないようでボサボサだし、服も綺麗だとはお世辞でも言えない状態だ。
 多分、世話が行き届いていないんだろうな。
 この分だと、寝込んでいるという母親も大変な状態なんじゃないだろうか。
 この子達プラス、母親かぁ……。
 なんかもう、ここまで来たら最後まで面倒を見た方が後悔しなさそう。

(私に何が出来るかな)

 今の私で、この子達の面倒をどこまで見られるか考える。
 先ずはこの子達の食費を賄いながら、暮らしていけるだけの資金が私にあるかどうかだよね。
 正直、街に来たばかりだから、物価とかよく分かってないんだよね。
 私の所持金で間に合うのかな? うーん。

 そういえば、運転手さんのメニュー表に値段が書かれていたよね。
 あれを見た限りでは、思っていたよりこの街の食事は安いようだ。
 となると、食費はそんなに負担にならない金額と見て良さそう。

 人狼の食事事情を考えて予め里では稼いでおいたし、暫くは懐具合は大丈夫だと思われる。
 むしろ、私の食事の量と比べると、この子達の分はあるかないかの量だ。
 全然気にならないレベルと言ってもいいんじゃないかな。

 最悪、それでも足りなくなるようなら、自分で食料になる動物や魔物を狩ればいい。
 鑑定もあるし、私なら食べられる植物も簡単に見分けられるはず。
 それに忘れていたけど、一応冒険者になったんだよね。仕事の目途はついたんだった。

 んん? 何だ、余裕じゃない。
 これなら、子供二人ぐらい養えるね!
 








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