元女子高生ですが、異世界で人狼(男)やってます! ~人狼さんと錬金術師の卵~

涼波

文字の大きさ
41 / 42
第3章 人狼さんと薬師のヒナ

41話 人狼さん、指名される

しおりを挟む
 街が襲われてから数日後の夕方。
 本日受けた依頼が終わり、賑やかな街の通りを一人歩きギルドへ向かう。

(どうやら街はすっかり落ち着いたみたいだね)

 歩きながら周囲の人々を眺め、心の中で頷く。

 見た感じの印象だけど、街の住人達は何事も無かったかのように普段通りの生活に戻っているように見える。
 襲撃があったとは思えない程だ。もしかしたら、こっちの世界ではよくあることなのかもしれない。
 そう考えると、立ち直りの早さに納得がいく。

 ただあの日以来、私への街の住人の対応がかなり変化した。
 以前のように、こちらに気づくと逃げるということが無くなり、店を覗いても普通に対応してくれる。宿の人達も、かなり対応が柔らかくなったと思う。

 これは私が街を守ったという噂が、街中に流れたからなんだろう。おかげで友好的な雰囲気が街全体に漂っている。
 まさかこんなに受け入れてもらえるとは思いもよらなかったよね。
 オークのおかげで黒狼である私への好感度が上昇し、私の中ではオーク様様だ。

 屋台に食事に出向いても、この現象は顕著だ。
 運転手さんの屋台以外からも声をかけられるようになり、これにはかなり驚いた。これって、お客さんが私と一緒に食べても嫌じゃないってことだから、凄いよね。
 食事に困ることは無くなったけど、夕飯だけはルカ達の件もあるので運転手さんの屋台で変わることは無い。

 そのルカ達だけど、昨日の話だと薬草がいい感じで効いてきているらしい。寝たきりだった母親がベットから起き上がることが出来たと、ルカが喜びながら私に報告してくれた。
 例のニケから貰った山鳥も、喜んで食べてくれたとのこと。
 それを聞いた運転手さんが、これからはもう少しレパートリーを広げられると嬉しそうだったのが印象的だ。料理人として、やりがいがあるのかもね。

 本当、運転手さんにはいつもお世話になっててありがたい。
 私も料理の恩恵は持っているけど、多分そんなに色々考えられないと思う。きっとすぐにレパートリーが尽きるだろうな。飽きさせないように作れるって、凄いよね。
 さて、今日の晩御飯は何かな。運転手さんの料理は何でも美味しいから楽しみだね。

 ギルドにたどり着き、そのままドアをくぐり室内へと進む。
 入り口の近くにいた冒険者達と目が合うが、気にした風もなく相手の視線が外れた。
 ここでも数日前とはすっかり空気が変わったのが実感できる。前なら問答無用で身構えられてたもんね……。
 
「よう、仕事帰りか」

 そう声をかけられ視線を向けると、そこには赤い短髪の男が仲間の男達を引き連れてこちらへやって来る途中だった。
 例のオーク狩りで話しをした冒険者だ。
 あの日以来、こうしてよく声をかけてくれるようになったので、ギルド内の雰囲気が良くなったように思える。

「ああ。魔物狩りを頼まれて狩ってきた」

 そう言って魔物の名前を出すと、みな若干引きつった顔になった。
 この魔物、ニコラがちょっと強い群れだって説明してくれたんだよね。私なら大丈夫だと太鼓判を押して貰たんだけど、この顔を見たら、ちょっとじゃなかったんじゃなかろうか。

「ソロで狩ってきたのかよ。相変わらずの強さだな。やっぱりあの鎖があると一人でもやってけるものなのか?」

「まぁ、地面に固定できるからな。複数相手にしても問題無いな」

 首を傾げてきた男にそう返すと、チートだよなと呆れられる。
 だよねー。私も使ってみてそう思ったよ。超便利。
 動けないように固定して、順に狩っていけばいいんだもん。
 まあ、数に限りはあるけど。それこそ無限に使えたらチートだよね。

「そういや、この前のオーク討伐の報酬出たぜ。あんたも受け取って来いよ」

「報酬が出るのか」

 思い出したようにそう言われて、軽く驚く。
 私からすると、あの討伐って飛び入りだったんだけどな。権利あるんだ?

「当たり前だろ。寧ろあんたが貰わなくてどうするよ。で、それ持ってこのまま飲みに行こーぜ!」

「安い店だから懐も安心だぞー」

「それでいて結構美人なお姉ちゃんもいる店だしな!」

 笑いながら背を叩かれたうえに、後ろの人達も一緒に誘ってくる。
 おぉ、誘ってくれるとは今までにない流れだ。
 けど、飲みにって、お酒だよね? 私、飲んだことないんだけど。
 それに、ルカ達の夕飯があるからなぁ。

「誘ってもらって嬉しいんだが、夕飯は先約があるんだ。すまん」

「ああ。ガキの食事の面倒をみてるんだったか」

「? なぜ知っている?」

「噂になってるからな」

「は?」

 え、ちょっと待て。
 どんな噂流れてるわけ。

「ま、それなら仕方ねー。タイミングがあった時にでも飲もうぜ」

「あ、ああ」

 背中をバシバシと叩かれ、じゃあな! と去っていく。
 これから酒場に行くのだろう彼らの背を見送りながら、どこまで私の事が知れ渡っているのか若干不安になる。
 まさかルカ達の話まで知っているとは。
 私のプライバシーはどこに行ったんだろうね……。

 問いただす間もなかった彼らを見送り、奥のカウンターへ向かおうと向きを変える。

「っ!」

 その視線の先に、なんとヒナの姿が飛び込んでくる。
 おぉ! 全然気が付かなかったよ。
 詰め所で倒れた時以来だけど、どうやら復帰できたようだ。

 こっそりとそちらへ視線を飛ばして観察するが、元気そうで怪我もないっぽい。無事な姿を見てホッとする。
 一緒にいる舞ちゃんも、顔色も良いし体調も大丈夫そうだ。
 あの時は蒼褪めているのを通り越して、白かったからなぁ。今は血色もいいし、一安心だね。

 そんなヒナ達はというと、隅に並んでいるテーブルの一角に以前のクラスメイト達と陣取り、なにやら真剣に話し込んでいる。
 随分と深刻な顔で話し込んでいるようだけど、何を話し合ってるんだろうね。ここからだと、小声過ぎるのとギルド内が仕事報告の冒険者で賑わっているのとで、上手く声が拾えない。

 それでも、元気そうな顔が見れただけでも安心できたので、一先ずは良しとしよう。
 今日こそ声をかけられるといいんだけど。でも、人も居るしきっと無理だよね……。
 取り合えず、依頼の報告でもしてこよう。

 ヒナ達を気にしつつ受付のウンターに向かうと、丁度空いているようで、椅子に座るようにと目の合ったニコラに促される。
 
「お疲れ様です。今回も余裕な依頼だったようですね」

「まぁ、人狼の足なら一日で戻って来れる距離だったしな」

 そう答えながら、テーブルに魔石を並べる。

「全部で五匹。楽勝だった」 
 
「やっぱり人狼のクロウさんなら、問題無い依頼だったんですね。普通なら、依頼された村で一泊はする距離なんですけどね。割に合わないからと受けて貰えなくて、大変だったんですよ」

 並べた魔石をひとつづつ確認しながら、ニコラが話す。
 この魔石は、魔物を倒して体内から取り出してきたモノだ。依頼は五匹の魔物の討伐なので、この魔石を確認してもらえば依頼完了となる。

 これらの魔石は、魔物が外部の魔力を吸収し体内に取り込むことで、凝り固まって出来るらしい。魔物の種類で色形、属性が違うので、魔石を確認すれば何の魔物か判別できるようになっているのだそうだ。
 私が見ても、素人過ぎて判別するのは無理なんだけどね。
 鑑定が無いと難しいのだけれど、ニコラには問題無いみたいだ。流石ギルドの職員をやっているだけある。

「確かに依頼が出ていた魔物の魔石ですね。数も五匹で依頼通りです。これが報酬と魔石代です。それと、先日のオーク討伐の報酬も今渡しますね」

 そう言いながら金貨を渡され、受け取るが、予想以上の枚数に驚く。

「こんなになるのか?」

「当たり前ですよ。ほぼクロウさんが狩ったんですから。特にハイオーク二匹分が大きいですね」

 そういえば、ハイオークの肉は高級品なんだよね。それを売りさばいたのなら、この金額も納得かな。
 あぁ、しまった。どうせなら肉を分けてもらえば良かったよね。あの肉、美味しいんだよ。
 
「それとですね、指名依頼がクロウさんに来ています」

「指名?」

 あれ、どこかで聞いたぞ。その単語。
 どこでだったかな?

「ええ。薬師のエイダさんなんですが、お知り合いだったんですね」

「ああ。前に荷運びの手助けをして、その縁で収納アイテムを手に入れたな」

 そうそう。
 その時、指名依頼してくれるって話しをしたんだったよね。本当に依頼をくれたんだね。

「相変わらずお人好しなんですね……」

「? そうか?」

「気づいてないんですか。まぁ、その収納をあてにして、この数量の依頼だったんですね。納得しました」

 そう言って、依頼書を見せてくれる。

 わお、凄い量だね。
 確かに収納アイテムが無いと大変そうだ。
 流石エイダだ。使う気満々だよ。しっかりしてるよね。

「結構な量だな」

「ええ。一人で大丈夫でしょうか」

 気づかわし気に聞かれるが、大丈夫だろう。
 指定されている薬草も、この前の疲労回復の薬草が生えていたところに結構自生してたし。

「そうだな。一日で終わるだろう」

「え、早くないですか」

「ああ、問題な「話が違う!」

 え? 
 突然割り込んできた聞き覚えのある声に、思わず動きが止まる。
 今の声、ヒナだよね? 何事?
 
 

 







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

神様!スローライフには準備が多すぎる!

わか
ファンタジー
超超超ご都合主義 人に興味が無い社会人の唯一の趣味が な〇う系やアルファポリスでファンタジー物語を、ピッ〇マやLIN〇漫画で異世界漫画を読み漁る事。 寝る前にはあるはずないのに 「もし異世界に転生するならこのスキルは絶対いるしこれもこれも大事だよね」 とシュミレーションして一日が終わる。 そんなどこでもいる厨二病社会人の ご都合主義異世界ファンタジー! 異世界ファンタジー系物語読みまくってる私はスローライフがどれだけ危険で大変か知ってます。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...