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第16話:ゴースト・ドラッグ
第84章:雲散鳥没(うんさんちょうぼつ)
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♡ーーーーー♡
【雲散鳥没】雲のように空に散り、鳥が姿を消すように、物事が跡形もなく消え失せること。
あっれー?どっかに消えちゃった!?みたいな。
♡ーーーーー♡
プラスチックの容器から、直径1センチに満たない黄色いラムネのような『それ』を取り出す。『青色』は何度も試したけれども、『黄色』はこれで2回目。【お薬屋】は「その時々の体調で効果が変わるかもしれない」等と言っていた。
3日前に飲んだときは、目の前がぱっと明るくなった。目に感じる光が一段と強くなったように感じたし、筋肉がよりしなやかに動く気がした。気分が高揚し、何でもできるんじゃないか、みたいなウキウキした気持ちになった。実際に、その状態で体育の1500メートル走に挑んだら、いつもより全然疲れなかったし、記録もぐんと伸びた。先生がびっくりしていたのを覚えている。
あまりたくさんある薬じゃないので、ここぞというときに使いたい。
一瞬、躊躇するが、やっぱり飲もうと決心し、私は薬を口に入れた。
舌の上で転がすと、それは少し酸味の強いラムネのように口の中で溶けていく。甘酸っぱい味が広がると、薬が混ざった唾液ごと、飲み下した。
今日、また、私は母とぶつかった。
分かっている。高校2年生の1学期。来年の進路選択に向けて、各教科の成績が重要だということくらい、言われなくても分かっている。
分かっているにも関わらず、年度初めの統一学力テストの結果が思うようでなかったのを母に咎められて、私の心はざわついていた。
私だって、一生懸命やっているんだ。
手を抜いてなんていない。
あなたが私のことを考えて大学進学のためにハッパをかけているのだって、十分わかる。
でも・・・
あなただって、お父さんだって
出た大学は二流じゃん
その娘である私に何を期待するの!?
高校受験に失敗した時、あからさまに落胆した顔をしたあなた
あの顔、私は絶対に忘れない・・・。
ああ・・・イライラする
今日も大量の課題をこなさなければならない
身体も心も、休む暇すら与えられない
今、通っている学校は、『自称・進学校』の私立女子校。少しでも進学率を上げるためには努力は惜しまない姿勢だ。学校でも、家でも、内申、偏差値、学力向上・・・言うことはそれしかないのか。
逃げ場も居場所もない。
辛い、辛い・・・とても・・・辛いよ・・・。
そんな事を考えているうちに、じわじわと薬が、身体に沁み込んできたみたいだ。
トクン、と心臓の鼓動を強く感じる。
身体が内側から熱くなる。
色が・・・変わった?
世界から、暖色系の色がなくなり、紫や青、藍色に染まっていく。
普段気づかなかったモノが、キラキラと輝いているように見えた。
わあ・・・きれい・・・。
音が、よく聞こえる。
キッチンで夕飯の準備をしている母親の立てている音
隣の部屋でゲームをしている弟の体を揺すっている様子
外を走る車の音
ううん、それだけじゃない
歩いている人の吐息まで聞こえてくるようだ・・・
すごい・・・すごいよ、これ・・・
まるで、自分が周囲の世界に溶け合って、ひとつになったみたい
一回目もすごかったけれども、これもすごい。
これも「当たり」だ。
ちらりと課題に目をやる。
なんだ・・・簡単そうじゃないか。
何でも、本当にどんなことでもできる気がした。机に向かって、シャーペンを走らせる。ものすごい集中できる。色の変わった世界。問題を目にした瞬間に答えが浮かんでくる。浮かんでくる回答を書くのに、手がついていかないほどだった。
英語があっという間に終わった。
そして、数学と化学
社会の課題も15分ほどでカタがついた。
最後は国語
あまり得意ではないが、これも同じだった。
目が縦から横にすらすらと動いていく。頭にスルスルと文章が入ってくる。問題文に当てはまる答えがまるで浮き上がって見えるかのようで、何の難しさも感じない。
すごい・・・!
これがあれば、受験も何も、怖くない。
母にも父にも何も言わせない!
もっと、もっと、私は私でいられる。
そのためには・・・
ぱたん、とテキストを閉じて、窓から外を見る。
昼間だと言うのに、薬の効果のせいで、薄闇に染まったように見える美しい町並みがそこにはあった。
そのためには、もっと、このお薬を貰わなきゃ。
そういえば言っていた・・・【お薬屋】が、言っていた。
『ぜひ、新しいモニターを紹介してください。そうしたら、もう一瓶プレゼントしますよ』
そして・・・
『坂本さんは、『赤』はまだ試していないですよね?』
『新しいモニターがいたら連れてきてください・・・『赤色』もプレゼントしちゃいます』
『赤色』の薬・・・
青より、黄色の方がすごかった。
それなら、赤は一体、どうなるんだろう。
どんな体験ができるんだろう?
それを思うと、居ても立ってもいられなかった。早く試してみたい。頭の中はその思いでいっぱいになる。
課題は終わった。じゃあ、もういいよね?
文句、ないでしょ?
私は窓を開けて、そこからぴょんと、外に飛び出したのだった。
☆☆☆
5月の某日。
宮内庁陰陽寮占部衆に併設された会議室で、衆の幹部会議が行われていた。当然、占部の『属の一位』である、私、日暮美澄(ひぐらし みすみ)も参加している。
しかし、私は、この会議というのがどうも苦手だった。多分、それは我が衆のボスであるところの土門杏里も同意してくれるのではないかと思う。
あーあ、早く終わんないかなあ・・・。
先日の黄泉平坂を巡る大きな戦いから2週間が経過していた。事件の事後処理でてんやわんやだった陰陽寮も、やっと日常の平穏を取り戻しつつあった。
あの事件でも大活躍だったという、浦原綾音の退院は来週を予定しているそうだ。まあ、一度『死んだ』にも関わらず、1ヶ月程度の入院で済んでいる方が奇跡と言えば奇跡だ。その点に関しては、あの時、結界の内側に送り出した身として、私もものすごい責任を感じていた。
本当に、生きててよかった。
同時に、その時同席できなかったのが、心底、悔やまれた。
『魂呼せの秘法』
そんな珍しい、もう今生では二度とお目にかかれないような秘術の執行を目にする機会を逸したことは、術式の調査研究を生業のひとつとしている陰陽部門占部衆に所属する陰陽博士としては、『口惜しい』の一言では済まされないほどの気持ちを掻き立てられた。
「・・・っていう依頼が来てんだけど・・・美澄、やれそう?」
は!
しまった。
突然、その私の上司たる土門から名を呼ばれて、私は居住まいを正す。つい、ぼんやりと先日のことに思いが漂ってしまい、会議中であることを忘れるところだった。
「あ・・・ええ!ええ!で、できます!!」
そうは言ったものの、何を聞かれたかまるで分かっていなかった。
まあいいや。あとで冴守か設楽にでも聞けばわかるだろう。
ところが、
「土門様、おそらく日暮さん、聞いてなかったですよ」
などと、冴守が余計なことを言う。
こ・・・こいつ!!
相変わらず空気が読めないヤツ!!
一応、私のほうが位階が上なんだから、も少し立ててくれたっていいじゃない!
どちらかというと、冴守よりも土門の方が私と近い性質を持っているように思う。研究熱心で、一つのことに夢中になると周りが見えなくなる。それに、とことん追求しないと気がすまない。ある意味、学者肌。とても優秀で、陰陽寮の中でも特に土御門様からの信頼も厚い私の尊敬する上司のひとりだ。
ただ、そのあまりの変人ぶりから、人は陰に陽に彼女のことを「マッド・ソーサラー」などと呼んでいるのだが・・・。
まあ、近い性質とは言え、私はあそこまでぶっ飛んではいない・・・つもりだけど、それでも、よく似てるなとは思う。そんな土門がトップにいるからこそ、この『占部衆』は私にとって理想の職場であるといえるのだ。
やれやれ、といった様子で、その土門が再び同じ説明をしてくれた。多分、私の性格に対する理解があるのだろう、と勝手に思うことにする。
「都内で女子高生の行方不明事件が多発しているのです。まあ、いなくなっているのは高校生だけってわけじゃないんですが、女子高生が圧倒的に多い。今月だけですでに4人いなくなっているのです」
え?4人も!?
「類似の事件と思われるのは、今年の3月から発生していました。当時、同時に発生していた辻神事件に紛れてしまっていたのですが、あちらより低い年代の子だということもあり、また、家出という線で捜査がなされていたことから、あまり捜査陣の目を引くことがなかったようです。しかし、今回、改めて精査したところ、今年の3月からの同種案件と思われる行方不明者が累計で30人を超えていることがわかったのです。」
冴守が手帳を見ながら冷静にデータ面での情報の補強を行う。こんなふうなまめまめしさがこの男の大きな特徴であった。
えええ!!!さ、30人!!
「今回、この件が陰陽寮に上がってきたのは、4日前に捜索願いが出された高校2年生の坂本愛理さんの件がきっかけなのです。どうやら、この愛理さん、ある日の夕刻に、自宅マンションの窓から裸足で失踪した・・・ということなのです。おかしいですよね?」
「ちなみに、坂本さんのお住まいは、マンションの5階です」
家出をするにしても、裸足で、しかも、5階の窓から飛び降りるなんて・・・たしかにおかしい・・・というか、可能なのか?
「警察もさすがにこれはおかしいと判断し、呪殺班が動いたのです。結果、愛理の自室から押収されたのが、これ・・・」
土門が示したのは、アメリカのサプリなんかがよくこの形で売られているよね、というようなプラスチック製の白いボトルだった。商品名やロゴなどの表示は何もなく、ただボトル部分は白、蓋の部分は緑色だった。大きさは高さ15センチほどだろうか。小型の容器だった。
「中には直径が9.3ミリメートル、高さ4ミリメートルほど、色は薄い青と黄色の二種類があるのですが、そういった錠剤様のものが数個残っていました。」
冴守、細かいなあ・・・
「その薬っぽいものなんですが、警視庁の方で調べた結果・・・」
要は怪しい薬、危険ドラッグの類ということなのだろう。それでラリって窓からジャンプ・・・みたいな?
「ただのラムネだったのです」
はい?
ラムネ?
「成分は、果糖、ぶどう糖、食塩、クエン酸、レシチン、乳酸カルシウム、香料としてシトラール、あと、着色料として、タートラジンやブリリアントブルーが少量・・・要は普通のラムネと同じ成分です」
私は化学の知識はあまりないので、冴守が冷静に読み上げる原材料名を聞いてもピンとこない。しかし、まあ、結果はわかる。
要はラムネ以外の何物でもない・・・ということか?
「ただ、これ、怪しいのです。坂本はこの『薬』をしきりに同級生にも試すように言って回っていたというのです。彼女自身は何らかの『薬効』を感じていた、ということなのですが、そういった薬用成分は全く入っていない・・・奇妙なのです!」
「そ、それは・・・あの・・・なんとか効果っていうやつでは?」
私がうろ覚えで言うと、冴守がすかさず「プラセボ効果、ですね?」と言ってくる。
そういうところがね、あなた、モテないんだよ!!
「その線も考えました・・・が、プラセボで5階の窓から飛び降りる膂力を得られるとは思えないのです。足折って、怪我するのが関の山なのです。」
ということは、何らかの『薬効』がある・・・と?
「というわけで、こちらに鑑定依頼が回ってきました。なんらか、呪術的な作用がないか、それを調べられますか?・・・美澄」
あ、そういうこと?
ここで私の名前が出たわけだ。
私がこの時、咄嗟に思ったのは「面白そうじゃない!」ということだった。
「わかりました!この日暮美澄・・・ミスリンにお任せあれ!」
こうして、私はこの奇妙な事案の捜査に関わることとなった。
☆☆☆
頭が、ぼんやりする。
まるで、ピンク色の霞がかかったみたい。
とっても、とっても気持ちがいい。
ふわふわって、身体が浮かび上がっている。きっと、雲の上に乗ることができたら、こんな感じなんじゃないだろうか?
それとも、私、本当に雲の上にいるのかもしれない。
学力テストの成績のことだって
今度の中間テストのことだった
お母さんのお小言も
塾の面倒な課題も
ほわんほわんと、みーんな遠くに行っちゃって
こんな、安心で、心地よいことなんて、ここ最近あったかな?
猫がひだまりで寝ているときってこんな感じ?
「・・・てるね」
「ああ、もうすぐ・・・だからね」
誰か、いるのかな?
話し声がする。男の人?
手も足も、みーんなとろけちゃっているみたいで、形がよくわからない。お腹の中、じんわりあったかくて、ここが一番気持ちがいい。
どうして、こんなに気持ちよくなっているんだっけ?
そこまで考えて、やっと私は思い出した。
『赤色』・・・
それで、ふわふわして
そうだ・・・そう。
いっぱい、いっぱい、大事にされて
お腹の中があったかくなって
私、気持ちよくなって
気持ちよくしてもらって・・・
すごい、幸せで
何もかも忘れてしまえて
・・・うん・・・うん・・・
もう一回してくれるって、言ってたよね?
楽しみ・・・あれ、好き・・・すごく・・・好き。
早く、して・・・早く・・・シテ・・・・。
相変わらず男の人がお話している。
もうすぐ、なんとか、とか、
あと2回くらいで・・・なんとか、とか・・・
そこまで考えたところで、私の頭、疲れちゃったみたいで
また、とろんとろんと、夢の中に堕ちていった。
☆☆☆
「日暮様、こちらは準備できました」
ガラス窓の向こうから、助手に指名した廣金くんが声をかけてくる。
さて、と・・・
ここは私の執務室兼研究室だ。部屋に戻った私は、早速、プラスチックの容器の中に入っている『薬』と向き合っていた。
まあ、経緯から危険はないとは思うが、念の為、白衣を着て、ゴム手袋をはめ、一応目にはゴーグル、N95マスク。部屋の換気はしっかりと。
また、万が一にもこの錠剤が呪的な作用を引き起こしても大丈夫なように、水公の簡易結界を部屋の四隅を基点に張っている。これで、何某かの呪的ハザードが起こっても、少なくともダイレクトに陰陽寮を汚染することはないはずである。
ついでに、ガラス窓の向こうには、不測の事態があった場合の連絡要員として廣金くんを配置してある。安全対策はバッチリ。準備は万端だった。
「はじめまーす!」
ピンセットで慎重にひとつ、錠剤をつまみ出す。
まずは『青』それから『黄色』
二枚の薬包紙の上にひとつずつ、置く。
形状を観察する。確かに、双方同じ大きさ。上から見ると直径1センチ弱の円形で、表面はツルンとしており、表裏とも、やや中央が膨らんだ形をしている。横から見ると丁度、紡錘型になるような感じだ。見た目の色合いは一様ではなく、青も黄色も、ぼつぼつとより色が濃いところがあるみたいだった。
裏表、確認してみるが、薬にあるようないわゆる識別記号のようなものはなかった。
さらに、部屋にある機器で呪力を測定してみるが、特段の反応はなかった。
これで成分がラムネなら、本当にただのラムネ、ということになる。
ううーん・・・どうしよう?
ちょっと違うアプローチをしてみることにした。
私は部屋の引き出しから一枚の符を取り出す。符には五芒星と、その下に猫の肉球のような形だね、とよく言われる小さい円が3つ、大きい円が1つで構成されている『梅紋』が描かれており、一番大きな円の中に『鬼』と記載されていた。
その符を手に、私は式神勧請の呪言を奏上する。
「鬼々夜叉神 太陰 生門 荒御魂来世」
符を頭の上に高く持ち上げ、そこからひらりと落とした。
「おいでませ!ニャンコ先生!」
符はひらひらと舞い落ちながら光り輝き、丁度私のお腹の当たりでくるりと一回転する。そのときにはすでに黒猫の姿になっており、スタン!とそのまま華麗に地面に降り立った。
一回、前足を伸ばしククッと背を伸ばす。
ぺろぺろと前足をなめなめ、顔を洗っている可愛らしい黒猫。これが私の式神『猫神』だった。ちなみに、ニャンコ先生、というのは、私がこの子につけたあだ名みたいなものだ。
「ニャンコ先生・・・これ、どう思います?」
よいしょっとニャンコ先生を抱えあげると、テーブルの上にとんと置いた。猫神は二つの薬をちらりと見ると、ゆっくり顔を近づけてふんふんと匂いを嗅ぎ出した。しかし、10秒ほどで興味を失ったようにくるりとそっぽを向いて、テーブルから下りていき、いつも私が座っている椅子にむかってスタスタ歩いていくと、あっというまにそこでくるんと丸くなって寝てしまった。
・・・うーん・・・ニャンコ先生でも何も感じないのか・・・
装置でも、式神でも、そしてもちろん自分自身の呪力感知にも、何も引っかからない。・・・はて?どうしたものか?
人体実験、してみようかな?
ちらっとガラス窓の向こうで機関誌「おんみょうタイムス」を読んでいる廣金くんを見る。一瞬邪悪な発想が脳裏をよぎったが、ぶんぶんと頭を振ってその思いを追い出す。
いや、後輩にやらせるとか、外道でしょう!?
じゃあ、しょうがない・・・自分で試すか。
そもそもが女子高生の部屋で押収され、おそらくその子はこれを飲んだのだろう。容器の大きさと中に残っている薬剤量から言って、一錠飲んですぐにどうこうなる、ということはないだろうという予測が立ったのも私の決断を後押しした。
「さて、問題は、黄色と青、どっちを試すか、だな・・・」
うーん・・・黄色か、青か?
まるで、映画のラストシーン爆弾解除で赤い線か青い線かを選ぶシーンみたい・・・じゃ全然ないな。
とりあえず青にすることにした。
意味はない。なんとなく、好きな土門が好んで紫っぽい色の服を着ているから、それに引っ張られてというくらいだ。
「廣金くん!私さ、これ飲んでみるから、なんか異常があったら対処よろしくね!」
声を掛けると、廣金くんがびっくりしてこっちに来ようとする。
いや、大丈夫だってさ・・・
そもそも、そこの扉、鍵外さないと開かないし。
よほど焦ったのだろう。彼は鍵も取り出さずにガチャガチャと取っ手を回しているようだった。私は構わずポイと青い方を口に入れる。
それは、舌の上で、しゅんと溶けていく。
味は、甘酸っぱいラムネの味。
もぐもぐ・・・ごっくん
完全に飲んだ・・・飲んだけど・・・
ん?
別に、体調にも何にも変化はない。
私は両手をワキワキ握ったり開いたりしてみたり、首を回してみたり、ぐっと伸びてみたりしたが、身体感覚も、知覚も、精神状態にもなんら変化は見られなかった。
んー?
どういうこと?
その時、がちゃっと扉が開いて廣金くんが入ってきた。
「ちょ・・・日暮さん!そんなの飲んだら、あ、危ないですよ!」
気が弱い廣金くんはオロオロとしている。
「うーん、でもね、飲んでもなんにも起きないのよ・・・」
「そうなんですか?」
「うん・・・黄色い方も飲んでみようと思うからさ、とりあえず外出てて」
まだ、なにか言いたそうにしている廣金くんをぐいぐいと扉の外に押し出すと、それを閉め、向こうから鍵をかけさせた。こうすれば、万が一私がトチ狂っても外に出ることだけは防げるわけだ。
んじゃ、黄色、行ってみよー!
ポイっと黄色い方も口に入れてみる。
溶け方も味も何もかもが先程と同じだった。
変化は、うーん・・・
「特には・・・」
ないなあ、と言おうとした時、しゃーっ!!と猫神が警戒の声を発した。何事!?と思い、そちらを見ると、その姿がブレているように見える。
「にゃあああ!!!」
何者かがニャンコ先生に干渉している!?
猫神の姿がブレ、ぐいんと歪み、引き伸ばされそうになっている。その力に猫神が必死に抵抗をしているようだった。
誰かに引っ張られている?
それはあたかも、どこかの術者が猫神の呪力を吸収しようとしているかのようだった。
誰?
周囲を見回す。ブレ具合から言って、私の後ろの方から引っ張られているような・・・。
しかし、後ろを振り返っても何も無い。特に呪力も感じない。
じゃあ、どこから?
部屋のあちこちを探してみるが、何も見つけることができなかった。その間も、猫神は「にゃあ!!」とか「しゃー!!」とか言って、苦しそうにしている。
「日暮さん!」
私が探し回っているのが外から見えたのか、廣金くんが実験室のマイクをオンにして話しかけてきた。ちょうどいい、外からも探してもらおう。
「廣金くん!ニャンコ先生がどっかから引っ張られているみたいなの?呪力源を特定して!!」
「日暮さん!日暮さん!」
「だから!早くしてってば!!ニャンコ先生がおかしいの!」
「日暮さん、違います!」
え?違うって?
「ニャンコ先生は、日暮さんの方に引っ張られています!!」
その声がかかった瞬間、ニャンコ先生が椅子の上から私めがけて、文字通り『飛んで』きたのだった。
☆☆☆
「さあ、愛理ちゃん・・・次は君の番だよ」
ゆっくりと私の手が引っ張られ、まどろみの中から引き起こされる。
あれ?私・・・裸?なんで?
少し広いお部屋の中、あちこちに人がいる。ああ、でもみんな裸だ。
じゃあ、いいのか・・・。
後ろを振り返ると、ふわっとしたおふとんが敷かれていた。どうやら私はそこで裸でころころと微睡んでいたみたいだった。
よく目が見えないので、何度かこすってみると、やっとはっきりし始めた。
目の前には優しそうな男の人がいた。その人は裸ではなく黒っぽいお洋服を着ていた。
「さあ・・・『赤』だよ。お口を開けて・・・」
その人が指で摘んで見せたのは『赤色』だった。それを見た瞬間、心と身体の奥から爆発するような渇望が吹き出した。
「あ・・・あ!ちょうだい・・・ちょうだい!!!」
口を開け、舌を出し、早くお口に入れて欲しいと強請った。私の幸せの元。気持ちいい、気持ちいい薬・・・。
早く、早く・・・!
男の人が舌にそれを乗せてくれるのを涎をダラダラと垂らしながら、私は待っていた。そして、薬が口に入れられると、うっとりとそれを舐め始める。
何か、あったかいものが皮膚から沁み込んでくるように感じる。それは身体の奥まで入り込み、私のお腹の中をかき混ぜ、背筋を伝っていき、脳を侵す。
身体の奥がずくん、と疼いてくる。
ああ・・・まただ。
これを飲むと、ホシくなる。もっと、もっと、ホシくなる。
何度も、何度もされた、あの行為をありありと思い出す。頭が、じゃない。身体が思い出してしまうのだ。
じゅわっとお股が濡れ始める。
身体の奥から、蜜が溢れてくる。
ここの人達が言っていた。
これは、愛液・・・私のラブジュース・・・
ああ、そうだ。
ホシかったらこう言え、と教わったんだった。
もう、たまらない。我慢できない。
早く・・・早くシテほしい・・・
「ああっ♡・・・ちょうだい・・・ちょうだい!!オマンコ・・・オマンコしてぇ!!」
足を開いて、お股のところにある女の花びらを指で開いて。私は淫らに喘いだ。それを見て、満足そうに男の人が頷く。
「ああ、いいね、大分仕上がってきてるね。おねだりはもう十分覚えたね。・・・うん、さ、愛理ちゃん。もちろんシテあげるよ・・・だから、今日も、大事なこと、しっかり覚えようね・・・ほら、まずは復習だ・・・この間やっただろ?唾液たっぷりのフェラチオだよ」
いつの間にか私の横に別の男の人が立っていた。その人は全裸で、私の目の前に大きくなった男の子のモノを突き出してきた。
あ・・・そうか、習ったとおりに・・・
習ったとおりにしなきゃだ・・・
足元に跪くと、お顔をしっかりと見上げて、男の子のモノ・・・おちんちんを丁寧に右手にとって・・・。それから、たまたまの部分を左手で優しくなでなでする・・・そして・・・
私は口を開くと、ぬらぬらと濡れた亀頭をちゅぷっと含んだ。
唾液をお口いっぱいにして・・・
これから、このおちんちんが私を気持ちよくしてくれるから、感謝の気持ちでするんだよって、言われた。
ああ、おちんちん、おちんちん好き・・・これ好き・・・・
ちゅ・・・じゅぶ・・・あむ・・・む・・・
最初は亀頭をお口に含んで、歯を立てないように、優しく、優しく。
少ししたらもう少し奥まで挿れて、舌でぐにぐにとお口の中でこね回すみたいに。キャンディーをいっぱいとろかすみたいに、舐める。
そして、しばらくしたら違う刺激を・・・
ちゅっと、吸い上げる。
れろ、れろ、じゅぶ・・・ぶちゅ・・・じゅぶぶ・・・ぶ・・・あむ
ちゅ・・・ちゅ・・・
お口をすぼめて強く吸う。
左手で少しだけ強く、たまたまを揉んであげる。
うぅっ・・・って、男の人が気持ちよさそうな声を上げたら、深いストロークを始める・・・
手でしごきながら、口をすぼめて大きく首を動かして・・・舌をおちんちん全体に絡ませながら吸い上げていく。
この頃には私も目を閉じて、お口の中で固くなっている『男』を感じながら、首もお口も手も全部使って必死に気持ちよくしてあげる。
ぷっくりとお口の中でその先が膨らむのを感じると、ああ、もうすぐだな・・・って思う。
びゅっ、びゅっ、びゅ!
口の中でおちんちんが跳ね、喉の奥に精液が飛び込んでくる。このときにうまく喉を締めてあげると気持ちがいいって教えてくれた。そして、そうすると私も咳き込まなくて済むのだ。ちょっと苦いけど、男の人の濃い匂いがお口いっぱいになってとても幸せな気持ちになる。
ああ、いっぱい・・・いっぱいだよぉ・・・
次は、そのまま精液を飲み込まないで、お口を開けて・・・よく、見せる。私のお口の中、あなたのオスの精液でいっぱいです。ドロドロです・・・って、見せるの。男の人が、いいよって言うまで、じっくりじっくり舌で口の中、ドロドロの精液を転がすようにして、味わっているところを見てもらう。
匂いでくらくらし始めた頃に、やっとぽんぽん、って頭を叩かれる。
こうなったら、いいよ、のサイン。だから、お口を閉じて、くちゅくちゅってして、口いっぱいに沁み渡らせているいやらしい音を聞いてもらって・・・それから、ごっくん。
飲んだら、また、見せる。
ほら、全部、ちゃんと飲んだよ・・・って。
これでいい?
習ったこと、全部できている?
「うんうん・・・愛理は優秀だね・・・」
頭をなでなでされて、私はまたまたとても幸せになった。
でも、すぐにまたもじもじし始める。あそこが・・・女の子の部分がすっごく切なくなってきている。たらたらと愛液が流れて、つーって、糸を引いている。
早く、早くここに欲しいよ・・・
私はこの間のことを思い出してうっとりしていた。
『赤色』を飲ませてもらったら、頭も身体もふわふわ気持ちよくなって
アソコがぐじゅぐじゅって・・・いっぱい濡れて
何もしていないのに、きゅんきゅんして
「さあ、準備できたね?」
おじさまの優しい声。初めてをもらうよって言われて、すっごく嬉しくて。
足を開いてご覧って言われて、大きく開いた。
下のお口からはだらだらって涎みたいにいっぱいお汁が出てて、恥ずかしいって言ったんだけど、「すっごく可愛いよ」って言ってもらえて嬉しくて。
そのまま、おじさまの太くて固い、血管が浮き出た男の人のモノが入ってきた。
『初めて』は痛いって聞いてたから少し怖かったけれど、全然大丈夫だった。まるでずっとこうなることが決まっていたみたいに、ぴったりお腹の中にくっついてるみたいで。
ずん、ずん、って突かれるたび
私はあん、あん、って気持ちよくなって
奥をトントンされて、お股がビシャビシャになって
このときだ、そう。初めてエッチな言葉でおねだりしなさいって教えられて
ここはオマンコっていうんだよ
今、愛理に入っているのは、おちんぽとか、おちんちん、っていうんだよ
これは愛液っていうんだよ
そして、こうしてほしかったら、オマンコ拡げて、おねだりするんだよって
ずん、ずん、突かれて
奥がどんどん切なくなって、気持ちいいのが爆発しそうになって、私はおじさまにしがみついちゃって。そうしたら、ぎゅうって抱きしめてくれて。
「中に出して、って言いなさい」
って命令されたから、私、嬉しくて、言ったの。いっぱい言った。
「中に!中に出してぇ!!」
叫んで、悶えて・・・オマンコ、きゅんってして、おじさまのおちんちんを締め付けて、それで奥にびゅっびゅっていっぱいいっぱい精液が入ってきて。お腹の中、すっごく幸せでいっぱいになって・・・・
とろん、て目が蕩けちゃって
ずるっておちんちん抜かれたら、オマンコ切なくなっちゃって、いやいやって頭を振っちゃった。
だから、お願いしたの。またエッチな言葉で。ちゃんとおねだりしたの。
四つん這いになってお尻を振って、オマンコ指でぱっくり開いて・・・
「あん♡・・・おちんちん、オマンコしてぇ・・・いっぱい中に出して」
あの日は、その後、おじさまに一回。それから、違う人たちからたくさんおちんちんを挿れてもらった。
お腹の中にたくさんたくさんあったかいの、注がれちゃったな・・・
そんなことを思い出して、私はまたトロン、トロンとしてしまう。
そう、そして、この間は、クリトリスにブルブル震えるローターを付けてもらって、おっぱいもいっぱいいっぱいかわいいかわいいってつまんだり揉まれたりして、それで、おっぱいとオマンコで何度もイッちゃって。
太いバイブを渡されて、『自分で挿れなさい』って。本当はおちんぽの方が良かったんだけど、見られてて、とってもドキドキしちゃって、あとでおちんちんくれるって言うから、自分でそれを、オマンコにずぶぶって奥まで挿れたんだ・・・。あれ、すごかった。ぐちゃぐちゃって音がして、体の中をかき回す感じがすごくって、何度も何度も、愛液をびゅうびゅう出しながら、イッちゃって・・・
たくさんのおちんちんをぺろぺろフェラチオして、フェラチオしながら後ろからおちんちん挿れてもらえて、前も後ろもいっぱいいっぱい幸せにしてもらえて・・・
だから、今日も・・・今日も・・・愛理に、ご褒美・・・早くご褒美ちょうだい・・・
「ちょうだい・・・おちんちんして・・・ずぶずぶしてぇ!!」
ちゃんとおねだりするから。ほら、オマンコ指で拡げて、ピンクのぐじゅぐじゅになった私のいやらしいところいっぱい見せるから・・・だから、早く、早くぅう!
私は精一杯の言葉で男たちにおねだりをした。
つい数日前までは、男の人のおちんちんなんて知らなかった私の花びらは、赤く淫らに咲き乱れ、メスの匂いを振りまく蜜でヌルヌルにまみれていた。
そんな私を見て、男たちは満足そうに笑っていた。
☆☆☆
ああ・・・びっくりしたー!!
飛んできたニャンコ先生を無事キャッチ。そして、この謎の吸引現象は、10分ほどで落ち着いた。
引っ張られる力がなくなったことから、ニャンコ先生は私の腕の中から飛び降り、地面にスタンと着地をする。はあ、やれやれと言っているかのように、またお気に入りの場所、私の研究机の椅子の上で丸くなっていた。
一体全体、こりゃどういうわけだ?
青い方は何も起きなかった。
黄色い方を飲んだらニャンコ先生が突然私に引っ張られてきた。
原理は今のところ不明だが、この錠剤。飲むと呪的なものを引き寄せてくる・・・という仕組みみたいだ。
そうか、今この部屋には私しかいなくて、しかも陰陽寮の結界と、部屋の四隅に張った水公結界の二重の結界で守られている。その中にいる呪的なものと言えばニャンコ先生だけ・・・だからニャンコ先生が引っ張られた?
これ、もし、外で飲んだらどうなったのだろう?
そこを考え始めた時、私は背筋にゾクリと冷たいものが走るのを感じた。
もしかして・・・。
私は猫神を部屋の外に出すと、もう一度、青と黄色の錠剤を容器から一錠ずつ取り出した。
唾液・・・いや、水か?
とりあえずビーカーに実験用の純水を入れ、スポイトで青い方にぽたりと一雫垂らしてみた。青い錠剤には私が予想した通りの『変化』が現れた。
やっぱり!
そして、もう一度、今度は黄色い方にも、ぽたり。そちらにも同様の『変化』が見られた。
予想通りの結果を得て、私は自身の仮説が正しいことを確認した。そして、確認するとともに、再びゾッとしたのだった。
こんなものが、高校生に出回っているなんて・・・
早く、なんとかしなくちゃ。
私は今、水をかけた錠剤を厳重に封印容器に保管すると、その他の実験用具を手早く片付けた。廣金くんに実験室を開けてもらうと、白衣を脱いで外出の準備をした。
猫神が私の意を汲み、足元にやってきて、「にゃー」と一声鳴いた。
「日暮様・・・一体どうしたんですか?」
何が起きているのかわからない廣金くんが戸惑いの声を上げる。私は今、実験で分かったことを手早く伝えると、土門への伝言を頼んだ。
応援を待つべきかもしれないけれど・・・
こうしている間にも、誰かがあの薬の餌食になっているかもしれない。
そう思ったら居ても立ってもいられなかった。
「お願い、廣金くん。私は先に行って、この薬の販売元、調べとくから、応援を呼んでもらって!」
そう言い残して、研究室を後にした。
後ろから廣金くんが「え!?ちょっ・・・ちょっと!」と声をかけてきていたが、私の気持ちは逸っていた。その気持ちのまま、走り出していたのだ。
でも、普段の私は臆病であり、通常は、こんな蛮行には及ばない。
絶対に、土門に報告し、体制を整えてから行動する。
そんな私がなぜ、こんな正義感に駆られたような行動に出たのか?
そう、このときの私は、自分でも知らず知らずの内に、黄色い錠剤の影響を、ほんの少し、受けてしまっていたのだ。
ここでの判断を、私は後にものすごく悔いるハメになる。
なぜなら、ここでの独走がきっかけで、私は、後に『ゴースト・ドラッグ事件』と呼ばれることになる、この事案の当事者の一人になってしまったからだ。
【雲散鳥没】雲のように空に散り、鳥が姿を消すように、物事が跡形もなく消え失せること。
あっれー?どっかに消えちゃった!?みたいな。
♡ーーーーー♡
プラスチックの容器から、直径1センチに満たない黄色いラムネのような『それ』を取り出す。『青色』は何度も試したけれども、『黄色』はこれで2回目。【お薬屋】は「その時々の体調で効果が変わるかもしれない」等と言っていた。
3日前に飲んだときは、目の前がぱっと明るくなった。目に感じる光が一段と強くなったように感じたし、筋肉がよりしなやかに動く気がした。気分が高揚し、何でもできるんじゃないか、みたいなウキウキした気持ちになった。実際に、その状態で体育の1500メートル走に挑んだら、いつもより全然疲れなかったし、記録もぐんと伸びた。先生がびっくりしていたのを覚えている。
あまりたくさんある薬じゃないので、ここぞというときに使いたい。
一瞬、躊躇するが、やっぱり飲もうと決心し、私は薬を口に入れた。
舌の上で転がすと、それは少し酸味の強いラムネのように口の中で溶けていく。甘酸っぱい味が広がると、薬が混ざった唾液ごと、飲み下した。
今日、また、私は母とぶつかった。
分かっている。高校2年生の1学期。来年の進路選択に向けて、各教科の成績が重要だということくらい、言われなくても分かっている。
分かっているにも関わらず、年度初めの統一学力テストの結果が思うようでなかったのを母に咎められて、私の心はざわついていた。
私だって、一生懸命やっているんだ。
手を抜いてなんていない。
あなたが私のことを考えて大学進学のためにハッパをかけているのだって、十分わかる。
でも・・・
あなただって、お父さんだって
出た大学は二流じゃん
その娘である私に何を期待するの!?
高校受験に失敗した時、あからさまに落胆した顔をしたあなた
あの顔、私は絶対に忘れない・・・。
ああ・・・イライラする
今日も大量の課題をこなさなければならない
身体も心も、休む暇すら与えられない
今、通っている学校は、『自称・進学校』の私立女子校。少しでも進学率を上げるためには努力は惜しまない姿勢だ。学校でも、家でも、内申、偏差値、学力向上・・・言うことはそれしかないのか。
逃げ場も居場所もない。
辛い、辛い・・・とても・・・辛いよ・・・。
そんな事を考えているうちに、じわじわと薬が、身体に沁み込んできたみたいだ。
トクン、と心臓の鼓動を強く感じる。
身体が内側から熱くなる。
色が・・・変わった?
世界から、暖色系の色がなくなり、紫や青、藍色に染まっていく。
普段気づかなかったモノが、キラキラと輝いているように見えた。
わあ・・・きれい・・・。
音が、よく聞こえる。
キッチンで夕飯の準備をしている母親の立てている音
隣の部屋でゲームをしている弟の体を揺すっている様子
外を走る車の音
ううん、それだけじゃない
歩いている人の吐息まで聞こえてくるようだ・・・
すごい・・・すごいよ、これ・・・
まるで、自分が周囲の世界に溶け合って、ひとつになったみたい
一回目もすごかったけれども、これもすごい。
これも「当たり」だ。
ちらりと課題に目をやる。
なんだ・・・簡単そうじゃないか。
何でも、本当にどんなことでもできる気がした。机に向かって、シャーペンを走らせる。ものすごい集中できる。色の変わった世界。問題を目にした瞬間に答えが浮かんでくる。浮かんでくる回答を書くのに、手がついていかないほどだった。
英語があっという間に終わった。
そして、数学と化学
社会の課題も15分ほどでカタがついた。
最後は国語
あまり得意ではないが、これも同じだった。
目が縦から横にすらすらと動いていく。頭にスルスルと文章が入ってくる。問題文に当てはまる答えがまるで浮き上がって見えるかのようで、何の難しさも感じない。
すごい・・・!
これがあれば、受験も何も、怖くない。
母にも父にも何も言わせない!
もっと、もっと、私は私でいられる。
そのためには・・・
ぱたん、とテキストを閉じて、窓から外を見る。
昼間だと言うのに、薬の効果のせいで、薄闇に染まったように見える美しい町並みがそこにはあった。
そのためには、もっと、このお薬を貰わなきゃ。
そういえば言っていた・・・【お薬屋】が、言っていた。
『ぜひ、新しいモニターを紹介してください。そうしたら、もう一瓶プレゼントしますよ』
そして・・・
『坂本さんは、『赤』はまだ試していないですよね?』
『新しいモニターがいたら連れてきてください・・・『赤色』もプレゼントしちゃいます』
『赤色』の薬・・・
青より、黄色の方がすごかった。
それなら、赤は一体、どうなるんだろう。
どんな体験ができるんだろう?
それを思うと、居ても立ってもいられなかった。早く試してみたい。頭の中はその思いでいっぱいになる。
課題は終わった。じゃあ、もういいよね?
文句、ないでしょ?
私は窓を開けて、そこからぴょんと、外に飛び出したのだった。
☆☆☆
5月の某日。
宮内庁陰陽寮占部衆に併設された会議室で、衆の幹部会議が行われていた。当然、占部の『属の一位』である、私、日暮美澄(ひぐらし みすみ)も参加している。
しかし、私は、この会議というのがどうも苦手だった。多分、それは我が衆のボスであるところの土門杏里も同意してくれるのではないかと思う。
あーあ、早く終わんないかなあ・・・。
先日の黄泉平坂を巡る大きな戦いから2週間が経過していた。事件の事後処理でてんやわんやだった陰陽寮も、やっと日常の平穏を取り戻しつつあった。
あの事件でも大活躍だったという、浦原綾音の退院は来週を予定しているそうだ。まあ、一度『死んだ』にも関わらず、1ヶ月程度の入院で済んでいる方が奇跡と言えば奇跡だ。その点に関しては、あの時、結界の内側に送り出した身として、私もものすごい責任を感じていた。
本当に、生きててよかった。
同時に、その時同席できなかったのが、心底、悔やまれた。
『魂呼せの秘法』
そんな珍しい、もう今生では二度とお目にかかれないような秘術の執行を目にする機会を逸したことは、術式の調査研究を生業のひとつとしている陰陽部門占部衆に所属する陰陽博士としては、『口惜しい』の一言では済まされないほどの気持ちを掻き立てられた。
「・・・っていう依頼が来てんだけど・・・美澄、やれそう?」
は!
しまった。
突然、その私の上司たる土門から名を呼ばれて、私は居住まいを正す。つい、ぼんやりと先日のことに思いが漂ってしまい、会議中であることを忘れるところだった。
「あ・・・ええ!ええ!で、できます!!」
そうは言ったものの、何を聞かれたかまるで分かっていなかった。
まあいいや。あとで冴守か設楽にでも聞けばわかるだろう。
ところが、
「土門様、おそらく日暮さん、聞いてなかったですよ」
などと、冴守が余計なことを言う。
こ・・・こいつ!!
相変わらず空気が読めないヤツ!!
一応、私のほうが位階が上なんだから、も少し立ててくれたっていいじゃない!
どちらかというと、冴守よりも土門の方が私と近い性質を持っているように思う。研究熱心で、一つのことに夢中になると周りが見えなくなる。それに、とことん追求しないと気がすまない。ある意味、学者肌。とても優秀で、陰陽寮の中でも特に土御門様からの信頼も厚い私の尊敬する上司のひとりだ。
ただ、そのあまりの変人ぶりから、人は陰に陽に彼女のことを「マッド・ソーサラー」などと呼んでいるのだが・・・。
まあ、近い性質とは言え、私はあそこまでぶっ飛んではいない・・・つもりだけど、それでも、よく似てるなとは思う。そんな土門がトップにいるからこそ、この『占部衆』は私にとって理想の職場であるといえるのだ。
やれやれ、といった様子で、その土門が再び同じ説明をしてくれた。多分、私の性格に対する理解があるのだろう、と勝手に思うことにする。
「都内で女子高生の行方不明事件が多発しているのです。まあ、いなくなっているのは高校生だけってわけじゃないんですが、女子高生が圧倒的に多い。今月だけですでに4人いなくなっているのです」
え?4人も!?
「類似の事件と思われるのは、今年の3月から発生していました。当時、同時に発生していた辻神事件に紛れてしまっていたのですが、あちらより低い年代の子だということもあり、また、家出という線で捜査がなされていたことから、あまり捜査陣の目を引くことがなかったようです。しかし、今回、改めて精査したところ、今年の3月からの同種案件と思われる行方不明者が累計で30人を超えていることがわかったのです。」
冴守が手帳を見ながら冷静にデータ面での情報の補強を行う。こんなふうなまめまめしさがこの男の大きな特徴であった。
えええ!!!さ、30人!!
「今回、この件が陰陽寮に上がってきたのは、4日前に捜索願いが出された高校2年生の坂本愛理さんの件がきっかけなのです。どうやら、この愛理さん、ある日の夕刻に、自宅マンションの窓から裸足で失踪した・・・ということなのです。おかしいですよね?」
「ちなみに、坂本さんのお住まいは、マンションの5階です」
家出をするにしても、裸足で、しかも、5階の窓から飛び降りるなんて・・・たしかにおかしい・・・というか、可能なのか?
「警察もさすがにこれはおかしいと判断し、呪殺班が動いたのです。結果、愛理の自室から押収されたのが、これ・・・」
土門が示したのは、アメリカのサプリなんかがよくこの形で売られているよね、というようなプラスチック製の白いボトルだった。商品名やロゴなどの表示は何もなく、ただボトル部分は白、蓋の部分は緑色だった。大きさは高さ15センチほどだろうか。小型の容器だった。
「中には直径が9.3ミリメートル、高さ4ミリメートルほど、色は薄い青と黄色の二種類があるのですが、そういった錠剤様のものが数個残っていました。」
冴守、細かいなあ・・・
「その薬っぽいものなんですが、警視庁の方で調べた結果・・・」
要は怪しい薬、危険ドラッグの類ということなのだろう。それでラリって窓からジャンプ・・・みたいな?
「ただのラムネだったのです」
はい?
ラムネ?
「成分は、果糖、ぶどう糖、食塩、クエン酸、レシチン、乳酸カルシウム、香料としてシトラール、あと、着色料として、タートラジンやブリリアントブルーが少量・・・要は普通のラムネと同じ成分です」
私は化学の知識はあまりないので、冴守が冷静に読み上げる原材料名を聞いてもピンとこない。しかし、まあ、結果はわかる。
要はラムネ以外の何物でもない・・・ということか?
「ただ、これ、怪しいのです。坂本はこの『薬』をしきりに同級生にも試すように言って回っていたというのです。彼女自身は何らかの『薬効』を感じていた、ということなのですが、そういった薬用成分は全く入っていない・・・奇妙なのです!」
「そ、それは・・・あの・・・なんとか効果っていうやつでは?」
私がうろ覚えで言うと、冴守がすかさず「プラセボ効果、ですね?」と言ってくる。
そういうところがね、あなた、モテないんだよ!!
「その線も考えました・・・が、プラセボで5階の窓から飛び降りる膂力を得られるとは思えないのです。足折って、怪我するのが関の山なのです。」
ということは、何らかの『薬効』がある・・・と?
「というわけで、こちらに鑑定依頼が回ってきました。なんらか、呪術的な作用がないか、それを調べられますか?・・・美澄」
あ、そういうこと?
ここで私の名前が出たわけだ。
私がこの時、咄嗟に思ったのは「面白そうじゃない!」ということだった。
「わかりました!この日暮美澄・・・ミスリンにお任せあれ!」
こうして、私はこの奇妙な事案の捜査に関わることとなった。
☆☆☆
頭が、ぼんやりする。
まるで、ピンク色の霞がかかったみたい。
とっても、とっても気持ちがいい。
ふわふわって、身体が浮かび上がっている。きっと、雲の上に乗ることができたら、こんな感じなんじゃないだろうか?
それとも、私、本当に雲の上にいるのかもしれない。
学力テストの成績のことだって
今度の中間テストのことだった
お母さんのお小言も
塾の面倒な課題も
ほわんほわんと、みーんな遠くに行っちゃって
こんな、安心で、心地よいことなんて、ここ最近あったかな?
猫がひだまりで寝ているときってこんな感じ?
「・・・てるね」
「ああ、もうすぐ・・・だからね」
誰か、いるのかな?
話し声がする。男の人?
手も足も、みーんなとろけちゃっているみたいで、形がよくわからない。お腹の中、じんわりあったかくて、ここが一番気持ちがいい。
どうして、こんなに気持ちよくなっているんだっけ?
そこまで考えて、やっと私は思い出した。
『赤色』・・・
それで、ふわふわして
そうだ・・・そう。
いっぱい、いっぱい、大事にされて
お腹の中があったかくなって
私、気持ちよくなって
気持ちよくしてもらって・・・
すごい、幸せで
何もかも忘れてしまえて
・・・うん・・・うん・・・
もう一回してくれるって、言ってたよね?
楽しみ・・・あれ、好き・・・すごく・・・好き。
早く、して・・・早く・・・シテ・・・・。
相変わらず男の人がお話している。
もうすぐ、なんとか、とか、
あと2回くらいで・・・なんとか、とか・・・
そこまで考えたところで、私の頭、疲れちゃったみたいで
また、とろんとろんと、夢の中に堕ちていった。
☆☆☆
「日暮様、こちらは準備できました」
ガラス窓の向こうから、助手に指名した廣金くんが声をかけてくる。
さて、と・・・
ここは私の執務室兼研究室だ。部屋に戻った私は、早速、プラスチックの容器の中に入っている『薬』と向き合っていた。
まあ、経緯から危険はないとは思うが、念の為、白衣を着て、ゴム手袋をはめ、一応目にはゴーグル、N95マスク。部屋の換気はしっかりと。
また、万が一にもこの錠剤が呪的な作用を引き起こしても大丈夫なように、水公の簡易結界を部屋の四隅を基点に張っている。これで、何某かの呪的ハザードが起こっても、少なくともダイレクトに陰陽寮を汚染することはないはずである。
ついでに、ガラス窓の向こうには、不測の事態があった場合の連絡要員として廣金くんを配置してある。安全対策はバッチリ。準備は万端だった。
「はじめまーす!」
ピンセットで慎重にひとつ、錠剤をつまみ出す。
まずは『青』それから『黄色』
二枚の薬包紙の上にひとつずつ、置く。
形状を観察する。確かに、双方同じ大きさ。上から見ると直径1センチ弱の円形で、表面はツルンとしており、表裏とも、やや中央が膨らんだ形をしている。横から見ると丁度、紡錘型になるような感じだ。見た目の色合いは一様ではなく、青も黄色も、ぼつぼつとより色が濃いところがあるみたいだった。
裏表、確認してみるが、薬にあるようないわゆる識別記号のようなものはなかった。
さらに、部屋にある機器で呪力を測定してみるが、特段の反応はなかった。
これで成分がラムネなら、本当にただのラムネ、ということになる。
ううーん・・・どうしよう?
ちょっと違うアプローチをしてみることにした。
私は部屋の引き出しから一枚の符を取り出す。符には五芒星と、その下に猫の肉球のような形だね、とよく言われる小さい円が3つ、大きい円が1つで構成されている『梅紋』が描かれており、一番大きな円の中に『鬼』と記載されていた。
その符を手に、私は式神勧請の呪言を奏上する。
「鬼々夜叉神 太陰 生門 荒御魂来世」
符を頭の上に高く持ち上げ、そこからひらりと落とした。
「おいでませ!ニャンコ先生!」
符はひらひらと舞い落ちながら光り輝き、丁度私のお腹の当たりでくるりと一回転する。そのときにはすでに黒猫の姿になっており、スタン!とそのまま華麗に地面に降り立った。
一回、前足を伸ばしククッと背を伸ばす。
ぺろぺろと前足をなめなめ、顔を洗っている可愛らしい黒猫。これが私の式神『猫神』だった。ちなみに、ニャンコ先生、というのは、私がこの子につけたあだ名みたいなものだ。
「ニャンコ先生・・・これ、どう思います?」
よいしょっとニャンコ先生を抱えあげると、テーブルの上にとんと置いた。猫神は二つの薬をちらりと見ると、ゆっくり顔を近づけてふんふんと匂いを嗅ぎ出した。しかし、10秒ほどで興味を失ったようにくるりとそっぽを向いて、テーブルから下りていき、いつも私が座っている椅子にむかってスタスタ歩いていくと、あっというまにそこでくるんと丸くなって寝てしまった。
・・・うーん・・・ニャンコ先生でも何も感じないのか・・・
装置でも、式神でも、そしてもちろん自分自身の呪力感知にも、何も引っかからない。・・・はて?どうしたものか?
人体実験、してみようかな?
ちらっとガラス窓の向こうで機関誌「おんみょうタイムス」を読んでいる廣金くんを見る。一瞬邪悪な発想が脳裏をよぎったが、ぶんぶんと頭を振ってその思いを追い出す。
いや、後輩にやらせるとか、外道でしょう!?
じゃあ、しょうがない・・・自分で試すか。
そもそもが女子高生の部屋で押収され、おそらくその子はこれを飲んだのだろう。容器の大きさと中に残っている薬剤量から言って、一錠飲んですぐにどうこうなる、ということはないだろうという予測が立ったのも私の決断を後押しした。
「さて、問題は、黄色と青、どっちを試すか、だな・・・」
うーん・・・黄色か、青か?
まるで、映画のラストシーン爆弾解除で赤い線か青い線かを選ぶシーンみたい・・・じゃ全然ないな。
とりあえず青にすることにした。
意味はない。なんとなく、好きな土門が好んで紫っぽい色の服を着ているから、それに引っ張られてというくらいだ。
「廣金くん!私さ、これ飲んでみるから、なんか異常があったら対処よろしくね!」
声を掛けると、廣金くんがびっくりしてこっちに来ようとする。
いや、大丈夫だってさ・・・
そもそも、そこの扉、鍵外さないと開かないし。
よほど焦ったのだろう。彼は鍵も取り出さずにガチャガチャと取っ手を回しているようだった。私は構わずポイと青い方を口に入れる。
それは、舌の上で、しゅんと溶けていく。
味は、甘酸っぱいラムネの味。
もぐもぐ・・・ごっくん
完全に飲んだ・・・飲んだけど・・・
ん?
別に、体調にも何にも変化はない。
私は両手をワキワキ握ったり開いたりしてみたり、首を回してみたり、ぐっと伸びてみたりしたが、身体感覚も、知覚も、精神状態にもなんら変化は見られなかった。
んー?
どういうこと?
その時、がちゃっと扉が開いて廣金くんが入ってきた。
「ちょ・・・日暮さん!そんなの飲んだら、あ、危ないですよ!」
気が弱い廣金くんはオロオロとしている。
「うーん、でもね、飲んでもなんにも起きないのよ・・・」
「そうなんですか?」
「うん・・・黄色い方も飲んでみようと思うからさ、とりあえず外出てて」
まだ、なにか言いたそうにしている廣金くんをぐいぐいと扉の外に押し出すと、それを閉め、向こうから鍵をかけさせた。こうすれば、万が一私がトチ狂っても外に出ることだけは防げるわけだ。
んじゃ、黄色、行ってみよー!
ポイっと黄色い方も口に入れてみる。
溶け方も味も何もかもが先程と同じだった。
変化は、うーん・・・
「特には・・・」
ないなあ、と言おうとした時、しゃーっ!!と猫神が警戒の声を発した。何事!?と思い、そちらを見ると、その姿がブレているように見える。
「にゃあああ!!!」
何者かがニャンコ先生に干渉している!?
猫神の姿がブレ、ぐいんと歪み、引き伸ばされそうになっている。その力に猫神が必死に抵抗をしているようだった。
誰かに引っ張られている?
それはあたかも、どこかの術者が猫神の呪力を吸収しようとしているかのようだった。
誰?
周囲を見回す。ブレ具合から言って、私の後ろの方から引っ張られているような・・・。
しかし、後ろを振り返っても何も無い。特に呪力も感じない。
じゃあ、どこから?
部屋のあちこちを探してみるが、何も見つけることができなかった。その間も、猫神は「にゃあ!!」とか「しゃー!!」とか言って、苦しそうにしている。
「日暮さん!」
私が探し回っているのが外から見えたのか、廣金くんが実験室のマイクをオンにして話しかけてきた。ちょうどいい、外からも探してもらおう。
「廣金くん!ニャンコ先生がどっかから引っ張られているみたいなの?呪力源を特定して!!」
「日暮さん!日暮さん!」
「だから!早くしてってば!!ニャンコ先生がおかしいの!」
「日暮さん、違います!」
え?違うって?
「ニャンコ先生は、日暮さんの方に引っ張られています!!」
その声がかかった瞬間、ニャンコ先生が椅子の上から私めがけて、文字通り『飛んで』きたのだった。
☆☆☆
「さあ、愛理ちゃん・・・次は君の番だよ」
ゆっくりと私の手が引っ張られ、まどろみの中から引き起こされる。
あれ?私・・・裸?なんで?
少し広いお部屋の中、あちこちに人がいる。ああ、でもみんな裸だ。
じゃあ、いいのか・・・。
後ろを振り返ると、ふわっとしたおふとんが敷かれていた。どうやら私はそこで裸でころころと微睡んでいたみたいだった。
よく目が見えないので、何度かこすってみると、やっとはっきりし始めた。
目の前には優しそうな男の人がいた。その人は裸ではなく黒っぽいお洋服を着ていた。
「さあ・・・『赤』だよ。お口を開けて・・・」
その人が指で摘んで見せたのは『赤色』だった。それを見た瞬間、心と身体の奥から爆発するような渇望が吹き出した。
「あ・・・あ!ちょうだい・・・ちょうだい!!!」
口を開け、舌を出し、早くお口に入れて欲しいと強請った。私の幸せの元。気持ちいい、気持ちいい薬・・・。
早く、早く・・・!
男の人が舌にそれを乗せてくれるのを涎をダラダラと垂らしながら、私は待っていた。そして、薬が口に入れられると、うっとりとそれを舐め始める。
何か、あったかいものが皮膚から沁み込んでくるように感じる。それは身体の奥まで入り込み、私のお腹の中をかき混ぜ、背筋を伝っていき、脳を侵す。
身体の奥がずくん、と疼いてくる。
ああ・・・まただ。
これを飲むと、ホシくなる。もっと、もっと、ホシくなる。
何度も、何度もされた、あの行為をありありと思い出す。頭が、じゃない。身体が思い出してしまうのだ。
じゅわっとお股が濡れ始める。
身体の奥から、蜜が溢れてくる。
ここの人達が言っていた。
これは、愛液・・・私のラブジュース・・・
ああ、そうだ。
ホシかったらこう言え、と教わったんだった。
もう、たまらない。我慢できない。
早く・・・早くシテほしい・・・
「ああっ♡・・・ちょうだい・・・ちょうだい!!オマンコ・・・オマンコしてぇ!!」
足を開いて、お股のところにある女の花びらを指で開いて。私は淫らに喘いだ。それを見て、満足そうに男の人が頷く。
「ああ、いいね、大分仕上がってきてるね。おねだりはもう十分覚えたね。・・・うん、さ、愛理ちゃん。もちろんシテあげるよ・・・だから、今日も、大事なこと、しっかり覚えようね・・・ほら、まずは復習だ・・・この間やっただろ?唾液たっぷりのフェラチオだよ」
いつの間にか私の横に別の男の人が立っていた。その人は全裸で、私の目の前に大きくなった男の子のモノを突き出してきた。
あ・・・そうか、習ったとおりに・・・
習ったとおりにしなきゃだ・・・
足元に跪くと、お顔をしっかりと見上げて、男の子のモノ・・・おちんちんを丁寧に右手にとって・・・。それから、たまたまの部分を左手で優しくなでなでする・・・そして・・・
私は口を開くと、ぬらぬらと濡れた亀頭をちゅぷっと含んだ。
唾液をお口いっぱいにして・・・
これから、このおちんちんが私を気持ちよくしてくれるから、感謝の気持ちでするんだよって、言われた。
ああ、おちんちん、おちんちん好き・・・これ好き・・・・
ちゅ・・・じゅぶ・・・あむ・・・む・・・
最初は亀頭をお口に含んで、歯を立てないように、優しく、優しく。
少ししたらもう少し奥まで挿れて、舌でぐにぐにとお口の中でこね回すみたいに。キャンディーをいっぱいとろかすみたいに、舐める。
そして、しばらくしたら違う刺激を・・・
ちゅっと、吸い上げる。
れろ、れろ、じゅぶ・・・ぶちゅ・・・じゅぶぶ・・・ぶ・・・あむ
ちゅ・・・ちゅ・・・
お口をすぼめて強く吸う。
左手で少しだけ強く、たまたまを揉んであげる。
うぅっ・・・って、男の人が気持ちよさそうな声を上げたら、深いストロークを始める・・・
手でしごきながら、口をすぼめて大きく首を動かして・・・舌をおちんちん全体に絡ませながら吸い上げていく。
この頃には私も目を閉じて、お口の中で固くなっている『男』を感じながら、首もお口も手も全部使って必死に気持ちよくしてあげる。
ぷっくりとお口の中でその先が膨らむのを感じると、ああ、もうすぐだな・・・って思う。
びゅっ、びゅっ、びゅ!
口の中でおちんちんが跳ね、喉の奥に精液が飛び込んでくる。このときにうまく喉を締めてあげると気持ちがいいって教えてくれた。そして、そうすると私も咳き込まなくて済むのだ。ちょっと苦いけど、男の人の濃い匂いがお口いっぱいになってとても幸せな気持ちになる。
ああ、いっぱい・・・いっぱいだよぉ・・・
次は、そのまま精液を飲み込まないで、お口を開けて・・・よく、見せる。私のお口の中、あなたのオスの精液でいっぱいです。ドロドロです・・・って、見せるの。男の人が、いいよって言うまで、じっくりじっくり舌で口の中、ドロドロの精液を転がすようにして、味わっているところを見てもらう。
匂いでくらくらし始めた頃に、やっとぽんぽん、って頭を叩かれる。
こうなったら、いいよ、のサイン。だから、お口を閉じて、くちゅくちゅってして、口いっぱいに沁み渡らせているいやらしい音を聞いてもらって・・・それから、ごっくん。
飲んだら、また、見せる。
ほら、全部、ちゃんと飲んだよ・・・って。
これでいい?
習ったこと、全部できている?
「うんうん・・・愛理は優秀だね・・・」
頭をなでなでされて、私はまたまたとても幸せになった。
でも、すぐにまたもじもじし始める。あそこが・・・女の子の部分がすっごく切なくなってきている。たらたらと愛液が流れて、つーって、糸を引いている。
早く、早くここに欲しいよ・・・
私はこの間のことを思い出してうっとりしていた。
『赤色』を飲ませてもらったら、頭も身体もふわふわ気持ちよくなって
アソコがぐじゅぐじゅって・・・いっぱい濡れて
何もしていないのに、きゅんきゅんして
「さあ、準備できたね?」
おじさまの優しい声。初めてをもらうよって言われて、すっごく嬉しくて。
足を開いてご覧って言われて、大きく開いた。
下のお口からはだらだらって涎みたいにいっぱいお汁が出てて、恥ずかしいって言ったんだけど、「すっごく可愛いよ」って言ってもらえて嬉しくて。
そのまま、おじさまの太くて固い、血管が浮き出た男の人のモノが入ってきた。
『初めて』は痛いって聞いてたから少し怖かったけれど、全然大丈夫だった。まるでずっとこうなることが決まっていたみたいに、ぴったりお腹の中にくっついてるみたいで。
ずん、ずん、って突かれるたび
私はあん、あん、って気持ちよくなって
奥をトントンされて、お股がビシャビシャになって
このときだ、そう。初めてエッチな言葉でおねだりしなさいって教えられて
ここはオマンコっていうんだよ
今、愛理に入っているのは、おちんぽとか、おちんちん、っていうんだよ
これは愛液っていうんだよ
そして、こうしてほしかったら、オマンコ拡げて、おねだりするんだよって
ずん、ずん、突かれて
奥がどんどん切なくなって、気持ちいいのが爆発しそうになって、私はおじさまにしがみついちゃって。そうしたら、ぎゅうって抱きしめてくれて。
「中に出して、って言いなさい」
って命令されたから、私、嬉しくて、言ったの。いっぱい言った。
「中に!中に出してぇ!!」
叫んで、悶えて・・・オマンコ、きゅんってして、おじさまのおちんちんを締め付けて、それで奥にびゅっびゅっていっぱいいっぱい精液が入ってきて。お腹の中、すっごく幸せでいっぱいになって・・・・
とろん、て目が蕩けちゃって
ずるっておちんちん抜かれたら、オマンコ切なくなっちゃって、いやいやって頭を振っちゃった。
だから、お願いしたの。またエッチな言葉で。ちゃんとおねだりしたの。
四つん這いになってお尻を振って、オマンコ指でぱっくり開いて・・・
「あん♡・・・おちんちん、オマンコしてぇ・・・いっぱい中に出して」
あの日は、その後、おじさまに一回。それから、違う人たちからたくさんおちんちんを挿れてもらった。
お腹の中にたくさんたくさんあったかいの、注がれちゃったな・・・
そんなことを思い出して、私はまたトロン、トロンとしてしまう。
そう、そして、この間は、クリトリスにブルブル震えるローターを付けてもらって、おっぱいもいっぱいいっぱいかわいいかわいいってつまんだり揉まれたりして、それで、おっぱいとオマンコで何度もイッちゃって。
太いバイブを渡されて、『自分で挿れなさい』って。本当はおちんぽの方が良かったんだけど、見られてて、とってもドキドキしちゃって、あとでおちんちんくれるって言うから、自分でそれを、オマンコにずぶぶって奥まで挿れたんだ・・・。あれ、すごかった。ぐちゃぐちゃって音がして、体の中をかき回す感じがすごくって、何度も何度も、愛液をびゅうびゅう出しながら、イッちゃって・・・
たくさんのおちんちんをぺろぺろフェラチオして、フェラチオしながら後ろからおちんちん挿れてもらえて、前も後ろもいっぱいいっぱい幸せにしてもらえて・・・
だから、今日も・・・今日も・・・愛理に、ご褒美・・・早くご褒美ちょうだい・・・
「ちょうだい・・・おちんちんして・・・ずぶずぶしてぇ!!」
ちゃんとおねだりするから。ほら、オマンコ指で拡げて、ピンクのぐじゅぐじゅになった私のいやらしいところいっぱい見せるから・・・だから、早く、早くぅう!
私は精一杯の言葉で男たちにおねだりをした。
つい数日前までは、男の人のおちんちんなんて知らなかった私の花びらは、赤く淫らに咲き乱れ、メスの匂いを振りまく蜜でヌルヌルにまみれていた。
そんな私を見て、男たちは満足そうに笑っていた。
☆☆☆
ああ・・・びっくりしたー!!
飛んできたニャンコ先生を無事キャッチ。そして、この謎の吸引現象は、10分ほどで落ち着いた。
引っ張られる力がなくなったことから、ニャンコ先生は私の腕の中から飛び降り、地面にスタンと着地をする。はあ、やれやれと言っているかのように、またお気に入りの場所、私の研究机の椅子の上で丸くなっていた。
一体全体、こりゃどういうわけだ?
青い方は何も起きなかった。
黄色い方を飲んだらニャンコ先生が突然私に引っ張られてきた。
原理は今のところ不明だが、この錠剤。飲むと呪的なものを引き寄せてくる・・・という仕組みみたいだ。
そうか、今この部屋には私しかいなくて、しかも陰陽寮の結界と、部屋の四隅に張った水公結界の二重の結界で守られている。その中にいる呪的なものと言えばニャンコ先生だけ・・・だからニャンコ先生が引っ張られた?
これ、もし、外で飲んだらどうなったのだろう?
そこを考え始めた時、私は背筋にゾクリと冷たいものが走るのを感じた。
もしかして・・・。
私は猫神を部屋の外に出すと、もう一度、青と黄色の錠剤を容器から一錠ずつ取り出した。
唾液・・・いや、水か?
とりあえずビーカーに実験用の純水を入れ、スポイトで青い方にぽたりと一雫垂らしてみた。青い錠剤には私が予想した通りの『変化』が現れた。
やっぱり!
そして、もう一度、今度は黄色い方にも、ぽたり。そちらにも同様の『変化』が見られた。
予想通りの結果を得て、私は自身の仮説が正しいことを確認した。そして、確認するとともに、再びゾッとしたのだった。
こんなものが、高校生に出回っているなんて・・・
早く、なんとかしなくちゃ。
私は今、水をかけた錠剤を厳重に封印容器に保管すると、その他の実験用具を手早く片付けた。廣金くんに実験室を開けてもらうと、白衣を脱いで外出の準備をした。
猫神が私の意を汲み、足元にやってきて、「にゃー」と一声鳴いた。
「日暮様・・・一体どうしたんですか?」
何が起きているのかわからない廣金くんが戸惑いの声を上げる。私は今、実験で分かったことを手早く伝えると、土門への伝言を頼んだ。
応援を待つべきかもしれないけれど・・・
こうしている間にも、誰かがあの薬の餌食になっているかもしれない。
そう思ったら居ても立ってもいられなかった。
「お願い、廣金くん。私は先に行って、この薬の販売元、調べとくから、応援を呼んでもらって!」
そう言い残して、研究室を後にした。
後ろから廣金くんが「え!?ちょっ・・・ちょっと!」と声をかけてきていたが、私の気持ちは逸っていた。その気持ちのまま、走り出していたのだ。
でも、普段の私は臆病であり、通常は、こんな蛮行には及ばない。
絶対に、土門に報告し、体制を整えてから行動する。
そんな私がなぜ、こんな正義感に駆られたような行動に出たのか?
そう、このときの私は、自分でも知らず知らずの内に、黄色い錠剤の影響を、ほんの少し、受けてしまっていたのだ。
ここでの判断を、私は後にものすごく悔いるハメになる。
なぜなら、ここでの独走がきっかけで、私は、後に『ゴースト・ドラッグ事件』と呼ばれることになる、この事案の当事者の一人になってしまったからだ。
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