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第15章 九頭竜八雲の学園生活編
連なる黒い策謀
「―――世界最強とは大きく出たな?死霊使い!」
「なにっ!?グオォアアオオオッ!!!―――お前はっ!!!」
そんなダヴィデの遥か上空から自由落下で降り立ち、そのまま黒炎剣=焔羅で袈裟斬りに斬り裂いた赤い閃光―――
「ポッと出の死霊使いが、世界最強を囀るなど―――千年早いわっ!!!」
―――遥か上空から下り立ったのは、この国の皇帝にして最強の剣聖イェンリン=ロッソ・ヴァーミリオンだ。
焔羅を携えてイェンリンがダヴィデを鋭い視線で睨みつけていた―――
―――巨大な古代龍の背中に乗り込んだ八雲とイェンリン
対峙するのは『古代龍の死骸葬装』と名づけられた黄土色に紫の筋が走る禍々しい鎧を纏ったダヴィデ=カノッサ―――
「ところで……お前は誰だ!!」
―――更に大声で、
振り返りながら叫ぶイェンリンの視線の先にいるのは―――
「おい、俺だ俺っ!」
―――『偉大なる黒神龍水霊装』を全身に纏った八雲だった。
「オレオレだとか言われても顔が見えなければ分からんだろうがっ!」
「オレオレ詐欺かよっ!―――俺だ!!八雲だよ!!」
「―――冗談だ。夫の気配くらいすぐに分かる」
「いや、冗談言ってる場合じゃないよね?」
目の前でそんなコントを見せられたダヴィデは、フルフェイスの下で歯軋りを響かせる。
「ふざけるなよぉ!貴様等ああああ!!―――まとめて消し飛ばしてやるわっ!!!」
「―――ッ!!」
怒りの頂点に達したダヴィデの鎧の背中から黄土色の盛り上がりが四本立ち上がると、それぞれの先端が変形して古代龍の頭が四つ形成されていった―――
「なんだっ!?あれは―――古代龍の頭か!!」
―――八雲がそう気がついた瞬間、その古代龍の四本の首が顎を大きく開くと同時に、青白い炎のような光が口内に収束されて咆哮の発射状態に入っている。
「不味い!―――イェンリン、俺の後ろへ!!!」
『偉大なる黒神龍水霊装』を纏っている八雲は耐えられるとしても、生身のイェンリンは直撃するとどうなるか分からない―――
―――だが、イェンリンはニヤリと笑みを浮かべて、
「余が剣聖と呼ばれるのは伊達ではないぞ?」
黒炎剣=焔羅を握りしめる―――
「死ぃねェエエ―――ッ!!!」
―――古代龍ギミックから白い咆哮攻撃を放つダヴィデ。
「フンッ!こんなものっ!―――『幻影』!!」
「うおっ!危ねぇえ!」
それをイェンリンは『幻影攻撃』の『幻影』による残像を生み出す神速で回避し、八雲も同じく高速で回避するが―――
―――咆哮を吐き出す古代龍ギミックは死んでいても『龍眼』が発動し、『身体加速』で回避するイェンリンと八雲を追尾しながらブレス攻撃を仕掛ける。
「ハハハッ!!―――逃げても無駄だぞっ!お前達の動きは四匹の古代龍の眼が追っている!見逃すことなどありはしない!」
ダヴィデは連結した古代龍四匹が発動する『龍眼』による視界の確保で、苦も無くイェンリンと八雲の動きを追尾していく―――
―――八雲達から外れたブレスの白い光線が、遠くの大地に着弾すると同時に巨大なキノコ雲を生じさせ、地形を変えていく。
しかし、そんな極大の攻撃を回避しながらもイェンリンは楽しそうな笑みを浮かべている―――
「フフフッ♪ 近頃これほどのヒリつくような戦闘はしていなかったからな……血が騒ぐぞ!」
―――次々と放たれるブレス攻撃を、残像を起こしながら回避するイェンリン。
「さあっ!そろそろ此方からもいくぞっ!―――簡単に一撃で死んでくれるなよっ!!!」
握り締めた黒炎剣=焔羅を神速の動きで振り抜くと、そこから真空波が発生してダヴィデ目指して発射される―――
―――その真紅の刃の数、ニ十四本。
「一撃じゃないじゃん……」
ボソリとツッコミを入れる八雲だが、イェンリンの放った真空波が次々にダヴィデを襲っていく―――
―――だが、幾つもの衝撃を負ったダヴィデは、
「……フッ……フハハッ!―――剣聖の剣であっても古代龍の鎧には効かんようだなっ!!」
禍々しい鎧の表面に多少の傷は見えるものの、中身には到達していない斬撃の結果を見て、ダヴィデは高笑いを上げてイェンリンを蔑んだ目で見る―――
「ほう?……では、これはどうであろうなっ!!!」
いまだに発射されている古代龍ギミックのブレス攻撃を掻いくぐり、突撃するイェンリン―――
「何をしようと無駄だァアッ!!ここでお前も死ね!剣聖よっ!!!」
―――ダヴィデも突撃するイェンリンにブレスを集中させる。
「―――させるかぁ!!」
そこに八雲が背中のスラスター・ピットを射出して、ダヴィデの古代龍ギミックに襲い掛かる―――
―――飛来したスラスター・ピットに気を取られた古代龍達の照準がイェンリンから逸れると、
「受けてみよっ!!
―――剣聖技 『百裂斬』!!!」
ダヴィデの正面に来たイェンリンの腕が、一瞬でまさに百本の腕を残像で見せると同時に―――
―――バァンッ!!!という巨大な一撃の衝撃音を周囲に響かせる。
「グギャァアア―――ッ!!!」
全身の鎧を斬り裂かれ、生身を切り刻まれて鮮血を噴き出すダヴィデの姿がそこにあった―――
―――同時にあの四本の古代龍ギミックも斬撃により斬り飛ばされていた。
『古代龍の死骸葬装』に全身を覆われていたダヴィデだったが、そんな物は何の防御にもならないと証明する黒神龍と紅神龍の鱗を融合して『創造』された黒炎剣=焔羅の斬撃は、まるで紙の様に鎧を斬り裂きダヴィデに多大なダメージを負わせた。
その場に蹲るダヴィデ―――
「まだそんな『剣聖技』を隠してたのかよ……」
八雲がイェンリンの後ろに立ち、ダヴィデに警戒しながら呆れ声で告げる。
「フフン♪ 良い女はそれだけ秘密を持っているものだ♪ 良かったな、余が良い女で♪」
楽しそうに答えるイェンリンに、八雲はやっぱりまだまだ敵わないと思い知らされていた。
―――だが、ダヴィデはそんなふたりを憎しみの籠った眼で見上げる。
「なんだ?最早貴様は致命傷のはずだが、随分といい眼で睨んでくるではないか?」
見下したイェンリンの態度に、何故か今度は笑い出すダヴィデ……
「フフッ……ハハハッ……お前達……儂がただこれだけの下準備で……ヴァーミリオンに来たと思っているのか?」
「なに?どういう意味だ?」
真顔に戻ってダヴィデに問い掛けるイェンリンに、ダヴィデは黙って指を北の方角へと指し示した―――
―――警戒しながら、その方角を見る八雲とイェンリン。
首都レッドの北方に見えるモノは―――
「……なんだ?あの土煙は?」
―――奇妙な土煙を見つけた八雲は、『遠見』のスキルでその原因を調べる。
「あれはっ?!まさか―――魔物暴走なのかっ!?」
「なにっ!?魔物暴走だとっ!?馬鹿なっ!ヴァーミリオンのレッド周辺ではこの百年は起こっていないはずだぞ!」
八雲の『遠見』の結果に、イェンリンも驚きの声を上げる―――
―――イェンリンが驚いたのには訳がある。
それは広大なヴァーミリオンの国土において、魔物の跋扈する北方を中心にして魔物討伐の強化を図ってきたのだ。
その効果もあり、ヴァーミリオン建国当初には数年に一度来るとまで言われていた魔物暴走も、長年の魔物討伐の努力も積み重ねられて、ここ百年ほどは首都レッド周辺では発生していなかったからだ。
その様子を見て、ダヴィデが醜い笑いを溢す―――
「クッ!クッ!イヒヒッ!……アンデッド化した魔物を使って北にいる魔物共を集めてきたのだ……この首都レッドを壊滅させるためにな!クハハハッ!」
確かに地平線を真横にして数kmの幅がある魔物の巻き起こす土煙を見れば、首都レッドに到達すれば壊滅の憂き目にあうことは容易に想像がつく。
広大な首都を覆う城壁も、あれだけの数の魔物に押し込まれてはひとたまりもない。
「クハハッ!……これで、何もかもが終わりだぁ……此処に住む者達は皆、魔物の餌よっ!!」
嘲笑うダヴィデの顔を見て、八雲がイェンリンと顔を見合わせる。
「紅の戦乙女と龍の牙、それに白い妖精と蒼天の精霊が出れば、あれくらいいけるよな?」
「無論だ。彼女達が本気を出せば余でも敵わぬ強さを持っているのだぞ?」
と、ダヴィデには理解出来ない言葉を交わす。
「ハァ?……お前達は一体……何を言っているのだ?」
「あん?だぁかぁらぁ~!あの程度の魔物暴走なんて大したことないって言ってんだよ」
フルフェイスで見えないが、八雲は眉をひん曲げて見下すように言い放つ。
「大したことないだとっ?!三百万は魔物を集めたのだぞっ!!ハッタリはやめろ!!―――ゴホッ、ゴバァ!」
興奮し過ぎたダヴィデは吐血しながらも反論するが、
「もう向かってくれているようだ……流石は『龍紋の乙女』達」
八雲が見つめる北の地平線に向かう首都レッドの郊外には―――
『紅の戦乙女』
第二位
『勝利する者』ブリュンヒルデ
第三位
『未来を司る者』スクルド
第四位
『先駆者』ヒルド
第五位
『杖を振るう者』ゴンドゥル
第六位
『強き者』スルーズ
第七位
『武器を轟かせる者』フロック
第八位
『槍を持ち進む者』ゲイラホズ
第九位
『盾を壊す者』ランドグリーズ
第十位
『計画を壊す者』ラーズグリーズ
『龍の牙』
序列03位
クレーブス
序列04位
シュティーア
序列07位
アクアーリオ
序列08位
レオ
序列10位
リブラ
序列11位
ジェミオス
序列11位
ヘミオス
序列12位
コゼローク
『白い妖精』
副長
『幸福』のエメラルド
四番
『情熱』のルビー
六番
『高潔』のサファイア
七番
『創造』のオパール
八番
『潔白』のトパーズ
九番
『誓い』のラピスラズリ
十二番
『聡明』のアクアマリン
『蒼天の精霊』
セカンド
『賢明』のサジェッサ
フォース
『願い』のウェンス
エイス
『夢』のレーブ
トゥウェルフス
『希望』のエスペランザ
ナインス
『勇気』のコレッジ
イレヴンス
『自由』のリベルタス
―――闘技場にいるアリエス、フレイア、ダイヤモンドなどその場を護る者や紅龍城を護る者、それにレギンレイヴといった回復役以外のヴァーミリオンに滞在する各神龍勢力の美しき眷属達が集う。
八雲の命を受けて、尚且つ序列外紅の戦乙女の近郊斥候部隊から報告の上がってきた北方の異変に対応するべく、そこに集結していた。
「あれだけの数が揃った彼女達を相手に戦うなんて、魔物の方に少し同情するくらいなんですけど……」
「まったくだな……人類最強の余であっても、彼女等と本気で闘うことは少し躊躇してしまうぞ……いやそれもまた楽しめるか?」
イェンリンは戦闘狂の血が騒ぎ始めているが、八雲はどちらかと言えば暴走する魔物に少し同情している。
「あの程度の、人数で……あの魔物の群れと、ハァハァ……やり合うというのか!?ハハハッ!何を馬鹿な……」
ダヴィデの言葉に八雲とイェンリンが振り返って、
「―――馬鹿はお前だ」
と、同時にふたりでダヴィデへと罵倒を浴びせるのだった―――
「なにっ!?グオォアアオオオッ!!!―――お前はっ!!!」
そんなダヴィデの遥か上空から自由落下で降り立ち、そのまま黒炎剣=焔羅で袈裟斬りに斬り裂いた赤い閃光―――
「ポッと出の死霊使いが、世界最強を囀るなど―――千年早いわっ!!!」
―――遥か上空から下り立ったのは、この国の皇帝にして最強の剣聖イェンリン=ロッソ・ヴァーミリオンだ。
焔羅を携えてイェンリンがダヴィデを鋭い視線で睨みつけていた―――
―――巨大な古代龍の背中に乗り込んだ八雲とイェンリン
対峙するのは『古代龍の死骸葬装』と名づけられた黄土色に紫の筋が走る禍々しい鎧を纏ったダヴィデ=カノッサ―――
「ところで……お前は誰だ!!」
―――更に大声で、
振り返りながら叫ぶイェンリンの視線の先にいるのは―――
「おい、俺だ俺っ!」
―――『偉大なる黒神龍水霊装』を全身に纏った八雲だった。
「オレオレだとか言われても顔が見えなければ分からんだろうがっ!」
「オレオレ詐欺かよっ!―――俺だ!!八雲だよ!!」
「―――冗談だ。夫の気配くらいすぐに分かる」
「いや、冗談言ってる場合じゃないよね?」
目の前でそんなコントを見せられたダヴィデは、フルフェイスの下で歯軋りを響かせる。
「ふざけるなよぉ!貴様等ああああ!!―――まとめて消し飛ばしてやるわっ!!!」
「―――ッ!!」
怒りの頂点に達したダヴィデの鎧の背中から黄土色の盛り上がりが四本立ち上がると、それぞれの先端が変形して古代龍の頭が四つ形成されていった―――
「なんだっ!?あれは―――古代龍の頭か!!」
―――八雲がそう気がついた瞬間、その古代龍の四本の首が顎を大きく開くと同時に、青白い炎のような光が口内に収束されて咆哮の発射状態に入っている。
「不味い!―――イェンリン、俺の後ろへ!!!」
『偉大なる黒神龍水霊装』を纏っている八雲は耐えられるとしても、生身のイェンリンは直撃するとどうなるか分からない―――
―――だが、イェンリンはニヤリと笑みを浮かべて、
「余が剣聖と呼ばれるのは伊達ではないぞ?」
黒炎剣=焔羅を握りしめる―――
「死ぃねェエエ―――ッ!!!」
―――古代龍ギミックから白い咆哮攻撃を放つダヴィデ。
「フンッ!こんなものっ!―――『幻影』!!」
「うおっ!危ねぇえ!」
それをイェンリンは『幻影攻撃』の『幻影』による残像を生み出す神速で回避し、八雲も同じく高速で回避するが―――
―――咆哮を吐き出す古代龍ギミックは死んでいても『龍眼』が発動し、『身体加速』で回避するイェンリンと八雲を追尾しながらブレス攻撃を仕掛ける。
「ハハハッ!!―――逃げても無駄だぞっ!お前達の動きは四匹の古代龍の眼が追っている!見逃すことなどありはしない!」
ダヴィデは連結した古代龍四匹が発動する『龍眼』による視界の確保で、苦も無くイェンリンと八雲の動きを追尾していく―――
―――八雲達から外れたブレスの白い光線が、遠くの大地に着弾すると同時に巨大なキノコ雲を生じさせ、地形を変えていく。
しかし、そんな極大の攻撃を回避しながらもイェンリンは楽しそうな笑みを浮かべている―――
「フフフッ♪ 近頃これほどのヒリつくような戦闘はしていなかったからな……血が騒ぐぞ!」
―――次々と放たれるブレス攻撃を、残像を起こしながら回避するイェンリン。
「さあっ!そろそろ此方からもいくぞっ!―――簡単に一撃で死んでくれるなよっ!!!」
握り締めた黒炎剣=焔羅を神速の動きで振り抜くと、そこから真空波が発生してダヴィデ目指して発射される―――
―――その真紅の刃の数、ニ十四本。
「一撃じゃないじゃん……」
ボソリとツッコミを入れる八雲だが、イェンリンの放った真空波が次々にダヴィデを襲っていく―――
―――だが、幾つもの衝撃を負ったダヴィデは、
「……フッ……フハハッ!―――剣聖の剣であっても古代龍の鎧には効かんようだなっ!!」
禍々しい鎧の表面に多少の傷は見えるものの、中身には到達していない斬撃の結果を見て、ダヴィデは高笑いを上げてイェンリンを蔑んだ目で見る―――
「ほう?……では、これはどうであろうなっ!!!」
いまだに発射されている古代龍ギミックのブレス攻撃を掻いくぐり、突撃するイェンリン―――
「何をしようと無駄だァアッ!!ここでお前も死ね!剣聖よっ!!!」
―――ダヴィデも突撃するイェンリンにブレスを集中させる。
「―――させるかぁ!!」
そこに八雲が背中のスラスター・ピットを射出して、ダヴィデの古代龍ギミックに襲い掛かる―――
―――飛来したスラスター・ピットに気を取られた古代龍達の照準がイェンリンから逸れると、
「受けてみよっ!!
―――剣聖技 『百裂斬』!!!」
ダヴィデの正面に来たイェンリンの腕が、一瞬でまさに百本の腕を残像で見せると同時に―――
―――バァンッ!!!という巨大な一撃の衝撃音を周囲に響かせる。
「グギャァアア―――ッ!!!」
全身の鎧を斬り裂かれ、生身を切り刻まれて鮮血を噴き出すダヴィデの姿がそこにあった―――
―――同時にあの四本の古代龍ギミックも斬撃により斬り飛ばされていた。
『古代龍の死骸葬装』に全身を覆われていたダヴィデだったが、そんな物は何の防御にもならないと証明する黒神龍と紅神龍の鱗を融合して『創造』された黒炎剣=焔羅の斬撃は、まるで紙の様に鎧を斬り裂きダヴィデに多大なダメージを負わせた。
その場に蹲るダヴィデ―――
「まだそんな『剣聖技』を隠してたのかよ……」
八雲がイェンリンの後ろに立ち、ダヴィデに警戒しながら呆れ声で告げる。
「フフン♪ 良い女はそれだけ秘密を持っているものだ♪ 良かったな、余が良い女で♪」
楽しそうに答えるイェンリンに、八雲はやっぱりまだまだ敵わないと思い知らされていた。
―――だが、ダヴィデはそんなふたりを憎しみの籠った眼で見上げる。
「なんだ?最早貴様は致命傷のはずだが、随分といい眼で睨んでくるではないか?」
見下したイェンリンの態度に、何故か今度は笑い出すダヴィデ……
「フフッ……ハハハッ……お前達……儂がただこれだけの下準備で……ヴァーミリオンに来たと思っているのか?」
「なに?どういう意味だ?」
真顔に戻ってダヴィデに問い掛けるイェンリンに、ダヴィデは黙って指を北の方角へと指し示した―――
―――警戒しながら、その方角を見る八雲とイェンリン。
首都レッドの北方に見えるモノは―――
「……なんだ?あの土煙は?」
―――奇妙な土煙を見つけた八雲は、『遠見』のスキルでその原因を調べる。
「あれはっ?!まさか―――魔物暴走なのかっ!?」
「なにっ!?魔物暴走だとっ!?馬鹿なっ!ヴァーミリオンのレッド周辺ではこの百年は起こっていないはずだぞ!」
八雲の『遠見』の結果に、イェンリンも驚きの声を上げる―――
―――イェンリンが驚いたのには訳がある。
それは広大なヴァーミリオンの国土において、魔物の跋扈する北方を中心にして魔物討伐の強化を図ってきたのだ。
その効果もあり、ヴァーミリオン建国当初には数年に一度来るとまで言われていた魔物暴走も、長年の魔物討伐の努力も積み重ねられて、ここ百年ほどは首都レッド周辺では発生していなかったからだ。
その様子を見て、ダヴィデが醜い笑いを溢す―――
「クッ!クッ!イヒヒッ!……アンデッド化した魔物を使って北にいる魔物共を集めてきたのだ……この首都レッドを壊滅させるためにな!クハハハッ!」
確かに地平線を真横にして数kmの幅がある魔物の巻き起こす土煙を見れば、首都レッドに到達すれば壊滅の憂き目にあうことは容易に想像がつく。
広大な首都を覆う城壁も、あれだけの数の魔物に押し込まれてはひとたまりもない。
「クハハッ!……これで、何もかもが終わりだぁ……此処に住む者達は皆、魔物の餌よっ!!」
嘲笑うダヴィデの顔を見て、八雲がイェンリンと顔を見合わせる。
「紅の戦乙女と龍の牙、それに白い妖精と蒼天の精霊が出れば、あれくらいいけるよな?」
「無論だ。彼女達が本気を出せば余でも敵わぬ強さを持っているのだぞ?」
と、ダヴィデには理解出来ない言葉を交わす。
「ハァ?……お前達は一体……何を言っているのだ?」
「あん?だぁかぁらぁ~!あの程度の魔物暴走なんて大したことないって言ってんだよ」
フルフェイスで見えないが、八雲は眉をひん曲げて見下すように言い放つ。
「大したことないだとっ?!三百万は魔物を集めたのだぞっ!!ハッタリはやめろ!!―――ゴホッ、ゴバァ!」
興奮し過ぎたダヴィデは吐血しながらも反論するが、
「もう向かってくれているようだ……流石は『龍紋の乙女』達」
八雲が見つめる北の地平線に向かう首都レッドの郊外には―――
『紅の戦乙女』
第二位
『勝利する者』ブリュンヒルデ
第三位
『未来を司る者』スクルド
第四位
『先駆者』ヒルド
第五位
『杖を振るう者』ゴンドゥル
第六位
『強き者』スルーズ
第七位
『武器を轟かせる者』フロック
第八位
『槍を持ち進む者』ゲイラホズ
第九位
『盾を壊す者』ランドグリーズ
第十位
『計画を壊す者』ラーズグリーズ
『龍の牙』
序列03位
クレーブス
序列04位
シュティーア
序列07位
アクアーリオ
序列08位
レオ
序列10位
リブラ
序列11位
ジェミオス
序列11位
ヘミオス
序列12位
コゼローク
『白い妖精』
副長
『幸福』のエメラルド
四番
『情熱』のルビー
六番
『高潔』のサファイア
七番
『創造』のオパール
八番
『潔白』のトパーズ
九番
『誓い』のラピスラズリ
十二番
『聡明』のアクアマリン
『蒼天の精霊』
セカンド
『賢明』のサジェッサ
フォース
『願い』のウェンス
エイス
『夢』のレーブ
トゥウェルフス
『希望』のエスペランザ
ナインス
『勇気』のコレッジ
イレヴンス
『自由』のリベルタス
―――闘技場にいるアリエス、フレイア、ダイヤモンドなどその場を護る者や紅龍城を護る者、それにレギンレイヴといった回復役以外のヴァーミリオンに滞在する各神龍勢力の美しき眷属達が集う。
八雲の命を受けて、尚且つ序列外紅の戦乙女の近郊斥候部隊から報告の上がってきた北方の異変に対応するべく、そこに集結していた。
「あれだけの数が揃った彼女達を相手に戦うなんて、魔物の方に少し同情するくらいなんですけど……」
「まったくだな……人類最強の余であっても、彼女等と本気で闘うことは少し躊躇してしまうぞ……いやそれもまた楽しめるか?」
イェンリンは戦闘狂の血が騒ぎ始めているが、八雲はどちらかと言えば暴走する魔物に少し同情している。
「あの程度の、人数で……あの魔物の群れと、ハァハァ……やり合うというのか!?ハハハッ!何を馬鹿な……」
ダヴィデの言葉に八雲とイェンリンが振り返って、
「―――馬鹿はお前だ」
と、同時にふたりでダヴィデへと罵倒を浴びせるのだった―――
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英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?
これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。
※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!