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第1章 龍の胎内世界編
鍛錬は誰にも止められない
―――最初のスライムを倒してから数時間、すでに黒神龍の胎内世界も、どういう仕組みか薄ピンクの空に暗がりが広がり、とっぷりと夜の闇を湛えていた。
黙々とスライムを倒す八雲を見つめて、暫く様子を見ていたノワールだが、そのうち「飽きた」と言ってアリエスを連れて城に戻って行った―――
モンスターの召喚を務めていたアリエスがノワールに連れられて行ったことで、アリエスの代わりにレオとリブラが魔法陣で召喚を行っていた。
召喚して―――倒す、召喚して―――倒す、召喚して―――倒す、召喚して―――倒す、召喚して―――倒す、召喚して―――倒す……それの繰り返し、そしてまた繰り返しの八雲。
レオとリブラは自分の仕える主に、ひたすら召喚魔法を使い八雲の経験値の糧となるモンスターを召喚し続ける。
そしてLevelの上がり方を検証しつつ、あれからモンスターは―――
「スライム」
「ゴブリン」
「オーク」
―――と強い魔物へと徐々に移り変わっていき、そのオークを相手にする頃には、手に持ったヒノキの棒もボロボロになっていた。
―――召喚されたゴブリンは、子供くらいの大きさの背丈に緑掛かった肌の色、ギョロっと見開かれた眼、臭そうな息をハァハァと吐き出し、八雲を敵と認識するとすぐに襲い掛かって来る。
―――ゴブリンは集団戦が得意だとリブレに教えてもらった八雲は、十匹を一度に召喚してもらった。
―――確かにゴブリンは集団になると、息の合ったコンビネーションやチーム戦を駆使して八雲を驚かせた。
それでも―――目の前の敵を倒す、倒す、倒す、倒す……
―――だが、既にLevelが何度も上がり攻撃力も防御力も上っていた八雲にとっては、たとえ集団になったゴブリンであろうとも自分の間合いに入った者から棒で殴る、薙ぎ払う、叩く、そうしているうちにLevelの上昇が遅くなった。
―――だから次はオークを召喚してもらった。
―――オークは豚のような猪のような顔をしており、口元は上を向いて生えた左右二本の牙、体格は普通の人と変わらない、むしろ醜く太り気味のメタボなその体は一回り大きく見えた。
―――だがそれでも一匹、また一匹と倒していけばLevelはドンドン上がっていくことに八雲はひたすら召喚を促し、レオとリブラは嫌な顔ひとつせず、むしろドンドンLevelを上げる八雲の姿を嬉しそうに、まるで憧れの人を見るかのような熱い視線を送っていた。
―――そうしてまたLevelの上がり方が鈍くなってきたことに気づいて、ゴブリンの時のように集団での召喚をレオとリブラに頼む八雲。
―――だが、そこに現れた集団は、これまでの魔物のボロい革の鎧や盾、ボロボロの剣などではなく、鉄板でシッカリとした鉄の鎧に盾、そして鉄製の剣を装備していて完全に軍隊に見える集団だった。
「―――オーク・ジェネラルがいます!」
リブラの声を聞いて集団に目を凝らした八雲が、一際重厚なフルプレートの鎧に身を包んだオークを見つけた。
「オークの上位種みたいなもんか……」
八雲の問いにリブラは黙って頷いて返した。
だが、オークにとっては八雲の都合など関係なしで、いきなり召喚されたために目の前の八雲達に対して途轍もない警戒心を抱き、簡単には襲い掛かっては来ないのも軍隊的な冷静な対応だろう。
「はぁ、ふぅ……今日はこれで最後にしとくか」
―――八雲は息を整えながら手にしたヒノキの棒を握り直して、静かにオークの集団へと飛び込んでいった。
―――高まった攻撃力を駆使してオークの集団に駆け寄り、目にも止まらぬ速さで一匹目のオークの片目を棒で貫いて引き抜く。
―――その動きに衝撃を受けたオーク達だが、そこに出来た隙を見逃すほどに八雲もお人好しではない。
―――次のオークの側頭部を横から薙ぎ払い、次のオークは足の脛に棒を打ち付けて転ばせて目玉を棒で上から貫き、確実に息の根を止める。
そして、また―――目の前の敵を倒す、倒す、倒す、倒す……
―――どのくらいの時間が過ぎただろうか……気がつけば八雲は、最後の一匹となったオーク・ジェネラルの脳天をヒノキの棒でカチ割っていた……
そこで八雲は意識が途切れた―――
―――そして時間も、いつの間にか空が再び明るくなりだす時間へと移り変わっていく……
「ふあぁ~、おはよう八雲……て、これは……」
城に帰ってから用事を済ませて、夜になってひと眠りして、朝になったので八雲を探してみるとアリエスから戻っていないと聞いたノワールはレオとリブラも付いているので大丈夫だとは思っていたが、様子を見に外に出て昨日と同じ場所に来てみれば、そこには一面、スライムの破裂した跡とゴブリンの撲殺された死体の山、そして同じく撲殺されたオークの死体の山だった……
「随分と派手にやったなぁ……しかし、ヒノキの棒でオークまで叩き殺すって……あ、他の武器とか渡してなかったな……さて、この惨状の犯人は今どうしているのか?」
そこで辺りの死体の山を見渡して目的の人物を探してみると、その男は手に持ったボロボロのヒノキの棒を支えにして立ちながら気絶していた。
その足元には同じく彼を支えるようにしてレオとリブラが眠っていた。
「まったく……いきなりハリキリ過ぎだ」
そして眠ったままの八雲を―――
呆れて溜め息を軽く吐いたノワールは、それでも嬉しそうな顔をして、その細い肩にボロボロになって眠る八雲を抱えてノシノシと一歩ずつ城に向かって歩いて行くのだった。
か細い女性の姿をしていても、黒神龍と呼ばれる伝説の神獣であるノワールにとっては、八雲一人を担ぐくらい、苦にもならない作業だ。
―――気がついた八雲の目に映ったのは、『最近知った天井』だった。
自分の部屋だと案内された部屋に、いつの間にか戻っていて、あの巨大なベッドに横になっていることを認識すると、思った以上に寝心地の良いベッドに再び意識が吸い込まれそうになった時、
「―――ようやく目を覚ましたか?」
すぐ左隣から、昨日からの聞き慣れた声が聞こえて来た。
「おはよう、て、いうか俺いつの間に部屋に戻ってきたんだ?」
「朝様子を見に行ったら、大量の魔物の屍の中で立ったまま気絶していたのを、我が肩に担いで戻ってきたのだ。いきなり無茶しすぎだぞ?」
そう言われて、最後に倒したオークの様子を朧げに思い出す八雲だが、最後は気絶したので本当に朧げにしか覚えていなかった。
「悪い。強くなりたいって焦っていたのかも知れない。気をつける」
日本でゲームをしていた頃もそうだが、八雲は一度始めると納得のいくところまでトコトンやり続ける性格だったので、それがリアル異世界で自身のLevel UPの話となれば、それはもう意識が飛ぶまでやり尽くすしかない衝動に陥ってしまった。
「それで、どのくらいLevelは上がったんだ?」
横に添い寝しながら、悪戯っ子のような目をしてノワールは問い掛けてきた。
その魅惑の形の良い胸が、八雲の方に横向きになって話しているので、緩やかに変形しているのが余計にエロさを際立たせていた。
「そういえば最後には意識が飛んでたから、確認してなかった」
そう思って八雲は自分のステータスを呼び出す。
【ステータス】
Name:九頭竜 八雲(ヤクモ=クズリュウ)
年齢 18歳
Level 45
Class 転移者
生命 3608/3608
魔力 2405/2405
体力 2405/2405
攻撃 3608/3608
防御 2405/2405
知力 55
器用 55
速度 55
物理耐性 55
魔法耐性 55
《神の加護》
『成長』
取得経験値の増加
各能力のLevel UP時の上昇数値の増加
『回復』
HP減少時に回復加速
MP減少時に回復加速
自身が直接接触している他者の回復
『創造』
素材を加工する能力
武器・防具の創造能力
創作物への付与能力
《黒神龍の加護》
『位置把握』
自身の位置と黒神龍のいる位置が把握出来る
『従属』
黒神龍の眷属を従える
『伝心』
黒神龍とその眷属と念話が可能
『収納』
空間を開閉して物質を保管する能力
《取得魔法》
『身体強化』
魔力量に応じて体力・攻撃力・防御力が上昇
《取得スキル》
『鑑定眼』
物質の理を視る
『言語解読』
あらゆる種族の言語理解・文字解読
『酸耐性』
あらゆる酸に対する耐性
『身体加速』
速度を瞬発的に上昇させる
『思考加速』
任意で思考を加速させる
『受精操作』
妊娠操作が可能
『絶倫』
精力の増加
「おい、この最後の2つのスキルはなんだ……」
取得スキルの最後には『受精操作』と『絶倫』と記載されていた。
「ほぉ~これは……/////」
契約の力で俺の能力値を一緒に見ていたノワールはスキルの最後の項目を見て、頬を赤らめながらも何故か嬉しそうな顔を覗かせて目を細めていた。
「八雲、昨日最後にオークを倒していただろう?」
「ん?ああ、確かにオークまでは召喚してもらってLevel上げしてた記憶があるな」
「それだな。オークは他種族の女を襲って子を産ませる。そのオークを倒したことでヤツらの持つスキルを取得したんだろう」
「嘘だろ……何の役に立つんだよ……」
八雲も男として性欲が無い訳ではないだけに、『絶倫』というスキルにはかなり興味があったが、『受精操作』のスキルにはかなり引いていた。
望みもしないスキルの取得に、昨晩の努力が無駄になったような錯覚すら起こして目眩がしそうだった。
そんな八雲の横でノワールだけがにやにやと厭らしい笑みを讃えている。
しかしいつまでもそんなことを気にしても仕方がないので、他の能力値について目を向ける。
「Levelは45か……ノワール、この能力値ってこの世界だとどうなんだ?」
「ん?そうだな。この世界だと充分に上位の冒険者、騎士団員クラスなら余裕勝ち出来るLevelだぞ。だが一番は一晩でそこまでLevelを上げたことに驚愕だぞ。ハッキリ言って化物級だ。それに、この数値の上がり方もな。Level.45で能力が四桁の数値になるヤツなんていない。加護の効果だろうな……」
「人間やめてたか……」
「この世界だと一般人でもLevel.20前後で一生を終えるなんてざらなことだ。冒険者や騎士が鍛錬しても精々Level.30前後だ。騎士団長クラスや冒険者でも上位というくらいで、なんとかLevel.40~50といったところだろう。Levelが60なんかに到達した者なら英雄クラスだろうな。それでも能力値は四桁に届くかどうかだ。つまりお前がどれだけ人間離れした力を持ったか理解したか?最初に神が甘やかす気はないだろうなんて言ったが……これは甘やかすなんてもんじゃないぞ」
天井を見つめる八雲の隣で体勢を横にして見つめながら説明するノワール。
「昨日頑張った結果、スキルも増えている。今日は休みがてら加護を試してみたらどうだ?」
「加護?」
八雲は隣でにこやかに笑みを浮かべているノワールに目を向けて、どういうことかと問い掛ける。
「ほら、お前の《神の加護》の中の『創造』というのがあるだろう?あれを使えばお前にとって使いやすい武器が造れるんじゃないか?流石にこれからもヒノキの棒で鍛錬し続けるのは、かなり無理があるぞ」
「確かにな。オーク・ジェネラルとか出て来た時はけっこう覚悟したもんな。ヒノキの棒様様だったな。よく最後までもってくれたよ」
「ああ、だからこれからはそういう心配しなくてもいいように、自分で武器を創ってみるのも休みがてらにいいのではないかと思ってな」
「だけど、それって素材が必要なんだよな?そんな物、持ってないんだけど?」
「案ずるな!そのくらいの物、我が用意してやる。まぁ練習だと思ってまずは銅や鉄から始めてみるか?」
そうして今日の方針が決まったところで、起き上がろうとする八雲にノワールが圧し掛かってくる。
「どうした?」
身動きの出来ない八雲は不思議そうにしてノワールを見やるが、気づけばノワールの顔は頬に赤味が差していて、とても艶のある色気が漂っていた。
「なあ、八雲。我とこうして同じ閨で横になっているというのに、どうして手を出さんのだ?」
潤んだ瞳を向けながら八雲に問い掛けるノワール。
その問いに八雲は躊躇するも、ゆっくりと応える。
「確かに、ノワールはすげぇ美人だと思う。正直さっき目を覚ました時に隣にいて、思わずそのまま押し倒してもおかしくないくらいの気持ちだった」
八雲のお前を押し倒しそうだったという聞き方によっては強姦未遂のような言葉に、この時ノワールはますます顔を赤らめて、そして恍惚とした表情になっていた。
「でも、契約したけど出会って1日でいきなり押し倒すとか、違うと思う。俺はノワールのことをもっと知りたいし、仲良くもしていきたい。俺も男だしノワールみたいな美人、抱きたいに決まってる」
「決まってるのか……なら/////」
恍惚とした表情で、そのまま飛び込んできそうなノワールを八雲は制止する。
「でも今の俺は、たぶんまだ相応しくないと思う。いや、違うな。俺自身が納得してないんだろうな。この程度の自分でいいのかって自問自答してるところがあるんだよ」
突然、召喚された異世界……そして出会った黒神龍との契約、めまぐるしく変動する自分の状況に必死に着いていこうとしている途中だから、八雲は中途半端なことはしたくないと言った。
「そうか……うむ、さすがは我が御子だ。だがそれではいつまで経っても我はお前と繋がれぬ。故にこうしようではないか。お前のLevelが100を打った時、その時我はお前のものとなろう。目標があればお前も目指しやすいだろう?」
「Level.100か……因みに過去にLevel.100になった人間ているのか?」
ふと湧いた疑問をノワールに問うと、ノワールはニヤリとして、
「いるわけなかろう!」
と満面の笑みを浮かべながら、八雲にそう答えた。
「前人未踏かよ……」
誰も達成したことがないというLevel100……だがそれも八雲のコツコツと前に進む性格が余計に刺激され、いないなら自分が最初の人間になってやろうじゃないか!と八雲は改めてヤル気が湧いてくるのだった。
だが、Level100に到達した者はいるが、ノワールにとってその存在は最早人間ではなかったので、この場ではいないと言っていた。
「いい目標が出来た。ありがとな、ノワール」
「礼には及ばんさ。それに一晩で45もLevelを上げて来たお前だ。そう長くは掛からんだろうさ。だが我とのためにそこまで気概を見せたことに、我からご褒美をやろう♡」
「は?ご褒美って?なんだ?」
そう言ってノワールは再び八雲に身体を押し付けて、その見事な胸の柔らかさを八雲に伝えてくるのだった―――
黙々とスライムを倒す八雲を見つめて、暫く様子を見ていたノワールだが、そのうち「飽きた」と言ってアリエスを連れて城に戻って行った―――
モンスターの召喚を務めていたアリエスがノワールに連れられて行ったことで、アリエスの代わりにレオとリブラが魔法陣で召喚を行っていた。
召喚して―――倒す、召喚して―――倒す、召喚して―――倒す、召喚して―――倒す、召喚して―――倒す、召喚して―――倒す……それの繰り返し、そしてまた繰り返しの八雲。
レオとリブラは自分の仕える主に、ひたすら召喚魔法を使い八雲の経験値の糧となるモンスターを召喚し続ける。
そしてLevelの上がり方を検証しつつ、あれからモンスターは―――
「スライム」
「ゴブリン」
「オーク」
―――と強い魔物へと徐々に移り変わっていき、そのオークを相手にする頃には、手に持ったヒノキの棒もボロボロになっていた。
―――召喚されたゴブリンは、子供くらいの大きさの背丈に緑掛かった肌の色、ギョロっと見開かれた眼、臭そうな息をハァハァと吐き出し、八雲を敵と認識するとすぐに襲い掛かって来る。
―――ゴブリンは集団戦が得意だとリブレに教えてもらった八雲は、十匹を一度に召喚してもらった。
―――確かにゴブリンは集団になると、息の合ったコンビネーションやチーム戦を駆使して八雲を驚かせた。
それでも―――目の前の敵を倒す、倒す、倒す、倒す……
―――だが、既にLevelが何度も上がり攻撃力も防御力も上っていた八雲にとっては、たとえ集団になったゴブリンであろうとも自分の間合いに入った者から棒で殴る、薙ぎ払う、叩く、そうしているうちにLevelの上昇が遅くなった。
―――だから次はオークを召喚してもらった。
―――オークは豚のような猪のような顔をしており、口元は上を向いて生えた左右二本の牙、体格は普通の人と変わらない、むしろ醜く太り気味のメタボなその体は一回り大きく見えた。
―――だがそれでも一匹、また一匹と倒していけばLevelはドンドン上がっていくことに八雲はひたすら召喚を促し、レオとリブラは嫌な顔ひとつせず、むしろドンドンLevelを上げる八雲の姿を嬉しそうに、まるで憧れの人を見るかのような熱い視線を送っていた。
―――そうしてまたLevelの上がり方が鈍くなってきたことに気づいて、ゴブリンの時のように集団での召喚をレオとリブラに頼む八雲。
―――だが、そこに現れた集団は、これまでの魔物のボロい革の鎧や盾、ボロボロの剣などではなく、鉄板でシッカリとした鉄の鎧に盾、そして鉄製の剣を装備していて完全に軍隊に見える集団だった。
「―――オーク・ジェネラルがいます!」
リブラの声を聞いて集団に目を凝らした八雲が、一際重厚なフルプレートの鎧に身を包んだオークを見つけた。
「オークの上位種みたいなもんか……」
八雲の問いにリブラは黙って頷いて返した。
だが、オークにとっては八雲の都合など関係なしで、いきなり召喚されたために目の前の八雲達に対して途轍もない警戒心を抱き、簡単には襲い掛かっては来ないのも軍隊的な冷静な対応だろう。
「はぁ、ふぅ……今日はこれで最後にしとくか」
―――八雲は息を整えながら手にしたヒノキの棒を握り直して、静かにオークの集団へと飛び込んでいった。
―――高まった攻撃力を駆使してオークの集団に駆け寄り、目にも止まらぬ速さで一匹目のオークの片目を棒で貫いて引き抜く。
―――その動きに衝撃を受けたオーク達だが、そこに出来た隙を見逃すほどに八雲もお人好しではない。
―――次のオークの側頭部を横から薙ぎ払い、次のオークは足の脛に棒を打ち付けて転ばせて目玉を棒で上から貫き、確実に息の根を止める。
そして、また―――目の前の敵を倒す、倒す、倒す、倒す……
―――どのくらいの時間が過ぎただろうか……気がつけば八雲は、最後の一匹となったオーク・ジェネラルの脳天をヒノキの棒でカチ割っていた……
そこで八雲は意識が途切れた―――
―――そして時間も、いつの間にか空が再び明るくなりだす時間へと移り変わっていく……
「ふあぁ~、おはよう八雲……て、これは……」
城に帰ってから用事を済ませて、夜になってひと眠りして、朝になったので八雲を探してみるとアリエスから戻っていないと聞いたノワールはレオとリブラも付いているので大丈夫だとは思っていたが、様子を見に外に出て昨日と同じ場所に来てみれば、そこには一面、スライムの破裂した跡とゴブリンの撲殺された死体の山、そして同じく撲殺されたオークの死体の山だった……
「随分と派手にやったなぁ……しかし、ヒノキの棒でオークまで叩き殺すって……あ、他の武器とか渡してなかったな……さて、この惨状の犯人は今どうしているのか?」
そこで辺りの死体の山を見渡して目的の人物を探してみると、その男は手に持ったボロボロのヒノキの棒を支えにして立ちながら気絶していた。
その足元には同じく彼を支えるようにしてレオとリブラが眠っていた。
「まったく……いきなりハリキリ過ぎだ」
そして眠ったままの八雲を―――
呆れて溜め息を軽く吐いたノワールは、それでも嬉しそうな顔をして、その細い肩にボロボロになって眠る八雲を抱えてノシノシと一歩ずつ城に向かって歩いて行くのだった。
か細い女性の姿をしていても、黒神龍と呼ばれる伝説の神獣であるノワールにとっては、八雲一人を担ぐくらい、苦にもならない作業だ。
―――気がついた八雲の目に映ったのは、『最近知った天井』だった。
自分の部屋だと案内された部屋に、いつの間にか戻っていて、あの巨大なベッドに横になっていることを認識すると、思った以上に寝心地の良いベッドに再び意識が吸い込まれそうになった時、
「―――ようやく目を覚ましたか?」
すぐ左隣から、昨日からの聞き慣れた声が聞こえて来た。
「おはよう、て、いうか俺いつの間に部屋に戻ってきたんだ?」
「朝様子を見に行ったら、大量の魔物の屍の中で立ったまま気絶していたのを、我が肩に担いで戻ってきたのだ。いきなり無茶しすぎだぞ?」
そう言われて、最後に倒したオークの様子を朧げに思い出す八雲だが、最後は気絶したので本当に朧げにしか覚えていなかった。
「悪い。強くなりたいって焦っていたのかも知れない。気をつける」
日本でゲームをしていた頃もそうだが、八雲は一度始めると納得のいくところまでトコトンやり続ける性格だったので、それがリアル異世界で自身のLevel UPの話となれば、それはもう意識が飛ぶまでやり尽くすしかない衝動に陥ってしまった。
「それで、どのくらいLevelは上がったんだ?」
横に添い寝しながら、悪戯っ子のような目をしてノワールは問い掛けてきた。
その魅惑の形の良い胸が、八雲の方に横向きになって話しているので、緩やかに変形しているのが余計にエロさを際立たせていた。
「そういえば最後には意識が飛んでたから、確認してなかった」
そう思って八雲は自分のステータスを呼び出す。
【ステータス】
Name:九頭竜 八雲(ヤクモ=クズリュウ)
年齢 18歳
Level 45
Class 転移者
生命 3608/3608
魔力 2405/2405
体力 2405/2405
攻撃 3608/3608
防御 2405/2405
知力 55
器用 55
速度 55
物理耐性 55
魔法耐性 55
《神の加護》
『成長』
取得経験値の増加
各能力のLevel UP時の上昇数値の増加
『回復』
HP減少時に回復加速
MP減少時に回復加速
自身が直接接触している他者の回復
『創造』
素材を加工する能力
武器・防具の創造能力
創作物への付与能力
《黒神龍の加護》
『位置把握』
自身の位置と黒神龍のいる位置が把握出来る
『従属』
黒神龍の眷属を従える
『伝心』
黒神龍とその眷属と念話が可能
『収納』
空間を開閉して物質を保管する能力
《取得魔法》
『身体強化』
魔力量に応じて体力・攻撃力・防御力が上昇
《取得スキル》
『鑑定眼』
物質の理を視る
『言語解読』
あらゆる種族の言語理解・文字解読
『酸耐性』
あらゆる酸に対する耐性
『身体加速』
速度を瞬発的に上昇させる
『思考加速』
任意で思考を加速させる
『受精操作』
妊娠操作が可能
『絶倫』
精力の増加
「おい、この最後の2つのスキルはなんだ……」
取得スキルの最後には『受精操作』と『絶倫』と記載されていた。
「ほぉ~これは……/////」
契約の力で俺の能力値を一緒に見ていたノワールはスキルの最後の項目を見て、頬を赤らめながらも何故か嬉しそうな顔を覗かせて目を細めていた。
「八雲、昨日最後にオークを倒していただろう?」
「ん?ああ、確かにオークまでは召喚してもらってLevel上げしてた記憶があるな」
「それだな。オークは他種族の女を襲って子を産ませる。そのオークを倒したことでヤツらの持つスキルを取得したんだろう」
「嘘だろ……何の役に立つんだよ……」
八雲も男として性欲が無い訳ではないだけに、『絶倫』というスキルにはかなり興味があったが、『受精操作』のスキルにはかなり引いていた。
望みもしないスキルの取得に、昨晩の努力が無駄になったような錯覚すら起こして目眩がしそうだった。
そんな八雲の横でノワールだけがにやにやと厭らしい笑みを讃えている。
しかしいつまでもそんなことを気にしても仕方がないので、他の能力値について目を向ける。
「Levelは45か……ノワール、この能力値ってこの世界だとどうなんだ?」
「ん?そうだな。この世界だと充分に上位の冒険者、騎士団員クラスなら余裕勝ち出来るLevelだぞ。だが一番は一晩でそこまでLevelを上げたことに驚愕だぞ。ハッキリ言って化物級だ。それに、この数値の上がり方もな。Level.45で能力が四桁の数値になるヤツなんていない。加護の効果だろうな……」
「人間やめてたか……」
「この世界だと一般人でもLevel.20前後で一生を終えるなんてざらなことだ。冒険者や騎士が鍛錬しても精々Level.30前後だ。騎士団長クラスや冒険者でも上位というくらいで、なんとかLevel.40~50といったところだろう。Levelが60なんかに到達した者なら英雄クラスだろうな。それでも能力値は四桁に届くかどうかだ。つまりお前がどれだけ人間離れした力を持ったか理解したか?最初に神が甘やかす気はないだろうなんて言ったが……これは甘やかすなんてもんじゃないぞ」
天井を見つめる八雲の隣で体勢を横にして見つめながら説明するノワール。
「昨日頑張った結果、スキルも増えている。今日は休みがてら加護を試してみたらどうだ?」
「加護?」
八雲は隣でにこやかに笑みを浮かべているノワールに目を向けて、どういうことかと問い掛ける。
「ほら、お前の《神の加護》の中の『創造』というのがあるだろう?あれを使えばお前にとって使いやすい武器が造れるんじゃないか?流石にこれからもヒノキの棒で鍛錬し続けるのは、かなり無理があるぞ」
「確かにな。オーク・ジェネラルとか出て来た時はけっこう覚悟したもんな。ヒノキの棒様様だったな。よく最後までもってくれたよ」
「ああ、だからこれからはそういう心配しなくてもいいように、自分で武器を創ってみるのも休みがてらにいいのではないかと思ってな」
「だけど、それって素材が必要なんだよな?そんな物、持ってないんだけど?」
「案ずるな!そのくらいの物、我が用意してやる。まぁ練習だと思ってまずは銅や鉄から始めてみるか?」
そうして今日の方針が決まったところで、起き上がろうとする八雲にノワールが圧し掛かってくる。
「どうした?」
身動きの出来ない八雲は不思議そうにしてノワールを見やるが、気づけばノワールの顔は頬に赤味が差していて、とても艶のある色気が漂っていた。
「なあ、八雲。我とこうして同じ閨で横になっているというのに、どうして手を出さんのだ?」
潤んだ瞳を向けながら八雲に問い掛けるノワール。
その問いに八雲は躊躇するも、ゆっくりと応える。
「確かに、ノワールはすげぇ美人だと思う。正直さっき目を覚ました時に隣にいて、思わずそのまま押し倒してもおかしくないくらいの気持ちだった」
八雲のお前を押し倒しそうだったという聞き方によっては強姦未遂のような言葉に、この時ノワールはますます顔を赤らめて、そして恍惚とした表情になっていた。
「でも、契約したけど出会って1日でいきなり押し倒すとか、違うと思う。俺はノワールのことをもっと知りたいし、仲良くもしていきたい。俺も男だしノワールみたいな美人、抱きたいに決まってる」
「決まってるのか……なら/////」
恍惚とした表情で、そのまま飛び込んできそうなノワールを八雲は制止する。
「でも今の俺は、たぶんまだ相応しくないと思う。いや、違うな。俺自身が納得してないんだろうな。この程度の自分でいいのかって自問自答してるところがあるんだよ」
突然、召喚された異世界……そして出会った黒神龍との契約、めまぐるしく変動する自分の状況に必死に着いていこうとしている途中だから、八雲は中途半端なことはしたくないと言った。
「そうか……うむ、さすがは我が御子だ。だがそれではいつまで経っても我はお前と繋がれぬ。故にこうしようではないか。お前のLevelが100を打った時、その時我はお前のものとなろう。目標があればお前も目指しやすいだろう?」
「Level.100か……因みに過去にLevel.100になった人間ているのか?」
ふと湧いた疑問をノワールに問うと、ノワールはニヤリとして、
「いるわけなかろう!」
と満面の笑みを浮かべながら、八雲にそう答えた。
「前人未踏かよ……」
誰も達成したことがないというLevel100……だがそれも八雲のコツコツと前に進む性格が余計に刺激され、いないなら自分が最初の人間になってやろうじゃないか!と八雲は改めてヤル気が湧いてくるのだった。
だが、Level100に到達した者はいるが、ノワールにとってその存在は最早人間ではなかったので、この場ではいないと言っていた。
「いい目標が出来た。ありがとな、ノワール」
「礼には及ばんさ。それに一晩で45もLevelを上げて来たお前だ。そう長くは掛からんだろうさ。だが我とのためにそこまで気概を見せたことに、我からご褒美をやろう♡」
「は?ご褒美って?なんだ?」
そう言ってノワールは再び八雲に身体を押し付けて、その見事な胸の柔らかさを八雲に伝えてくるのだった―――
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よりによって時代遅れスキル『ゴーレム制作』を授かってしまった。
派手な魔法も、強力なスキルもない。
あるのは、前世の知識と、紙や石で作る“そこそこ役立つ”ゴーレムだけ。
「まあ、家の仕事を手伝いながら静かに暮らせればいいか」
――そう思っていた。鉱山で捕らえられるまでは。
救出劇の中で、僕の“そこそこ”は思わぬ形で評価され、
気づけば王弟殿下に呼び出されていた。
「私の下で働かないか?」
なぜ僕が?
どうしてゴーレム専門の四男に?
そう思った僕は知らなかったが、
それは、うちのメイドが『王国の影』だったせい。
僕の“静かな人生”は静かに軋み始める。
――僕はただ、そこそこ頑張りたいだけなのに。
これは、
時代遅れスキルしか持たない転生四男が、
気づけば王都の裏側に巻き込まれていく物語。
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