25 / 25
すれ違いの再会
しおりを挟む
「……お前たちからはいつも先生の気配が、魔力がするんだ」
ぽつりと呟かれた言葉に思わず体がこわばる。
開かれた瞳に映る感情が、揺れるその声が、一心に私を責め立てていた。
それはそうだろう、この子にとっていま目の前にいる私はただただ憎い仇に見えているはずだ。
だって、わかってしまった。
ライルの言った言葉で、わかってしまったのだ。
きっと初めてじゃない。私は……正確には私と同じ、あのクローンたちか私の細胞を取り込んだ化け物が、ライルの前に現れている。
少なくとも一度、いや、きっと何度も。
その度にこの子は憎みを恨みを募らせ、怒り狂い、そして私を私と同じ顔をした人形を殺す絶望を味わったのだろう。
そんな事実に気づいてしまって胸が締め付けられるように痛む。
私が死ねば終わると思っていた。一瞬の痛みや悲しみを受けるかもしれないが、それでもそのうち傷は風化してくれると、本気で思っていた。
この子は苦しみ続けている、今も。
「だから、あんたが光の大陸から俺たちの大陸に渡ったのに気づいたとき、正直驚いた。とうとうそこまで至ったんだな、大陸間の転移は、本当に知恵のある存在じゃなきゃ出来ない」
淡々とした口調の中に、隠しきれない狂気を込めてライルは続けた。
ちょっと、まずいかもしれない。
気圧されてる。ライルに。信じられない。
自分の意思に反して勝手に震える体を奮い立たせて、口を開く。
何か言わなければ、彼に言葉を届けなくてはと思うけれど何も言葉が出てこない。
喉からは掠れた呼吸音が漏れるばかりだ。
「あんたを使えば、先生に届く」
そう言って、一歩近づいてくる彼の姿に恐怖を感じると同時にどこか懐かしさすら感じた。
片鱗は初めて会った時からあった。
まだ小さかったころの小さな小さな、子供の姿にも、今のようなほの暗い狂気は感じていた。
妥当に育った、という気もする。
私に出会わなければ、きっと光の下が似合う英雄になっただろうとも。
だからこそ思うのだ。
私と関わったせいで歪んでしまった。その責任は取らなくてはならないと。
不思議と、もうライルを怖いとは思わなくなっていた。
やはり私は単純だ。
「ライル」
名前を呼べばぴくりと反応して、改めて私を見た。
その顔は笑ってはいない。
けれど、その表情を見て、やっぱり、と思った。
この表情の時は、怒っているのではなく、悲しんでいるのだ。
悲しいのに泣けない、苦しいのに吐き出せない、そんな時の顔だ。
変わらない。
ライルが腰に差していた剣を抜く。
魔力伝導の良い白銀の剣。剣としての性能も高そうだが、どちらかと言えば魔法の触媒としての役割を持つのだろう。
純度の高い赤色の燃え盛る炎のような魔石が嵌め込まれていた。
来る。そう思って身構えたその時にはもう、その切っ先は首元に迫っていた。
身を捩りギリギリで避けることは出来たものの、完全では無かったようだ、首筋に熱が走り次いで痛みを感じる。
薄皮一枚。滴る血を眺めながら後ろへ飛ぶ。
着地する瞬間を狙って放たれた魔法が地面にあたって氷の柱を立てる。それを避けながら追撃を警戒しつつ距離を取ったところでようやく考える余裕ができた。
わかってはいたが手も足も出ない。
実力差がありすぎるな。真っ向勝負をしてはならない、絶対に負ける。
しかし憎たらしい弟子だ。私の教えを一切実行していないな、相変わらず力でのごり押しで何とかしようとする。
なまじすさまじい魔力とセンスを持っているからそれで何とかなってしまうところがいけない。
ぽつりと呟かれた言葉に思わず体がこわばる。
開かれた瞳に映る感情が、揺れるその声が、一心に私を責め立てていた。
それはそうだろう、この子にとっていま目の前にいる私はただただ憎い仇に見えているはずだ。
だって、わかってしまった。
ライルの言った言葉で、わかってしまったのだ。
きっと初めてじゃない。私は……正確には私と同じ、あのクローンたちか私の細胞を取り込んだ化け物が、ライルの前に現れている。
少なくとも一度、いや、きっと何度も。
その度にこの子は憎みを恨みを募らせ、怒り狂い、そして私を私と同じ顔をした人形を殺す絶望を味わったのだろう。
そんな事実に気づいてしまって胸が締め付けられるように痛む。
私が死ねば終わると思っていた。一瞬の痛みや悲しみを受けるかもしれないが、それでもそのうち傷は風化してくれると、本気で思っていた。
この子は苦しみ続けている、今も。
「だから、あんたが光の大陸から俺たちの大陸に渡ったのに気づいたとき、正直驚いた。とうとうそこまで至ったんだな、大陸間の転移は、本当に知恵のある存在じゃなきゃ出来ない」
淡々とした口調の中に、隠しきれない狂気を込めてライルは続けた。
ちょっと、まずいかもしれない。
気圧されてる。ライルに。信じられない。
自分の意思に反して勝手に震える体を奮い立たせて、口を開く。
何か言わなければ、彼に言葉を届けなくてはと思うけれど何も言葉が出てこない。
喉からは掠れた呼吸音が漏れるばかりだ。
「あんたを使えば、先生に届く」
そう言って、一歩近づいてくる彼の姿に恐怖を感じると同時にどこか懐かしさすら感じた。
片鱗は初めて会った時からあった。
まだ小さかったころの小さな小さな、子供の姿にも、今のようなほの暗い狂気は感じていた。
妥当に育った、という気もする。
私に出会わなければ、きっと光の下が似合う英雄になっただろうとも。
だからこそ思うのだ。
私と関わったせいで歪んでしまった。その責任は取らなくてはならないと。
不思議と、もうライルを怖いとは思わなくなっていた。
やはり私は単純だ。
「ライル」
名前を呼べばぴくりと反応して、改めて私を見た。
その顔は笑ってはいない。
けれど、その表情を見て、やっぱり、と思った。
この表情の時は、怒っているのではなく、悲しんでいるのだ。
悲しいのに泣けない、苦しいのに吐き出せない、そんな時の顔だ。
変わらない。
ライルが腰に差していた剣を抜く。
魔力伝導の良い白銀の剣。剣としての性能も高そうだが、どちらかと言えば魔法の触媒としての役割を持つのだろう。
純度の高い赤色の燃え盛る炎のような魔石が嵌め込まれていた。
来る。そう思って身構えたその時にはもう、その切っ先は首元に迫っていた。
身を捩りギリギリで避けることは出来たものの、完全では無かったようだ、首筋に熱が走り次いで痛みを感じる。
薄皮一枚。滴る血を眺めながら後ろへ飛ぶ。
着地する瞬間を狙って放たれた魔法が地面にあたって氷の柱を立てる。それを避けながら追撃を警戒しつつ距離を取ったところでようやく考える余裕ができた。
わかってはいたが手も足も出ない。
実力差がありすぎるな。真っ向勝負をしてはならない、絶対に負ける。
しかし憎たらしい弟子だ。私の教えを一切実行していないな、相変わらず力でのごり押しで何とかしようとする。
なまじすさまじい魔力とセンスを持っているからそれで何とかなってしまうところがいけない。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~
槿 資紀
BL
イェント公爵令息のリエル・シャイデンは、生まれたときから虚弱体質を抱えていた。
公爵家の当主を継ぐ日まで生きていられるか分からないと、どの医師も口を揃えて言うほどだった。
そのため、リエルの代わりに当主を継ぐべく、分家筋から養子をとることになった。そうしてリエルの前に表れたのがアウレールだった。
アウレールはリエルに献身的に寄り添い、懸命の看病にあたった。
その甲斐あって、リエルは奇跡の回復を果たした。
そして、リエルは、誰よりも自分の生存を諦めなかった義兄の虜になった。
義兄は容姿も能力も完全無欠で、公爵家の次期当主として文句のつけようがない逸材だった。
そんな義兄に憧れ、その後を追って、難関の王立学院に合格を果たしたリエルだったが、入学直前のある日、現公爵の父に「跡継ぎをアウレールからお前に戻す」と告げられ――――。
完璧な義兄×虚弱受け すれ違いラブロマンス
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる