24 / 29
23話 過去5
しおりを挟む
「レヴィ!」
エリンは悲鳴を上げて、レヴィに手を伸ばした。
エリンをエドワードが抱き上げた。
「エリン! レヴィはもう駄目だ。炎に呑まれてしまっている! ここから逃げよう」
エドワードは、我が子の変わり果てた姿を見て絶望を覚えるが、親友の子を優先する。生きている者を先に逃がさねば、と。
「エドワードおじさま、だめ! エリンはレヴィを助ける!」
「エリン!」
エドワードの腕の中からエリンはぴょんと飛び降りる。そして手を上げた。
「おみずのせいれいさん、ううんじょうおうさま! 来て!」
エリンの呼びかけに応えて、空中に水の貴婦人が現れる。
『エリン、あれはもう駄目よ。炎の力の制御を失い、己の力に呑まれている』
水の精霊の女王は、首を振った。
その女王の台詞にエリンは必死に言い募る。
『エリン、でもあなたはまだ幼い。まだ完全に愛し子としての力が揮えないわ』
「エリンは、レヴィを助けたいの! 何でもする! エリンの大切なものあげるから!」
澄んだ水の水面を連想させるエリンの青の瞳が潤んだ。
精霊王たちは愛し子を誰よりも愛している、守りたいと願う存在だ。その愛し子のお願いには弱い。
『大切なもの……。それは初恋の記憶でも?』
エリンは顔を上げて、こくんと頷いた。
『……エリン、あなたの今一番大切な存在はレヴィよ。レヴィとの想い出を全部失ってもいいの?』
エリンは、顔を俯かせてまた上げて再び頷く。
「エリンはおぼえてる。忘れてもレヴィが一番だって。だからまたレヴィに会えたエリンは、レヴィをだいすきになる」
凛とした態度で言い切った愛し子の言葉に水の精霊の女王はふっと笑う。幼いのに毅然とした眼差しを女王に向ける。ふっと女王は苦笑した。人間は、醜い。だが人間は美しい。幼きものが見せた美しい想いに女王は魅了された。
『わかったわ……。エリン、それでは初恋の記憶を貰うわ。それと引き換えに我が力をふるいなさい』
ふわりと水の女王がエリンと一体化する。
エリンの青の瞳が輝き、その身体が青に呑まれる。
すっとエリンの手から水の力が放たれて、レヴィを吞み込んでいく。
エリンの持つ水の力が全て放たれて、青の世界が広がる。
レヴィは、深紅の世界に居た。
熱くて動けない、そしてここから動きたくない。
自分は母親に見捨てられた人間。
誰も自分を必要としてくれない、愛してくれない。
膝を抱えて蹲っていた。
このまま、消えてしまいたい。
『レヴィ! 戻ってきて!』
誰かの声がした。
だけど。
レヴィは、顔を上げない。
放っておいてほしい、と。
「レヴィ、エリンだよ」
エリンが蹲るレヴィを抱きしめた。
温もりが広がる。
「エリン、僕を置いて戻って。もう僕は生きていたくない」
「レヴィ……」
「母様は僕を化け物と呼んだ。僕は母様に嫌われているんだ」
「レヴィ。顔を上げて」
深紅の瞳と青の瞳が出会う。
小さな手がレヴィの頬を包み込んだ。
「レヴィ、エリンはレヴィのことが世界で一番すき」
エリンの紡ぐ言葉は真剣でその青の瞳は必死にレヴィを見つめていた。
「……エリン、僕でいいの?」
レヴィは紅の双眸を濡らして、エリンを見つめ返す。
「レヴィ、だいすき」
エリンの唇がレヴィの唇に重なる。
レヴィは、それと同時に青の輝きに包み込まれた。
青の息吹がエリンから送り込まれて、レヴィの身体が青に輝く。
レヴィの深紅の瞳が開いた。
エリンは、嬉しそうに笑う。
そして、暫くしてエリンは意識を失った。
エリンは、精霊の力を使い過ぎて、長い間眠りに着いていた。
次に目覚めた時、彼女のひと夏の記憶は失われていた。
そして、水の精霊を呼ぶ力も消えていた。
エリンは、瞳を開いた。
幼い失われた記憶と枯渇した力。
だけど。
エリンは、思い出した。
それはエリンが真に水の精霊の女王の愛し子として覚醒したからだ。
「レヴィ……」
エリンは、かつての初恋の少年の名前を呼んだ。
エリンは悲鳴を上げて、レヴィに手を伸ばした。
エリンをエドワードが抱き上げた。
「エリン! レヴィはもう駄目だ。炎に呑まれてしまっている! ここから逃げよう」
エドワードは、我が子の変わり果てた姿を見て絶望を覚えるが、親友の子を優先する。生きている者を先に逃がさねば、と。
「エドワードおじさま、だめ! エリンはレヴィを助ける!」
「エリン!」
エドワードの腕の中からエリンはぴょんと飛び降りる。そして手を上げた。
「おみずのせいれいさん、ううんじょうおうさま! 来て!」
エリンの呼びかけに応えて、空中に水の貴婦人が現れる。
『エリン、あれはもう駄目よ。炎の力の制御を失い、己の力に呑まれている』
水の精霊の女王は、首を振った。
その女王の台詞にエリンは必死に言い募る。
『エリン、でもあなたはまだ幼い。まだ完全に愛し子としての力が揮えないわ』
「エリンは、レヴィを助けたいの! 何でもする! エリンの大切なものあげるから!」
澄んだ水の水面を連想させるエリンの青の瞳が潤んだ。
精霊王たちは愛し子を誰よりも愛している、守りたいと願う存在だ。その愛し子のお願いには弱い。
『大切なもの……。それは初恋の記憶でも?』
エリンは顔を上げて、こくんと頷いた。
『……エリン、あなたの今一番大切な存在はレヴィよ。レヴィとの想い出を全部失ってもいいの?』
エリンは、顔を俯かせてまた上げて再び頷く。
「エリンはおぼえてる。忘れてもレヴィが一番だって。だからまたレヴィに会えたエリンは、レヴィをだいすきになる」
凛とした態度で言い切った愛し子の言葉に水の精霊の女王はふっと笑う。幼いのに毅然とした眼差しを女王に向ける。ふっと女王は苦笑した。人間は、醜い。だが人間は美しい。幼きものが見せた美しい想いに女王は魅了された。
『わかったわ……。エリン、それでは初恋の記憶を貰うわ。それと引き換えに我が力をふるいなさい』
ふわりと水の女王がエリンと一体化する。
エリンの青の瞳が輝き、その身体が青に呑まれる。
すっとエリンの手から水の力が放たれて、レヴィを吞み込んでいく。
エリンの持つ水の力が全て放たれて、青の世界が広がる。
レヴィは、深紅の世界に居た。
熱くて動けない、そしてここから動きたくない。
自分は母親に見捨てられた人間。
誰も自分を必要としてくれない、愛してくれない。
膝を抱えて蹲っていた。
このまま、消えてしまいたい。
『レヴィ! 戻ってきて!』
誰かの声がした。
だけど。
レヴィは、顔を上げない。
放っておいてほしい、と。
「レヴィ、エリンだよ」
エリンが蹲るレヴィを抱きしめた。
温もりが広がる。
「エリン、僕を置いて戻って。もう僕は生きていたくない」
「レヴィ……」
「母様は僕を化け物と呼んだ。僕は母様に嫌われているんだ」
「レヴィ。顔を上げて」
深紅の瞳と青の瞳が出会う。
小さな手がレヴィの頬を包み込んだ。
「レヴィ、エリンはレヴィのことが世界で一番すき」
エリンの紡ぐ言葉は真剣でその青の瞳は必死にレヴィを見つめていた。
「……エリン、僕でいいの?」
レヴィは紅の双眸を濡らして、エリンを見つめ返す。
「レヴィ、だいすき」
エリンの唇がレヴィの唇に重なる。
レヴィは、それと同時に青の輝きに包み込まれた。
青の息吹がエリンから送り込まれて、レヴィの身体が青に輝く。
レヴィの深紅の瞳が開いた。
エリンは、嬉しそうに笑う。
そして、暫くしてエリンは意識を失った。
エリンは、精霊の力を使い過ぎて、長い間眠りに着いていた。
次に目覚めた時、彼女のひと夏の記憶は失われていた。
そして、水の精霊を呼ぶ力も消えていた。
エリンは、瞳を開いた。
幼い失われた記憶と枯渇した力。
だけど。
エリンは、思い出した。
それはエリンが真に水の精霊の女王の愛し子として覚醒したからだ。
「レヴィ……」
エリンは、かつての初恋の少年の名前を呼んだ。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる