ストーンエイジ

文屋 たかひろ

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覚悟2

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「杉崎リツさん。ここに来てもらった訳はわかっていますか?」
「はい、リーチ会議の件だと思っています。嘘の報告をした」。


今回、杉崎が呼び出されるまでの経緯はこのような内容だった。

2019年12月19日に行われたリーチ会議にて、杉崎リツが報告した内容に虚偽がある事が認められた。
それは、建設現場で起こったクレーンの転倒事故により2人の死亡者が出るというものだった。

この報告を受けて防衛省は対策を講じるために、各関係者にコンタクトをとるが、杉崎の報告した日時と位置情報には工事現場は無く、工事予定すらもない事がすぐにわかった。

防衛省は裏付けの為に、調査を始めたがその最中、
会議には参加していないリーチからの報告が入った。
「リーチの報告に偽りあり、我が国の利益に影響を及ぼす可能性は否定できない、支給調査されよ」。

この報告を受けてすぐに上層部を含む会議がおこなわれ、後は本人への聴取をするにいたった、という内容だった。

江森がこれまでの経緯を話し終えると、一通り部屋にいる者の顔を見回して。
「以上ですが、何か質問のある方はいらっしゃいますか?」と言った。

5秒ほどの沈黙の後、江森が
「それでは大臣、お願いします」と言うと、大臣が杉崎の顔を見ながら質問した。
「杉崎さん、ここではなぜ嘘をついたのか、自分の意思なのか、の2つを伺いたい」
大臣はあくまで冷静に話す。

「ここに来るのが目的です、勿論自分の意志で、嘘をつけば必ず問題になる。
よみがあたった」。

「そうですか、わかりました。しかし、、あまり色々と探るのは良くない。
正直どうなるかもわからない、気をつけるように。
それと、これからは虚偽の報告なんてすることはない。直接話しなさい」。

大臣は背もたれに寄りかかるとまた杉崎に質問した。
「では、なぜここに来たのかを教えて下さい」

杉崎は大臣の発言に拍子抜けしていた。
自らが起こした問題は簡単にかたが付く様な内容では無いと思っていたし、
厳罰さえも覚悟していたからだ。
杉崎は心を落ち着かせ、一息ついた後にこう質問した。

「リーチは何のために存在しているのか、それとリーチの突然死についてわかっている事を教えてほしい。」

 それを横で聞いていた星野は驚きと同時に、この緊張の中でも少し安堵した。
ここに来るまでに手に入れた情報。

その中でも核心と思われるウィルスに関する質問を杉崎が避けたのが明白だからである。
それは、ウィルスの情報が金本が自分たちに残した大切な情報であり、万が一でも軽率な質問で全てを台無しにするわけには行かないという固い意思そのものであった。

「ひとつめの質問ですが。リーチが啓示を受けることにより様々な問題を解決す…」杉崎が言葉をさえぎる

「ちょっと待ってください、そんなことはわかってます。僕が知りたいのは誰が何のためにこんな事をしているのか?です」

星野が杉崎の顔を見て息をのみ、期待と恐怖のまなざしで大臣を見た。

「リーチの存在は私たち人類にとって、すでに無くてはならないものになっています。
ただその原点はわかっていない、どこの誰が啓示を出しているかわかっていません」。

江森が珍しく動揺している。
「大臣、その辺で」と、汗をぬぐっている。

「大丈夫」

大臣は江森の言葉を制止すると杉崎との話を続ける。

「ひとつだけ確かなことは啓示は私たちが授けているわけでは無い。
ということだけ。
二つ目の質問ですが、、突然死はウィルスが原因です。
あなたたちはここに来る前に。〇〇大学の近江教授に会っていたと聞いていますが?
まだ何もわかっていなかったのですね」。

大臣が話し終えると、江森は聴取が終わった事を伝えた。
杉崎は落胆していた。まるで手ごたえのない回答だった。
ここまでなのか?と自問していると、再び江森が話し出した。

「では、この場を借りてもう一つ。星野君に辞令が出ている。只今をもってリーチとの窓口役を解任とする。後任にはここにいる布施くんが選ばれているので、引継ぎをするように。
他にも何かあれば色々手助けするように。
以上」。

星野もまた杉崎同様、この処分には驚いていた。
大臣の二つとなりに座る布施は、この時は星野に会釈でもしようかと自分の方を向くのを待っていたが。星野は全く布施の方を見ることはなかった。

星野は驚きながらも、執拗に質問を重ねることはしなかった。その行為は無駄だということはわかっていたし、ひとつひっかっかる心持ちがあったからだった。

江森
「ではこれで聴取は終わりになります」。
といって警備に開錠の合図をした、その時大臣が独り言のように話し出した。

「金本さんにしても、他のリーチや亡くなった方々にしても、本当に感謝しています。
杉崎さん、どうか命を粗末にしないでください」。

杉崎と星野はどこか腑に落ちない気持ちで部屋を後にした。
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