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隠蔽
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金本が他界して2か月ほどたったある日のこと、あるアパートの一室で部屋の荷物を
ひとつひとつ分別しているのは金本の弟だった。
仕事を終えてから時間があるときにゆっくり片づけているのだろう、全く急ぐ気配もなく
むしろ、終わってしまわないようにも見えるくらいにゆっくりと進めている。
ベンチコートがこすれる音と鼻をすする音が、換気のために開けている窓から表に漏れていた。
部屋にあるものは主に、週刊誌やトラックのパーツ、買いだめされたインスタント食品、
そしてアマチュア無線に関するものが多く、それに関する事が書かれているノートが大量にまとめられていた。
それは金本の立ち振る舞いからは想像出来ないほど丁寧に書かれており、無線仲間のコールサインや周波数、どのような人なのかなどが事細かに残されている。
さらに、いつ誰と交信したのかが詳細に記載されていた。
金本弟はこの手帳を眺めるのが好きだった。
この日もいつもと同じように手帳を見て自分の知らない兄がどんな人間だったのかを自らの思い出と重ねていた。
その中で金本弟はあることに気付く。
金本が亡くなる一年ほど前から、明らかに交信の回数が多くなっている人物がいる、
しかもそれは二人いて、一人は近江教授、もう一人はコールサインしか書かれていない。
気になったので近江教授ともう一人の方のコールサインをよく見ると、書いてあったのはまったくでたらめなコールサインであることに気が付いた、それは生前金本に影響されて無線を勉強していた弟が見てもすぐにわかるものだった。
その通信相手との通信記録を見ていくと、
でたらめで脈絡のない会話だが、いかにも
本当に誰かと会話したかの様に書き留められた内容になっている。
コールサインの見間違いかと何度も確認したが、それは絶対に間違えようのないものだった。交信の内容を読み進めるとそこには
「啓示、未来、人、ウィルス、記憶、死、複合、平和、破壊」
これらの文字が、作られたであろう会話の中に数多く、意図的に使っているのが誰がみてもわかるくらい鮮明にかかれてた。
*
近江教授の研究室。
星野は杉崎の「ウィルスはダミー」という言葉に驚愕したが、ある疑念と照らし合わせていた。
星野
「確かに、それならずっと気になっていた事に説明ができます。
近江教授がなぜデジタル庁のメンバーに選ばれたのかが気になっていたし職場の仲間内でも話題になっていました。
デジタルとウィルスにどんな繋がりがあって選出されたのか、
防衛省がリーチを治め管理しているとばかり思っていたけど、実際にまとめていたのはデジタル庁だったのか、しかしなぜデジタル庁なんだ?
リーチに関わることなら防衛省の方がしっくりくるし、実際連携と言う意味ではその方が都合が良いはず」。
杉崎も星野と同じ疑問を抱いていた。
そこから先を聞きに来たと言った感じに近江の方を見るが先ほどまでと同様、コーヒーの入ったカップを持ちながらじっと椅子に座っている。
ただひとつ、さっきまでと違う点はその顔は穏やかで、少し笑みを浮かべているようにも見えるほどだった。
近江は持っているマグカップを置き、大きく息をつく。
長い間、背負っていた重い荷物をやっとおろしたかのような声で、
「これで金本のやつも報われる」。
と言って、遠回りに杉崎らの推測が間違いではないということを伝えた。
立ち上がり窓の方に向かうと、来客の為に入れなおしたコーヒーを用意したカップにそそぐ。その時にあがったゆげのせいですりガラスには結露がついていた、外の空気の冷たさが伝わってくる。
コーヒーを注いだマグカップを二人に差し出すと、近江は続きを話し出した。
「リーチが現れてから今日まで数えられない程の犠牲があった、
最近になりさらに犠牲者の数が多くなってきたが、啓示を受ける人間の突然死はリーチが現れた頃からすでに確認されていた。
これを重く見た防衛省は我々科学者にこのウィルスを作るように命じた。
もちろん目的から無害であり、長時間体内にとどまることが出来て感染しないもの。
そうして作られたウィルスの使い道を知らされた時はびっくりしたよ、
このウィルスはあくまで原因不明の突然死を隠ぺいするために作られたんだからね。
この平和な時代に原因不明の突然死なんてあってはならないんだよ。
いくら探しても死の原因はみつからない、それならいっそのこと原因を作ってしまおう。
あくまで原因はウィルスということにしよう、なんて狂気の沙汰だよ」。
近江の話しを聞いていた星野は驚愕していた。自らが防衛省の職員であるのにもかかわらずそのすべてが初耳で、思いもよらないものだったからである。
「すごいですね、ここまでとは」。
「全くだ、だがこうするしかなかったことは私たち学者でさえもすぐに理解できた」
杉崎も同様に、なぜこんなウィルスを作らなくてはいけないか、その必要性をすぐに理解していた。
ある日突然、目に見えない恐怖がやってくる。しかもそれが何者で、どう防いだらいいかもわからない、まさに終末がやってきたとしたら、それを聞いた市民は恐れ混乱する。
まともな経済活動なんて出来るはずも無く、不信になりやがて暴動に繋がりかねない。
杉崎と星野はその事実を知ったとたんに、これまでとは次元の違う恐怖に襲われることとなる。
これまでは死亡の原因は何らかのミス、つまり死の直前に何かしらのアクションがあってはじめて起こる現象であり。
それは防衛省、あるいは一個人の意思が介入しているものだとばかり思っていたからである。
そんな二人に対して近江が気になっていた事をついに話し出した。
「ところで星野君はともかく杉崎君は、よく無事にここまでたどり着けたね」。
杉崎はこの何でもないように聞こえる質問でさらなる恐怖と疑問を抱く事となる。
ひとつひとつ分別しているのは金本の弟だった。
仕事を終えてから時間があるときにゆっくり片づけているのだろう、全く急ぐ気配もなく
むしろ、終わってしまわないようにも見えるくらいにゆっくりと進めている。
ベンチコートがこすれる音と鼻をすする音が、換気のために開けている窓から表に漏れていた。
部屋にあるものは主に、週刊誌やトラックのパーツ、買いだめされたインスタント食品、
そしてアマチュア無線に関するものが多く、それに関する事が書かれているノートが大量にまとめられていた。
それは金本の立ち振る舞いからは想像出来ないほど丁寧に書かれており、無線仲間のコールサインや周波数、どのような人なのかなどが事細かに残されている。
さらに、いつ誰と交信したのかが詳細に記載されていた。
金本弟はこの手帳を眺めるのが好きだった。
この日もいつもと同じように手帳を見て自分の知らない兄がどんな人間だったのかを自らの思い出と重ねていた。
その中で金本弟はあることに気付く。
金本が亡くなる一年ほど前から、明らかに交信の回数が多くなっている人物がいる、
しかもそれは二人いて、一人は近江教授、もう一人はコールサインしか書かれていない。
気になったので近江教授ともう一人の方のコールサインをよく見ると、書いてあったのはまったくでたらめなコールサインであることに気が付いた、それは生前金本に影響されて無線を勉強していた弟が見てもすぐにわかるものだった。
その通信相手との通信記録を見ていくと、
でたらめで脈絡のない会話だが、いかにも
本当に誰かと会話したかの様に書き留められた内容になっている。
コールサインの見間違いかと何度も確認したが、それは絶対に間違えようのないものだった。交信の内容を読み進めるとそこには
「啓示、未来、人、ウィルス、記憶、死、複合、平和、破壊」
これらの文字が、作られたであろう会話の中に数多く、意図的に使っているのが誰がみてもわかるくらい鮮明にかかれてた。
*
近江教授の研究室。
星野は杉崎の「ウィルスはダミー」という言葉に驚愕したが、ある疑念と照らし合わせていた。
星野
「確かに、それならずっと気になっていた事に説明ができます。
近江教授がなぜデジタル庁のメンバーに選ばれたのかが気になっていたし職場の仲間内でも話題になっていました。
デジタルとウィルスにどんな繋がりがあって選出されたのか、
防衛省がリーチを治め管理しているとばかり思っていたけど、実際にまとめていたのはデジタル庁だったのか、しかしなぜデジタル庁なんだ?
リーチに関わることなら防衛省の方がしっくりくるし、実際連携と言う意味ではその方が都合が良いはず」。
杉崎も星野と同じ疑問を抱いていた。
そこから先を聞きに来たと言った感じに近江の方を見るが先ほどまでと同様、コーヒーの入ったカップを持ちながらじっと椅子に座っている。
ただひとつ、さっきまでと違う点はその顔は穏やかで、少し笑みを浮かべているようにも見えるほどだった。
近江は持っているマグカップを置き、大きく息をつく。
長い間、背負っていた重い荷物をやっとおろしたかのような声で、
「これで金本のやつも報われる」。
と言って、遠回りに杉崎らの推測が間違いではないということを伝えた。
立ち上がり窓の方に向かうと、来客の為に入れなおしたコーヒーを用意したカップにそそぐ。その時にあがったゆげのせいですりガラスには結露がついていた、外の空気の冷たさが伝わってくる。
コーヒーを注いだマグカップを二人に差し出すと、近江は続きを話し出した。
「リーチが現れてから今日まで数えられない程の犠牲があった、
最近になりさらに犠牲者の数が多くなってきたが、啓示を受ける人間の突然死はリーチが現れた頃からすでに確認されていた。
これを重く見た防衛省は我々科学者にこのウィルスを作るように命じた。
もちろん目的から無害であり、長時間体内にとどまることが出来て感染しないもの。
そうして作られたウィルスの使い道を知らされた時はびっくりしたよ、
このウィルスはあくまで原因不明の突然死を隠ぺいするために作られたんだからね。
この平和な時代に原因不明の突然死なんてあってはならないんだよ。
いくら探しても死の原因はみつからない、それならいっそのこと原因を作ってしまおう。
あくまで原因はウィルスということにしよう、なんて狂気の沙汰だよ」。
近江の話しを聞いていた星野は驚愕していた。自らが防衛省の職員であるのにもかかわらずそのすべてが初耳で、思いもよらないものだったからである。
「すごいですね、ここまでとは」。
「全くだ、だがこうするしかなかったことは私たち学者でさえもすぐに理解できた」
杉崎も同様に、なぜこんなウィルスを作らなくてはいけないか、その必要性をすぐに理解していた。
ある日突然、目に見えない恐怖がやってくる。しかもそれが何者で、どう防いだらいいかもわからない、まさに終末がやってきたとしたら、それを聞いた市民は恐れ混乱する。
まともな経済活動なんて出来るはずも無く、不信になりやがて暴動に繋がりかねない。
杉崎と星野はその事実を知ったとたんに、これまでとは次元の違う恐怖に襲われることとなる。
これまでは死亡の原因は何らかのミス、つまり死の直前に何かしらのアクションがあってはじめて起こる現象であり。
それは防衛省、あるいは一個人の意思が介入しているものだとばかり思っていたからである。
そんな二人に対して近江が気になっていた事をついに話し出した。
「ところで星野君はともかく杉崎君は、よく無事にここまでたどり着けたね」。
杉崎はこの何でもないように聞こえる質問でさらなる恐怖と疑問を抱く事となる。
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