ななみにおまかせ☆

うさぎ蕎麦

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1話「魔法少女ななみ」

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 空を見上げれば無限に続く薄暗い闇。
 左右を見渡してもそれはまた同じ。
 ここに太陽の光など存在しない。
 そして壁も何も存在しないただただ無のみが広がる空間。
 しかし、そんな空間の一角にうっすらと明かりが見えた。

「ななみん?」
「は~い?」
 
 白いタヌキの姿をした使い魔がななみの名前を呼んだ。
 ななみと呼ばれた少女は、ふかふかなベッドの上でうつ伏せになりながら本を広げていた。

「ねぇ、いつまでそうしてるの?」
「るんるんるん♪」

 使い魔が、ななみの近くで不満気に言うが当の本人はそんな言葉なんて耳に入っていないと言わんばかりにご機嫌に鼻歌を歌いながら次のページを捲った。

「もぉ~! そんなんじゃ僕が怒られちゃうんだよ!」
「はにゃ~? どうしたの、ポン太君?」
「だから、早く仕事に行ってよ!」

 どうやら、ななみが何もしないとポン太に何かマズイ事が起こる様子で、彼がななみに対して大きな声で訴えかけるも。

「今良い所なのー」
 
 そう言ってななみは、クスクス笑いながら次のページを捲った。
 全く聞く気が無かったが、ポンタが大声を出したから仕方無く返事をしたと言う感じが伺える。

「はわわわ……こうしている間にもあの世界が……ああ、魔王が強過ぎて勇者がピンチだよぉ~」
「らんらんらん~♪」
 
 大声を出しても無駄だと悟ったポンタは、次善策として涙声でななみに訴えかけたのであるが、やっぱりななみはそんなポンタなんて眼中に無い様でご機嫌そうに鼻歌を歌っている。

「な、ななみが助けに行かないと! 助けに行ってお金を……」

 稼が無ければ生活が出来ない、と言いかけた所でななみはお金に全く困っていない事を思い出したポン太が額に手を当てた。
 そう、ななみは一度仕事をこなしてしまえば大金が手に入る上彼女は特別お金を使う事も無かった。
 そう言う事であれば、お金を理由に彼女を動かす事は不可能であった。

「うっうー……そ、そんなんじゃ、こ、この世界から出られないよ?」
「知ってるよー」

 と、ポン太が苦し紛れな事を言うが、今の世界に不満を感じていないななみは適当な生返事しかしなかった。

「もぉ、誰だよななみに便利な道具を寄越した人は……」

 ポンタががっくりと項垂れながらぼやく通り、最初はななみもちゃんと仕事に行っていたのだ。
 しかし、仕事での戦利品のお陰でこの空間が快適になるにつれてななみはこの様な状況になってしまったのだ。

「のう、ポン太?」
 
 ポンタがななみに対して頭を抱えているところで、突然彼の脳に直接老人の声が響いた。
 正確に言えば、この声はななみにも届いているのであるが、見ての通り彼女は全く聞く気が無い様でベッドの上で足をバタバタさせながら読書に夢中になっている。
 
「はぅぅぅぅ!? 無理ですダメですどうしようも出来ません!」

 声の主に対して、ポン太が激しく言い訳をした。

「はて? ワシはまだ何も言っておらぬぞい?」
「ひぃぃぃ、ごめんなさい、ごめんなさい」
 
 そして今度は虚空に向けて激しく土下座をしたのだが……。

「フォッフォッフォッ、どうせこんな事もあろうかと思ってのぉ? ほれ、コイツを使うのじゃ!」

 そう言って声の主はポン太に1枚の写真を渡した。

「こ、これは!?」

 その写真には一人の青年の姿が映し出されていたが、当然♂であるどころか種族が違うポン太は全く興味が湧かない。
 と言うか、ポン太からしてみれば写真自体ひじょーにデカいのだ。
 
「これはのぉ? 今とある世界で戦ってる勇者じゃ、これをななみに使うのじゃ!」
「は、はぁ……」

 声の主が自信満々に言うが、何故この写真でななみが動いてくれるのかと言う疑問に対してポン太は全く理解が追い付いていない。

「では、頑張るのじゃ!」

 しかし、そんなポンタの心情を知ってか知らずか声の主は渡すものだけ渡してさっさと何処かへ行ってしまったのだった。

「何をどうすれば良いの……?」

 現状に追いつかぬ思考を抱えたままポン太は深い溜息を付くと、仕方無く言われた通りにしてみよう、と写真を引き摺りながらななみが居るベッドの近くまで移動した。

「ねぇ、ななみん?」
「むぅ~これは大ピンチです!」
 
 やはり、ななみはポン太の声を聞く気が無い様で、読んでる本に対して独り言を言っている。

「ぐぅ~」

 思った通り、ただ単純に近付いただけではダメかと思ったポン太は、意を決してベッドをよじ登り、写真をくわえてななみの隣まで行った。

「むむっ、ポン太君じゃないですか!」

 ポンタがなんとかしてななみの近くにやって来たと思ったら、今まで読書に夢中だったななみが何故か急にポン太に声を掛けた。

「え、そ、そうだけど?」

 急にななみから声を掛けられて、何か言われてしまう? と思ったポン太は思わず身構えてしまった。
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