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序章「異世界転送」
4話「異世界転送」
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祝賀会を終えると、ギルは上手く口説いた令嬢達を連れ、カインもギルに無理矢理その中に組み込まれていた。
フィルリークとミルティーナはそんな二人を見送りつつ帰路についたのだった。
『聞こえますか?』
その道中で、フィルリークの脳裏に聞き覚えの無い少女の声が聞こえて来た。
「うん?」
レーヴェンヴォールは鞘に納めているから違うし、ミィルティーナがそんな事出来ないし気のせいと思ったフィルリークであるが、
『勇者様、私達の国をお助け下さい……』
まるで最後の望みをフィルリークに託すかの様な悲痛の声がフィルリークの脳裏に響いた。
(一体誰だろう? 困っている事には間違いないぞ?)
気のせいで無いと感じたフィルリークがその声に耳を傾ける。
『聖剣を持つ勇者様、どうか私達の世界に……』
(どういう事だ?)
『私達の国は異世界の勇者様が居なければ滅ぶしかないのです』
声の主から涙の気配が過った。
(異世界? んなもんあるのか?)
『お願いします勇者様……』
「なぁ、ミィル」
「フィル? どうしたの?」
フィルリークの唐突な質問に対してミィルティーナが不思議そうな顔を浮かべながら振り向いた。
「異世界ってあると思うか?」
「え?」
「いや、なんでもねーさ」
ミィルティーナの不思議そうな表情を見たフィルリークは言葉を止めた。
「良いよ、行っても」
ミィルティーナが何かを察したかの様に呟いた。
「そう言う訳じゃないんだけどなぁ」
「貴方が私にそう言う時は、何かを守りたい、でも仲間に迷惑を掛けたくない時だよ?」
ミルティーナが優しく囁いた。
「え?」
自覚をしてない自分の癖を指摘されたフィルリークが驚きの色を見せた。
「私は、そんな貴方が好きですから……」
ミィルティーナが誰にも聞こえない様な小さな声で囁いた。
「今なんて言った?」
「な、何でもないよ!」
ミィルティーナは赤面しながら大きな振りを付けて見せた。
「そうか」
自分の癖を指摘されたフィルリークであるが確かに、何処の誰かか分からない相手からの頼みだろうが、困って自分に助けを求める人を放っておく訳にはいかない。
(でも、どうすれば良い?)
フィルリークはレーヴェンヴォールを誰の目にも止まらぬ様そっと引き抜き尋ねてみる事にした。
『聞こえてたわよ』
先の戦いでエネルギーを使い果たし補給中であったレーヴェンヴォールが不機嫌そうに答えた。
(方法は?)
『多分送信者と私が協力する事であっちの世界には行けると思うけど』
(けど?)
『貴方一人転移させるだけでも私の中に流れるエネルギーの最大値が大きく削がれる事になるでしょうね』
(そうか)
『あっさり言うわね、この世界に戻れなくなるって事よ? 分かってる?』
(それは困る)
行く方法を知ってしまった以上言ってほっとけない気持ちが高まったのも事実であろう。
『あっちの世界に居る魔族か、魔剣が持ってる力を奪い取れば最大エネルギーの回復も出来るには出来るでしょうけど』
(なら)
『魔族が居る保証すら無いわよ……』
(魔剣はあると言った)
『はいはい、止めても無駄なのは分かってるわよ、さっき貴方に話しかけた人には私から伝えておくわ』
(ああ、すまない)
レーヴェンヴォールとの交渉を終えたフィルリークはニッと笑みを浮かべ静かに鞘へ納めた。
「ミィル」
「大丈夫だよ、私、待ってるから……」
「ああ、すまない」
フィルリークがそう呟くと、フィルリークの足元に青白い光を放つ五芒星の魔法陣が描かれそこ溢れた光がフィルリークの身体を包みこむとその姿を消し去った。
行く末を見守ったミルティーナは、先日フィルリークから戦利品だからとプレゼントされたペンダントを両手で握りしめながら空を見上げた。
―魔界―
「おいおい、オメー人間如きにやられたのか?だっせーなぁ」
魔界に居る悪魔がネザーリッパ―に対してそう言った。
「チッ、だったらテメー、聖剣相手に勝ってみろや!」
フィルリークに敗れたネザーリッパーは、魔界の中でも魔族の魂が集まる場所に戻って来た。
魔界以外の場所で肉体の機能を喪失させた魔族達はこの地にてその肉体の回復を待つ訳である。
「それはそうとおめー、これからどうすんだ?」
別の悪魔がネザーリッパーに尋ねた。
「さっさと復活してあの野郎に復讐してやんよ」
その言葉には憎悪と殺気が込められていた。
「時間が掛かるからな、しかし危険だぞ」
悪魔がそう告げる通り、ここにいるだけでもその内元の肉体が復活するのであるがそれはそれで非常に時間が掛かってしまうのだ。
「ケッ、あの野郎が寿命を迎えチマったら意味ねーんだよ」
ネザーリッパーの言う通り、自分が復活する為には下手をすれば人間の寿命分ぐらいの時間は掛かってしまう。
勿論、魔族に取っては大した時間で無いのであるが。
「面白い事を言う」
悪魔は、半ば馬鹿にした様に言った。
「うるせぇ、俺はアスザルワールドに行ってくる」
ネザーリッパーが吐き捨てる様に言った。
「アスザルワールドか、あそこには別の魔族も先に行ってたな」
悪魔が、名前は確か……と思い出そうとしている所で、
「魔剣になって人間の魂食らいつくしてさっさと肉体を戻すつってんだよ!」
ネザーリッパーが自分は一人でやれると言いたげに叫んだ。
「剣か、確かに槍やら斧やら杖やらになってあの世界に行ってる奴等が居るからな、くれぐれも具現化した状態で破壊されるなよ?復活に更に時間がかかる筈だ」
悪魔は冷静に呟く。
「分かってる!」
ネザーリッパーはそう吐き捨てると、自らの身体を魔剣とさせアスザルワールドの地に降り立ったのであった。
フィルリークとミルティーナはそんな二人を見送りつつ帰路についたのだった。
『聞こえますか?』
その道中で、フィルリークの脳裏に聞き覚えの無い少女の声が聞こえて来た。
「うん?」
レーヴェンヴォールは鞘に納めているから違うし、ミィルティーナがそんな事出来ないし気のせいと思ったフィルリークであるが、
『勇者様、私達の国をお助け下さい……』
まるで最後の望みをフィルリークに託すかの様な悲痛の声がフィルリークの脳裏に響いた。
(一体誰だろう? 困っている事には間違いないぞ?)
気のせいで無いと感じたフィルリークがその声に耳を傾ける。
『聖剣を持つ勇者様、どうか私達の世界に……』
(どういう事だ?)
『私達の国は異世界の勇者様が居なければ滅ぶしかないのです』
声の主から涙の気配が過った。
(異世界? んなもんあるのか?)
『お願いします勇者様……』
「なぁ、ミィル」
「フィル? どうしたの?」
フィルリークの唐突な質問に対してミィルティーナが不思議そうな顔を浮かべながら振り向いた。
「異世界ってあると思うか?」
「え?」
「いや、なんでもねーさ」
ミィルティーナの不思議そうな表情を見たフィルリークは言葉を止めた。
「良いよ、行っても」
ミィルティーナが何かを察したかの様に呟いた。
「そう言う訳じゃないんだけどなぁ」
「貴方が私にそう言う時は、何かを守りたい、でも仲間に迷惑を掛けたくない時だよ?」
ミルティーナが優しく囁いた。
「え?」
自覚をしてない自分の癖を指摘されたフィルリークが驚きの色を見せた。
「私は、そんな貴方が好きですから……」
ミィルティーナが誰にも聞こえない様な小さな声で囁いた。
「今なんて言った?」
「な、何でもないよ!」
ミィルティーナは赤面しながら大きな振りを付けて見せた。
「そうか」
自分の癖を指摘されたフィルリークであるが確かに、何処の誰かか分からない相手からの頼みだろうが、困って自分に助けを求める人を放っておく訳にはいかない。
(でも、どうすれば良い?)
フィルリークはレーヴェンヴォールを誰の目にも止まらぬ様そっと引き抜き尋ねてみる事にした。
『聞こえてたわよ』
先の戦いでエネルギーを使い果たし補給中であったレーヴェンヴォールが不機嫌そうに答えた。
(方法は?)
『多分送信者と私が協力する事であっちの世界には行けると思うけど』
(けど?)
『貴方一人転移させるだけでも私の中に流れるエネルギーの最大値が大きく削がれる事になるでしょうね』
(そうか)
『あっさり言うわね、この世界に戻れなくなるって事よ? 分かってる?』
(それは困る)
行く方法を知ってしまった以上言ってほっとけない気持ちが高まったのも事実であろう。
『あっちの世界に居る魔族か、魔剣が持ってる力を奪い取れば最大エネルギーの回復も出来るには出来るでしょうけど』
(なら)
『魔族が居る保証すら無いわよ……』
(魔剣はあると言った)
『はいはい、止めても無駄なのは分かってるわよ、さっき貴方に話しかけた人には私から伝えておくわ』
(ああ、すまない)
レーヴェンヴォールとの交渉を終えたフィルリークはニッと笑みを浮かべ静かに鞘へ納めた。
「ミィル」
「大丈夫だよ、私、待ってるから……」
「ああ、すまない」
フィルリークがそう呟くと、フィルリークの足元に青白い光を放つ五芒星の魔法陣が描かれそこ溢れた光がフィルリークの身体を包みこむとその姿を消し去った。
行く末を見守ったミルティーナは、先日フィルリークから戦利品だからとプレゼントされたペンダントを両手で握りしめながら空を見上げた。
―魔界―
「おいおい、オメー人間如きにやられたのか?だっせーなぁ」
魔界に居る悪魔がネザーリッパ―に対してそう言った。
「チッ、だったらテメー、聖剣相手に勝ってみろや!」
フィルリークに敗れたネザーリッパーは、魔界の中でも魔族の魂が集まる場所に戻って来た。
魔界以外の場所で肉体の機能を喪失させた魔族達はこの地にてその肉体の回復を待つ訳である。
「それはそうとおめー、これからどうすんだ?」
別の悪魔がネザーリッパーに尋ねた。
「さっさと復活してあの野郎に復讐してやんよ」
その言葉には憎悪と殺気が込められていた。
「時間が掛かるからな、しかし危険だぞ」
悪魔がそう告げる通り、ここにいるだけでもその内元の肉体が復活するのであるがそれはそれで非常に時間が掛かってしまうのだ。
「ケッ、あの野郎が寿命を迎えチマったら意味ねーんだよ」
ネザーリッパーの言う通り、自分が復活する為には下手をすれば人間の寿命分ぐらいの時間は掛かってしまう。
勿論、魔族に取っては大した時間で無いのであるが。
「面白い事を言う」
悪魔は、半ば馬鹿にした様に言った。
「うるせぇ、俺はアスザルワールドに行ってくる」
ネザーリッパーが吐き捨てる様に言った。
「アスザルワールドか、あそこには別の魔族も先に行ってたな」
悪魔が、名前は確か……と思い出そうとしている所で、
「魔剣になって人間の魂食らいつくしてさっさと肉体を戻すつってんだよ!」
ネザーリッパーが自分は一人でやれると言いたげに叫んだ。
「剣か、確かに槍やら斧やら杖やらになってあの世界に行ってる奴等が居るからな、くれぐれも具現化した状態で破壊されるなよ?復活に更に時間がかかる筈だ」
悪魔は冷静に呟く。
「分かってる!」
ネザーリッパーはそう吐き捨てると、自らの身体を魔剣とさせアスザルワールドの地に降り立ったのであった。
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