ブレイバー・フィルリーク

うさぎ蕎麦

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1章「魔剣オルクストート」

6話「王女フィアは召喚も得意」

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「……」

 少女が、今度は同時召還を目論もうとしたところで、

「フィア様っ」

 教育係である老人の声が響いた。

「……」

 フィアが、チッっと舌打ちしながら老人を睨みつけると、

「貴女はこの国の王位継承権を持っている王女なのですぞ!?もう少し品格と言うものがありましょうぞ!」
「……」

 今まさに始まらんとする、じいやのお説教タイムを前に、あーあ、また始まったのかとフィアが教育係にジト目で見据えた。
 
「フィア様が光の精霊をその、はり……なんとかで吹き飛ばさなければ、我が国の召喚力は高いままだったですぞ!?」
 
 フィアのジト目攻撃も百戦錬磨のじいやには全く効果が無かった。
 しかし、彼が言うにはどうやらフィアが光の精霊をハリセンでかっ飛ばしたせいで行方不明になっているとの事だ。
 光の精霊と言えば、地水炎風の基本4属性の上位精霊であるが故に召喚し力を借りた際の力はそれ等を凌駕する訳である以上その様な振る舞いを行ってしまえば怒られてしまっても仕方が無い。
 しかし、それだけ強力な力を貸してくれる精霊を無下に扱った理由は正直気になる所だ。
 
「だって暇だったし」
 
 フィアは一切悪びれる事無く小声で言った。
 ただでさえ上位精霊をハリセンでかっ飛ばすだけでも大事であるが、その理由が暇だったからとなればこれはもう王女で無ければ無事でいられるとは到底思えない。

「そのせいで、光の精霊を探すと言い出した闇の精霊までもがこの街を飛び出したのですぞ!?」
「……」

 つまり、もう一つの上位精霊である闇の精霊も行方不明となり現在は使えない様子であり、そんな下らない理由で自国の戦力を落とされたとなっている様だ。
 しかし、等のフィアは精霊の色恋沙汰なんて知りませんよーと言いたげに不貞腐れていた。
 
「フィア様っ!!そんな事ですから虹の精霊にイツまで経っても認められないですぞ!?」
「えーだってあのBBAウザイだけじゃん」
「なっ、精霊界の頂点に君臨するお方をBBA扱いとな!?」
「じゃぁ超厚化粧したうっさいBBA?」
「なりませぬ、姫君がその様な下賎な言葉を口にするのは!」

 フィアは、王女故に大物だから言ってるだけなのかどうかは謎であるが、光と闇を束ねる最上位の力を持つ精霊に対しても全く興味が無い様子であった。
 召喚術に関してだが、基本4属性の内たった1つの精霊を召喚するだけでも物凄い修練が必要であり、無事契約を結び召喚出来たとしても呼び出した精霊が命令通り動かす為に更に修練が必要である。
 先程フィアがやった精霊遊びなんて一般人が到底出来るモノではない。
 また、光や闇の精霊に至ってはその契約を結ぶ事が超一流の召喚士になる証であり皆が夢として抱いている程なのだ。

「……」

 じいやの説教を面倒に思うフィアは、あっそう、と言わんばかりに本日2度目のジト目を教育係に送った。

「兎にも角にも、光の精霊と闇の精霊を取り戻し、虹のB……精霊を配下に収めねばブレイブタウンからの猛攻に対抗出来ませぬぞ!」
「ソウダネアイツ等面倒ダヨネー」

 フィアのジト目攻撃を全く寄せ付けないと思ったじいやであるが、残念ながら虹の精霊に対する本音を思わず滑らせてしまった。
 これではじいやとしてのカッコ良さが下がってしまうが、今目の前に居るフィアはそう言う事も一切気にしないだろう。

「それに、彼女等を召喚配下に収めねばフィア様の女王の地位も他の者達に奪われてしまいますぞ!?」
「あたし、女王に興味無い」

 フィアがぷいっとそっぽを向いた。

「なりませぬ、国の者達のどれほどがフィア女王を望まれておられるか!」

 じいやが力説する通り、このプリーストタウンにおいて国王の第一子であるフィアは女王第一継承権を持っている。
 しかし他にも、フィアの妹が少し早く生まれただけで女王になれる事を不服とした派閥があり、このやり取りに対し、召喚魔法を携える最高責任者の子ども、治療魔法を携える最高責任者の子どももその王位を狙わんとしていた。
 また、それぞれの勢力に対し賛同する派閥が結成されており、王位継承の争いは只者では無い様子であった。
 その事を知ってるフィアは、その手の面倒事が発生するなら自分はその権利を放棄したいと思っているのだが、他の派閥同様フィアにも派閥が存在しており、この老人の様にフィアの意思を阻害してでもフィアを女王に仕立てようとしていたのであった。

「……」
「フィア様!? 光の精霊も闇の精霊も居ないからと異世界から勇者様を御召喚なされた事は素晴らしい事と思いますぞ?」
「あーそんな事もあったね」
「だからと言って勇者様との応対は妹のシフォン様に任てしまっては折角の功績が台無しですぞ!」
「あんなのちょっと疲れるだけだから別にいーじゃん」

 じいやからで無く、どう考えても異世界の人間を召喚出来るだけでも凄い以外言い様が無いが、等のフィアはちょっと魔法の修練をして疲れた程度の認識しか無い様だ。

「フィア様ぁぁぁ!?」
「あたし、疲れた」

 じいやの説教に飽きて来たフィアは隙をついて召喚魔法を完成させた。
 
「フィア様!? 風の精霊を召喚して何をなされるのじゃ!?」
「え? 外出ですが何か?」
「何かって、召喚魔法の鍛錬と治療魔法の鍛錬と王女の嗜み講座と……」
「召喚魔法の鍛錬」
 
 フィアが風の精霊を指差した。

「ち、治療魔法!」
「一瞬でこの街の人間全員を瀕死から全快させられますが何か?」
「お、おうじょの……」
「めんどひ」
「ゆ、勇者様の応対!」
「妹よ、後は任せた」
「ふぃあさまぁ~~~!?って魔剣オルクストートの話がまだありますぞい!」
 
 じいやが大声で告げるも、既にフィアは風の精霊の力を借り窓からこの城から脱出したのであった。
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