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ココ+ロマーゼル編
ロマとお泊まり。
しおりを挟む私、結構ロマが好きなんだな・・・。
さっき、引き留めた時に痛感した。この人が居なくなったら嫌だと最低な理屈で引き留めていた。
私って本当に性格悪い。
彼からすると、私は4つ年上。
女性の結婚は18歳から22歳で決まる事がほとんどという婚期の早いこの世界では、23歳は行き遅れとなる。
若い芸術家に、それなりに裕福な行き遅れのパトロンが恋をするなんて世間から見たら倫理的に宜しくない。
だって拒んだら支援は無くなるぞって脅している様なものだ、拒めても今までの支援に対する罪悪感も生む。
そもそも、それ愛人目的で支援していたんじゃないかって過去の純粋な支援も疑われる事だ。
はぁ・・・
ウォルズマー様とロマの人形が戦うのを見ながら考えていた。
とても格好いい。
ロマは隠れていて姿は見えないけど、的確に相手の場所を把握して人形が動いている。
なんと言っても人形の動きが美しい。川の流れの様に静かで速く、力強い。
剣舞を見た時もそうだけど、驚きとワクワクと繊細で胸が高鳴る技術。
見る人をどんどん虜にしてしまう。私の求めてたエンターテイメント。
それを作り出す人物に、憧れと尊敬の気持ちは常にあったけど・・・。
この気持ちは私から伝えられるモノではない。
望みを持つとしたら、彼を私に惚れさせればいいのだけど・・・初対面の時は女性が部屋に訪れることも想像したことが無かった様な人だよ?好みすら考えても意味がないって思ってた人だよ?。
私に惚れさせる、更にはその口から好きだと言わせるなんて難易度高すぎる。
そんな事を考えながら呑気に観戦していたら、人形が急に動かなくなった。
かと思えば、美人の手下?がウォルズマー様の所に帰って来る。
彼に何かあったんだ。
ウォルズマー様が何かするとは思えないけど。病気!?もしかして怪我!?
夜の暗い王城を彼の姿を探して走り回った。
◆◆◆
ウォルズマー様がその場から立ち去った後。
動けなくなった人たちの救護が行われている。
だけど、他の人が柔らかい簡易ベッドに乗せられている中で、やっとの思いで見つけた彼は石畳に倒れた姿のまま。
「ロマ!!」
駆け寄って顔色を確かめると、苦しそうでもなくただ動かないというだけの様子だ。
忙しそうに動き回る救護隊を取っ捕まえて話を聞けば。
「あぁ、どうやら一時的に動けないだけの様だよ。すぐに目を覚ますと思うからそのままにしておけば良い。」
「簡易ベッドはもう無いんですか!?彼も寝かせなきゃ。」
「え?そいつを?大丈夫じゃない?」
は?
今何て?
この言葉にプツンと何かが切れる。
「戦ってたの見てないんですか!!なんでそんな事言えるのよ!」
「だってソイツお荷物の傀儡師だろ?普段働かない分こういう時にやってもらわなきゃ困るよ。」
な、何だこのゲス野郎!!!!!!
「この人はお荷物なんかじゃないわ!!国宝級の存在なの!!
普段だってお給料分はしっかり仕事してるし、何の荷物にもなってないんだから。」
ゲス野郎は面倒な人に捕まったなーと言わんばかりの表情で「じゃー後で簡易ベッドに寝かせておきます。」とかやる気無く言うものだから。
「もういい。私が部屋まで連れて行きます。簡易ベッドなんかよりずっといいわ。」
「そりゃどうも。はぁ、可愛いのに性格キツイお嬢さんだなー」
くーーーーーーーーー!!腹立つ、腹立つ、腹立つーーーー!!
私はロマの腕を持ち上げ、抱えようとしたのだけど・・・
う、細身でも男の人だわ。重い。
上半身も上手く上がらない。
だけどさっきのゲス野郎が苦労している私をニヤニヤして見てるのが更に腹立つ。
私は普段、舞台の手伝いをする時用に使う身体強化の簡単な魔術を使うことにした。舞台の先輩に教えてもらった簡単な術だ。
初心者向けだから効果もそれなりだけど、女の私でも一般的な男性くらいの力を出す事ができる。
それでも一般的な男性レベルの力。なんとか背負い、ほとんど意地でロマの部屋まで連れてきたのだった。
「くぁーーーーーーーーー!!疲れたーーーもう動けないーーーーー。」
ロマをベッドに寝かせると、そのままロマの横に倒れる。
「ロマ、これでゆっくり寝れるよ。外で寝かされるより全然いいよね。
・・・時間的にはこのまま朝まで寝た方がいいかな?」
もう夜だし、寝るのもいいかもしれない。
石畳に倒れた時に付いたのか、土を手で払う。だけど汚れたままだと気持ち悪いよね。お湯を沸かし、温かいタオルで汚れた顔や髪など丁寧に拭き、衣服も少しだけ緩めてから服から見える範囲だけ拭った。
「うん、これでスッキリしたかな?」
動けないだけ、それは意識があるのか無いのか。
「ロマは凄いんだからね。天才なんだから。」
自然と頭を撫でるとサラサラの長い髪が部屋の光でキラキラと揺れて見える。
「こうしていると、本当に弟と妹の事思い出すわ。ロマに話したかな?私、弟と妹合わせて6人いるの。って触ってたらゆっくり寝れないか。」
疲れで震える体で起きた時に喉を潤せる様にお茶も用意して、ロマに背を向けて汗だくの体を拭いた。ふと、研究室の窓から外を見れば女性が1人で出歩けるような時間じゃなくなっている。
「ロマ、私泊まっていっていい?、勿論ココならいいよ!、ありがとうロマ。」
1人で勝手にロマ役をやってお泊まり決定させた。
ロマは今お話出来ないし仕方ない。
お話できたとしても私なら強引に泊めて貰う時間帯だ。
仮眠室のベッドは狭いけど、ロマの部屋はソファーなど無い人形や道具ばかりの部屋だ。
こんなクタクタで、床は嫌だなー。チラッ。
ベッドの横。少し入るくらい・・・いいよね?
いやダメか。私は行き遅れパトロン。
いや、でも。試しに入ってみようか。
「ちょっと失礼しますよー。よいしょっ」
天井を向いて寝ているロマを横向きに寝かせ、ベッドの端に寄せてスペースを空けてみる。
「うん、いけるな。」
狭いベッドに僅かに空いたスペースに満足して、私は横にコロンと寝てみた。
・・・
寝てみたけど、性欲強い私には真ん前に顔があるのは襲いたくなるな。本当に綺麗な顔してる。
体をロマより上にずらして、ロマのつむじが見える形で落ち着いた。
「ふぁ・・・おやすみなさいロマ。」
◆◆◆◆
体を端に追いやるように押される感覚。そんなに押さないでよ。
この時の私は本当に本気で寝ぼけていた。
「・・・もう、いつも寝相悪いんだから。」
寝相の悪い妹が蹴っていると本気で思った。目は開けず、長年で身につけた感覚を頼りに相手の頭を抱えて足で体を引き寄せた。
「ほら、いいこで寝るの。」
頭を抱えながら背中を撫でる。
大人しくなったのを寝たんだと認識した私はまた眠った。
・・・
だけど、しばらくしてほっぺをさわさわ触る感覚があった。
一番末っ子の弟、カルロは私の頬っぺたを触りながら寝るのが好きだった。またカルロか。私のプニプニ頬っぺ離れはまだ先か。
「カルロ・・・くすぐったい。また後で・・・」
頬っぺを触る手を握り、カルロの額があるであろう場所にキスをしてから強制的に下ろした。
・・・
何か熱い。胸元に熱い何かが・・・
はっ、はぁ、はぁ。
息を必死に押さえるような、少し苦しそうな息づかい。静かな部屋に確かに聞こえた。
「うぅ。・・・暑いー。」
胸元にかかる暑さに私はぐるんと体を反対の方へ向けた。だけど、体制を勢いよく変えたせいなのか自分の胸が開けられたブラウスの隙間からふるりと溢れ出る。
外気に触れた胸が急に寒く感じる。
あれ?私ボタン外して寝たっけ。寝苦しくて無意識に外した?
ブラウスの下に着ていた物は・・・上にずり上がってる。寝相悪いな私。
えーと、ここは・・・私のベッドじゃないな。
・・・そうだ、ロマの研究室の隣だ。仮眠室。
まだ眠いな・・・とぼんやりする頭で、そのまま寝ようと薄目を開けてた目を再び閉じる。
さっきの熱い存在に背中を向けた状態になるのだけど、背中にその温かさがぴったりと寄り添う。
温かいなぁ。これならよく眠れそう。
だけど、次に触れた手のせいで私は眠れなくなるのだった。
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