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ラグラ+ネム+メメ編
信用問題
しおりを挟む次の日からアタシが掃除・洗濯・ラグラとの仕事を担当するとアーシェリアに伝えた。
彼女は戸惑っていたけど、アタシの人形をなるべく早く完成して欲しかった。メメが隙をみて消えない様に少しでも魅力的な餌が欲しかったから。
アタシは雑務なんて魔法でちょいちょいと終えられる。
そしてメメに魔物についての話しをした。魔物には必ず得意な何かがある。
何か今の状況を解決する糸口になるのではと思い、メメに話し、どんな能力があるかメメを探らせて貰うと【見たいものを見る目】があると分かった。「オカズに困らないなラグラ!!」と共感を求めるメメだけど、ラグラは苦笑いするだけ。
アタシの寿命を見てって聞いてみたけど「俺達に寿命分けるとか言い出すだろ。嫌だね。」と教えてくれなかった。
多分、自分達のは早速見て知っているのだろう。
それからは二人の魂を確認するのが毎日の日課になっている。寿命は分からないけど弱れば分かるから見て安心するの繰り返しだ。
そして考える。
魂の寿命の回復。元のアタシはお母様がモブと呼ぶ住民達の始祖となる人物を作っていた。元のアタシなら回復だって出来る。
だけどお母様がアタシにかけた魔物に変える呪いのようなモノを何とかしなければならない。
・・・この世界の魔物になる呪い。
逆にお母様の力があれば、魔物になったラグラも戻せるかもしれない。
アタシがアーシェリアの魂を連れて来た結果、彼女の中に残ったアタシの力が彼女と共に育っている。
なら、お母様の力が強く残るだろう者達の中にはお母様の力が共に育っているだろう。
それは薔薇アマの主人公や攻略対象というヤツらやそれらに関わる重要人物。
しかし、どうやってその者達からお母様の力を少し拝借するか。
ふと、ルナスの事を思い浮かべる。
突然現れた赤子のルナス。
それは第一王子に拾われラグラの元に来たと言っていた。
ストーリーに何かしら関わる重要人物に違いない。いわゆる伏線という奴だ。
ならルナスの中にお母様の力が残ってるのでは。
早速、掃除のついでにルナスの魂を探ろうと研究室に寄ってみる事にする。そう言えばまともに話すのは初めてかも知れない。
まぁ、会話なんて何とでもなる。コンコンとノックをすれば返事を聞いてから入った。
「ネム・・・さん?珍しいですね。僕に用ですか?」
「ちょっとアンタの魂見せて貰うじゃん。」
「何でですか!?」
了承は無いけど、怯える子猫の様な様子に苛めたくなる奴だと思う。
それでもコイツも優秀な魔術師なのだから程々にしなくては。危険だと思われたらアーシェリアから祓われて充電が出来なくなる。
「悪いようにはしないから、安心して。ちょっと見せて貰うだけじゃん。」
「いや、それにしても近くないですか?」
「ラグラの為に協力するじゃん。」
「父さんの為ですか?」
父の為と聞けば渋々協力する姿勢を見せる。椅子に座ったままのルナスの肩に手を置き目を覗き込む。魂の情報を見る。
「・・・ぅーん?」
「・・・あ、あの。この体制気まずいのですが。」
「大丈夫、これ以上近づかないし。アーシェリアは今ご飯作ってるからこっち来ないじゃん。」
大切に思っているアーシェリアに疑念を抱かせるつもりはない。だから彼女の気配を探りながらルナスの目を見る。
思ってた通り。ルナスにはお母様の気配がある。だけどほんの少し。
「ルナス、ネムさん。」
突然背後から聞こえた声にビクリと体が震えた。振り返えればラグラがドアを開けて立っていた。
「父さん、どうしました?」
「ネムさんの姿が見えなかったからね、そろそろ仕事へ行くけど準備は出来ているかな?」
「もう少し見てからにして欲しいじゃん。」
「まだ続けるのですか?」
「あと少しじゃん。」
うーん。と少し唸りながら覗いて、これ以上近づかないと言ったけどあっさり約束を破り更に顔を近付けた時。
ルナスが勢いよく後ろに下がり、肩に置いていた手が滑るとルナスに向かって倒れそうになる。そうならなかったのはラグラがアタシの二の腕を掴んでいたからだ。
「ネムさん。ルナスが困っているから止めて貰えるかな。」
いつもの優しい雰囲気ではなく、アタシを叱るかの様な視線。
その目を見て一瞬で胸の中にイライラするものを感じた。原因はわかってる。きっとアタシがルナスに何かするのではと警戒してる。つまり信用されてないって事だ。イライラする。
腕を掴まれたまま部屋から連れ出され、外まで来てしまった。ルナスからこんなに引き離すとはそんなに信用ないの?ショックなんだけど。
アタシの中のムカムカは最高潮で勢いで腕を振り払っていた。
「ルナスに何かするつもり無いですよ。ですが、こんなに信用無いとは思いませんでした。」
アーシェリアやルナスに話す口癖モリモリの言葉とは違い、当て付けの様に習った言葉で話す。
「違う、そういう訳じゃないんだ。」
「この態度はそういう事でしょう?。・・・仕事でしたね。行きましょうか。」
イライラするけど、ラグラは子供を心配する親だから仕方ないと気持ちを腹の底に押し込んだ。
これは子持ちに恋する者の試練だ。
子供に嫉妬しても仕方ない。
口を開けば何か嫌な事を言ってしまいそうだからその日は淡々と仕事を手伝ったのだった。
今思えば、メメにしたって目の前にちょろそうな女が居たからツガイになると言い出しただけかも知れない。
ラグラなんてアタシの事をただの魔物としか思ってないだろう。
アタシはこんなに好きで必死になって考えているのに。自分がとても滑稽なものに感じる。
その日から日課は欠かさないもののラグラとはギクシャクし、自然とメメとも会いにくくなっていた。
仕事が終わればそそくさと人形をアーシェリアの研究室に置いてアーシェリアの中に戻る日々。
こんなのダメだ。
嫌われる構ってちゃんじゃないか。時間だってきっとそんなに無いのに。
でもどんな顔してこの空気を変えたら良いんだろう。喧嘩吹っ掛けて仲直りした経験なんてアタシには無い。
そんな中で思っていたよりも早く、新しい体が完成した。アーシェリアとルナスが見守る中、アタシは憑依して見せる。
「わぁ!!ネム凄く綺麗。前もなかなか似てたけど、こっちの方が更にネムにそっくりだよ。」
「動くと人としか思えませんね。」
そっくりと言うのは、アーシェリアとアタシだけの精神世界で会う姿だ。初めてラグラと会った姿でもある。嬉しいはずなのに気が重い。そんな様子にアーシェリアとルナスが不思議そうに見てきた。
「どうしたの?何かあった?」
彼女はアタシを心配する目で見る。まるで普通の人と変わらない扱いに笑ってしまう。この子はいつもアタシの味方でいてくれる。そんな気がする。
「この姿見せてラグラとメメを脅かしてくるじゃん!こんなの悩殺間違いなしじゃん!」
この言葉に笑って二人は送り出してくれた。アーシェリアに支給されたローブを着れば王城の魔術師と見分けつかないよ!驚くぞー!と貸してくれた。
王城の魔術師と見分けがつかない?
これはチャンスだ。
このローブを着てお母様が力を入れて環境や魂を用意したであろう人物を探そう。
一番はきっと主人公だ。新人騎士で接触も簡単なはず。
◆◆◆◆
騎士訓練所へ行くと、訓練している騎士達を見に城内で勤務している女性達をチラホラ見かける。
これは探しやすくて良い。
・・・とは思っていたけど、迷ってしまった。
いつもならラグラの背中に付いていけば研究室に帰れた。あの背中が見えないだけでこんなに心細くなるとは。
「どうかされましたか?」
背筋がゾワリとして振り返ると若い騎士が居た。
アタシの中に存在する魂を拘束する何かがギシリギシリと音を鳴らしている。
「迷ってしまいまして・・・魔術師の研究棟はどこへ行ったら良いでしょうか?」
若い騎士は爽やかに微笑むと「案内しますよ。」と先導してくれようとした。
だけど、手には血に染まったタオルを巻き付けている。その血からお母様の強い力を感じた。
「騎士様、手を怪我されてますか?私が手当てをしましょう。」
「手当て出来るのですか?医務室に行くところだったので助かります。」
手当てが出来るなんて嘘だけど、この血でもしも呪いが解ければ傷を治すくらい容易い。
私は彼の手を取りタオルを外すとまだ血が滲み出る傷口を迷わず口に含んだ。
口の中に変な味が広がるけど、お母様の力が私の中に流れて来るのが分かる。
・・・ギシリ
・・ピシリ
――――――あと一息。
お母様の力を更にアタシの魂を縛る何かに流し込む。
―――――いい加減アタシを戻せっての!!
ピシリ
パリン
少しの血液からでも魂への呪縛は軽い音を鳴らしあっさり消えてしまった。ごり押ししたけど意外とあっけない。
あ、そうだ。傷を治さなくては。これではただの痴女だ。
「って、ええ!!それで治るんですか!?」
顔を赤くして戸惑う青年。まだ医療行為だと思う所は純粋と言うべきか・・・。
怪しまれない程度に血液からお母様の力を摂取した後、呪縛の解けたアタシは傷を治す事に成功した。力を使って分かった、少し深い傷程度なら治せたけど魂となるとまだ足りない。
そんな事を考えていると治った傷口を見て青年は驚いている。
「わっ!凄いです。傷は舐めとけば治るって本当ですね。そうだ魔術研究棟でしたね。行きましょうか。」
無邪気な青年に申し訳ない気持ちになりながら苦笑を返した。
だけど近くに知っている魔力を感じ、そちらを見れば遠くにラグラの姿が見える。誰かと立ち話をしていた。
「あそこに知り合いが居ました。彼と帰る場所が一緒なので案内は大丈夫です。」
「そうですか、それは良かったです。手当てありがとうございました。今度お礼しますね。」
「それならそのタオルを下さい。」
「え?このタオルですか?汚いですよ?」
お礼と言われ遠慮無く欲しいものを言う。
この血の染み込んだタオルは力で染まっている様な物だ。
「血も魔術の研究で使う時があるのですが、自分の血を使うのは痛いでしょ?このタオルの血を有効活用させてください。」
そんな嘘を並べるとニカッと笑った騎士は「無駄が無いですね、良いと思います!」とか言いながらタオルをくれた。
可愛いな、と思ってしまったアタシは彼の事を好きになる人の気持ちが少しだけ分かった気がする。
アタシにもこんな可愛げがあったらもう少し上手く行くだろうか。
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