【完結】悪霊?令嬢(人間)でも幸せになれますか?~立場を妹に奪われ見えない私と見えない騎士~※R18

かたたな

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魔法が呪いになってたなんて。

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 スヴァインさんと再会出来て、口の端にキスがやって来て・・・。やはりスヴァインさんには、見えない私が見えているかの様に思えてしまう。


 『な、何で見えないのに口だとか分かるんですか!?』
 「それは・・・見えない頃の感覚が体に染み付いているからだろうか?多分この辺だった、だとか・・・。」

 少し外したけれどね?と苦笑いを浮かべる彼はどことなく可愛くてトキメキ不足で渇いた心がみるみる潤った。心の砂漠に大雨を降らしオアシスパーティーが始まりそうです。


 「マーリット、もう一度仕切り直させてくれ。今度は外さない。」
 『くぅ!』


 甘い、甘すぎる。

 彼の腕の中で眠るヴァンリットが起きないか心配になりながら、近づく彼の唇に自分からも唇を寄せて。

 ふにっとした感覚・・・。

 静かに、ほんの一瞬触れ合う。



 「ふふふっ」
 「・・・」



 つい嬉しくて笑いが込み上げる。恥ずかしくて照れ臭い。それなのに嬉しくてたまらない。この気持ちを何処にぶつけたらいいの?

 1人でにやける顔を抑えて舞い上がっていると、無言で彼が私を見つめる。そんなに見つめられると相手に見えなくても照れるよ。いや、見えないからこそ今はスヴァインさんを堪能すべきだと、熱くなった顔も気にせず見つめる。


 ・・・


 「マーリット。」
 「はい、なんでしょうか。」


 これからの事ですか?あ、ヴァンリットをそろそろお布団へ?寝かせてあげないと可哀想ですもんね!


 「マーリットが、見える。」


 見える??


 「見える?声がするから分かるという意味ですか?」
 「いや、そうなのだけど。探さなくても見える。」
 「・・・?」

 私が見える?そんな私が見える訳・・・

 ・・・

 見えるの?


 『やっと呪いが解けたねぇ。』


 混乱する空気の中で現れたのは妖精王だった。ここは隣国のはずなのだけど入ってきて大丈夫なのだろうか?この国の妖精王と喧嘩になりません?そんな心配をよそに『大丈夫だよぉ少しくらい~』と手をヒラヒラさせる。妖精王はいつもの軽い様子で話し始めた。

 『どうやら呪いを解く方法は、見えないマーリットを見つける事だったみたいだね。』



 ・・・ん?キスじゃないの?キスの方がロマンチックじゃないですか?ロマンはここに求められてないのですね。


 「スヴァインさんは前から私を見つけてくれていましたよ?」
 『くっついて行動する人物を見つけたと言われてもね?一旦何処に居るか分からなくなるからこそ、見つけた!になるんじゃない?』
 「そんなむちゃくちゃじゃないですか・・・その前に呪いって何ですか?」

 妖精の知識や腹黒王子の婚約者としての勉強等は分かる方だけど魔法や呪い等の事はあまり詳しくない。

 『君に魔法をかけた妖精が魔物に食われたみたいでね、魔法を解く者が居なくなって呪いになった。呪いになれば条件さえ揃えれば解除できるんだけど、今回それで解決した感じ?』

 この世界のマイルールはまだ分からない事ばかりだけれど、とりあえず解決したなら良かった。

 『それにしてもマーリットは良い働きをしてくれたね。これで何回も繰り返す退屈な日々から解放される。』

 何回も繰り返す日々・・・妖精王は気がついて居たのかですか!?何度も繰り返していてソレが朽ちたドラゴンの仕業だと。

 「え、いえ、でも私。朽ちたドラゴンを妖精結晶で助けてしまいましたよ?」

 はっはと笑う妖精王は何やら楽しそうだ。

 『朽ちたドラゴンが私の支配下にある妖精の結晶を元に妖精になった、それは私の支配下にある妖精も同然さ。私の言う事には逆らえない。これまでの罪を償ってもらおう。ワクワクするね。』
 「そういう事でしたか、じゃあオパールは今まで妖精王の指示でヴァンリットを守り育てたのですか?」
 「オパール!?オパールがあの朽ちたドラゴンなのか!?」

 スヴァインさんが何か答えを急かす様に聞いてきた。確かにあの凶悪なドラゴンが生きているとなれば心配だろう。

 「大丈夫ですよ、妖精王が言った様に支配下にあったみたいでヴァンリットを守る優しい妖精に変わりました。ドラゴンの形の妖精で人に見える姿にもなれます。」
 『あ~訂正するけど、私の指示でヴァンリットを守った訳ではない。朽ちたドラゴン・・・オパールの意思だ。とても愛している様だよ、君たちを。』
 「ふふふっ。そうでしたか、それはそれで良かったですね。オパールも変われたのですね。」

 オパールはこの3年間とても良いドラゴンだったと私自身も思っていた。愛を求め苦しんだドラゴンがまた別の愛を見つけたと言う事を心の底から祝福したい。
 そう思う一方でスヴァインさんの纏う空気は悪くなっていった。

 「待て、良くない。あの朽ちたドラゴンが、オパールがヴァンリットとマーリットを愛していると言うのか?」

 スヴァインさんが眉間にシワを寄せムッとした表情でこちらを見る。いかにも怒っている表情だ。これはなかなか怒ってます。

 「俺はあれを許せない。俺が共に居られるはずだった時間を奪っておきながらマーリット達を愛し、楽しく過ごしていたと言う事だろ。俺は生きていると信じながら、あれから毎日探し続けた、どれだけ不安で辛かったか・・・」

 スヴァインさんがヴァンリットを抱く腕は優しいのに強い怒り滲ませる。不謹慎だけど、彼の3年間の思いを言葉で知る事が出来て嬉しさもあった。

 私をずっと探していてくれた。

 見えない異質な私を。

 『そうだね。その怒りもごもっともなんで、君にもどんな罰を与えるか話し合いに参加して貰おうか。勝手に何度も時間を巻き戻し、皆を苦しめた罪。その都度、私の管理する国を汚した罪。マーリットを拐い食べようとした罪。どんな罰が相応しいか。』

 その罪状が並ぶと私を食べようとした罪がかすむ・・・。だけど、悪い事をしたとは言え3年間苦楽を共にした為に、私の中で仲間意識が完全に出来上がっている。その苦労はオパールのせいだけど、ヴァンリットに向けられた愛情は純粋なものだと身近で感じている。

 「妖精王、それらの罪でオパールは・・・どうなってしまうのでしょうか。」
 『心配かな?あの悪いドラゴンが。』
 「確かに悪いドラゴンです。だけど、愛情深いドラゴンでもあります。愛する者の為に頑張れる・・・だから」
 「マーリット。」

 背筋がヒヤリとする冷たい声で私の名前が呼ばれた。彼を見れば今まで私に向けた事の無いトゲのある視線を感じて言葉が喉に詰まる。

 「君がドラゴンを援護すると言うなら、俺は尚更あいつを許せない。」
 「・・・」

 初めて彼を怖いと思った。彼が憎く思うのも理解出来る、それを少しでも肯定してしまったのだから怒りをかっても仕方ない。

 『まぁまぁ、罰を決めるのは皆でって思っているんだ。私が勝手に決めても面白くないから集まって話し合おうねぇ。』

 ハッハと笑う妖精王。だけど私達の間に流れる空気はヒヤリと冷たくて、再会を喜び、愛情を実感してすぐに喧嘩をしてしまった。

 (3年間ずっと探してくれていたという彼を怒らせてしまった・・・。)
 
 離れる前でも私達は喧嘩なんてしたことが無かった。そんな相手と喧嘩をしてしまったら、どう仲直りして良いのか分からない。

 (自己嫌悪・・・やばい。)

 ひどい自己嫌悪の中、妖精王はさっさと場所だけ指定して私達を転移させる。光に包まれ、一瞬の出来事なのに重い空気のせいか無言の間が恐ろしく長く感じた。
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