【R18】男の娘に恋した学園生活~男装は間違いではない~

かたたな

文字の大きさ
25 / 82

嫌な変化(クラウ視点)

しおりを挟む

 リーシュ君に褒め尽くされてから、胸にモヤモヤとした何かが広がり妙な気持ちに悩まされる。

 手に持った材料を無意識にぎゅっと握りしめて、慌てて視線を戻した。 

(友達なら…リーシュ君が、誰かと良好な人間関係を築くのを喜ぶべきだし。)


 すると、こちら側の装飾班の他の生徒が「この飾り、こっちの壁に合うかな?」と話しかけてくる。「うん、いいんじゃない?」と妙に焦って答えた。

 作業に集中しようと頭を振るけど、視界の隅でリーシュ君が他の女の子たちに囲まれてる姿がチラつく。

 おまじない小物の制作班は、ほとんど女の子。
 リーシュ君がブレスレットの編み方を教えてる間、女の子たちが「リーシュ君、これ合ってる?」「ねえ、少し見て下さらない?」と次々に絡んでいく。
 別のおまじないの小物について相談したり。それを一緒に作ったり。

 それは端から見たら彼を取り合っているみたいだ。

 ある子はわざとらしく手を滑らせてリーシュ君の手に触れたり、別の子は「この色、リーシュ君に似合いそう!」なんて言ってキャッキャ笑ってる。リーシュ君も丁寧に対応して、嫌いじゃないみたい。 

(…モテるんだな。今までボクが側にいたから、あからさまにアピールできなかったのかもしれない。ボクが…邪魔してたのかな。) 

 今まで気づかなかったわけじゃない。リーシュ君は優しいし、聞き上手で落ち着いている。それが一緒にいて心地良い。

 何より、あの何考えているかわからない綺麗な顔。あまり変わらないその表情が笑顔になった瞬間は嬉しくなる。それでいて、剣術の授業で負けなしと聞く。実際、グランド脇で見てるボクらは、彼が地面に倒れた姿を見たことがない。彼の欠点を聞くとすれば、身長と身分くらいだろうか。

 貴族のお嬢様からしたら身分は特に致命的だろう。

 「国境の狩人」はこの国にとって安全の要となる存在。
 彼らの狩を邪魔しない、素材を高値で取引する。そして自由に国内を動く権利を国王陛下が保証する。
 その代わりに魔物や他国からの侵略等から守られる。

 これが、大昔からある契約。

 過去に、他国から諜報員が送られ「国境の狩人」に危害を加えられた!と文句を言われる事が数回あると記録が残されている。その時、当時の国王陛下は「国境の狩人」が勝手にやっただけで我が国は知らない!と切り捨てたらしい。

 その結果、彼らは他国から幾度となく攻め込まれたとある。しかし、この国はその影響を一度も受けた事がない。彼らが滅ぶ事なく今も存続する現状が、その強さを物語っている。

 彼らと最初に契約を結んだ大昔の国王陛下は本当に偉大だ。
 
 そんな凄い存在でも「国境の狩人」と縁を結んで良いことがあるか?と聞かれれば特に無い。彼らは自由が認められた存在だから、こちらの意見で何かを融通することをしないし、こちらもそれを禁じられている。


 しかし、それでもこの人気。
 みんな、遊びたいだけ?それとも…本気なの?


 こうやって別のグループで離れて見てると、頭の片隅で理解したつもりになっていた人気ぶりは、現実味を帯びていく。

「リーシュ、文化祭前に彼女か婚約者できるかもなー。羨ましいー。」 

 そんな様子をボク以外にも見ていた生徒がいた。その生徒が呟いた言葉に衝撃を受ける。

(恋人、婚約者…。リーシュ君に…?)

 リーシュ君が恋人が欲しいって言ってたのは、知ってる。
 肝試しの時に話していたから。

 応援しなきゃ。

 友達として、好きな人ができたら全力で背中を押してあげたい。

 そう思うのに、恋人ができたらその子中心の生活になるのだろうと想像すると…モヤモヤとした何かが心を重くする。

 だって、今まで彼の中心だったのは友達のボクで…。
 武術の授業で離れても、終われば駆け寄ってきてくれる。

 それなのに、恋人って立ち位置を手に入れたその人は、一瞬で彼の中心になる。ボクほどリーシュ君の事を知らないくせに、彼の一番の存在になる。駆け寄る先も、その人になる。

 そして、そのまま上手く行って婚約でもしてしまえば…ボクとの関係より遥かに長い時間が約束される。


 胸が苦しい。


 ボクの彼を応援したい気持ちは、どんどん黒い気持ちに覆い隠されていく。


 その日の放課後。



 装飾班の作業が一段落して、みんなが少しずつ教室を後にする中、リーシュ君を呼び止めた。あたかも片付ける片手間で、軽く、雑談のように…妙に自分を偽って。

 心臓がバクバクしてる。

 頭では、ボクが彼の恋人をつくる上で邪魔になっていることを理解している。「親友だろ?やめとけ」って声がするのに、口が勝手に動く。


「リーシュ君。文化祭当日、今年もボクと回らない? 」 


 既に誰かと回る約束をしてるかもしれない。
 マルーナさんとか、他の女の子とか。モヤモヤが渦巻く中、妙なドキドキが胸を締め付ける。リーシュ君が少し驚いた顔で見つめてきて、ほんの一瞬考えるような間ができた。その数秒が、永遠みたいに長く感じる。

「うん、一緒に回ろう。楽しみ。」 

 その笑顔が、いままで見たどんな可愛いものよりも、ずっと特別に見えた。

 顔が熱くなって、慌てて視線を逸らすけど、心臓の鼓動がうるさすぎて、自分の声がちゃんと出るか心配になる。

「よかった! じゃ、約束。」

 なんとかそう言って、逃げるように装飾用の布を抱えて資材置き場に向かった。背後でリーシュ君が「うん、約束!」って声が聞こえる。その声が、胸の奥に響いて、余計にドキドキが止まらない。 


 文化祭が近づくにつれ、心はますます揺れ動く。リーシュ君との約束が嬉しくてたまらないのに、どこかで不安が疼く。

 まだ「恋人ができたから少しでもいい?」とか言われるかもしれないし。

 ボクの立場は、いつ、どこの誰かも分からない人に簡単には奪われるものなのだと実感した。


 この重苦しい気持ちは「友達を取られるかもしれない嫉妬」なのだろうか。



 考えれば考えるほど分からなくなった。



 ◇ ◇ ◇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

わたしのヤンデレ吸引力が強すぎる件

こいなだ陽日
恋愛
病んだ男を引き寄せる凶相を持って生まれてしまったメーシャ。ある日、暴漢に襲われた彼女はアルと名乗る祭司の青年に助けられる。この事件と彼の言葉をきっかけにメーシャは祭司を目指した。そうして二年後、試験に合格した彼女は実家を離れ研修生活をはじめる。しかし、そこでも彼女はやはり病んだ麗しい青年たちに淫らに愛され、二人の恋人を持つことに……。しかも、そんな中でかつての恩人アルとも予想だにせぬ再会を果たして――!?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...