勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

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始まりの書

旅の記録0 ばったり

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ここは見渡す限り何も無い草原。そこである男の子が欠伸をしながら座って草原を眺めていた。
「ふぁぁわわわ」
彼の名前は勇者。職業は名前の通りの勇者だった。彼は国王からの命で魔王討伐の旅に出ることになっている。今は資金を貰うための道中だった。
「何もないっていいよな~。魔王なんか僕にとってはどうでもいいし」
そう、彼は魔王を倒す気など全くない。なら、何故資金を貰いに行くのか。それは観光のためだった。魔王討伐と言う建前があるため家には帰れない、そんな事なら観光をしようと考えていたのだった。
どんな街に行ってどんな物を食べるか考えを巡らしていると
「おい、そこの者よ。ちとばかし尋ねたいことがあるんじゃが良いか?」
「ん?僕ですか?」
「お主以外ここに誰がおるんじゃ・・・」
声がする方に振り向くと、そこには小さな女の子が立っていた。顔立ちはそれなりにしっかりしていて茶髪に金色の目をしていた。歳はだいたい7歳ぐらい。踊り子をしているのか色鮮やかな服装を着ていた。
「それにしてもその歳の割には露出が高くないか?」
「む、儂の服に文句をつける気か?」
彼女は頬を膨らましながら彼の顔を見た。彼女の服装は悪く言うと涎掛けみたいな前掛けの、胸元より少し上にはハートの形をした網が張っていて、その中には湯葉みたいに薄い服を着ていた。肩は出ていて、袖の所は踊りやすくするためなのか肘まで切れ、彼女が手を動かす度に揺れていた。そして、スカートは何らかの魔法陣みたいな絵柄が書かれているピンク色のスカートだった。足元は膝まである網ソックス。靴はタップ靴かな?スカートと靴以外は全身紫と黄色のグラデーションで少し派手な色だった。
「そういう訳じゃなくてな?いくら踊り子とは言え外をそんな格好で出歩いちゃダメじゃないの?って言いたいだけ」
「ふむ、そう言う事なら心配せんで良い。儂を誰じゃと思うのじゃ」
「踊り子」
「否!魔界に住み魔界の長をしている魔王じゃ!」
彼女は胸を張っていわゆるドヤ顔で彼の顔を見た。
彼は幼い子供の夢を壊すのはいけないと思いその子に話を合わせてあげることにした。
「そうなのか。それは怖い。そんな怖い魔王様がこんな僕に何か御用ですか?」
あまりにも感情を込めずに言ってしまったと思った彼は魔王の顔を見たが魔王は幸せそうな顔で答えてくれた。
「ふむ、立場を弁えておるのは助かるの。それでじゃ、勇者がこの世界に現れたっと聞いたんじゃが知らぬか?」
「あ、それ僕ですけど?」
「ん?今なんて?」
「いや、だからそれ僕ですよ?」
魔王は驚いたのか腰に手を当てたまま動かなくなってしまった。そのまま少し待っていると魔王は首を横に振り改めて彼の顔を見た。
「本当に言っておるんか?」
「はい」
「なら少し血を貰って良いか?」
「?いいですけど」
魔王は了承を得ると彼の首筋を少し噛み血を吸った。
(最近の子供の歯ってあんなに丈夫なんだな)
そんな事を考えているうちに魔王が何か分かったのか。見るからに肩を落としていた。
「嘘はついておらんようじゃの・・・」
「分かってもらえたのなら何より。それじゃ、僕はもう行くから。またね」
彼はそう告げると王国に向かって歩き出した。だが、彼はある事を忘れていた。
(何故彼女は知っているんだ?まだ誰にも勇者がいるって伝えられてないはずだが・・・)
そう、大騒ぎにしないで欲しいという彼の願望のもと、国王はまだ国民には知らせてはなかった。そうなると何故魔王が知っていたのか。
(本物の魔王だから?)
彼は歩みを止め回れ右をし、魔王がいた方向に戻った。
すると、丁度魔王はなにやら空間を切り裂き黒い穴を作っていた。
「魔王!」
「ん?何じゃさっきのやつか。儂にまだ何か用なのか?」
彼女は黒い穴を開けたまま彼の方を向いた。彼はその穴を見て確信した。
「お前は本物の魔王なんだよな」
「じゃからそうじゃと言っているじゃろが。まぁ、純粋な魔王ではなく吸血鬼とのハーフじゃがな」
魔王が作っていた黒い穴。それは人間界では恐れられている魔物の出入り口だった。この穴が開いている限り魔物がどんどん出てくると言われている最悪のものだった。
「僕に何か用あったんだよな。それを聞くのを忘れていたから」
「それならもう良い。どうせお主は儂を倒さんじゃろ?」
「まぁな。資金を貰い観光に行く予定だったから」
魔王は観光っていう言葉に目を光らせた。
「儂もついていって良いか?」
「いいが、僕にあるって言った用事を聞かせて欲しい」
「お安い御用じゃ。立ち話もなんや、そこの木陰で座って話さんか」
「魔王の割には気が利くな」
魔王は黒い穴を上下から手で押し潰し消すと、近くの木陰まで彼を誘導した。
魔王は座るといきなり話し出した。
「儂はこの世界が好きなんじゃ」
「は?」
魔王は腕組しながら真剣な表情で言い出したのだが・・・
「どう言う意味だ?」
「そのままの意味じゃが?」
「いや、そういう事じゃなくてな?えっと・・・なんて言うんだったけな・・・」
「経緯か?」
「そう、それ!」
彼が言葉が出ず悩んでいたが魔王のおかげで助かった
「それなら簡単じゃ。母上の遺志を継ぐだけじゃ」
「いきなり重すぎなんだよ!」
壁も何もない草原に彼の声が響き渡り、二人して驚いていた。
「む、儂がいつ母上が死んだと言ったん じゃ?」
「え、もしかして遺志って遺言とかみたいな遺志じゃない意思とかか?」
「まぁ死んどるじゃがな」
「僕の考えで間違いじゃないだろ!何故否定したんだ!」
「なんとなく?」
「可愛く言っても答えにはならないから!」
小首を傾げながら人差し指を口に手を当て言った魔王だが、彼の言葉に舌打ちをしていつもの表情に戻った。
「儂のサービスじゃったんが気に入らんかったかの?」
「いや、それは・・・まぁ少しは」
彼は頬を染めながら言っているのを魔王はにやけながら見ていた。
「あぁもういい!ちゃっちゃと行くぞ」
「ちょ、待たんか!もうおちょくらんから許して~!」
魔王は勇者の後を追いかけるために走った。
「何故そこだけ・・・いや、途中途中古めかしい言葉じゃないんだ?」
「父上がその古めかしい口調?ってのなんじゃが、母上がこっちの世界の言葉じゃったから混じっとるんじゃ」
魔王は立ち止まり答えているのに対して彼は歩みを止めなかった。
「じゃから、人が説明しとる時に先に行くんじゃない!」
「お前は人じゃないだろ!」
「・・・・・・魔王が説明しとる時に、」
「言い直さなくていい!」
彼は少し笑顔になりながら魔王の事を置いていったのだった。
「だから、待ってくださいよ!」
「キャラが変わっているぞ!?」
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