勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

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始まりの書

旅の記録1 不思議な人

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「ほぉ~、これが人間界の要となっている王都ってやつか。なかなか大きいもんじゃの」
「ん?魔王城もこれぐらいじゃないのか?」
魔王は少し俯き考えた。答えが出ると同時に顔を上げた。
「いや、こっちの方が大きいの。儂一人なのにこれだけの大きさって何を考えたらそうなるんじゃ。精々この半分あればいい所じゃよ」
「それでも十分大きいような・・・」
「それは儂も思う」
魔王が相槌を打ち、止めていた足を再び動かし王都の入口へ向かった。

「に、人間が多すぎはせんか?」
と、魔王が驚くのも無理がない。王都の入口は見えているものの数キロに渡り人の列が並んでいた。魔王はこれに並ぶのかと諦め列の最後尾に立ち横を見ると全く別方向に向かう彼の姿が見えた。
「どこへ行くんじゃ?列はこっちじゃぞ?」
「あぁ、それは一般の入口な。僕達は裏口から入れる」
言っている意味が分からない魔王は首を傾げているが、彼は何も言わずに歩き続けるため仕方がなくついていくことにした。
歩き続けて約5分、彼が止まりポケットから何かを探していた。
「何を探しとるんじゃ?」
「証明書だよ。裏口は特別な人じゃないと入れないから証明書が必要なんだ」
と、彼はくしゃくしゃになった紙をポケットから取り出した。よく見るとそこには『勇者御一行』と誰かの直筆サインが書かれていた。
「誰の名前が書かれとるんじゃ?」
「ここの国王の名前が書かれている。偽装とかしても無駄・・・ってか真似出来ないからな・・・」
彼がそう言うのも無理がない。そのサインは文字と言うにはとても言い難いものだった。
「うむ。よく見せられると納得せざるを得ないの。魔界の文字にも似ていないから儂でも読めん」
「そういや魔界の文字ってどんなんなんだ?」
魔王は少し考え言った
「何か紙はあるか?言葉では表せないから書いてみせる」
彼はそう言われるとポケットからまたもやくしゃくしゃになった紙と万年筆を取り出した。
「いや、さっきから何故ポケットから出るんじゃ?」
「たまたま??」
「なわけあるか!」
魔王は紙と万年筆を奪い取ると空中でササッと書いた。

「ほれ、これで儂の名前じゃ」
「空中で書いたにしては上手く書いてないか?」
「慣れとるからの」
『慣れている』の言葉に引っかかった彼だが、被害はないと思い聞き流した。

同時刻、裏口の方では何やら騒がしいことが起こっていた。
「国王様に少しお話があるのですが通して貰えませんか?」
「証明書又は貴方の身分を表せるものを見せて頂かないと通すことは不可能です。特に・・・」
顔が帽子に隠れてよく見えないが、おそらく呆れているのだろう、兵士と揉めている彼女は肩を落とし首を横に振りながら言った。
「私みたいな子供ぽい人はって言いたいの?なら、これでなら認めてくれる?」
彼女は呪文のようなものを呟くと今着ている服から一瞬で戦闘用の服装になった。
「なっ!?こ、これは!」
兵士はそれを見るなり道を空け深々と腰を折っていた。
「大変申し訳ございませんでした!どうぞ、お通り下さい」
「いいのよ。まだそこまで有名ではないから」
そう言うと彼女は裏口の中へ入って行ったのだった。

「む、入口に立っている鎧を着た人が何か話しているがどうしたんじゃ?」
「あれは兵士な。多分、暇だから話しているだけだろ」
彼らは証明書を手にそこにいた兵士に近づいた。
「ここを通るには・・・ってそれは証明書ですね。では、どうぞ・・・って勇者様!?」
一人の兵士は驚くのに対してもう一人の兵士は肩を落としていた
「今日は何故これだけの大物が訪れるのだ・・・」
「これだけ?どういうことですか?」
兵士の言う言葉に違和感を抱いた勇者は聞いた。
「少し前ですが魔女の一人が通って行ったのです」
「そうですか。ありがとうございます」
「いえいえ、お気になさらず」
彼らは二人の兵士の間を通って中に入っていった。
裏口は中が暗く所々についている松明以外なく、約10mの真っ直ぐな道が続いていた。
「ところでお主よ。魔女って魔法使いの最強3人と言われている魔女なんか?」
「さぁ、分からない。だけど、ここを通れるって事はそうだろうな」
「会って見たいの」
「それって私の事かしら?」
「「え??」」
周りが暗くて見えなかったが、よく見ると魔王より少し大きいぐらいの小さな女の子が立っていた。服装は頭にあっていない黒い大きなとんがり帽子に、裾が地面に擦りかけている黒いローブ。腰あたりのベルトから数珠みたいなもので繋がれている本が気になる。そして、左手に彼女の身長より頭1個分大きい杖を持っており、魔法使いだと分かった。
「もしかして、君が・・・魔女?」
「むぅ、それだけ私が子供に見えます?」
彼女は頬を膨らましながら腰に両手を当て胸を逸らした
「これでも立派な13歳なのよ」
「え、僕と同じ歳?」
彼は驚きのあまり後ろに下がってしまった。そして、一方魔王は、と言うと、
「そなたが魔女の一人か。風、闇、炎のどれじゃ?」
目を輝かせながら聞いていた。その質問に彼女はクスッと笑い深々と被っていた帽子を少し上げた。
「今は魔女は3人じゃないのよ。4人、そうこの私がその4人目の魔女。『氷の魔女 日向ひなた』とは私の事よ!」
彼女は言い終わると同時に被っていた帽子を脱いだ。帽子ではあまり見えていなかったが、脱ぐと分かった。水色の髪の毛にどこまでも透き通るような水色の目が見える。どこから見ても氷魔法の使い手だった。
「氷魔法は聞いたことあるが何故今はまで魔女がいなかったんじゃ?」
「ここまで極める人がいなかったからよ。その前に人口も少ないしね」
彼女は満足気に帽子を被り直し出口に向かって歩き出した。
「ここを通るって事はそれなりの実力者なのね。今度会った時はお手合わせ願おうかな?ま、会えば、の話だけどね」
そう言うと彼女は手をひらひらと振り暗い道に姿を消したのだった。
「氷の魔女日向・・・か」
「不思議なやつじゃったの」
「だな」
氷の魔女日向。彼女の事は気になるが、彼らは王様に会うため歩き出した。
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