勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

文字の大きさ
3 / 17
始まりの書

旅の記録2 甘えん坊(?)

しおりを挟む
裏口を抜けると太陽の光と共に王都の街並みが見えてきた。
「ここが王都?」
「あぁ」
西洋の街並みに似ており人々が賑わっていた。
道具屋にレストラン。洋服店に宿屋、どれもこれも他と比べれないほど大きく、綺麗だった。
しばらく見蕩れていた彼らは12時の鐘の音で我に返った。
「ってここ時刻を表す鐘の音があるのか」
「人間界は時間には厳しいのか?」
「厳しいって程でもないけど約束の時間には絶対間に合わないといけないな」
「むむむ・・・、儂にとって厳しい事じゃ」
頭を抱え込み屈んでしまった魔王を見て彼はクスッと笑った
「何笑っとるんじゃ」
魔王は少し機嫌悪くしたのか、睨みつけるように彼を見ていた。
「いや、単に可愛いっと思っただけだ」
笑顔で勇者に答えられた魔王は少し俯き一つ咳払いをして立ち上がった。
「こんな所で話している場合でもないじゃろ。さっさと人間界のトップと会って昼食にしようじゃないか」
「そうだな。さっさと行くか」
「その前にじゃ」
「その前に?」
「肩車ってやつをやって欲しいんじゃ!」
「何故そうなるんだ!?」
彼は身の危険を感じ、少し後ずさった。魔王は少し笑っており何か良からぬ事を企んでいると思った。
「なーに、気まぐれじゃ」
「本当にか?」
「本当にじゃ」
「本当の本当にか?」
「本当の本当にじゃ」
「本当の本当のほんと・・・」
「何度もそう言っておるじゃろうが!」
何度も聞き直す彼に怒ったのか周りの人など気にせずに大きな声で言った。そして、当たり前のように近くにいた人からは注目の的にされていた。そしてよく見ると魔王の目には薄く涙が浮かんでいた。
「わ、分かったから泣くなよ」
「泣いてなどおらぬ!目にゴミが入っただけじゃ!」
「定番の嘘をつかなくていい!」
「なら、お主って言うゴミが入っただけじゃ!」
「僕をゴミ呼ばわりする方が悪いと思うが!?」
「なら、クズじゃ」
「同じだ!」
こんなやり取りが交わされていくうちに魔王の表情に笑顔が戻っていき彼は少しホッとした。そして、いつも間にか周りの人もいなくなっていた。
「はぁ・・・さ、肩車するのじゃ!」
「結局そこに戻るのか!」
「当たり前じゃ」
彼は深い溜息をして、魔王が乗りやすいように低く屈んだ。すると魔王はリズミカルに2、3歩下がると助走を付け彼の肩に飛び乗った。
彼は思わずうめき声を出したが魔王は全然気にしていなかった。
「カカッ!さぁ我が下僕よ、立ち上がるが良い!」
「僕はお前の下僕になった記憶はないぞ!!」
「なら、今からなれ」
「丁寧にお断りだ!それと、笑い方が嘘くさくないか?」
「うむむ・・・。それは思うがどうも魔王ならこの笑い方じゃないといけない気がしての。普段なら違うんじゃが・・・職業病ってやつかの」
「魔王も大変なんだな」
彼は立ち上がり城に向かって歩き出したのだった。

同時刻、シャンデリアや絵画で飾られた豪華な王室には『例の人』が訪れていた。
「そなたが氷の魔女日向なのか?」
「そうです、国王様」
日向は国王の前で跪きひざまず頭を下げていた。杖は左に置き、すぐ戦えるような形だった。
「なるほどな。例の件は他の地域にも声を掛けててみる」
「ご協力感謝します。では、私はこれにて」
日向が立ち上がろうとすると国王が止めた。
「少しばかり待ってはくれんか?」
「何か私に御用でしょうか?」
「うむ。もうそろそろ魔王討伐に征く勇者が来るはずでな。そなたにもその魔王討伐に加わって欲しいのだ」
「左様ですか。お気持ちに反する形になりますが、私は同行は出来ません」
「そう言わずに勇者が現れるまで待ってくれんかの?」
日向は国王の頼みなら待つしかないと思い首を縦に振った。

そして、日向が勇者たちを待つと決断した時、彼らは城への入城許可を貰うところだった。 
「確認が取れました。どうぞ、お入りください」
彼は魔王を肩車しながら軽く頭を下げ中に入っていった。
「肩の上のやつ・・・妹なのか?」
「どうだろ・・・」
兵隊は彼らの姿が見えなくなるまで見ていた。
「あの~、そろそろ降りてくれんか?」
「何故じゃ?」
「王室に入るんだからこのまま入る訳にはいけないだろ」
「そういう事なら仕方あるまい」
魔王は残念そうに彼の肩から飛び降り服装を整えた。彼はそれを確認すると王室の扉を数回ノックすると中から「入れ」と言われそっと扉を開けた。
「そなたらが勇者とその仲間か?」
「はい。僕が魔王討伐の命を受けて参りました、勇者です」
「そして、私が勇者さんと同行を願う者、魔王と申します」
彼はオドオドしているのに対して魔王は優雅に振舞っていた。魔王は設定上、職業は踊り子、歳は8歳にしていた。
「魔王と申したか?」
「はい」
「そなたの同行を認めよう。勇者と共に魔王討伐を頑張るのだ」
「かしこまりました」
魔王は深々と頭を下げ、これで資金を貰って何事もなく終わると思っていたが。
「そなたら仲間はこれからも増やす予定か?」
「考えてはいませんでしたが、増えるのに悪いことはないので増えるのは嬉しいです」
「それは良かった。そなたらに紹介したい人物がいてな」
そう言うと国王は今座っている椅子を叩いた。すると、後ろから見覚えのある人物が出てきた。
「紹介しよう。『魔女』の二つ名を持つ4人の魔法使いの一人、氷の魔女日向だ」
「へぇ~、貴方達だったの?勇者って」
「裏口で出会った人!えっと・・・」
「日向!氷魔法の日向よ!」
日向は溜息をつきながら彼らの前まで歩いてきた。
「言ったよね?次会った時はお手合せでも願おうかな?って。だから~勝負して貰ってもいいかしら?」
その言葉に魔王は立ち上がった
「いいですよ。私が相手になります」
「なら、城内にあるフィールドを使うといい」
「「ありがとうございます」」
日向と魔王は状況が飲み込めない勇者を置いて王室を後にした
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

さようなら、私の初恋

しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」 物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。 だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。 「あんな女、落とすまでのゲームだよ」

処理中です...