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ウェイパ村
旅の記録7 Maestro
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まだ魔王と勇者が宿で日向を待っている頃、日向は村長の家を
訪れていた。その理由は数ヶ月前から中止になっている演奏会の理由を聞くためだった。
「演奏会が中止な理由はニナがいないからって言うのは分かっているよな?」
「はい。単に重い病気にかかっているだけなのでしたらいいのですが、行方不明でしたら探しに行きます」
その言葉を聞いた瞬間村長の顔が険しくなった。日向はそれで
全てを察し村長に一礼をしてその場を後にしようとした。
「待つんだ日向」
「なんですか?止めるつもりでしたら攻撃しますよ」
ドアノブに手をかけた日向を止めた村長は日向にとある資料を
渡した。
「ニナがいなくなった場所とその時の状況が書かれているから
参考にしてくれ。ニナの事頼んだぞ」
「分かりました。では、失礼します」
日向は資料を受け取るとその場を後にした。
そして、日向は村長から貰った資料に目を通すとこんな事が
書かれていた。
魔法使いニナ。
いつもフードを被っている黒髪とエメラルド色した目が特徴の
女の子。
人と話すのを避けていた。そして、お気に入りのフルートを
いつも持ち歩いておりそのフルートから出される音色は私たちを毎日魅了する。
〇〇月〇〇日いつも通りに演奏会の時間に迫っていた所、突然森から叫び声が響き渡ってきた。その叫び声は村中に響き渡るほど大きな声だった。その後村の中で実力がある者を集め、演奏会が行われる森の中に入っていったが、誰の姿も見えなかった。
その後ニナの家に行ったところ、とんでもない事が判明した。
ニナは森の中にもう行ってしまったと。だが、誰の姿も見てないって事は誘拐と仮定し、しばらくの間は演奏会は中止をしニナの捜索に当たることにする
「確かそれと森の中には順番を代わりながら捜索している人が
いたはずよね?まずはその人と合流するかな」
日向は資料に一通り目に通すと森に向かって歩き出した。
「ニナ・・・ここにいるのよね?」
日向は森の前で立ち止まり問いかけたが誰の返事もなかった。
そして、日向は森に一歩踏み入れた。
日向は森の中に入るとニナを探すのと同時にニナを捜索している人を探した。森自体はそこまで広くなく歩いて30分あれば全てを回れるぐらいの大きさだった。ここの森の中心には木が生えてなく人間一人が座れるぐらいの切り株がありニナはいつもそこで練習をしていた。
昔から両親がいなかった日向に対していつも笑顔で話しかけて
くれた存在。だけど、最初から仲良しだったわけではない。まだこの村の観光する場所に森の演奏会がなかった頃、日向は偶然
この森の前を雛と通りかかった時綺麗な音色を聞いてしまい
そのまま森の中に入ってしまった。音が出てる場所に向かって
歩き続ける日向と雛。そこで出会ってしまった、切り株に座っているニナを。
日向達を見たニナは急いでフードを被りその場を逃げようとしたが日向に止められた。
「あなたが吹いていたの?」
ニナは俯き返事をする様子もなかった。
「とっっても綺麗だったからもう一度吹いてよ!」
雛も後ろで頷いているがニナはそれでも言葉を出そうとしなかった。
「う~ん・・・どうしたのかな?」
当時まだ小さかった日向と雛は一生懸命考え、どうにかしてニナと話そうと試みた。脇を擽ってみたり、フードを取ろうとしたりとしたが一向に口を開かなかった。
とうとう日向は痺れを切らしたのか杖を握り直しニナに向かって魔法を放った。
「アイスよ」
ニナはその声が聞こえると急いでフルートを口に付け吹いた。
「ウォール・・・です」
弱々しい声が聞こえると同時に日向のアイスは見えない壁に防がれた。それを見た日向と雛は驚きのあまり声が出なかった。
「攻撃するのは・・・許さない」
フードを被っており目は見えないが怒っているのは声を聞いたら分かった日向は急いで宥めようとするが遅かった。ニナは先程と違う音でフルートを吹いた。
「ウィンドボール・・・です!」
先ほどより強く、激しくフルートが鳴り響くとニナの頭上には二つの透明な球が浮かび上がっていた。そして、再びフルートが吹かれると二つの透明な球が二人に一直線に向かっていった。
「あ、ちょっと!私達はあなたと話したかっただけ~~!」
日向はそう叫びながら来た球を避けた。そして、雛の方を見てサポートを入れようとしたが自力で守れたからニナの方を向いた。だが、まだ演奏は止まらない。
「雛、気をつけて!」
日向は何かに気づいたが既に遅くて後ろから頭を殴られたような激痛が走りニナの方に吹っ飛ばされた。
「プレス・・・です」
ニナは倒れた二人を目に見えない壁で押し付け身動き取れないようにした。
「さっきのは・・・本当です?」
「そう・・・よ。攻撃したのは悪かったけど・・・あなたが返事しなかったか・・・ら・・・」
日向はそう言うとそのまま意識を無くした。
「少し強くしすぎましたかな?」
ニナはそうボソッと呟くとプレスを解除し、日向を引きずりながら運んだ。
「あ、目を覚ましましたか?どこか痛いところとかございませんか?」
日向は目を覚ますと目の前に黒髪にエメラルド色の目をした女の子がいた。彼女は心配そうな眼差しでこちらを見ていてお礼を言おうと起き上がると頭に激痛が走った。
「あぁ、まだ無茶してはいけませんよ!少し私の本気の魔法をモロに食らったのですから」
その言葉で日向は全てを思い出した。
「あなた、っ!」
「だから、無茶してはダメですって言ったじゃありませんか。しばらく安静にしてください」
日向は言われる通りに寝転がり、何があったのか説明してもらった。
「頭が痛いのは脳に先ほど私の魔法で強打されたのでちょっとした脳震盪が起こっているからです。数時間すれば治るでしょうね。そして、あなたの妹さん?は既にお家の方へと帰られました。事情は説明しましたので」
「あなたの名前は?」
「私はニナと申します。以後お見知り置きを」
「ニナね。よろしく。私は日向」
日向は笑顔でそう答えると意識が朦朧としてきた。
(ニナ・・・ね。これからも会えるかな?)
そう考えながら日向は再び意識を落とした。その日以降日向とニナはこの森で魔法の練習などをする仲に。
だから、日向にとってニナは大切な友達でもあり、家族的な存在でもあった。
「ニナ・・・どこにいるの?」
日向は目に涙を浮かべながら辺りを見渡した。ニナがいつも練習していた切り株に座り空を見上げた。すると懐かしい声が
「私はここにいますよ。日向」
日向は声が聞こえると辺りを見渡したしたが誰もいなかった。
「あはは、ニナの幻聴が聞こえるって私、大丈夫かな?」
「いや、だからここにいますって!下を見てください!」
日向は言われる通りに下を見るとそこには行方不明になっていたニナの姿が。
「何でここに?」
「日向が気づかなかったからよ」
よく見るとニナの体には擦り傷や切り傷がいくつも出来ており服も引き裂かれたようになっていた。
「大丈夫!?」
「大丈夫じゃない」
「すぐここから出よ!」
「無理よ・・・。私、ある人を追いかけているから」
ニナは少し悲しそうな顔で言った。
「誰?私も手伝うよ!」
そう言った瞬間日向は身動き取れなくなった。見えない拘束具で締められたように。
「それはあなただよ。日向」
「ニナ、これはどういうつもりよ!」
必死に体を動かすが解ける様子もなくニナが近づいてくる。
「あなたを魔王様の所に連れていけばいいの」
ニナは腰からフルートを出すと吹き始めた。すると、日向を縛っていた拘束具は宙に浮き動き始めた。
「だ、誰か助けてーー!」
「無理よ。誰も入ってこないし声も届かない」
それを言われた瞬間日向の頭の中に絶望しか見えなかった。このまま魔王の所に連れていかれ何かの実験にされるかと思うと怖くて恐ろしかった。
ニナは何やら黒い液体が入った瓶を取り出し空中に投げるとそこに黒い穴が出来上がった。
「さ、行きましょ日向」
ニナが入ろうとした瞬間ニナの目の前を一本の短剣が通り過ぎた。日向はその短剣に見覚えがあった。
「お主が捕まるとは情けないの。カカッ、儂が助けに来てやったぞ!」
「フィーちゃん!?」
魔王は投げた短剣を拾うとニナの方を向いた。
「お主がニナって言うやつか」
「フィー?なるほどね。そうよ、私がニナ。日向の友達よ」
ニナは日向を捕まえていることを悪いと思っている感じはなく、
ニヤニヤと笑っていた。それを見て魔王はある魔法に思い至った
「精神魔法か・・・」
魔王は日向から聞いていたニナのがどんな人か聞いていたのと今の現状を見て一種の魔法に思い至った。
「日向!こやつはお主が知っているやつではない!戦う覚悟をせい!」
日向はそれでも戸惑いを隠せなかった。まだどこか今起きている事が何かの間違いと思っているのか魔王の言葉は耳に入ってこなかった。
「あのわからず屋が」
魔王はどうにかして日向を助け出す手段を考えた。そして、一つの考えに至った。魔王は短剣を構え勢いよく一歩踏み出した。
「剣の舞じゃ!」
その勢いのまま魔王はニナに向かって斬りかかった。すると、ニナはフルートを吹くとニナの目の前に透明な壁が出来た。魔王は壊れるまで切り刻もうとしたがヒビが入る様子はなかった。
「フィーちゃん!ニナ!もうやめて!」
「辞めるか!お主が戦わないとこやつには勝てない!」
「私も辞める気はないですよ。攻撃するのは許さないから」
日向はあたふたしているが二人の攻撃は止む様子はなかった。
そして、更に二人の攻撃に激しさが増した時、日向を束縛していた物が緩んだ。これから抜け出すのは当たり前だが次にどうするか悩んでしまった。幸いにもにもニナは緩んだことは気づいていなかった。
(私は・・・どうするべきなの?)
日向はニナを見たが戦いに集中しているようでこちらを見る余裕がなく、魔王の方はたまにこちらを見ている。
(私は・・・)
その時ニナの方を少し見ると違和感を感じた。この状況、昔同じ事が起きた事あがある。その時のニナは真剣そのもので無表情だった。だが、今のニナは少し笑っていた。
「アイスよ!」
日向はニナに向かって小さく杖を振ると先からこおりのつぶてが出てきたのと同時に束縛していたものから抜け出した。
「日向?」
ニナは少し驚いた表情で日向を見つめていた。しかし、日向の顔に迷い消えていることがわかると一瞬で顔が変わった。
「フィーちゃん。私やるよ!ニナを戻すために」
「そうこなくちゃの!行くぞ日向!」
「はぁ・・・出来れば無傷で連れていきたかったけどそうは行かないのですね。では、私の演奏踊らされたらいいですよ!」
ニナの怒鳴った声が森に響くと同時に日向は杖を構えた。魔王はそれを見ると一気にニナと間合いを詰めた。
こうして森の音楽会が始まった。
訪れていた。その理由は数ヶ月前から中止になっている演奏会の理由を聞くためだった。
「演奏会が中止な理由はニナがいないからって言うのは分かっているよな?」
「はい。単に重い病気にかかっているだけなのでしたらいいのですが、行方不明でしたら探しに行きます」
その言葉を聞いた瞬間村長の顔が険しくなった。日向はそれで
全てを察し村長に一礼をしてその場を後にしようとした。
「待つんだ日向」
「なんですか?止めるつもりでしたら攻撃しますよ」
ドアノブに手をかけた日向を止めた村長は日向にとある資料を
渡した。
「ニナがいなくなった場所とその時の状況が書かれているから
参考にしてくれ。ニナの事頼んだぞ」
「分かりました。では、失礼します」
日向は資料を受け取るとその場を後にした。
そして、日向は村長から貰った資料に目を通すとこんな事が
書かれていた。
魔法使いニナ。
いつもフードを被っている黒髪とエメラルド色した目が特徴の
女の子。
人と話すのを避けていた。そして、お気に入りのフルートを
いつも持ち歩いておりそのフルートから出される音色は私たちを毎日魅了する。
〇〇月〇〇日いつも通りに演奏会の時間に迫っていた所、突然森から叫び声が響き渡ってきた。その叫び声は村中に響き渡るほど大きな声だった。その後村の中で実力がある者を集め、演奏会が行われる森の中に入っていったが、誰の姿も見えなかった。
その後ニナの家に行ったところ、とんでもない事が判明した。
ニナは森の中にもう行ってしまったと。だが、誰の姿も見てないって事は誘拐と仮定し、しばらくの間は演奏会は中止をしニナの捜索に当たることにする
「確かそれと森の中には順番を代わりながら捜索している人が
いたはずよね?まずはその人と合流するかな」
日向は資料に一通り目に通すと森に向かって歩き出した。
「ニナ・・・ここにいるのよね?」
日向は森の前で立ち止まり問いかけたが誰の返事もなかった。
そして、日向は森に一歩踏み入れた。
日向は森の中に入るとニナを探すのと同時にニナを捜索している人を探した。森自体はそこまで広くなく歩いて30分あれば全てを回れるぐらいの大きさだった。ここの森の中心には木が生えてなく人間一人が座れるぐらいの切り株がありニナはいつもそこで練習をしていた。
昔から両親がいなかった日向に対していつも笑顔で話しかけて
くれた存在。だけど、最初から仲良しだったわけではない。まだこの村の観光する場所に森の演奏会がなかった頃、日向は偶然
この森の前を雛と通りかかった時綺麗な音色を聞いてしまい
そのまま森の中に入ってしまった。音が出てる場所に向かって
歩き続ける日向と雛。そこで出会ってしまった、切り株に座っているニナを。
日向達を見たニナは急いでフードを被りその場を逃げようとしたが日向に止められた。
「あなたが吹いていたの?」
ニナは俯き返事をする様子もなかった。
「とっっても綺麗だったからもう一度吹いてよ!」
雛も後ろで頷いているがニナはそれでも言葉を出そうとしなかった。
「う~ん・・・どうしたのかな?」
当時まだ小さかった日向と雛は一生懸命考え、どうにかしてニナと話そうと試みた。脇を擽ってみたり、フードを取ろうとしたりとしたが一向に口を開かなかった。
とうとう日向は痺れを切らしたのか杖を握り直しニナに向かって魔法を放った。
「アイスよ」
ニナはその声が聞こえると急いでフルートを口に付け吹いた。
「ウォール・・・です」
弱々しい声が聞こえると同時に日向のアイスは見えない壁に防がれた。それを見た日向と雛は驚きのあまり声が出なかった。
「攻撃するのは・・・許さない」
フードを被っており目は見えないが怒っているのは声を聞いたら分かった日向は急いで宥めようとするが遅かった。ニナは先程と違う音でフルートを吹いた。
「ウィンドボール・・・です!」
先ほどより強く、激しくフルートが鳴り響くとニナの頭上には二つの透明な球が浮かび上がっていた。そして、再びフルートが吹かれると二つの透明な球が二人に一直線に向かっていった。
「あ、ちょっと!私達はあなたと話したかっただけ~~!」
日向はそう叫びながら来た球を避けた。そして、雛の方を見てサポートを入れようとしたが自力で守れたからニナの方を向いた。だが、まだ演奏は止まらない。
「雛、気をつけて!」
日向は何かに気づいたが既に遅くて後ろから頭を殴られたような激痛が走りニナの方に吹っ飛ばされた。
「プレス・・・です」
ニナは倒れた二人を目に見えない壁で押し付け身動き取れないようにした。
「さっきのは・・・本当です?」
「そう・・・よ。攻撃したのは悪かったけど・・・あなたが返事しなかったか・・・ら・・・」
日向はそう言うとそのまま意識を無くした。
「少し強くしすぎましたかな?」
ニナはそうボソッと呟くとプレスを解除し、日向を引きずりながら運んだ。
「あ、目を覚ましましたか?どこか痛いところとかございませんか?」
日向は目を覚ますと目の前に黒髪にエメラルド色の目をした女の子がいた。彼女は心配そうな眼差しでこちらを見ていてお礼を言おうと起き上がると頭に激痛が走った。
「あぁ、まだ無茶してはいけませんよ!少し私の本気の魔法をモロに食らったのですから」
その言葉で日向は全てを思い出した。
「あなた、っ!」
「だから、無茶してはダメですって言ったじゃありませんか。しばらく安静にしてください」
日向は言われる通りに寝転がり、何があったのか説明してもらった。
「頭が痛いのは脳に先ほど私の魔法で強打されたのでちょっとした脳震盪が起こっているからです。数時間すれば治るでしょうね。そして、あなたの妹さん?は既にお家の方へと帰られました。事情は説明しましたので」
「あなたの名前は?」
「私はニナと申します。以後お見知り置きを」
「ニナね。よろしく。私は日向」
日向は笑顔でそう答えると意識が朦朧としてきた。
(ニナ・・・ね。これからも会えるかな?)
そう考えながら日向は再び意識を落とした。その日以降日向とニナはこの森で魔法の練習などをする仲に。
だから、日向にとってニナは大切な友達でもあり、家族的な存在でもあった。
「ニナ・・・どこにいるの?」
日向は目に涙を浮かべながら辺りを見渡した。ニナがいつも練習していた切り株に座り空を見上げた。すると懐かしい声が
「私はここにいますよ。日向」
日向は声が聞こえると辺りを見渡したしたが誰もいなかった。
「あはは、ニナの幻聴が聞こえるって私、大丈夫かな?」
「いや、だからここにいますって!下を見てください!」
日向は言われる通りに下を見るとそこには行方不明になっていたニナの姿が。
「何でここに?」
「日向が気づかなかったからよ」
よく見るとニナの体には擦り傷や切り傷がいくつも出来ており服も引き裂かれたようになっていた。
「大丈夫!?」
「大丈夫じゃない」
「すぐここから出よ!」
「無理よ・・・。私、ある人を追いかけているから」
ニナは少し悲しそうな顔で言った。
「誰?私も手伝うよ!」
そう言った瞬間日向は身動き取れなくなった。見えない拘束具で締められたように。
「それはあなただよ。日向」
「ニナ、これはどういうつもりよ!」
必死に体を動かすが解ける様子もなくニナが近づいてくる。
「あなたを魔王様の所に連れていけばいいの」
ニナは腰からフルートを出すと吹き始めた。すると、日向を縛っていた拘束具は宙に浮き動き始めた。
「だ、誰か助けてーー!」
「無理よ。誰も入ってこないし声も届かない」
それを言われた瞬間日向の頭の中に絶望しか見えなかった。このまま魔王の所に連れていかれ何かの実験にされるかと思うと怖くて恐ろしかった。
ニナは何やら黒い液体が入った瓶を取り出し空中に投げるとそこに黒い穴が出来上がった。
「さ、行きましょ日向」
ニナが入ろうとした瞬間ニナの目の前を一本の短剣が通り過ぎた。日向はその短剣に見覚えがあった。
「お主が捕まるとは情けないの。カカッ、儂が助けに来てやったぞ!」
「フィーちゃん!?」
魔王は投げた短剣を拾うとニナの方を向いた。
「お主がニナって言うやつか」
「フィー?なるほどね。そうよ、私がニナ。日向の友達よ」
ニナは日向を捕まえていることを悪いと思っている感じはなく、
ニヤニヤと笑っていた。それを見て魔王はある魔法に思い至った
「精神魔法か・・・」
魔王は日向から聞いていたニナのがどんな人か聞いていたのと今の現状を見て一種の魔法に思い至った。
「日向!こやつはお主が知っているやつではない!戦う覚悟をせい!」
日向はそれでも戸惑いを隠せなかった。まだどこか今起きている事が何かの間違いと思っているのか魔王の言葉は耳に入ってこなかった。
「あのわからず屋が」
魔王はどうにかして日向を助け出す手段を考えた。そして、一つの考えに至った。魔王は短剣を構え勢いよく一歩踏み出した。
「剣の舞じゃ!」
その勢いのまま魔王はニナに向かって斬りかかった。すると、ニナはフルートを吹くとニナの目の前に透明な壁が出来た。魔王は壊れるまで切り刻もうとしたがヒビが入る様子はなかった。
「フィーちゃん!ニナ!もうやめて!」
「辞めるか!お主が戦わないとこやつには勝てない!」
「私も辞める気はないですよ。攻撃するのは許さないから」
日向はあたふたしているが二人の攻撃は止む様子はなかった。
そして、更に二人の攻撃に激しさが増した時、日向を束縛していた物が緩んだ。これから抜け出すのは当たり前だが次にどうするか悩んでしまった。幸いにもにもニナは緩んだことは気づいていなかった。
(私は・・・どうするべきなの?)
日向はニナを見たが戦いに集中しているようでこちらを見る余裕がなく、魔王の方はたまにこちらを見ている。
(私は・・・)
その時ニナの方を少し見ると違和感を感じた。この状況、昔同じ事が起きた事あがある。その時のニナは真剣そのもので無表情だった。だが、今のニナは少し笑っていた。
「アイスよ!」
日向はニナに向かって小さく杖を振ると先からこおりのつぶてが出てきたのと同時に束縛していたものから抜け出した。
「日向?」
ニナは少し驚いた表情で日向を見つめていた。しかし、日向の顔に迷い消えていることがわかると一瞬で顔が変わった。
「フィーちゃん。私やるよ!ニナを戻すために」
「そうこなくちゃの!行くぞ日向!」
「はぁ・・・出来れば無傷で連れていきたかったけどそうは行かないのですね。では、私の演奏踊らされたらいいですよ!」
ニナの怒鳴った声が森に響くと同時に日向は杖を構えた。魔王はそれを見ると一気にニナと間合いを詰めた。
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