138 / 167
黄色い人狩り
しおりを挟む黄色い頭巾に気をつけや。
奴らは人狩り鬼の子よ。
奴らは人を食ろうては、その魂を消す者ぞ。
人狩って得た血は己の血に変えるじゃろう。
その血をもって主を殺しゃんせ。
~~~~
「やっほー!あやさん!」
「皆様方、ご機嫌よう」
人殺し課内に今日も響き渡る声。
その声を殺は歓迎する。
「美咲さん、恵里奈さん、いらっしゃい。外は涼しくなってきたでしょう?」
「うん!秋だね!もう二学期だよ……」
元気に返事はしていても、二学期という学校の始まりに美咲は嫌気がさしていた様だ。
少し声のトーンが下がる。
そんなに学校が面倒かと殺は呆れながらも、微笑んで美咲の頭を撫でた。
「あやさん?」
「学校で勉強するだけが子供ではないのですから、遊んでいても良いんですよ」
殺のその発言に美咲は「そうだよねー!」と元気に言葉を返し、Mの胸に飛び込んでいった。
きっとむにむにな感触が堪らないんだろう。
Mは己が胸に飛び込んで来た美咲を抱きしめ、お菓子を渡していた。
殺はこれがいつもの日常だと安心しきっていた。
恵里奈のある言葉を聞くまでは……。
~~~~
美咲はスマホで時間を確認する。
人殺し課に来て何時間経ったのだろうか?
もう時刻は夕方だ。
美咲は帰る用意を始める。
それを殺は見守っていた。
だが殺は恵里奈の不審な態度と青い表情に気づく。
「恵里奈さん、如何したのですか?」
「殺さん……」
少女は顔を下に向ける。
だが殺はそんな恵里奈を見て、屈んで下から顔を眺めた。
少女は顔を背けられない、言わなければならないと腹をくくったのか前を向いた。
そうしてある言葉を話した。
「人狩りって知ってます?」
恵里奈は何かに恐怖をしているみたいだった。
人狩りのことを訊かれ、殺は己が知っていることを話す。
「ええ、知ってますよ。地獄の人間界駐在の職員たちが討伐している筈ですが?」
殺は何故、人狩りが話題に出たのかわからないでいた。
只一つわかったことは、平和が崩れたということか。
恵里奈は話を続ける。
「ええ、ですがある一族が討伐しきられずに怪しげな動きを見せているのです。調べれば、その一族は美咲の一族と関係がある様で……。私がわかるのはそこまでですが、もしかしたら美咲が危ないかもしれない。なので良ければ殺さん、美咲を守ってください」
人狩りのある一族が怪しげな動きを……それは殺のもとに回って来ていない情報だった。
殺は悩む。自分のもとに回って来ていない情報なら、それは自分には関係のないものだ。
それに自ら関与すると、殺に関係ないとした者の立場がなくなる。
だが美咲が危ないかもしれない。
友人が危険な目に遭うのは避けたい。
だから殺は決めた。
「美咲さん」
「なーに?あやさん?」
殺は己が服の中に入っているものをゴソゴソ漁る。
そうして一枚の式符を美咲に渡した。
「これは?」
「美咲さん。この式符を肌身離さず持っていてください。危ない目に遭遇した時に役に立つかもしれませんから」
「う、うん!わかった!」
美咲は危ないという言葉に若干だが戸惑いながらも殺と約束を交わした。
さあ、今日は早い内に帰りなさい。
そう殺に急かされる。
美咲はわかったとは言ったが、状況はわかっていない。
なので少しの不安を孕みながらも、陣が描かれた紙を破き恵里奈と人間界へと帰った。
「どうかあの子が危ない目に遭いません様に……」
殺は真っ赤な天井を見上げ、一人で願っていた。
~~~~
「あやさん如何したんだろー?」
「さあ……ね」
美咲は道路の白線の上をはみ出さない様に歩きながら恵里奈に訊ねる。
だが恵里奈は美咲に恐怖を感じてほしくない為、敢えて答えないでいた。
本来なら教えて、危機感を持たせた方が良いのだが。
恵里奈は美咲に恐怖は与えたくない、だが少しは教えた方が良いかもしれない。
恵里奈が少しだけ美咲が置かれている状況を話そうと口を開いた時だった。
『黄色い頭巾に気をつけや』
ふとその言葉が頭に浮かんだ。
その瞬間だった。
「何!?この人たち!!」
誰も、車も通っていなかった道路で美咲と恵里奈は複数の者に囲まれる。
その者たちは皆が黄色い頭巾を深く被っていた。
その頭巾に恵里奈は恐怖した。
恵里奈は式符を取り出し、式神を召喚する。
呪符も取り出しては黄色い頭巾の者たちに攻撃をした。
黄色い頭巾の者の眼前に大きな犬神や光が迫る。
それを彼らはいとも簡単に防いだ。
だが、恵里奈は防いだ際に出来た隙間に割り込み、美咲の手を取り走った。
無我夢中、それが恵里奈に相応しい言葉だろう。
「恵里奈ちゃん!?如何したの?!」
「如何したもこうしたもない!」
恵里奈はあの唐突に現れた異様な存在を知っていた。
それは陰陽師をやっていると自然と知っていくこと。
人狩り。
奴らは人狩りだ。
恵里奈は式神を囮にして美咲と逃げる。
(如何いうこと!?何で人狩りが私たちを!?私たちを食らう気?!……いや、私たちじゃない。美咲だけを追っている!)
美咲だけが追われ、自分が眼中にないことを恵里奈は知る。
本当なら恵里奈も自分の身を案じなければならないが、美咲を放っておくことは友人として出来なかった。
(何故、美咲だけが追われて?確か美咲と人狩りの一族は何か関係が!でも今の美咲の一族は人狩りのひの文字もない!ならば何故……!まさか!)
恵里奈の頭の中に最悪の言葉が過ぎった。
それは信じたくもないことでもあった。
(美咲は人狩りの一族を裏切った元人狩りの一族!?)
ならば話は簡単だと恵里奈はわかった。
これは人狩りの復讐。
美咲の一族への復讐だ。
確か黄色い頭巾の一族はある時期を境に一旦姿を消した。
それは美咲の祖母の代だ。
つまり美咲の祖母が人狩りを裏切った?
恵里奈は酸素が充分に取り込まれない脳で考える。
すると恵里奈は地面の小石に躓き転んだ。
美咲もろとも転ぶ。
そうこうしていたら黄色い頭巾の者たちが近づいて来る。
「くっ……そんな!」
恵里奈は黄色い頭巾の者の手が迫ると同時に目を閉じる。
だが手がそれ以上迫ることはなかった。
「ぎゃ!?」
「なーにアタイの主人の友人たちに手を出してんだい?強引なのは嫌われるぞ」
目を見開いたのと同時に黄色い頭巾の者の手が斬り落とされる。
鮮血が美咲と恵里奈を汚したが、二人はそれに臆さずに急に現れた茶髪の赤い着物を着た女性に問いかけた。
「貴方は……?」
赤い着物をより赤く染め上げた女性が二人の方を向く。
「アタイは雛菊!殺様の式神だよ!」
そう言う女性は笑顔を見せた。
~~~~
嗚呼、憎い。
私たちを裏切り、地獄の者に我が同胞を売ったあの一族が。
何が私たちは人間と共存するだ、私たちは人狩り。
貴様らは鬼だ。
さあ、始めよう。
裏切りの審判を……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる