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悪意の手
しおりを挟む「人間界に着いたぞー!」
「サトリ兄さん五月蝿いです」
人間界へ着いて殺はさっそくだがサトリに毒を吐く。
毒を吐かれたサトリは殺を昔はこんな子じゃなかったんだけどなと悲しみながら考えた。
人間界、美咲の住む場所には現在、人殺し課の者、雛菊、美咲が降りたっている。
美咲の住む村は田んぼが辺りに広がっていて、山に囲まれている自然豊かな場所だった。
殺が人間界に見とれていれば、陽はそわそわしている美咲に気づいた。
無理もない、人狩りに狙われていれば怖くて震えるだろう。
陽はそんな美咲を気遣い、なるべく優しい声で大丈夫かと訊ねる。
だが返ってきた返事は予想の斜め上をいく言葉であった。
「美咲……大丈夫か?」
「うん、大丈夫!あー、楽しみ!皆で遊べるのが!」
「……は?」
陽は思わず訊き返してしまう。
美咲は怖がってなどいなかった。
寧ろ街へ行って皆で遊ぼうとしていたのだ。
陽は美咲をなんて逞しい子供なのだろうかと思ってしまう。
だが美咲が呑気に見えるのも全ては人殺し課を信じてのものだ。
「ねえ!街へ行こうよ!」
美咲のその言葉に皆は子供には何を言っても聞かないものだとし、街へ向かう為にバス乗り場まで向かった。
~~~~
バスに揺られる。
どれだけ時間が経ったか、三十分はかかった気がする。
バスの中は殆どが街へ向かう者だったのだろう。
街へ着いたら乗客の殆どが消えた。
殺たちもその消えゆく乗客の一員なのだが。
「街へ着きましたね。懐かしい」
「ここは、あやさんと私が出会った場所だよね!」
殺と美咲は昔を懐かしむ。
美咲には十年前くらいのことだろうが、殺にとっては数百年前のことだ。
殺は己が心の中に居た小さな美咲を思い出しては微笑む。
天真爛漫な美咲を思い出し、今も昔も変わらないんだと微笑んだ。
街中の商店街を歩いていく。
そこは中々に人が賑わい、活気づいた場所であった。
活気づいた商店街を見ると地獄の商店街を思い出す。
そうして思った。
人間界も地獄もそうそう変わらないんだと。
商店街を歩いていると馬鹿三人がニヤリと笑う。
その不穏な笑みに気づいた時には奴らは動くには充分だった。
「あれ食べたいですわー!!」
「儂もー!」
「俺はゲーセン!!」
殺は散り散りに動く馬鹿に驚きの表情を浮かべる。
護衛で来たのですよ、何をやっているのですか?
そんな心の声は三人に通じる筈もなく無情にも馬鹿は消えていく。
「雛菊!あの馬鹿共を追いなさい!」
「は!我が主人よ!」
こうして雛菊が馬鹿三人を追い、殺と陽が美咲を囲むことになった。
「はぁ……あの馬鹿共」
「おや、美咲ちゃん!」
一人のお爺さんが美咲に近づく。
殺は警戒はしたが、美咲がそのお爺さんに親しそうに話しかけているのを見て、知り合いかと判断し警戒を解いた。
更に人が寄って来る。
美咲は如何やら街中では顔が広い様だった。
美咲に沢山の知り合いが出来たなんて……殺は親の様な心境だ。
するとお爺さんがあることを訊ねる。
「イケメンに囲まれて……もしや何方かが美咲ちゃんの彼氏かい?」
彼氏、その言葉に美咲は顔を真っ赤に染め上げ否定した。
「やだなー!おじちゃん!この二人は友人だよ!」
「友人?」
お爺さんは本当に彼氏ではないか探りを入れたそうだ。
それに対し、殺は冷静に返す。
「保護者です」
「え?あやさん!?」
「……保護者だな」
陽まで保護者と言うと美咲は怒る。
友人で良いじゃないかと。
すると美咲の周りに集まっていた人々は笑いに笑った。
「ははは!保護者とはね!」
「美咲ちゃんに彼氏はまだ早いわよー」
街の人々は楽しそうに笑えば美咲は頬を膨らませる。
拗ねているのだ。
そんな時……。
「殺様、馬鹿三人を連行してまいりました」
雛菊がMとサトリと御影を捕まえて来たのだ。
三人はスムージーを飲んでいる。
要するにスムージーを買うからついて来てと言われ、ほいほいついて来たのだ。
なんて馬鹿なのだろうか……。
殺は頭を抱える。
「雛菊、ご苦労。スムージー代は私が出します」
殺は財布から金を取り出して三人分のスムージー代を雛菊に渡す。
雛菊は別に良いですと言ってはいたが、主人としては出したいところだ。
「おや、今度は美男美女だなー!」
美咲の知り合いのお兄さんがそう言った。
するとMがその言葉に反応を見せる。
「そうでは……ありますわねー!」
彼女は美女という言葉に乗せられていた。
それにサトリは面倒臭そうに返す。
「美女は雛菊じゃねーの?」
「あら?私は美女じゃないですの?」
Mは不思議そうにサトリを見つめる。
すると美男美女と皆を褒めたお兄さんが、皆を見て疑問に思っていただろうことを訊ねた。
「皆さん……個性豊かな格好ですね。何かのコスプレですか?」
絶対に突っ込まれると思ってはいた服装。
殺と御影は狩衣だし、陽とサトリは中二臭い。
Mにいたっては亀甲縛りが施されている。
服装を突っ込まれたMとサトリと御影と陽は焦った。
だが殺は焦らず、堂々と答えた。
「ええ、オリジナルキャラのコスプレです。でもこんな街中では悪目立ちしてしまいますね。今度からは気をつけます」
殺はコスプレで全てを片したのだ。
ちなみに何故、四人が焦っていたかって?
それは当初は人が居ないところで人狩りを迎え討つつもりだったから、服装は考えていなかったからだ。
街中に行くとなっていたら、皆が洋服に身を包んでいただろう。
「皆さん、オフ会で集まったのですか?」
「ええ、この街が皆近かったもので……初めて来ました」
殺がシレっと嘘を吐くが、それをお兄さんは知る筈もない。
初めて来たと聞いたらお兄さんは目をキラキラと輝かせ、街の名物を話し始めた。
「ここはケーキや和菓子、コロッケなどが美味しいんですよ!案内します!」
そう言ってお兄さんは殺の手を引く。
「え?ちょっ!」
お兄さんに引きずられていった殺、皆は二人を追った。
強引だが優しいお兄さんだ、この時はそう思っていた。
~~~~
「はー、いっぱい買ったのう」
現在、閻魔への手土産のケーキと和菓子、コロッケを持っている状況だ。
そしてお兄さんは来てほしい場所があると言ってきたので、それについていっている。
「お兄さん、何処まで行くんですか?」
殺は訊ねる。
だが街を離れた今でもお兄さんは何も言わない。
少しずつ違和感が生じる。
その時だった。
「やれ」
「!?」
殺たちの目の前に黄色い頭巾を被った者が現れる。
そうして頭巾の者は刀を構えて皆に斬りかかった。
だが皆は攻撃を片手で防ぐ。
戦いの訓練を受けている皆はこの程度の攻撃は余裕だった。
お兄さんは敵だった、そのことで美咲は動揺する。
「何で!?お兄さん!」
「私は本物のお兄さんではない」
そう言った瞬間にお兄さんは黄色い頭巾を被る。
更に元お兄さんの後ろに黄色い頭巾の者が複数現れる。
「美咲さん!下がっていなさい!此奴らは私たちが何とかします!」
皆が刀を抜く。
それは戦闘開始を告げるものだった。
「はっ!」
雛菊は自分の首を斬りかかろうとした者の攻撃を避け、逆に首を狩る。
そうして逆襲と言わんばかりに敵の懐に入り、血を浴びた。
Mは鞭を駆使して複数の敵を払いのけ、クナイでトドメをきめた。
「我が胎内に宿る闇よ……かの者を喰らうが良い」
御影は妖術を駆使して敵を闇で出来た檻に閉じ込める。
するとサトリがその檻に入り、身動きの取れない敵を斬り殺していった。
陽は鋭く尖った骨を高速で投げる。
だが敵は動きを読んでそれを避ける。
けれどそれも陽の狙い通りだった。
「やれ、殺」
「なっ?!」
敵は動揺する。
自分が動いた先には殺がいたのだから。
殺は冷静に敵の頸動脈を斬り、血飛沫を浴びる。
真っ赤に染まった殺は妖艶的で黄色い頭巾の者を魅了した。
思わず魅了された黄色い頭巾の者は戦闘態勢を整え直そうとするが、時すでに遅し。
眼前まで迫って来ていた陽に気づかずに、陽に斬り刻まれた。
圧倒的、それが皆に相応しい言葉だった。
最後の一人を生け捕りにする。
「さあ、吐いてもらいましょうか。大将は何処です?」
「……街の路地裏に異空間がある。其処だ」
やけに素直に吐いたものだと殺は怪しく思った。
だが敵の拠点は聞けた、これは行くしかない。
だがしかし、路地裏といっても何処の路地裏だろうか?
殺は考えるも答えが出ない。
そうこうしていたら自分は足が早いではないかと思い出す。
一つずつ探していこう。
それが結論だった。
「皆さん、敵大将は私が討ちます。皆さんは美咲さんの護衛を」
「けれど殺様!」
Mが殺を止めようとする。
だが殺は制止を払いのけ言葉を発する。
「敵がこんなにあっさり拠点を言うのはおかしい。敵大将か罠かは私が確かめて来ます。皆さんは罠だった時の対処を」
殺は皆を頼っていた。
頼られている、そうわかったら皆が殺の期待を裏切らない様にと声をあげ、殺に無事に帰って来るのだぞと言った。
「では行ってきます」
そう言う殺は一っ飛びで街に戻っていった。
~~~~
とうとう来るぞ。
地獄の者が。
沙羅様……どうか私にお任せあれ。
この美羅に……。
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