地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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新しい課の名前

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「だいぶ片付いたな」

 新しい課の掃除をしながら殺は呟いた。
 そして何故に部屋の掃除をしているかというと理由は簡単。今まで開かずの間だったから汚れていたのだ。
 何故か長い間ずっと扉が開かなかったらしいのだが、今回の事件が終わった後に開いたという。

 閻魔が言うにはどうやら殺たちは五人の英雄に選ばれたとのこと。
 これに選ばれたからには、これから起こるであろう厄災を解決しろといった次第であった。
 それは十王でも解決は難しい……否、解決出来ないことだから出来た課だ。
 この課はそういうものらしい。
 けれど何故、厄災が起きるのか?

(厄災か……しかしまあ……)

「あー、掃除終わり!」
 
 Mが伸びをしながら叫ぶ。
 そして殺が壁を拭き終わったことで長かった掃除がようやく終わり休息をとる。

 休息も暫しとった頃。
 これ以上休むのも仕事的に悪いと殺は考えた。
 厄災のことは情報が少ない状況で考えていても何にもならない。
 殺はこれからの仕事の方が重要だと、手もとの混合者事件の資料に目を通す。

 だがしかし、事後処理も大事だが通常業務も大事。
 仕事量は一気に増加したのに、有能な五人どころか課の同僚のうち三人が馬鹿なので、業務を細かにやっていけるか殺は不安になっていた。

 殺は開かずの間は一応禁煙だろうと仕方なく落ち着く為に一口チョコレートを舐める。
 チョコレートを食べ、少し落ち着いた殺は、それにしてもと周りに目を向ける。

 開かずの間は掃除してみればなかなか趣きのある和風な空間。
 座れば安心してしまうほどだ。

 最初は埃まみれだったのが難点だったが、それも掃除して今では快適な空間だ。
 嗚呼、畳が心地良い。
 もはやここに住みたいと殺は思っていた。

「広すぎず狭くない……ちょうどいい空間だな」
「今の人数にあわせて空間が広がっているらしいですよ。ゆったりとしたスペースで良いですね」

 殺と陽の他愛ない会話。
 あの事件以来二人は仲良くなっていた。
 陽に至っては殺の食べ物の好みさえわかっている。
 なんせ陽は殺と出会った初日に、自分の気遣いが仇となって激辛水事件という失敗をしている。
 だから二度とあんな事件を起こしたくないとの思いがあったのだろう。
 陽は殺の食の好みを把握する為に食堂で殺を観察していた。
 そして間食に甘いものを食べるので甘いもの好きと見たというところだろう。

「殺、新作のチョコを買ったんだが食べるか?」
「良いのですか?有難く戴きます」

 こんな調子で仲が良い。
 早くも殺がチョコレート好きと見抜くとは……。
 この課を掃除していた時、殺と喋っている陽の顔は赤かった。殺にいたっては御影曰く滅多にしないボディタッチを何回もしている。しかも少し嬉しそうに。

 サトリはあの殺があそこまで感情をあらわすとはと呆然としていた。
 今の時点ではなんとなくだが二人の距離感が妙に怪しい。
 ここは見守るべきとするかと他三人は決める。
 そしてその後サトリはあることに気づき、声をあげた。

「なぁ!」
「如何したのじゃ?」

 無邪気な御影はサトリが何を言うのだろうかと気になってわくわくしている。

「新しい課の名前どうする?」
「あ!」

 陽が声を上げ、ここで皆が初めて気づく。この課に名前がない事に。

「確かに名前は必要ですわ」
「誰かー!アイデア出しなさい!そこのMでもいいです。適当にまともにどうぞ」

 殺は適当でも良いからと、出来るだけまともな名前を催促する。だって恥の塊のような名前をつけられたら此方が恥ずかしい思いをするからだ。

「SMサークル!」
「「「「却下」」」」

 皆が一瞬で却下という判定を下す。
 何せ変態なんてMだけで充分だからだ。
 皆は冷めた目でMを見る。
 その目にMは興奮を隠せないでいた。

「あぁん!酷いですわ!ハァハァ!」
「変態お断りです。次ー!」

 殺はさっさと進めていく。
 ただの進行役だ。
 自分は意見を出さないくせに他の人には意見を出させ、ひっそりと怠慢を決め込む……。
 現在の殺の存在がよくいるそれだ。

「はーい!じゃあ儂がいきまーす!」
「まともなのを」殺は祈りながら念押しする。
 だが……。

「稲荷(いなり)課」
「「却下」」

 殺とサトリが即座に容赦無く却下をする。
 その一方で、陽とMはきょとんとしていた。二人はまだ御影と出会って間もないので、御影が何でそんな名前を提案したのかわからなくても仕方がない。

「何故に!?まともじゃぞ!?」
「それは御影兄さんの好物ってだけで、この課に関係ないでしょう」
「なるほど、そういうことか……」
「お狐様ですものね!」
「はい次ー!」

 御影は「どうせ儂なんか……」などと拗ねる。
 その次にサトリが挙手をした。

「はい!」
「サトリ兄さんどうぞ」
「○○○課」
「「アウトー!!」」

「なんで!?いいじゃん!!」
「そんな名前が許されるわけないでしょう!!」

 サトリ兄さん、何言ってるんだ!馬鹿か?馬鹿なのか?
 殺は怒りで眉間にしわが深くはいる。

「SMサークルよりいけませんわね……」
 お前も同類だけどな、と殺は心の中で強く思ったのだった。

「こら!目玉妖怪!子供がどこでそんな言葉を覚えた!言いなさい!」
「あ?誰が子供だ?喧嘩売ってんのか?」

 …………陽、そういうことではない。
 しかし、いちいち突っ込みを入れていたらラチがあかない。
 仕方ないので殺はサトリへ当たり前の駄目出しだけをすることにして、話を本題に戻した。

「兄さん、この課に関係あるか以前に明らかに危ないアダルト発言は駄目です」
「えー、そんなー」

 サトリ、勿論だが却下される。
 ちなみに御影はまだ拗ねていたのであった。

「じゃあ、僕の番か。」
「陽か。どうぞ」
「普通課」
「適当すぎ。アウト」
「即答!?」
「というかいったい何が普通なんですか。一番普通とは縁遠い場所がこの課ですよ……」

 陽、流石の殺でもフォローしきれなかった。

「殺も何か意見出せー」
「不平等だぞー」
「チッ、面倒くさい」
「お願いしますわ」
「仕方ないな……閻魔大王親衛隊!」
「「「「却下」」」」
「まぁ、わかってましたけども……」
「なら何故やった?」
「なんとなく」

 意見がまとまらない。
 皆、意見を出しているが否定されて終わり。
 そこで殺はこの課の原点について考えた。
 この課は明るい課ではないと、五人の英雄はこれから始まる厄災をなんとかするだけだと……。

 殺たちがなりえる英雄は、決して子供のいう戦隊ヒーロー的な正義の存在とは違う。
 英雄とは何かの犠牲で生まれる負の勝者だ。
 明るい存在とは言い難い。
 沢山の屍を越えたその先に見える世界を見る存在。
 それの何処が良いのだろうか?
 これから先、屍を越えることもあるだろう。
 そう考えると自嘲気味た笑みが浮かぶ。

「皆さん。この課は負の存在です……だから……」



~~~~


「殺ちゃん!新しい課の名前は決まった?」
「決まりましたよ」
「どんなー?」

 殺は笑って答える。
 だがそれは悲しみという負の感情で満たされていて思わず閻魔は何があったのか気になってしまう。

「人殺し課」


 だって厄災を起こす英雄なんて人殺しでしょう?
 これからどんな物語が始まるかなんて知らない。
 だがきっと碌でもない物語なのだろう……。
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