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呪いし者は
しおりを挟む「駄目だー!開かない!」
「如何なっているのじゃ!?」
五人の英雄は今とある屋敷に閉じ込められていた。
屋敷の中に入った途端に黒い靄に覆われて、現在に至る。
黒い靄が消えたは良いが鍵が開かなくなってしまい外に出られなくなってしまったのだ。
荒れ果てた人気の無い屋敷……。
最近は若者が好奇心で探索にくるのだとか。
そうやって皆が死んでいったのだろう。
ことの発端は数時間前……。
「みんなー!依頼だよー!」
五月蝿い閻魔の声に皆がうんざりとする。
何せ閻魔が持ってくる依頼は最近は雑用ばっかりなのだから。
仕事もあるのに雑用まで押し付けられたらストレスで胃に穴が開いてしまいそうだ。
期待などない声で取り敢えず閻魔に訊ねてみる。
期待などこれっぽっちもないが……。
「何です?閻魔大王……」
「やっと人殺し課らしい仕事ができたよ!」
ある意味喜べない。
何せ人殺し課らしい仕事とは事件のことなのだから。前回の祭りの警備とは違う……。
本当の事件……。
「喜べませんね……」
「そう?解決出来るんだから喜べるでしょ?」
そうやって閻魔は首を傾げる。
そういうことで喜んでいたのかと殺は溜め息をつく。
まぁ、解決せねばならないのだが。
そうやって頭で考えていると、御影が興味津々な風に訊ねる。
「どんな依頼じゃ!?」
確かに……。
話を聞かないとことは始まらない。
閻魔はドヤ顔を決めて答える。
「もう誰も居ない屋敷に夜な夜な彷徨い歩く化け物を退治してくれとのこと!既に死人が出ていてこっちでしか対処出来ないらしい。それと変な力が感じられるから要注意!」
既に被害者が出ているのか……
早急に退治しなければとみんなは考える。
「「「「「場所は?」」」」」
「地図を渡すから……はい、これね」
閻魔は地図を渡そうとする。
殺はその手を勢いよく掴み、強引に地図を奪う。
そうして仲間に向かって声をかけた。
「行きますよ!」
「あぁ!」
「うん」
「うむ」
「はい!」
そうして皆が事件の現場に向かった。
「着きましたね……」
目の前には大人の身長ほどある雑草が生い茂る屋敷があった。夜になっていたが、まだ化け物は姿を現さない。
だがサトリがふらふらと歩いていく。
「如何したのですか?サトリ兄さん」
「妙な気配が家の中からする」
サトリは家に吸い寄せられるかの様に歩く。
「待ってください!」
「何処からだ……?」
そうやって殺の制止を聞かず、家の中にするっと入ってしまったのだ。
慌てて皆が家の中に入り現在に至る。
取り敢えず脱出は後にして化け物を倒さないと……。
皆が化け物と戦う選択を選ぶ。
何せ化け物によって引き起こされた事件だ、化け物を倒さないと意味がない。
プルルルルー
古い屋敷には似つかわしくない新し目の電話が鳴った。
皆は音に驚くも冷静にスピーカーを押して電話を取る。
「もしもし?」
こんなところに電話をかけてくる人など居ないとわかっていても怖くても電話を取らなければならない。殺は少しドキドキしながら相手の返答を待った。
『……』
「……」
緊張が走る。
次の瞬間だった。
『イマカラ会イ二行クネ……あはははははは!』
電話はブチッと音を鳴らして切れた。
すると陽が青い顔をして声を出した。
電話線が切れていると……。
「……本当ですね」
殺は困り果てる。
今から会いに行く?出向いてくれるのはありがたいがサトリが何故か異様に恐怖を感じているのだ。
サトリがここまで怖がるほどの力……。
少し探索してからの方が良いと殺は判断する。
探索して化け物のことを知れたらまだ対策のしようがあるだろう。
怯えるサトリを皆がなんとか元気づけて行動を開始する。
今から会いに行くという発言が本当だったら早く此処を離れなければ。
少し早足で音を立てないように慎重に行く。
だが……。
ペタペタペタ……。
足音が後ろから聞こえてくる。
ペタペタペタ……。
本能が振り向くなと警告を鳴らしてくる。
だが振り向かなければいけない気がしてたまらない。
殺は後ろを振り返ってしまった。
それは皆も同じことであった。
皆絶句する。
理由は簡単、後ろには頭が異様に小さく、体だけ大きい緑色の何かがそこにいたのだから。
Mは悲鳴を上げそうになるがサトリが無理矢理に抑える。
「逃げるよ」と合図をするサトリに皆は付いていく。
その際に何故悲鳴を抑える必要があったのかは後にわかった。
ゆっくりと歩いてくる何かは笑いながら「死ね」と叫んでいる。
皆の足は何かの呪詛をかけられたかの如く重い。
要するに知らない未知の力に頭が怯えてしまっているのだ。
だが殺には何か懐かしくも忌々しく思える力であった。
それに何処か中国の呪術が混ざっている様な……。
何処かの部屋に隠れる。皆は焦って別々の場所にいってしまったのか誰も居ない。
此処は何処なんだ?誰の家だったんだ?
この家には謎の力がかけられている気配がする。
式神の気配も妖の気配も無い。
ならあの化け物は一体?
殺の入った部屋はよく見ると広くて生活感が溢れている部屋だった。
もしかしたら家主の部屋だったのかもしれない。
ならば化け物のことが調べられるのでは?と部屋を荒らし始める。
押入れを漁ろうとすると何かが落ちてきた。
日本人形の首であった。
殺は臆することなく押入れをあさる。
だがその時に気がつけばよかった。
その人形が瞬きをしたことに……。
一つの手記が殺の手の中に収まる。
内容は如何やら家主の日記だ。
毎日丁寧に日記をつけていたのには関心する。
うちの馬鹿共とは違うマメな方だと。
内容を見る限り家主はホラー漫画家の様だった。
その手記はボロボロで見た感じが古い。
『八月三日
今日も漫画を描く。漫画だけではつまらないので日記も書くことにした。これから毎日書くぞー!』
『八月四日
漫画は肩が凝るし疲れるな!だけれども好きで選んだ道、諦めない』
最初は明るい内容だった。
だが次第に内容は暗く重いものになっていった。
『十月十六日
売れない漫画家なんて要らないんだ。僕は何の為に生きていたのだろうか?家計もギリギリで電気はもうすぐ止められる。死にたい』
『十月二十日
とうとう漫画が打ち切られた。電気も止められて家が暗い。僕はこの大好きな家で死んじゃうのかな?お母さん、お父さん……なんで病気で死んだの?今から僕もそっちに逝くね』
殺は手記を静かに閉じて足元に目を遣る。
そこには漫画が落ちてあり、ゆっくりと手を伸ばして取る。
それにはあの化け物が描かれていた。
あの化け物は創作上の化け物?
ならば家主の思いが?
……いや、違う。
これは誰かが術を使って化け物をこの世界に呼び出しただけだ。
それと……。
「化け物は他にもいる!」
最悪の結論に辿り着いた殺が走りだした頃にはもう手遅れだった。
「何ですの?!この大量の化け物たちは!」
「だから悲鳴出すなって言ったろ!」
「取り敢えず逃げるぞ!」
大中小の其々の化け物に追いかけられているのはMとサトリと御影である。
その見た目は様々で首が二つあるもの、目しかないものなどかなりグロいものだ。
何故逃げているかって?見た目のインパクトに圧倒されたのではなく未知の妖力に圧倒されたのだ。
その妖力は奇妙で歪んでいたと後に三人が語る。
只でさえ妖力がおかしいのにこんなに沢山の数、相手をしたいわけがない。
「陽と殺は何処へ行ったのじゃ!?」
「それは今はいいから逃げるよ!」
「はい!」
彼らの逃げる先には何が有るのか?
だがその時、Mは葛葉となった。
陽は彷徨っていた。
化け物は何故か居なくなって外を歩いていたのだ。
外はまるで中国を思い浮かばせるかの様な桃源郷のようなところであったが、すぐさま玉座が置かれているいわゆる皇帝が佇む様な場所に変化した。
玉座には誰かが座っていて此方を見て笑顔になった。嘲笑の間違いか……。
「お前は何者だ?」
キッと睨むかの様に陽は相手に問う。
金色の髪を持つ黒い中国の民族服を纏う相手は大きな声で下品に笑って答えた。
「俺様は久遠!殺の夫だ!」
「は?」
陽は呆然とする。
確か殺は誰にも愛されない呪いがかかっていたのでは?と……。
だがすぐに理解する。
ああ、呪いをかけたのはこの男かと。
陽は忌々しそうに久遠を睨む。
久遠も忌々しそうに陽を見つめる。
「俺様の殺に軽々しく近づきやがって……そんなお前にはプレゼント!呪いの人形の胴体をやるよ!永遠に殺されてな!じゃあな!」
「待て!おいっ!」
世界は外の景色に戻る。
ただ一つだけ違うのは刀を持った人形の胴体がゆっくり近づいてきてることだけであった。
仕方ない……戦うかと思った時だった。
「陽!避けてください!」
声が聞こえ、反射的に避けた直後だった。
鋭い一閃が人形を真っ二つに斬ってしまったのだ。
陽は呆然としていると手が差し出される。
殺の手だった。
陽は殺の無事を確認して安堵で腰が抜けてしまった。
それにしても何故此処にと聞こうとしたら、「この人形の首が勝手に本体の元へ行って其を偶然にも発見したのです。完全体になられてたら死んでましたね」と殺は言った。
早く首は燃やしましょうと殺が急かしてくるので、陽は持っていたライターで首を燃やしていく。
大人気分で煙草を吸う為に持っていたライターが此処で役立つとは……。
人形の首がゆっくりとぐちゃぐちゃに溶けていく様は気持ち悪い。
時折聞こえる悲鳴は無視をして平静を保つ。
「なぁ、殺……」
「何ですか?」
「久遠……」
「……そうですか。やはりこれは奴の仕込んだことでしたか……」
殺は溜め息を吐く。
その姿は何処か悲しそうで見ている此方が辛い。
殺はこの事件は一時保留ですねという。
何故と訊ねれば脱出してから中国の呪術者と協力しないといけないとのことだ。
でも脱出方法がそう簡単にある訳が……。
そう考えていた時だった。
「外に出れますわよ。」
「なっ!?」
そこにはMがいた。
Mだけではない、御影もサトリも皆がいたのだ。
それにしてもどうやって出るのかと訊ねればMは誇らしげに述べる。
「鍵がありますわよ。」
褒めて、貶してと言うMは放って置く。
実際に鍵が目の前に差し出されたのだから信じるほかない。
殺は本物ですねと呟き、何処で手に入れたと聞いた。
するとMは興奮しながら答える。
「化け物たちを鞭で絞り上げて殺したのですわ!そしたら鍵を落としてくださったの!」
意外と物騒な発言が返ってきた。
御影とサトリは若干だが怯えている。
なるほど、化け物を倒すと万事解決という仕組みだったのかと陽は一人納得した。
殺の小さな声「まるで遊びみたいだ……」に気づかずに。
全てを終わらして帰路に着く。
誰も怪我をしてなくて殺は内心ホッとする。
そうして奴、改て久遠という存在を忘れてはならないと心に誓う。
忘れた頃に必ず来るのだ。
奴は自分の存在を知らしめる為に……。
帰る時、誰もが気づかなかった。
殺の髪が少し黒ずんだことに……。
これはまだお遊びの段階だ。
本番はこれから!
俺様が華麗に殺を取り返してみせるぜ!
そして二人だけの世界へ……。
嗚呼、殺。
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そのときにはお前にちゃんと告白するから。
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