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敵の生活
しおりを挟む「「罪先輩、ご飯の時間です」」
「先輩ってどうした?お前らは上司だろう。龍牙、砲牙」
罪は少しだけ驚いたがそれを隠して冷静に接する。
自分を先輩と呼ぶ必要も無い上司という妹と弟がなぜ先輩と呼び自分を敬うのかが罪にはわからなかった。
そんな罪の考えごとに気づいたのか、龍牙と砲牙は声をあげる。
「先輩には変わりないし兄として敬っていますから……」
「兄さんっても呼びたいけどいきなり馴れ馴れしくは駄目かなってことで先輩と呼んでいるでありまーす!」
二人は慣れない笑顔を罪に向けて返答を待つ。
あわよくば兄さん呼びをしたいという思いが少し滲み出ていて罪は溜め息を吐きながら二人の頭を撫でた。
「兄さんって呼んでも良いぞ、あとご飯も食べる」
「やったー!兄さーん!」
「兄さん……!」
嬉しそうに目を見開き輝かせて興奮をしている彼らを罪は笑顔で眺める。
この二人は生まれることが出来ずに二人ぼっちで意識だけで過ごしてきた。
だから二人は今、家族という存在があるということが幸せで喜んでいるのだ。
「食事の準備を手伝ってきます……」
「ああ、いってらっしゃい」
龍牙はスキップをしながら足早に食事の準備をしに邪という女のもとへと向かう。
やはり女同士だから趣味が合い仲が良いのだ。
最近では邪のことを龍牙は姐さんと呼んでいるのが面白い。
邪も今まで女が居なかったので初めての妹を可愛がり、お手製のドレスを着せている。
邪のセンスは認めたくないが、なかなか良い。
龍牙の今回のドレスは水色で少しだけレースをあしらい胸元に白いリボンを付けている。
清楚でシンプルなものを作りたかったらしい。
龍牙はドレスをプレゼントされる度にスキップが目撃されている。
よほど嬉しいのだろう。
邪はドレス作りが趣味で、着せる者が出来たことにより、更にデザインに力を入れて上質な布を集めている。
「ご飯出来たわよ~~!皆、早く来なさ~~い!」
「はいはい、さっさと行くぞ砲牙!」
「はーい!兄さん!」
邪の陽気な声が響き渡ればご飯が出来た合図だ。
女子力というものが高い邪のご飯は美味い。
いつもどんな料理がでるのかと楽しみにしているのは内緒な罪は気分が高ぶるのをひた隠しにして、足早に家族が待つ部屋へ砲牙と二人で向かった。
「美味い……」
今日は邪の機嫌が良かったのか大きなステーキが食卓に並ぶ。
固すぎず柔らかすぎない丁度良い肉を口いっぱいに頬張り至福に浸る。
「やっぱり邪先輩の飯は美味いです!!」
「褒めても何も出ないわよ~~、悪くん」
笑顔を見せる二人はとても幸せそうだった。
邪は何故だかとてもニヤニヤしていて何かを言いたそうにしている。
「何で機嫌が良いの?邪先輩」
罪は率直に訊くことにする。
実際に訊いてくれと言わんばかりの顔でそわそわされれば訊くしかない。
邪は満面の笑みを浮かべながら口を動かす。
「私たちって封印されて実体がないでしょ~~」
「それが?」
実体が無い。
そうだ、彼等には体が無かった。
不幸の鬼……幸との争いに痛み分けを決した際に全員が封印されてしまった。
彼等は体が無いことを恨んでいる、体さえあれば世界を元に戻せる。
そう思えて仕方がないからこそもどかしい。
「封印の気配が感じられる様になってきたの~~」
「そういえば何となく気配らしきものが感じられる様な」
「もし封印先に近づけばわかるかもしれないってことなのよ~~」
「……!なるほど」
ニヤリと罪が笑んだ。
これは封印が解けるチャンスということがわかれば話は早い。
「……封印を解いてやろうぜ」
男らしい低い声がそう言った。
皆の顔は真剣そのもので、いつ封印を解こうかなどと考えている。
復讐が出来る。
自分たちから全てを奪った不完全な世界を破滅に導き壊せるのだ。
なんと気持ちが昂ぶるものか。
全てを憎んだ彼らはやっとの機会に歓喜の声をあげる。
早く壊したいと彼らは殺気を鋭くさせる。
「ねえ!その仕事、俺に任せてよ!」
砲牙は手を真っ直ぐに上げて主張をする。
まるでお祭りに心を躍らせているかの様な彼に周りは笑顔を溢してしまう。
「なら任せてみねぇ?」
「兄さん!!」
「良いわね~~!決定よ!砲牙君に任せたわ!」
「やったー!!」
「頑張れ……砲牙」
皆が乗り気で砲牙を囃し立てる。
この時間が楽しくて食事が長引いてしまうのが玉に瑕だ。
幸せな時間が蘇る、憎しみしか無かった環境がようやく変わりつつある。
彼らは憎しみ、笑う。
復讐を考えて笑顔を浮かべるのだ。
狂った世界で二つの勢力がぶつかり合う。
お互いともに幸せを望んでの戦い。
戦争とは幸せを掴み取る為に未来の為にある、それが当たり前。
皆が幸せなんて無いのだ、誰かが不幸になり誰かが幸せになるだけ。
はたして幸せはどちらの手に渡るのか?
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