55 / 167
敵の生活
しおりを挟む「「罪先輩、ご飯の時間です」」
「先輩ってどうした?お前らは上司だろう。龍牙、砲牙」
罪は少しだけ驚いたがそれを隠して冷静に接する。
自分を先輩と呼ぶ必要も無い上司という妹と弟がなぜ先輩と呼び自分を敬うのかが罪にはわからなかった。
そんな罪の考えごとに気づいたのか、龍牙と砲牙は声をあげる。
「先輩には変わりないし兄として敬っていますから……」
「兄さんっても呼びたいけどいきなり馴れ馴れしくは駄目かなってことで先輩と呼んでいるでありまーす!」
二人は慣れない笑顔を罪に向けて返答を待つ。
あわよくば兄さん呼びをしたいという思いが少し滲み出ていて罪は溜め息を吐きながら二人の頭を撫でた。
「兄さんって呼んでも良いぞ、あとご飯も食べる」
「やったー!兄さーん!」
「兄さん……!」
嬉しそうに目を見開き輝かせて興奮をしている彼らを罪は笑顔で眺める。
この二人は生まれることが出来ずに二人ぼっちで意識だけで過ごしてきた。
だから二人は今、家族という存在があるということが幸せで喜んでいるのだ。
「食事の準備を手伝ってきます……」
「ああ、いってらっしゃい」
龍牙はスキップをしながら足早に食事の準備をしに邪という女のもとへと向かう。
やはり女同士だから趣味が合い仲が良いのだ。
最近では邪のことを龍牙は姐さんと呼んでいるのが面白い。
邪も今まで女が居なかったので初めての妹を可愛がり、お手製のドレスを着せている。
邪のセンスは認めたくないが、なかなか良い。
龍牙の今回のドレスは水色で少しだけレースをあしらい胸元に白いリボンを付けている。
清楚でシンプルなものを作りたかったらしい。
龍牙はドレスをプレゼントされる度にスキップが目撃されている。
よほど嬉しいのだろう。
邪はドレス作りが趣味で、着せる者が出来たことにより、更にデザインに力を入れて上質な布を集めている。
「ご飯出来たわよ~~!皆、早く来なさ~~い!」
「はいはい、さっさと行くぞ砲牙!」
「はーい!兄さん!」
邪の陽気な声が響き渡ればご飯が出来た合図だ。
女子力というものが高い邪のご飯は美味い。
いつもどんな料理がでるのかと楽しみにしているのは内緒な罪は気分が高ぶるのをひた隠しにして、足早に家族が待つ部屋へ砲牙と二人で向かった。
「美味い……」
今日は邪の機嫌が良かったのか大きなステーキが食卓に並ぶ。
固すぎず柔らかすぎない丁度良い肉を口いっぱいに頬張り至福に浸る。
「やっぱり邪先輩の飯は美味いです!!」
「褒めても何も出ないわよ~~、悪くん」
笑顔を見せる二人はとても幸せそうだった。
邪は何故だかとてもニヤニヤしていて何かを言いたそうにしている。
「何で機嫌が良いの?邪先輩」
罪は率直に訊くことにする。
実際に訊いてくれと言わんばかりの顔でそわそわされれば訊くしかない。
邪は満面の笑みを浮かべながら口を動かす。
「私たちって封印されて実体がないでしょ~~」
「それが?」
実体が無い。
そうだ、彼等には体が無かった。
不幸の鬼……幸との争いに痛み分けを決した際に全員が封印されてしまった。
彼等は体が無いことを恨んでいる、体さえあれば世界を元に戻せる。
そう思えて仕方がないからこそもどかしい。
「封印の気配が感じられる様になってきたの~~」
「そういえば何となく気配らしきものが感じられる様な」
「もし封印先に近づけばわかるかもしれないってことなのよ~~」
「……!なるほど」
ニヤリと罪が笑んだ。
これは封印が解けるチャンスということがわかれば話は早い。
「……封印を解いてやろうぜ」
男らしい低い声がそう言った。
皆の顔は真剣そのもので、いつ封印を解こうかなどと考えている。
復讐が出来る。
自分たちから全てを奪った不完全な世界を破滅に導き壊せるのだ。
なんと気持ちが昂ぶるものか。
全てを憎んだ彼らはやっとの機会に歓喜の声をあげる。
早く壊したいと彼らは殺気を鋭くさせる。
「ねえ!その仕事、俺に任せてよ!」
砲牙は手を真っ直ぐに上げて主張をする。
まるでお祭りに心を躍らせているかの様な彼に周りは笑顔を溢してしまう。
「なら任せてみねぇ?」
「兄さん!!」
「良いわね~~!決定よ!砲牙君に任せたわ!」
「やったー!!」
「頑張れ……砲牙」
皆が乗り気で砲牙を囃し立てる。
この時間が楽しくて食事が長引いてしまうのが玉に瑕だ。
幸せな時間が蘇る、憎しみしか無かった環境がようやく変わりつつある。
彼らは憎しみ、笑う。
復讐を考えて笑顔を浮かべるのだ。
狂った世界で二つの勢力がぶつかり合う。
お互いともに幸せを望んでの戦い。
戦争とは幸せを掴み取る為に未来の為にある、それが当たり前。
皆が幸せなんて無いのだ、誰かが不幸になり誰かが幸せになるだけ。
はたして幸せはどちらの手に渡るのか?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる