地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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真実

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 最近だが私は不幸の鬼の過去を夢で見る様になってしまった。
 私の中にいる本人が言うには今、私と鬼が一心同体であるから当たり前のことらしい。
 内容のおかげでこの先、戦うであろう敵がいることは分かったが断片的な夢だったので詳しい情報は得られなかった。

 それなら過去の重要人物の不幸の鬼に訊けばいいと思い訊いてみれば、その者たちとはあまり関わっていないらしく、よくわからないと言う。
 まあ、関わりも関心もなかったからこそ閻魔がこの世界に来るまで敵は人間が出来上がっていたとは気づかなかったのだろう。

 敵は完璧な存在だけの世界を望んでいた。
 だからこそ人間は要らないと認識した。

 夢の内容は先程申し上げた通り断片的だ、だから簡単に纏めるとしよう。

 まずこれから敵になるであろう者たちと不幸の鬼が暮らしていた。
 それから不幸の鬼が人間を創り一番最初に死んだ後に閻魔大王となる子供を招き入れる。
 そしてそれが敵にバレて完璧を望んでいる敵が閻魔大王を殺そうとするが不幸の鬼が守って相打ち。

 その時、閻魔大王に今の力が宿った。
 敵はいつか世界を壊す為に力を取り戻してから再び相見えると言葉を残して封印されるといったところだ。
 ちなみに不幸の鬼は死んでおらず、封印されていただけであった。

 この話で厄介なのは閻魔大王が戦いの現場を見ておらず最初から不幸の鬼が不幸の鬼と思っているところと敵の存在を知らないことだ。
 この鬼、夢の限りでは最初から不幸を呼び起こす力などない。

 不幸の鬼は敵大将に呪われたのだ。
 不幸の鬼が自分で愛しい世界を破滅に向かわせる為に、つまり敵大将の呪いでそうなっただけだ。
 そこからは閻魔大王の言う通りの展開になる。

 それと更に厄介なことは鬼が最後の力で五人の英雄を創った時のことだ。
 鬼はこれを創った際に英雄が一人でも欠けると運命が崩壊する様にしてしまったのだ。
 それほど鬼の最後の力は不完全だったのだろう。

 この事実は一応、閻魔大王に話すべきだ……敵がいるというのは一大事であるから。
 私は急いで閻魔大王に会いに行く。
 彼の部屋の前に辿り着き扉の前で名を名乗ってから部屋に入る許可を得る。

「入って良いよ、殺ちゃん」

 扉を開けると閻魔大王は静まりかえった広過ぎる部屋の真ん中で正座をして黄昏れていた。

「何があったんだい?」

 閻魔大王は優しい声音で語りかける。
 私はその声を聞いて少し安心してから真実を話す決心を固めた。

 不幸の鬼……幸が私の中で存在していることを。

 何から話そうか?敵がいることから話そうか?
 そうやって悩んでいると「ゆっくりで良いんだよ」そう言って彼は私をフォローするが、何しろ私は閻魔大王に無駄な時間を過ごさせたくないのだ。
 仕方ないので適当に完結に纏めることにしよう、寧ろその方が良いと思う。





 私は閻魔大王に全てを話した。
 彼は最初は不幸の鬼が私の中で生きているということに呆然としていて更には敵までもがいることに少し頭を抱えて唸っていた。
 しかも完璧主義の敵だ、私たちを不完全と言うことはそれなりに強いのだろう……余裕を持つこともこれからは出来なくなるだろう。
 すると閻魔大王は恐る恐る顔を上げてこちら見つめた。

「ねえ、幸さんがそこにいるの?」

「ん?、いますが」

 暫くの間だが沈黙が続く。
 だが、そんなに沈黙が続く筈もない、沈黙を真っ先に破ったのは閻魔大王だった。

「なら、私と対話出来るの?」

「もしかしたら体を貸せば出来るかもしれませんね……します?」

 その瞬間に閻魔大王の目がキラキラと輝く。
 そりゃそうだろう、この世界での親代わりは不幸の鬼だったのだから会いたくない訳がない。
 殺は目を閉じて不幸の鬼に安全に出来るかどうかを訊ねてから、出来るということを確信して体を貸していった。

「……閻魔君」

「久しぶりです!!」

「元気そうで良かったです」

 彼らは他愛ない話を続けていく。
 不幸の鬼が死んだと思われてから何年が経つのだろうか?
 それは神という存在でもあまりにも永く途方に暮れてしまいそうなほどの年月だ。

 閻魔大王はきっとその間、寂しかったのだろう。
 どれ程、大切な家族に囲まれて過ごしていても一人が欠けるということは矢張り悲しいものだったろう……よく我慢が出来たものだ。
 その考えは不幸の鬼も一緒だったらしい。

「よく我慢が出来ましたね、貴方は立派ですよ」

 そうやって私の顔で微笑む。

「……私、ずっと貴方に会いたかった……ようやく会えたのだからもう離れないでください……」

 少しだけ鼻声になっているということは恐らく泣いたのだろう、鬼はそんな閻魔大王を私の体を使って抱き締めた。
 すると、泣き声が少しずつ大きくなり矢張り泣いていたのかと認識出来るほど、閻魔大王の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃであった。

 これ以上は私の体に負担がかかるらしい、閻魔大王は涙ながらも不幸の鬼と一時の別れを交わしていた。
 やっと私が私に戻る。
 憑依されるのがこれほどまでに疲れるとは……今の状態では歩くのも怠い程だ。

 これ以上は私の体に負担がかかるって……もう充分負担がかかっている気がするのだが。
 取り敢えず涙を拭いて元に戻った閻魔大王に人殺し課に後で敵対組織がいることを伝えておいてくださいと頼み事をしてから部屋から去る。

 それにしても……実は私はこの夢を見てから不幸の鬼がどれ程に愚かかと考える様になってしまった。
 何せ自分の持論で勝手な行動を起こし、その世界の摂理に反した。
 完全より不完全が良い……そんな考えは当時の世界には私も要らないと思う。

 不幸の鬼は当時の自然の摂理に反したから死んだだけだ、それに元家族を封印し、残った家族の力を一時的に奪うとは……本当は鬼の方が身勝手なのでは?
 自分の我儘を貫き通し、家族を傷つけて、対立を産み、やがて今のいつ死ぬか分からない恐ろしい時代を創った……。

 まあ、過去のことは私には重要ではない。
 私は今が重要だと考える、何せ神でも時に逆らって昔の時代に帰れるわけがないのだから。

 私は今、自分が守らなければならないものを守るのだ。
 だから、今は無駄な考え事なんてする暇はない。
 目の前に立ち塞がる敵を片っ端から斬り裂いていくまでだ。

 敵に無駄な情は要らないんだ。
 しょせん、殆どは仕事なんだから。

 私はこの刃で生き残ってやりましょうか、皆の最後まで……。
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