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白蓮の決意
しおりを挟む「着いたぞ!」
閻魔が丁寧に時空の歪みを久遠が住まう宮殿の中まで繋げていたおかげで彼らは長い廊下を静かに進んでいた。
日本地獄から去るときに閻魔に「好きに暴れてきても良いよ!」などと言葉をもらい彼らは堂々と廊下を進んでいく。
「何処に殺様が居るんですの?」
「やっぱり片っ端から倒していって訊き出すとか?」
広過ぎる宮殿では殺が何処に居るのかがわからずに皆が頭を悩ます。
気配を辿るにも何故か殺の気配が感じられずに道に迷ってしまった。
「強力な術がかけられておる……探し出すのは難しいじゃろうな」
御影が高度な術だと説明すれば皆が納得をする。
殺の気配、気の流れを風の力で遮る術だ。
どおりで気配がわからないわけだと。
「なら、どうすれば?」
サトリが御影に期待しながら訊ねる。
術のエキスパートの御影ならばなんとか出来る筈と高を括っての発言だ。
それに御影が焦る。
「どうしたの?」
「術を解くのは出来るのじゃが……」
「だから何?」
サトリが面倒くさそうに言う。
御影は目をキョロキョロ泳がせ、顔から汗を滴らせて口を開く。
「術が……恐らく殺本体にかかってるから探すの無理……」
「「「はあ?!」」」
これにはサトリだけではなく陽とMも声を荒げた。
「すまん!」
「すまんじゃないだろ?!」
サトリが御影に罵声を浴びせていく。
御影は面目なさそうに涙目で罵倒を受け入れていた。
それを見てMが「私を罵ってください!」などとほざけば更に炎上する。
歩きながら喧嘩をしていていつの間にか広い部屋に辿り着いた。
部屋に着くと同時に陽は皆を叱る。
「今は喧嘩している場合じゃないだろう?!……?」
「どうした?陽」
陽がすぐに黙ったことにより、その場に少し謎の空気が流れていく。
「今の今まで、敵と遭遇してないっておかしくないか?」
「確かに……「だってずっと見てましたから」
「「「「!?」」」」
静かだった宮殿に無数の足音が規則正しく響き渡った。
いつの間にか数百の兵に囲まれていたのだ。
先ほどまで誰も居らず何もなかった広い部屋は今ではお祭りの様に大人数だ。
すると前回の事件での主犯の一人、白蓮が現れる。
「くっ、ここからはやはり戦わねばならないか」
陽がそう呟き、それぞれが武器を手にしたときだった。
白蓮がにこりと戦意の感じられない笑みを浮かべたのだ。
「そこの眼鏡の死神だけ通りなさい。久遠様を倒したいのでしょう?歓迎です。あとの者は残っていてください」
「陽だけに行かせられるかよ!」
「死神、早く行きなさい。道は開けます」
サトリの言葉を無視して白蓮は兵に指示をくだす。
すると何百もの兵が陽に次々と道をあけていった。
「早く久遠様を倒してきてください。お仲間には手を出しませんから」
陽や皆は一瞬だが白蓮に疑いの目を向けるがすぐに撤回する。
彼は本当に手を出さないつもりだった。
白蓮から陽に紙が投げられる。
「地図が描いてある紙です、殺様の部屋には赤いバツじるしがつけてあります」
「……何故助ける?久遠はお前の主じゃないのか?」
「理由はいいので早く行きなさい」
陽は少し疑問を残しながらも地図も嘘ではないことがわかりきっていたから先を急ぐことにした。
「何故、儂らに手を出さないのじゃ?それに陽に殺の居場所を教えるなんて……」
「久遠様の友としてやらなければならないと思ったのです」
「?」
Mもサトリも訳がわからなかった。
最初は久遠による中国の無理矢理な支配からの裏切りとも思えたが様子が違う。
疑問が頭を満たしていると白蓮は笑顔で話し出す。
「彼の方は少々ですが我儘です。自分の幸せの為なら他人の幸せ、人生すら奪います。だからそれを止めたかった、誰かの幸せを奪わせたくなかった。それだけです」
白蓮はあの日のような化け物ではなかった。
冷静に何をすべきかわかっていた。
わかっていたからこそ、陽を戦いの前線に押し出した。
「お主……やっと本当の友というものがわかったのじゃな」
「ええ、わかりました。それと貴方たちを足止めしている理由は戦ったふりをしないと皆が殺されますからね。そういうわけです」
白蓮は笑顔だった。
それは人を信じている顔だった。
人殺し課を信じて彼は命をはった、友が間違いに気づくことを信じていた。
「ピンチの時は貴方たちを死神のもとへ向かわせますから安心してください。貴方たちは死なせません」
白蓮は真剣な目つきになる。
「あの死神と殺様なら久遠様を変えてくれます。そう私は信じています」
兵たちと白蓮は人殺し課の者たちに跪(ひざまず)く。
「不幸を塗り替えましょう」
そう彼は呟いた。
~~~~
陽は暗い埃が舞う部屋に居た。
地図の場所の通り走った彼は赤いバツじるしの部屋辿り着く。
「ここは……!殺!」
陽は手枷と足枷をつけられ、動けない殺を発見する。
まさかこんなことをしているとは……陽は深く憤りを感じる。
「……!陽!」
陽が殺を助けようと枷と鎖に手を伸ばしたその時だった。
背後から気配がした。
振り返れば刀を振りかぶった久遠が立っている。
「あーあ、ばれたか」
「危ないな……!」
陽に向けて刀を真っ直ぐ振り下ろした久遠の攻撃を、陽はギリギリのところで刀を構え、防ぎ、久遠を睨む。
「そんな怖い顔すんなよ、死に顔は穏やかな方が良いぜ」
「あいにく、僕は死なないぞ」
「あっそ、殺すけど」
瞳と瞳が火花を散らす。
戦いの火蓋は切って落とされた。
さあ、運命は?
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