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幸せな結果
しおりを挟む「私の恋人に手を出すな……!」
「あや……」
殺は強く発言する。
壁にめり込んで何が何だかわからない久遠は呆然としていた。
「殺……?お……とこ?!」
久遠は酷く混乱する。
無理もない。
目の前に居る鎖を引きちぎって立ちはだかる殺は髪も目も紅く、いつもよりがっしりしていて手首も首も太い、ちらりと見える胸筋が男になっていることを物語っていた。
「何で?!何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で?!」
久遠は狂った様に叫びだす。
頭を振り乱して泣き叫んでいる姿はまさに獣だった。
「やはり貴方は女の私にしか興味がなかったのですね」
「当たり前に決まってんだろォォォォォォォ?!何で男なんかぁぁぁぁぁぁ!!!」
殺は馬鹿にした様に静かに笑う。
だがその目は怒りが滲み出ていた。
「そんな身勝手な愛なんて要らない。陽は性別が如何だろうと愛してくれた、幸せにしようと戦ってくれた!貴方の適当な我儘な愛とは違う!そして私は貴方の嫁になるのではなくて陽の旦那になるんだ!」
「うるせぇぇぇぇぇぇえ!!」
殺の周りを紅い闇が包む。
一部の紅い闇は形を変形させて刀になった。
その刀を掴んで殺は体勢を整える。
「私の恋人に手を出した罪は重いですよ、久遠!」
瞬間に殺は久遠のもとへと駆ける。
久遠は目の前で繰り出される攻撃を避ける筈だった。
だが殺は目の前から消えて背後から姿を現わす。
すぐさま斬撃が久遠の背中に刻まれていく。
それだけではない。
横から、前から、上からなどと様々な場所から殺は現れてきたのだ。
久遠よりも速い斬撃だった。
己より速い斬撃を久遠は捌ききれる筈もなく、ただ斬られていく。
己の攻撃よりもとても重い斬撃に久遠は耐えられなかった。
「うォォォォォォォ!!もういい!お前ら全員死ねぇぇぇぇぇえ!!」
久遠は呪符を飛ばす。
だがその呪符は殺には何一つ当たらなかった。
全ての呪符が叩き斬られていく。
その時に気づいた、殺の目は真っ紅に光っていた。
紅い瞳が呪いを消していく。
真っ紅な瞳で暴れ狂う姿はまさに怒りで全てを壊そうとしている化け物だった。
どんどん呪符が斬られていく。
呪符にかけた呪いすら殺に敵わないと判断を下した久遠の体は恐怖で震えていた。
「何なんだよ!!何でだよ!」
全ての呪符を使い切った久遠は恐怖に染まりながら刀を振り回す。
だが、無茶苦茶な太刀筋の刀はあっさりと薙ぎ払われる。
「ガハッ!」
殺は久遠の首を絞めながら持ち上げていく。
片手だけで殺は久遠を持ち上げてニヤニヤ笑う。
それは怒りで歪みに歪んだ姿だった。
久遠はなんとか身を捩り殺の手から逃れようとする。
だがそれは無駄なことで首を絞める手の力は止まらない。
「殺してやる」
殺は怒りで血走った目で久遠を見つめてニタリと笑う。
殺すという言葉はきっと本当なのだろう。
久遠は焦る、死の恐怖を身を以て体感して体を固める。
死が近くなると恐怖で体が動かなくなる。
頭が働かなくなる。
久遠は何も出来なくなっていた。
殺の親指が首に突き立てられる。
親指で頸動脈を斬ろうとする。
殺の手が首を深く傷つけ様としたときだった。
「止めるんだ……!」
殺の手が止まる。
久遠がドサリと音をたてて床に落ちる。
殺は呆然とただ立ち尽くしていた。
陽に抱き締められながら。
「陽……、何故止めたのです?」
「……お前に殺しをしてもらいたくないし、こいつにも死んでもらいたくないから」
凭れかかる様に抱き締めていた陽をしっかりと抱き締めなおす。
彼は歩くのもやっとだった。
「……こいつは幸せになりたかっただけだ、我儘だけどお前を幸せにしようともした。そんな優しい者を殺す必要はないんだ、それにこれから幸せになってほしいから」
幸せになってほしいから。
自分を殺そうとした敵に言える言葉ではないと殺は思った。
それと同時に陽らしいとも殺は思った。
殺はすぐに戦意を喪失する。
なんせ愛しい恋人が殺さないでほしいなどと頼んできては聞かないわけにはいかない。
「命拾いしましたね、久遠」
殺はそう言い残し陽をお姫様抱っこして颯爽と立ち去っていった。
~~~~
「久遠様、良いのですか?追わなくて」
「追えると思うか?」
白蓮はにこやかな笑顔で久遠の前に立つ。
久遠は少しだけ顔を引き締める。
「なあ、あいつ……俺様に幸せになってほしいって言った。俺様は殺そうとしたのに……」
「……」
「俺様、少し考えて行動する……誰かの為に、誰かを思って何かをしたい……あいつの様に」
「出来ますよ、貴方なら」
白蓮は久遠を担いで治療室へ向かう。
久遠は何故だか笑っていたという。
~~~~
「殺、早く御影のもとへ……」
「その呪いなら私にも解けますよ」
「なんだと……!は……やく」
殺はにこやかな笑みを浮かべる。
その笑みのまま、陽に口付ける。
「なっ!」
瞬間、二人を青い光が包んでいく。
あまりの光の美しさに陽は言葉を失った。
すると殺はご機嫌になる。
「愛する者が口付ければ解ける呪いです。貴方の好きな者は私でしょう?」
「自信満々な奴……まあ、そうだけど」
陽は少し照れて顔を隠す。
そんな陽を見て殺は更にご機嫌だった。
「見てたぞ……!」
「うわっ!びっくりした!」
「いつの間に更に親睦を深めていたのじゃ!?」
「話すのですわー!」
「帰ったら話しますから静かにしてください」
「ちょ!まっ!」
皆の前で惚気話をするまでもう少し……。
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