地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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暗殺者

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「皆さん、今日は珍しく早いですね」
「偶には一番のりしてみたくてな」

 他愛ない会話が人殺し課へ続けられる。
 皆が殺がいつも一番早いことを知っていたから殺の早さを抜いて新記録を出したいと考えていた。

「暑いですわね~」
「そうじゃなぁ」

 まだまだ暑い夏の日、エアコンが無いのが憎らしい。
 彼らは人殺し課へ向かうべく閻魔殿の通路を歩く。
 一番のりは出来なかったが偶には皆で出勤も悪くない。
 そう思いながら人殺し課の前へつく。

「やっとついたぜ!」

 閻魔殿のより遠い場所にある人殺し課へついてサトリはこれからの仕事が面倒臭い様な態度をとった。
 殺はサトリに仕事をサボらない様にと牽制をするが相手は知らんぷりをする。
 知らんぷりをされれば殺は苛つくが目の前の仕事を片付ける為に人殺し課の扉を開けることにした。

 ギィーっと音を鳴らし開く扉の先に何かが見える。
 人影、電気をつけてない人殺し課ではそれが誰かわからなかった。
 人影は此方を見て近づいてくる、明るい通路に出たらそれがどんな者かは視認出来るものの、誰かはわからない。
 薄い桃色の着物を着た茶髪の見目麗しい男性、何故に人殺し課へ来たのかと考えていたらMが後退りして呟いた。

「お父様……!」

 後退りするMはどこか憎いものを見る様な目で父親という者を見る。

「葛葉……迎えに来たぞ」

「嫌ですわ!!私は帰りません!」

 話しについていけない、だがMが嫌がっているのは確かで陽はMの助けに入る。

「お父様だか何だか知らないが嫌がっているだろう!止めないか!」

 だが目の前の人物はMこと葛葉を担ぎ上げた。
 あまりにも一瞬のことで誰もが止められなかった。

「私には人殺し課の仕事があるのです!一人が欠けたら世界が大変になるのですわよ!」

「そうか、なら仕事はしても良い。だが暗殺業は継いでもらう」

「嫌ですわぁぁぁぁぁぁ!!」

 葛葉は泣き叫んでいる。
 人殺し課も、この者には言葉が通じないと若干だが諦めていた。
 それにしても暗殺業とは何か?葛葉はいったい?
 そう疑問が湧き出る。
 すると一瞬で時空の歪みが現れる、その瞬間に葛葉が連れ去られるのが人殺し課にはわかった。

「勝手に仲間を連れて行くな!!」

 しかし殺の叫びは無視され葛葉が居なくなった空間に虚しく響いた。
 殺もサトリも陽も御影も怒りでいっぱいである。

「取り敢えず閻魔に話しを訊きますよ」

 反論する者は誰一人いなかった。


~~~~

「ついに葛葉ちゃんが連れ去られたか」

「閻魔大王はこのことを知っていたのですか?」

 殺はおぞましい笑みで訊ねる。
 だが閻魔はそれに物怖じしないかの様に「知ってた!」と答えた。

「Mが暗殺業とはなんじゃ?」

 御影が率直に訊ねる、すると閻魔はあることについて話し始めた。
 地獄を支える、知られざる組織の話を……。

「葛葉ちゃんは潜木家の元暗殺者。潜木家とは代々、地獄を裏から支えてきた存在。暗殺活動は勿論、諜報活動もしているよ、そして……」

 閻魔は話を続ける。
 それはそれは困ったかの様に。

「後継者が病で居なくなったんだ、だから娘の葛葉ちゃんが選ばれた。この一族は代々、当主が変わる。それが彼らの掟、揺るがない掟」

 不老不死なのに当主が変わる。
 嫌がる娘に当主を継がせようとは何たることか。
 相変わらず怒りが湧いてしまうものだ。
 そんな怒りが湧いている殺たちを見て閻魔は笑って訊ねる。

「葛葉ちゃんを助けたい?」

「「「「勿論」」」」

 誰もが即答だった。
 その答えに閻魔はニヤつく。

「いいよ、好き勝手してきな。葛葉ちゃんは私にとっても大切な仲間だからね。仲間が悲しむ姿は見たくない」

 そう言いながら閻魔は時空の歪みを用意する。
 潜木家とは異空間にあるから普通に行くのは無理とのことだ。
 何せ秘密の存在、そう簡単にバラしてはならない。殺たちは戦いの覚悟を決めた。


~~~~

「葛葉、似合っているぞ」

 父親……悠斗(ゆうと)は葛葉を愛おしそうに眺めて呟く。
 今の葛葉は豪華絢爛な着物を着ており、髪もおろしている。
 いつものミニスカートとお団子括りの髪型とは全く違う。

「お父様……私は貴方が嫌いだ」

 葛葉の口調が変わる。否、これが本当なのだろう。

「嗚呼、わかっている。だが当主が必要なんだ。我慢してくれ」

 悠斗は少し悲しそうな顔をする。
 葛葉を愛しているのは本当なのだろう。
 すると焦ったかの様な従者が悠斗に緊急報告をした。

「侵入者が!!」

「もう取り返しに来たか……」

 悠斗は苛ついた態度をとる。

(ここまで早いのは異常だ……恐らく閻魔が協力したのだろう)

 悠斗は苛ついた顔を笑みに変えて言葉を言い放った。
 それも穏やかな顔で。

「丁重におもてなしをしてやれ」

「お父様!殺様たちに手を出すな!」

「五月蝿い」

 悠斗は冷徹な顔に変わる。
 彼は暗殺者故に表情が豊かなのだ。
 どれもこれも本当の彼、偽物なんて何もない。

「有能な暗殺者たちを集めろ。あとは風を戦いにだせ」

「はっ!!」

 従者は急いで指示通りに対応をしようとする。
 葛葉は焦る。皆が怪我をしてしまうのではと。
 すると悠斗は顔をまた歪ませる。

「犬臭い……私が犬が嫌いなのは知っているだろう」

 実家に居た頃に犬が飼えなかった理由は悠斗が犬嫌いだからだ。
 葛葉は更に焦る、このままでは桜子とも会えないのではないかと。

「この……クソ親父が!」

 葛葉は周りの従者に止められようと暴れ続ける。
 それを見て悠斗は笑う。

「後継者に相応しく強くなったな」

 葛葉は父親を殺したくなった。
 自分勝手な父親を、母との約束を守らなかった父親を。
 そして葛葉は祈った。誰か自分を救ってくれる存在を。

~~~~


「敵が多過ぎる!」

 人殺し課は現在、沢山の敵に囲まれていた。
 そんな中で陽は自分一人で相手をすると答える。

「こんなに居ては貴方が!」

「偶には僕に任せろ!早く行け!」

 陽は「僕なら大丈夫だ」と言う。
 彼の目は勝利を確信していた、自信に満ち溢れていた。
 皆はその眼を見て、その言葉の通り陽を信頼して戦場を任せた。
 偶には花を持たせてやるかとも思いながら。

「さあ、僕に勝てるかな?」

 そう呟く陽は少し不気味だった。


~~~~


 広い広間に人殺し課の三人はつく。
 すると一人の人影が見えた。

「おいらは風という者だ!」

 風という名の女みたいな見た目の者は早速だが三人に向かい刀を振りかぶり、斬ろうとした。
 だが殺はそれを避けて一本の通路に進む。

「行かせるか!」

 風はまた攻撃をしようとするが御影の呪符に防がれる。

「殺の前に俺と勝負しようぜ。御影、お前は下がってろ」

「はいはい」

 サトリが戦場に立つ。

「そこの狐ならともかく小学生がおいらに勝てるの?」

 風はニヤニヤするが御影は大笑いをする。

「サトリは儂より強いぞ!」

 そう御影が言った時だった。
 白い煙がサトリを包む、ほんの数秒間の出来事。
 煙が晴れて見えたものは先ほどまでの見た目が小学生のサトリではなく大人の男らしいサトリだった。

 片方だけ三つ編みされた青い髪がしなやかに揺れる。

「ほう、これは面白いな!おいらを楽しませてくれそうだ」

「精々、死なない様に頑張って」

 彼等はお互いを睨む。
 さあ、勝負は始まった。
 勝利を掴むのはサトリか、風か?

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