96 / 167
約束の真実
しおりを挟む「そろそろ大切な人と交わした約束を話す時なのではないですか?」
「ああ、そうだな」
葛葉は訳がわからなかった。
大切な約束とはもう父親がやぶったのではないかと。
母親と父親の約束、いつも母親は約束を父親と交わしたと話していた。
その約束がやぶられた筈なのに母親は最期まで笑顔だった。
何故?葛葉は全てがわからなかった。
だが目の前の父親、悠斗は葛葉を愛おしそうに抱き締めて真実を語りはじめることにした。
「お母さんとの約束はな、一緒に居ることではなくて暗殺者として、当主として家を守ることだったんだ」
悠斗は更に語る。
「お母さんのことは愛していた、だからこそ大切な約束をやぶれなかった。本当は最期を看取ってやりたかった。」
愛していた。
その言葉が真実だと葛葉にはすぐにわかった。
なにせ悠斗の声が、いつかの幸せな日の様に柔和になっていたからだ。
寧ろ今まで何で気付かなかったのだろうか、母親と父親はいつも支えあって生きていたではないかと。
「だから、私を当主にしたかったのですわね。家を、掟を守る為に、約束を守る為に」
「ああ、そうだ」
葛葉は少しだけだが考えた。暗殺者になって父親と母親の約束を守ろうかと……。
だが悠斗は穏やかに笑う。
「お母さんとの約束はこれでは守られないな、何故ならお前のことを応援したくなってしまったから。今後の楽しそうな姿を見てみたくなってしまったからな。それにお前に無理をさせたくない。だから……」
葛葉は真剣な眼差しで父親である悠斗を見つめる。
悠斗は言葉に詰まりながらも最後まで言いきった。
「自由に生きろ」
そう言いきった。
葛葉は自由をついに手に入れたのだ。
彼女の自由とは人殺し課で馬鹿なことをやること。
そして皆で楽しく過ごす、それが彼女の全て。
葛葉は歓喜の声をあげた。
だが悠斗の顔は少し暗そうだった。
「約束、守れなかったな……」
悠斗はそう呟く。
だが殺は笑って言葉を放った。
「貴方が当主を続ければ問題ないではないですか。約束は家を守ることでしょう?貴方が守り続ければ約束は守られます。それに、子を縛る掟を無くしたことで奥様は幸せだと思いますよ」
「あいつが幸せ?何でだ?」
殺は悠斗に柔らかな笑顔で答える。
「だって、子の不幸を望む親は居ませんから」
「……そうだな」
悠斗は生きていた頃の妻を思い出す。
彼女はいつも言っていた。『あの子たちが幸せであります様に』そう言っていた。
何で忘れていたのだろうか?
悠斗は葛葉に辛い思いをさせてしまったと後悔する。
だが目の前の葛葉は父親の悠斗の手を握った。
「仲直りですわよ」
そう泣きながら笑う葛葉は何よりも美しく勇ましい姿だった。
「仲直りだな」
親子喧嘩はもう終い、あとに残ったものは幸せな笑顔だけであった。
~~~~
「やっとついたぜ!」
「M!無事なのか?」
「大丈夫なのか?!」
遅れて人殺し課の三人がやって来る。
大きな声で相変わらずの賑やかさに葛葉は笑ってしまう。
「無事ですわよ」
そう答える彼女はいつも通りの服装と髪型に戻り、人殺し課へと帰る準備をしていた。
「もう終わりましたよ」
「殺も無事そうでなによりだ」
陽が殺に怪我が無いか確認してから葛葉の前に立つ。
そうして陽は葛葉に子供を諭すかの様に声をかけた。
「もう隠し事はするなよ」
「……はい!」
もういつもと変わらない人殺し課へと雰囲気が戻っていた。
その中で悠斗は葛葉に声をかける。
「偶には実家へ帰って来い」
「了解ですわ!」
親子二人の空気は和やかだった。
全てが終われば人殺し課へと帰るだけ、葛葉は少し寂しそうに帰路についた。
~~~~
帰っている途中で人殺し課は会話をする。
「M!寂しかったら、いつでも言ってください。罵ってあげますから」
「儂も罵ってやるぞ!」
「俺も!」
「まぁ、僕も」
葛葉は皆の気遣いに笑みを浮かべて感謝をする。
「皆様!ありがとうございます!」
彼女は葛葉からMに戻る。
幸せそうに罵ってもらうことを考える。
それがMの普通、日常。
どうか、また皆で協力して大きなことに立ち向かえる様に……。
Mは静かにそう願った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる