地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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甘い

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「この子は世界を揺るがす兵器になる可能性が高いのです」

「……は?」

 殺は八咫が何を言っているかがわからなかった。
 世界を揺るがす兵器、普通の少女がそんなものになる訳がない。
 殺は此奴は何を馬鹿なことを言っているんだと鼻で笑った。

「ふふっ……その子が兵器?何を言ってるのですか?」

「なら証明して見せましょう」

 そう言って八咫は日向に刀を突き刺す。
 血が噴き出し辺り一面が赤く染まる。
 少女は痛みに苦しんだ、苦しんで悲鳴をあげた。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

「貴方!何を!……ぐぁっ!」

 瞬間に殺は立ち眩みを起こす。
 何が起きたかわからないが、八咫も殺も苦しんでいる。
 激しい眩暈、吐き気、頭痛。
 それらが殺を襲った。

「わかったでしょう……。この子の血は毒で出来ている。しかも強力な!この子は歳を重ねれば力の強弱はつくでしょう。ですが、この子の力が悪用されれば世界が危険だ!危険因子は削除する。貴方ならばそれがわかるでしょう?」

 八咫は殺に対して諦めろと言う。
 だが殺は笑った、笑って言の葉を返した。

「わかりませんね。私は救う必要がある命は救います。それに守ると約束をした!」

「それが人殺しの詭弁ですか……。ならば力で諦めさせるまで!」

 そう言うと八咫は隠し持っていた銃を使い殺の頭に攻撃を与えようとする。
 だが殺は頭を傾けて銃弾を避けた。
 殺の背後は銃弾によって壁が粉々に破壊されている。
 それだけ威力が高いうえに、弾は妖力の塊ときた。
 これでは無限に撃つことが可能になってしまう。

「まだまだ!」

 八咫は殺を銃弾の餌食にしようとする。
 だが殺は銃弾には当たらない、全ての弾を避けては八咫に近づいていった。
 近づいた際に殺は彼を斬ろうとする。
 だが八咫は殺の頭に拳銃を突きつけ撃とうとした。
 けれども殺は拳銃を手を使い、そらして避ける。
 その際に殺は八咫の右腕に蹴りを入れ、彼を吹っ飛ばす。
 更には目にも留まらぬ速さで彼のもとへ走れば斬撃を食らわそうとした。

 だが八咫は殺の攻撃を避ける。
 避けて殺を撃とうとした。
 だが拳銃を持っていた腕を殺に蹴られて、拳銃を落としてしまう。
 それを殺は一瞬で広いあげ八咫に向かって発砲した。
 八咫は左腕に穴を開けてしまったが、それでも戦い続ける。

 殺に撃たれたが、すぐさま距離を置きランダムに動いてみせる。
 わかりにくい動きに殺は苛つきながらも銃弾を浴びせようとしていった。
 だが、八咫は殺のもとまで走りきれば先ほどの仕返しと言わんばかりに銃を持っている腕を蹴り、それを落とさせる。

「くっ……!」

「銃はなしにしましょう」

 そう言えば八咫は刀を構えて殺を斬りにかかった。
 だがそれを防いでは殺は八咫に力強い攻撃を入れていく。
 八咫は腕が痛くなったのか表情がだんだん苦しみに変わっていった。
 すると彼は空中へひとっ飛びし、殺から離れる。

「これは避けれますかね?」

 そう笑う八咫は腕を伸ばせば大きな氷の塊を作っていく。
 その塊は先端が鋭く尖っていて、直径は十メートルほどだった。

「憧れていたのに残念です。できれば一緒に働きたかった」

 そうやって八咫は腕を下へ向ける。
 それに合わせて巨大な氷の塊は高速で殺のもとへ落ちていった。
 日向はおそらくもうすぐ見えるだろう残酷な光景を想像して殺から目をそらす。
 だが次の瞬間に聞こえてきたのはバキバキという氷の塊が破壊される音だった。

「この程度ですか?」

 日向が殺の声を聞いて視点を殺へ合わせる。
 少女は唖然とした。
 何故なら其処には氷に砕かれていない無傷の殺がいたからだ。
 殺は巨大な氷の塊を一瞬で細かく斬り刻んでいたのである。
 殺は空中に浮いていた小さな氷の塊を食べる。

「良い水から出来ているのですね。美味い、美味い」

「そんな……馬鹿な!?」

 八咫は焦り細かな氷の塊を作って殺へ投げた。
 だが殺はそれを全て弾き返す。
 そうして八咫のいる空中へ飛び立ち、踵落としを食らわせ地面に減り込ませた。
 更には動きが止まった八咫の腹に蹴りを入れ、彼を遠くまで飛ばす。

「ぐっ……!!」

「もう力の差は歴然です。死にたくなければその子を返しなさい」

「くふぅ……!くはっ!」

「何が可笑しい?」

 八咫は笑う。
 狂ったように笑ってみせる。
 実際に狂ったのだろう、彼の目は殺の死しか映していない。

「殺様ぁ……。貴方が此奴を見捨てる理由はありますよ」

「ほぅ……、何ですか?」

 八咫は嬉しそうにケラケラと笑った。
 そうして日向にとって明かされたくない真実を彼は大きな声で喋った。

「此奴は貴方が最も憎む裏切り者の娘だぁぁぁぁぁぁ!!」

 八咫はやってやったぞと言わんばかりにくるくる回りながら手を叩く。
 殺はそれを見て黙っていた。
 日向は知られたくなかった真実をバラされ意気消沈としていた。
 そんな中で殺は口を開く。

「知ってましたよ」

「……え?」

 八咫は固まる。
 知っていた、ならばそれを承知の上で少女を守っていたのかと八咫は焦った。
 やっと八咫は冷静に戻る。
 そうして殺の怒りに触れたことを彼は思い知った。

「確かに私は裏切りを最も憎む。だがな……、子が親の罪を背負う必要はない!!」

 一撃。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!」

 八咫は殺に深く斬り刻まれる。
 更に、腹を複数回にわたり殴り、蹴られた。
 そしてトドメに顎を殴り飛ばされて八咫は空中にまい、気絶をした。

「やっと終わりましたか……。日向さん、鎖は今から破壊しますので待っていてください」

 その言葉通りに殺は鎖を断ち切っていく。
 その間は殺はずっと下を向いていた。

「殺様……、知ってて守ってくれていたのですね。この裏切り者の娘を……」

 日向は複雑そうな顔をして、そう言った。
 すると殺は少女から顔を背けて、あることを訊ねた。
 それは殺にとって大事なことである。

「親の仇……、とらなくて良いのですか?」

「え?」

「私は貴方の親を殺した……。私は裏切りを憎む。ですが、それで貴方の人生を滅茶苦茶にしてしまった。初めて見た貴方は薄汚れていた。その位、私は貴方に苦渋を舐めさせた」

 仇はとらなくて良いのか?
 それは自分を殺して良いと言っているようなものだった。
 そんな殺の言葉を聞いて少女は少し笑う。

「仇を取るつもりなら貴方に守ってくれと頼んでいません。それに私の親は汚い裏切り者だった。ただそれだけです」

「それで良いのですか?」

 殺は少女に問いかける。
 本当にそれが少女の気持ちなのか、親を奪い悲しい思いをさせたのではないのかと殺は思った。
 だが少女は幸せそうな笑顔で泣きながら答える。

「これで良いのです。私は真っすぐ正義を貫き、自然と誰かに道を示す貴方に惹かれたのですから」

 再び聞くことになった少女の鼻声に殺は救われた気がした。
 嗚呼、良かった。
 この子を守れて。
 そう思いながら殺は出会った頃のように少女に手を差し伸べる。

「帰りますよ」

「はい!」

 そう笑う二人は互いに幸せだった。
 そして殺は背後に振り向き大声を出す。

「もう出てきて良いですよ!!皆さん!」

「げっ……、バレてたのかよ」

 背後から現れたのは御影とサトリと陽とMだ。
 皆、殺が心配でついてきたのだろう。
 一度、痛い目を見よと言ったがやはり皆は甘いようだ。

「痛い目を見ろと言ったのに……。皆さん甘いですね」

「甘いのはお主じゃ!……仕方がないじゃろう。死んでほしくないのじゃから」

 死んでほしくないという言葉に殺はどれだけ皆に心配をかけさせてしまったかと思うと同時に自分がどれだけ皆に愛されていたかがわかった。
 殺は皆に感謝する。
 そして沢山謝った。

「皆さん、ありがとうございます。そして心配をかけさせて申し訳ありませんでした。これからは気をつけます」

「まったく……。今回だけだぞ」

 そう言って陽は殺から顔を背ける。
 とても心配していたのだろう、微かに泣いた痕が見られた。

「陽、すいませんでした」

「もう良い!帰るぞ!」

「はい!……帰りましょう、人殺し課へ」

 そうして皆が人殺し課へと帰っていった。
 帰る際の顔は皆、安堵で満ち溢れた表情だった。


~~~~


「まだあの少女は居るのか?」

「はい、毎日遊びに来ると駄々をこねてましたから」

 人殺し課に増えた仲間、皆は最初少女にどう接したら良いのかわからなかったが今では適当な扱いになった。
 日向もそれが良いといった風にのびのびと人殺し課でお喋りにまわっている。

「まぁ、こんな日常も悪くないですわ!」

「ですね!」

 日向とMはお喋りに夢中になる。
 すると殺がMを叱る。

「仕事をしなさい!!」

「はーい!」

 いつもの日常が戻った。
 もう少女を脅かすものはいない。
 あるのは平和だけだ。
 
 さあ、毎日を幸せに過ごそう。




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