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華麗な勝負
しおりを挟むMとサトリが負けて数分間が経った頃、次の勝負は誰がやるかで皆が悩んでいた。
「私が出てやるよ!」
女なのに女らしくない口調の者が名乗り出る。
それは竹刀を片手に持った百合だった。
百合は「誰が相手になるんだぃ?」などと残りの三人を品定めするかのような目で見る。
「儂が相手じゃ!」
「御影兄さん!」
今度こそ本当に頼れる存在、御影だ。
殺は泥舟から大船へと乗り換えた気分になる。
それだけ安心感が強いのだ。
この金色の九尾の狐は少し長いさらさらの髪を揺らしながら百合の前へ立つ。
「へぇー、あんたが相手か。私の前で何分間立ってられるかな?」
「それは此方の台詞じゃ。お主は何秒くらい立ってられるのじゃ?」
この言葉に百合が下品なくらいに大笑いする。
この女は品がないのか?
いや、品がないのではなく姉貴分なのだろう。
百合は笑いを止めたら今度は冷めた目で御影を睨みつけた。
「この私に勝とうなんて一生無理なんだよ」
「勝負は一瞬じゃよ」
「何だと?」
「それほど、お主と儂には埋められない差があるってことじゃ」
百合は御影の言葉の一つ一つに苛立ちを示しながら竹刀を持つ手の力を強める。
それに対して御影は体の力を抜き、楽にしていた。
だがその目、獲物を狙う捕食者の目なり。
「おもしれぇな、なら見せてみろよ。差ってやつを!」
「……皆、耳を塞ぐのじゃ」
「あ、はい」
殺はあっさり返事を返す。
陽とMとサトリも耳を塞いでいた。
これで準備は万端だ。
あれがお披露目されるのである。
混合者事件以来のあれが……。
「何をする気だぃ?」
「すーーーーー……」
御影が大きく息を吸う。
そして呼吸を少し止めて用意する。
「ぎしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
思わず百合は悲鳴を上げた。
御影の大声に驚き以上に体にダメージを受ける。
鼓膜は破れ、耳から血が噴き出して音が聞こえなくなった。
目もチカチカする。
だから気づかなかった、御影がすぐ側に来ていることを。
「これで終いじゃ!!」
「ぐあっ!!!」
百合は御影の竹刀で頭を叩かれて戦闘不能になる。
いや、大声攻撃の時点で実は戦闘不能になっていた。
それでも御影は念には念を入れた。
「勝負あり、ですね。姫様」
「くっ……」
殺は笑顔で姫に勝負ありと告げる。
姫は悔しそうな顔をして、それを受け入れた。
次は誰が戦う?
話はそこに戻るが実際には誰が戦うかなんてわかっていた。
「僕が出よう。大将は最後にだ」
「私ですね。姫様は最後にです」
二人の声が重なる。
同じ内容の声が重なった後に二人、陽と野菊が互いを睨み合う。
「私たちの番ですね」
「ああ、そうだな」
二人は互いを暫し睨み合った後に竹刀を手に取る。
そして野菊が大きな声で戦いのルールを説明した。
「勝負は叩いて被ってジャンケンポンです!」
「はぁ?!」
「ルールは普通の叩いて被ってジャンケンポンと一緒です。一回でも叩かれたら負け。ヘルメットは用意しております」
そう言って野菊は丁寧にヘルメットを用意する。
叩いて被ってジャンケンポン、これならある意味は安全かと陽は安心を覚えて勝負に出た。
「では始めますよ。叩いて被ってジャンケンポン!」
「ジャンケンポン!」
陽はパーを出して野菊はチョキを出していた。
陽は急いでヘルメットを被る。
だが野菊の攻撃も早かった。
ギリギリのところで陽が攻撃を防ぐ。
本当にギリギリ、野菊は悔しそうな顔をして次を促した。
「叩いて被ってジャンケンポン!」
次は陽がグーで野菊がパーだ。
陽はまたかと思う暇なく慌ててヘルメットを被る。
それほどに野菊の攻撃に殺意があるのだ。
安心出来ない。
野菊はまた防がれたと悔しそうに顔を歪めた。
「叩いて被ってジャンケンポン!」
次は陽がチョキで野菊がグー。
陽は素早くヘルメットを被る。
ヘルメット越しでも竹刀で本気で叩かれたら痛い。
そう野菊の攻撃を防いでから考えていた。
「叩いて被ってジャンケンポン!」
「ジャンケンポン!」
「ジャンケンポン!」
いつまで経っても陽がジャンケンで勝てない。
ジャンケンをして数十回が経った頃、陽はあることに気づいた。
(まさか……これは!)
地獄のジャンケンがまた始まろうとする。
だが陽はそれに待ったをかけた。
「叩いて被って「野菊姫、貴方ズルをしてるな」
「……!何ですって!」
野菊は焦る。
そうして姫も焦った。
何せ姫にもトリックがわかっていたからだもの。
「貴方、少し後出しをしてるな。菖蒲姫、貴方もわかっててもやもやしてたんだろ?真面目な貴方だ、勝負にズルはしたくない筈。だから負けを認めてください」
陽の一言に菖蒲姫は少し黙る。
黙った後で野菊に悔しながらも言葉をおくった。
「野菊、負けを認めなさい」
「そんな……!姫様!」
陽はやっと終わったかと一人でそう思っていた。
だが野菊は止まらなかった。
「言ったでしょう。この勝負は叩かれたら負けって。ならば今すぐ叩くまで!」
そう言って野菊は陽に向かって竹刀を振ろうとする。
「はぁ……、趣旨が変わってないか?でも……」
その瞬間に陽は野菊を超える速さで野菊の頭に竹刀を振り下ろした。
野菊は地面へと減り込む。
「が……は?」
「これなら文句ないだろう?」
勝負がついた瞬間だった。
菖蒲姫は顔をまた歪める。
そうして残った勝負はあと一回だった。
これで勝負が決まる。
「菖蒲姫様。私たちで最後です」
殺が竹刀を握ろうとする。
だが菖蒲姫はそれを止めた。
「待ちなさい、殺」
「何ですか?」
殺は何故、止められたのかわからないでいた。
でも次に渡された物で全てを理解した。
「貴方……、何を考えて!?」
渡されたのは殺の刀であった。
殺は渡された刀を掴み、姫を見つめる。
「私たちは真剣勝負でいきましょう」
そう言う姫は殺の性別に執着をしていた。
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