地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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勝負に正しいも何もない

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 勝負の日、当日に殺たちは事前に指定された姫たちが住まう城の道場へ来ていた。
 現在は曇り、重苦しい空気が天界と殺らを包んでいく。
 生暖かい風、それらが気持ち悪くて奇妙で仕方がない。
 殺は無駄に広い道場を落ち着かないのか、ずっとキョロキョロと辺りを見回していた。

「広いですね……」

「天井なんか劇場以上に高いですわ」

 殺とMが緊張しながら会話をする。
 緊張しているのは二人だけではない、皆が緊張しているのだ。
 何せ今日は殺の人生がかかっている日なのだから。

「姫たちはまだか?」

 陽は疑問に思ったことをすぐに口にする。
 実際、遅すぎるのだ。
 あれだけ時間厳守を口にする姫が遅れるなど滅多にない。
 何かあったのだろうかと心配にもなる。

「「あー、遅れちゃった!」」

「貴方たち二人が起きないからでしょう!」

「まあまあ、姫様。落ち着いてください」

「はっはっは!楽しいな!」

 声が聞こえた方を殺たちは勢いで向いた。
 するとそこにはとても見目麗しい女性たちがいた。
 顔のそっくりな双子らしい金色の髪をした和風ゴスロリの女、紫の髪が印象的な丁寧語を使う女、バサバサの銀髪と豊満な胸が特徴的な女。
 流石は天界の姫といったところか。

「葵でーす!」

「桜でーす!」

「二人揃って双子でーす!」

 くるりと回って決めポーズを決めて満足そうにしている双子、だがどちらがどちらかわからない。

「野菊です」

「百合だ!よろしくな!」

 後の二人は案外まともだ。
 これなら大丈夫かと殺は安心した。
 だが安心も打ち砕かれる。

「よくも姫様を悲しませやがって……許しません」

「お前は今日で女に戻るんだろ?それなら仲間に入れてやるよ!」

 安心ものではなかった。
 一人は病んでいるうえに、もう一人は勝利を確信して話を進めている。
 どこに安心の要素があったものか。

「ではルールを、武器は竹刀で。ルールと言っても竹刀以外は特にはありませんから気軽に戦ってください」

「「はいはーい!私たち最初に戦いたい!」」

「二人同時に相手しろって?」

 サトリが敵を睨んで発言する。
 だが双子は戯けたまんまだ。
 遊びながら二人で説明をする。

「「そちらも二人で良いってことだよ!一対一を同時にする形だね」」

「それなら良いか……」

 サトリが少し納得をしたら話は進む。
 少女らは遊び相手を選んではニヤリと微笑んだ。
 それは悪魔のような笑みといって過言ではないだろう。
 少女らは遊び相手を指名する。

「そこの女の子!」

「そこの子供!」

 そう言ってMとサトリに指を指す。

「え、私ですの?」

「選ばれたからには全力で立ち向かわないとな」

 そうやって二人は竹刀を手に取っていく。
 笑う双子も竹刀を手に取った。
 勝負が始まる、一人の女をきっかけにした醜い争いが。

「サトリ兄さん……M」

「殺、安心しろ。俺らは負けねえよ」

「そうですわよ!大船に乗った気でいてください!」

「二人共……!」

 殺は二人を信頼して任せた。
 やるときはやってくれる、それがこの二人と信じて勝負に送る。
 こうして二人は悪魔のような双子に立ち向かう。
 双子はケラケラと笑いながら一瞬だけ手を繋ぐ。
 まるで願掛けをしてるかのように。

「さあ!行くぞ!」

「了解ですわ!」

 二人は勢い良く助走をつけて走り出す。
 だが双子は何もしようとはしなかった。
 双子は竹刀を持っていない方の手で違う方向を指さす。

「あ、あそこに超絶イケメンが」

「あ、あそこにスタイル抜群な美女が」

「「何だってぇぇぇぇぇえ!」」

 Mとサトリが指がさされた方向に振り向く。
 そんな僅かな一瞬のうちだった。
 双子は竹刀を振り抜く。

「「隙ありィィィィィィ!!」」

「「ぁぁぁぁぁぁ!!」」

 Mとサトリは激しい突きの攻撃を受けて少し血を吐く。
 口の中に広がる鉄の味は不愉快なもの。
 Mは痛みに悶え苦しんでいて動けそうにもない。

「勝負はつきましたね。これで二回は私たちの勝ちです」

「これはなしなのでは?!」

 すかさず殺が異議を唱えるが、それは姫によって棄却されてしまう。

「貴方の命運がかかった勝負で余所見をした時点で負けなのですよ。勝負に油断は禁物です。異議は認めないっ!!!!」

「は……はい」

 殺は姫の大声に負けて情けない声で返事をした。
 その後すぐさまMとサトリを見て怒号をあげる。
 その怒号を姫に浴びせていれば良かったものを……。

「何やってるんですか!二人共!」

「だって美女がいたらなぁ、なぁM」

「イケメンがいると言われましてわねぇ……」

「さっきまでのトキメキを返せ!」

 殺はもはや血管が切れるのではないかと思うほど怒っていた。
 更に軽蔑の目を贈るのは殺だけではない。

「情けない……本当に情けないのぅ」

 御影はサトリに泣きそうな声で軽蔑の意を唱える。
 それにサトリは焦った。
 何せサトリにとって御影は大切な存在だ、軽蔑されたくない。
 だからこそ言い訳を重ねていく。

「いや……違うんだ……」

「違わないじゃろう……」

「……はい、すいません」

 この日一番のダメージを負ったのはサトリだった。
 その様子を双子は面白そうに笑いながら眺めていた。
 その姿を見た者はこう言うだろう。

 悪魔、と……。

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