125 / 167
勝負に正しいも何もない
しおりを挟む勝負の日、当日に殺たちは事前に指定された姫たちが住まう城の道場へ来ていた。
現在は曇り、重苦しい空気が天界と殺らを包んでいく。
生暖かい風、それらが気持ち悪くて奇妙で仕方がない。
殺は無駄に広い道場を落ち着かないのか、ずっとキョロキョロと辺りを見回していた。
「広いですね……」
「天井なんか劇場以上に高いですわ」
殺とMが緊張しながら会話をする。
緊張しているのは二人だけではない、皆が緊張しているのだ。
何せ今日は殺の人生がかかっている日なのだから。
「姫たちはまだか?」
陽は疑問に思ったことをすぐに口にする。
実際、遅すぎるのだ。
あれだけ時間厳守を口にする姫が遅れるなど滅多にない。
何かあったのだろうかと心配にもなる。
「「あー、遅れちゃった!」」
「貴方たち二人が起きないからでしょう!」
「まあまあ、姫様。落ち着いてください」
「はっはっは!楽しいな!」
声が聞こえた方を殺たちは勢いで向いた。
するとそこにはとても見目麗しい女性たちがいた。
顔のそっくりな双子らしい金色の髪をした和風ゴスロリの女、紫の髪が印象的な丁寧語を使う女、バサバサの銀髪と豊満な胸が特徴的な女。
流石は天界の姫といったところか。
「葵でーす!」
「桜でーす!」
「二人揃って双子でーす!」
くるりと回って決めポーズを決めて満足そうにしている双子、だがどちらがどちらかわからない。
「野菊です」
「百合だ!よろしくな!」
後の二人は案外まともだ。
これなら大丈夫かと殺は安心した。
だが安心も打ち砕かれる。
「よくも姫様を悲しませやがって……許しません」
「お前は今日で女に戻るんだろ?それなら仲間に入れてやるよ!」
安心ものではなかった。
一人は病んでいるうえに、もう一人は勝利を確信して話を進めている。
どこに安心の要素があったものか。
「ではルールを、武器は竹刀で。ルールと言っても竹刀以外は特にはありませんから気軽に戦ってください」
「「はいはーい!私たち最初に戦いたい!」」
「二人同時に相手しろって?」
サトリが敵を睨んで発言する。
だが双子は戯けたまんまだ。
遊びながら二人で説明をする。
「「そちらも二人で良いってことだよ!一対一を同時にする形だね」」
「それなら良いか……」
サトリが少し納得をしたら話は進む。
少女らは遊び相手を選んではニヤリと微笑んだ。
それは悪魔のような笑みといって過言ではないだろう。
少女らは遊び相手を指名する。
「そこの女の子!」
「そこの子供!」
そう言ってMとサトリに指を指す。
「え、私ですの?」
「選ばれたからには全力で立ち向かわないとな」
そうやって二人は竹刀を手に取っていく。
笑う双子も竹刀を手に取った。
勝負が始まる、一人の女をきっかけにした醜い争いが。
「サトリ兄さん……M」
「殺、安心しろ。俺らは負けねえよ」
「そうですわよ!大船に乗った気でいてください!」
「二人共……!」
殺は二人を信頼して任せた。
やるときはやってくれる、それがこの二人と信じて勝負に送る。
こうして二人は悪魔のような双子に立ち向かう。
双子はケラケラと笑いながら一瞬だけ手を繋ぐ。
まるで願掛けをしてるかのように。
「さあ!行くぞ!」
「了解ですわ!」
二人は勢い良く助走をつけて走り出す。
だが双子は何もしようとはしなかった。
双子は竹刀を持っていない方の手で違う方向を指さす。
「あ、あそこに超絶イケメンが」
「あ、あそこにスタイル抜群な美女が」
「「何だってぇぇぇぇぇえ!」」
Mとサトリが指がさされた方向に振り向く。
そんな僅かな一瞬のうちだった。
双子は竹刀を振り抜く。
「「隙ありィィィィィィ!!」」
「「ぁぁぁぁぁぁ!!」」
Mとサトリは激しい突きの攻撃を受けて少し血を吐く。
口の中に広がる鉄の味は不愉快なもの。
Mは痛みに悶え苦しんでいて動けそうにもない。
「勝負はつきましたね。これで二回は私たちの勝ちです」
「これはなしなのでは?!」
すかさず殺が異議を唱えるが、それは姫によって棄却されてしまう。
「貴方の命運がかかった勝負で余所見をした時点で負けなのですよ。勝負に油断は禁物です。異議は認めないっ!!!!」
「は……はい」
殺は姫の大声に負けて情けない声で返事をした。
その後すぐさまMとサトリを見て怒号をあげる。
その怒号を姫に浴びせていれば良かったものを……。
「何やってるんですか!二人共!」
「だって美女がいたらなぁ、なぁM」
「イケメンがいると言われましてわねぇ……」
「さっきまでのトキメキを返せ!」
殺はもはや血管が切れるのではないかと思うほど怒っていた。
更に軽蔑の目を贈るのは殺だけではない。
「情けない……本当に情けないのぅ」
御影はサトリに泣きそうな声で軽蔑の意を唱える。
それにサトリは焦った。
何せサトリにとって御影は大切な存在だ、軽蔑されたくない。
だからこそ言い訳を重ねていく。
「いや……違うんだ……」
「違わないじゃろう……」
「……はい、すいません」
この日一番のダメージを負ったのはサトリだった。
その様子を双子は面白そうに笑いながら眺めていた。
その姿を見た者はこう言うだろう。
悪魔、と……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる