復讐溺愛 ~御曹司の罠~

深冬 芽以

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8.甘い夜、甘くない理由

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「寝るなよ」

 間近で聞こえたかと思うと、唇がひやっとした。

 気持ち良くて、思わず重ねられた彼の唇を舐める。

 水を、飲んだのだろうか。

 そうらしい。

 彼の舌に割り開かれた隙間から、冷たい液体が流れこんできた。

 受け止めきれなかった水が顎を伝い、それを皇丞が舐めとる。

「挿れるぞ」

 蜜口に押し当てられたモノは、指とは比較にならないほど熱く、先端だけでもその重量が尋常じゃないとわかった。

「ま――」

「――無理!」

 痛いと言う間もなく、奥まで突き上げられる。

 私はシーツを握り、「んっ」と呻く。

 首筋に軽く歯を立てられて、チリッと痛みが走る。

 その痛みで気が逸れた。

「きつ……」

 私の膣内なかに、皇丞がぎちぎちにハマッているのがわかる。

「大丈夫か?」

 理由が説明できない涙が溢れ、視界が歪む。

 頷くと、目尻から涙がこぼれた。

「久しぶり過ぎて、ヤバイ」

「久し……ぶりなの?」

 声を絞り出して聞く。

 彼の手が私のこめかみに触れ、親指の腹で涙を拭われた。

 クリアになった視界に飛び込んできたのは、おでこに汗を滲ませて、目を細める皇丞。

「お前に惚れてから、ご無沙汰だよ」

 それが長いのか短いのかはわからない。

 今度、聞いてみよう。

 今は、聞いても覚えていられない気がするから。

 意識のすべてが皇丞の表情や吐息、動きに集中している。

「お……すけ」

 私はシーツを手放し、彼のおでこの汗を拭った。

「ん?」

「ありがとう」

「なにが?」

 触れた手で頬を撫でると、皇丞が気持ちよさそうに目を閉じた。

「私を……愛してくれて」

「ずっと、そう思っていてくれるか?」

 ゆっくりと目を開けた皇丞が、なんだか少しだけ泣きそうに見えたのは、私の視界が涙に滲んでいるからか。

「おう――」

「――限界だ。動くぞ」

 まともな会話ができたのは、そこまで。

 久しぶりなのは本当だった。

 最初からトップスピードで揺さぶられ、あうあうと赤ん坊のように喉を鳴らす。

 ぐちゅぐちゅと卑猥な水音と、肌がぶつかるくぐもった音に混じって、時々小さく呻く皇丞の甘い吐息が耳に届く。

 感じてくれている。

 そう思うと、また私の膣内なかが喜び、彼を締め付けた。

 同時に、内壁に与えられる圧が強くなり、私もまた呻いてしまう。

「くそっ」

 何への悪態かはわからないけれど、皇丞は小さく呟き、私の腰を両手でしっかりと掴むと、私の最奥に熱を放出した。

 ちゃんと膜が機能しているのかと心配になるほど熱く、勢いよく放たれた。

 重い瞼を上げると、皇丞はぎゅっと目を閉じ、唇を震わせて息を吐いている。

 その表情があんまり色っぽくて、きゅんと胸が高鳴った。

 彼のその表情を見るのが、私で最後だといいなと、心から思った。

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