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彩にちょっかいをかけたのは、千堂が彩に気がありそうだったからだ。
俺よりも若くして課長に昇進して、順調に業績を上げて、人当たりも良くて部下からの信頼も厚い千堂が気に食わなかった。
結婚願望のない俺が彩に『家庭の良さを教えて欲しい』なんて言ったのは、真心に寄り添う彩に惹かれたから。
今、思えば、俺も千堂と同じだったんだろう。
彩の『母親』の顔に惹かれた。
子供の頃の俺が欲しくて堪らなかった『母親』を、彩に見た。
けれど、彩と一緒にいるうちに、彩の『母親』の顔の奥の、『女』としての素顔を見たくなった。俺だけに見せて欲しくなった。
彩は特別美人なわけでも、スタイルがいいわけでもない。
本人が気にしているように、どちらかといえばふくよかな体形で、胸も腹も尻も重力には抗えず、お世辞にも美しいとは言えない。だけど、柔らかさとか温かさとか、締まり具合とかは最高で、ずっと抱き締めていたいと、ずっと彩の膣内にいたいと思う。
彼女に触れていると、とても穏やかな気持ちになれて、癒された。
触りたいな……。
「彩……」
俺が彼女の名前を呼んだ途端、頭の上のスマホが唸りだした。
今度こそ、彩だ。
「もしもしっ!」
さっき、気まずい切り方をしたことも忘れて、俺は意気揚々と電話に出た。
『……どうしたの?』
「なにが?」
『勢いがいいから』
彩との温度差を感じて、俺のテンションがゆっくりと下がっていく。
そうだ。
彩が千堂と一緒にいたことに苛立っていたんだった。
母親からの電話で、すっかり忘れていた。
『さっきは……ごめんなさい』
「え?」
彩は冨田のマンションでカレーを作って来たことを話してくれた。千堂からのチョコレートは、子供たちへの手土産だということも。
『なんか――』
彩が間を置き、俺は待った。
『凪子さんと千堂課長を見てたら……、ちょっといいなって思って……』
彩の声が少し小さくなって、俺は彼女の言葉を聞き洩らさないように、耳を澄ました。
『智也に――、智也の声が聞きたいなって思って電話したら、告白されたとか言うから……』
『智也に――』の先が気になった。
『智也に会いたくなって』と言うつもりだったのなら、嬉しい。
「会いてぇ……な」
この一年、電話で『会いたい』と言わないようにしていた。口に出してしまうと、余計に会いたくなってしまう気がしたから。
けれど、一番の理由は、彩が言わないから。
電話で『会いたい』と言わない彩と張り合うように、俺も言わずにいた。
俺ばかりが寂しいんだと思うと、ちょっと悔しくて、虚しいから。
だけど、さっきの『智也に――』を聞いて、彩も俺と同じように、わざと言わないようにしていたのではないかと思った。
素直じゃないことにかけては、俺は彩には敵わない。
俺よりも若くして課長に昇進して、順調に業績を上げて、人当たりも良くて部下からの信頼も厚い千堂が気に食わなかった。
結婚願望のない俺が彩に『家庭の良さを教えて欲しい』なんて言ったのは、真心に寄り添う彩に惹かれたから。
今、思えば、俺も千堂と同じだったんだろう。
彩の『母親』の顔に惹かれた。
子供の頃の俺が欲しくて堪らなかった『母親』を、彩に見た。
けれど、彩と一緒にいるうちに、彩の『母親』の顔の奥の、『女』としての素顔を見たくなった。俺だけに見せて欲しくなった。
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彼女に触れていると、とても穏やかな気持ちになれて、癒された。
触りたいな……。
「彩……」
俺が彼女の名前を呼んだ途端、頭の上のスマホが唸りだした。
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『……どうしたの?』
「なにが?」
『勢いがいいから』
彩との温度差を感じて、俺のテンションがゆっくりと下がっていく。
そうだ。
彩が千堂と一緒にいたことに苛立っていたんだった。
母親からの電話で、すっかり忘れていた。
『さっきは……ごめんなさい』
「え?」
彩は冨田のマンションでカレーを作って来たことを話してくれた。千堂からのチョコレートは、子供たちへの手土産だということも。
『なんか――』
彩が間を置き、俺は待った。
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けれど、一番の理由は、彩が言わないから。
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俺ばかりが寂しいんだと思うと、ちょっと悔しくて、虚しいから。
だけど、さっきの『智也に――』を聞いて、彩も俺と同じように、わざと言わないようにしていたのではないかと思った。
素直じゃないことにかけては、俺は彩には敵わない。
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