サレたふたりの恋愛事情

深冬 芽以

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6.嫉妬のあまり……

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 おでんが届いて、谷と柳田が美味そうに食べる間、スマホを見た。

 気づかなかったが、また非通知からの着信があった。


 今更謝罪とか……。


 はぁとため息をつきながらスマホを置こうとした時、手の中で小さく震えた。

 また非通知か、と見てみるが、メッセージだった。羽崎からの。

〈まだ帰ってないですか?〉

 谷と柳田と飲んで帰ることは伝えた。二時間くらい前に。

 羽崎からは〈わかりました〉と返事があった。

 メッセージを見るに、羽崎もまだ帰っていないようだが、どうしてわざわざ確認するメッセージを送ってきたのだろう。

〈まだ店だけど、どうした?〉

 返事を送ったがすぐに既読がつかない。

 胸騒ぎがする。

「その羽崎さんと須賀谷がお茶した店ってのが駅前のカフェでさ?」
 
「ガラス張りだから店内見えんだよな。で、社員の半数以上が駅に行くのに通ってる。そんな店で定時後すぐに、しかも窓際の席で二人でいたら、どうしたって目撃者は多いし噂にもなるだろ」

「それで、外堀?」

「ああ。それで噂になってたんだ」

 柳田が大根を箸で小さく切り、口に入れる。

 昔から思ってたが、育ちが良さそうな食べ方をする奴だ。

 谷と柳田は外見も性格もまるで違い、同期じゃなければ俺と親しくなることもなかったはず。

 谷はスポーツマン風でガタイも良く、性格もさばさばしている。それでいて、長年一人の女を好きで諦めきれずにいたのには驚いた。

 柳田は爽やかで硬派に見えるのに、女関係はドライで、後腐れない浅い関係が多かった。結婚なんて考えられないからと、若くしてマンションを買った時は、俺も迷った。

「女子たちがひそひそしてて、羽崎さんの名前が聞こえたからどうしたかなとは思ってたんだけど」

「いや、そんな噂になるような真似して、羽崎がなびくか? つーか、なんでそんな若いイケメンが羽崎? あ、羽崎を悪くいうわけじゃないが――」

「――わかってるって! 俺も思ったし」

 柳田が笑う。

 が、谷は真剣な表情。

「あいつ――須賀谷だけど、この前までの何人かの彼女はみんな同年代だったはず」

「年上好きなわけじゃない?」

「ああ。同年代と付き合って、年上が良くなったんだろうな」

「なんだ、それ」

 店員が冷えたビールを持って来て、空いた皿を片付けていく。

 俺たちはそれぞれ受け取ったビールを、一口飲んでからテーブルに置いた。

「須賀谷ってさ、社内外問わず来るものは拒むんだよ。で、自分からはグイグイいく」

「頭ん中女のことしかないのかよ」

「それがモチベーションに繋がってるから、ディスれないところでさ? 女のケツ追いかけてる時はめちゃくちゃ仕事するんだよ」

「いや、意味がわかんねーんだけど」

 柳田も眉をひそめている。

 谷は皿に残った最後の枝豆を口に入れた。

「堕としたい女がいる間は、残業しないために効率よく仕事して成果もあげるんだけど、付き合い始めてしばらくすると残業するようになるんだよ。したくてするというよりは、残業しないように必死になる理由がなくなった、みたいな腑抜けた状態で」

「いや、付き合えるようになったんなら、それこそ残業しないで帰っていちゃつきたいだろ」

 柳田も最後のゲソ揚げを食べて空いた皿を重ねていく。

「な? そう思うだろ? けどさ、あいつは追いかけてるうちが楽しいらしくて、女が自分に夢中になると冷めるんだよ」

「ああ……なるほど」

 なにがなるほどだ。

 まったく意味がわからない。

「この前までは適当に仕事流してる感じだったけど、羽崎さんを口説きだしてから目に見えてやる気に満ちてる」


 ヤル気は仕事だけにしろよ……。


「で、これはあき――俺の奥さんの情報なんだけど、須賀谷が食堂で『俺には年上の、恋人じゃなくて結婚相手に相応しい女が必要だ』って話してたらしい」
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